お盆と病院
東京と違って田舎は今がお盆。周辺の個人開業医も昨日12日から月曜の15日まで、土日をはさんで4連休にしているところが多い様子。
今日は病院の日直だった。そういう事情でたくさん患者さんが来るのを覚悟していたら、救急車一台、入院2名、全体としても日中の救急外来受診数40名くらいと少し拍子抜けするくらいだった。まあ、急患が少ないという事は患者さんがわにとっても医療者側にとってもいいことであろう。
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昨日の続きの話し。
GCSの事。コメントで指摘があったように、「GCS8点」という総合点での呼び方よりも、「E3V2M3」というようなそれぞれの程度を表現する方が実際的ではあるが、救急外来にいる人や脳外科医以外の医師、看護師、技師、救急隊員などが皆同じように精通していないと、「情報の共有」にならない。
GCSの点数の付け方;
a) 開眼機能(Eye opening)「E」
4点:自発的に、またはふつうの呼びかけで開眼
3点:強く呼びかけると開眼
2点:痛み刺激で開眼
1点:痛み刺激でも開眼しない
b) 言語機能(Verbal response)「V」
5点:見当識が保たれている
4点:会話は成立するが見当識が混乱
3点:発語はみられるが会話は成立しない
2点:意味のない発声
1点:発語みられず
c) 運動機能(Motor response)「M」
6点:命令に従って四肢を動かす
5点:痛み刺激に対して手で払いのける
4点:指への痛み刺激に対して四肢を引っ込める
3点:痛み刺激に対して緩徐な屈曲運動
2点:痛み刺激に対して緩徐な伸展運動
1点:運動みられず
この点数の付け方とその意義を共通に認識していないと、「E3V4M4で11点」と言ってもなんだか虚しい。
JCSでも同じように問題点がある事は昨日書いたが、GCSでも「失語症」の患者さんでは、Vが1点になってしまう。完全失語になってしまった人は、意識状態が悪くもないのになぜか開眼しない事が多く、目を開けさせようとするとかたくなにつぶってしまう人もいる。するとEが1点になってしまう。ところがMは5点で、E1V1M5=7点ということになる。これではかなり強い意識障害のある重症の人という事になるが、もし言葉が喋られる状態ならE4V5M5=14点という風になるはずである。
JCSもGCSも、診断、治療に当たる側が、患者さんの今の意識状態を把握し、その後の治療経過で改善しているのか悪化しているのか、手術を急ぐのか、夜中でも主治医を呼ぶのか、治療が効を奏しているのか、などを判断し情報を共有するための手段である。我々はよくナースに「意識が2桁になったらすぐ呼ぶように」などと言っている。2桁とは、JCSでIIの段階、すなわち10, 20, 30の状態である。脳出血などがあって意識が2桁になるということは、出血の増量や血腫の圧迫による脳浮腫が強くなって意識が悪化し、脳ヘルニアを起こす直前までに移行している危険性がある。緊急手術が必要となる事もある状態である。すぐにCTを撮る必要があることもある。ただ、「2桁です」と言われて見に行くと実際はそんな意識ではなく、ただ眠くて目を開けようとしないだけだったり反抗的に目を開けないだけだったりする事もあり、そんなときは何らかの他の方法で現在の意識状態を探るようなちょっとしたコツがいるのである。
さて、日直も終わったのだし家に帰って休もう!
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