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2012.12.18

山形交響楽団第225回定期演奏会 in 山形テルサ

ここ数年の山響の音楽の充実ぶりと国内クラシック音楽シーンにおける躍進ぶりは、山響ファンクラブの一人としても、嬉しくまた誇らしい気分になります。

酒田、鶴岡で年に4回開催する「庄内定期」シリーズは欠かさず聴いておりますが、酒田に暮らすようになって山形テルサや山形県民会館で開催する、「定期演奏会」や「モーツァルト定期」は毎回とは行かなくなっております。

必ずしも土日ではない場合もありますし、所属する市民オケの練習や本番とぶつかることもあるからです(11月の創立40周年記念の「ある幽霊船の物語」(歌劇『さまよえるオランダ人』演奏会形式)も是非聴きたかったのに行けなかったコンサートの一つでした)。

255そんな中、今年のコンサートで最も楽しみにしていたものと言える第225回定期を12/16(日)、山形テルサで聴いてきました。
山響創立名誉指揮者の村川千秋さんが、H21年11月の「第200回記念定期演奏会」以来山響定期に登場されました。
ソリストに盟友(千秋先生がインディアナ大学に留学した時、偶然ルームメイトとなった)堤剛氏。もう何十年も前からチェロの巨匠、大御所で現役。そして桐朋学園の学長もされている。

プログラムは、千秋先生得意のシベリウスをメインにして
1)シベリウス:弦楽のための「即興曲」
2)ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 作品104
3)シベリウス:交響曲 第2番 ニ長調 作品43
でした。

3山形テルサは満席で800と中規模ホールで残響も豊かなので、オケを聴く時は2階のバルコニーか正面2階席最前列で聴くことが多いのですが、今回は千秋先生の近くを望み、「三列目倶楽部」(笑)。
土日2日公演だったためか、最前列から3列目位まではガラガラだったので2曲目のドボコンの時は、最前列下手ブロックに移動しました(衆院選挙と別会場での山形オペラ研究会の歌劇「ドン・ジョバンニ」とバッティングしたことも関係あるかも)。

何とも表現しがたい温かい拍手に迎えられてマエストロ村川千秋が登場。
1曲目のシベリウスの弦楽のための「即興曲」は初めて聴く音楽。タクトが振り下ろされた瞬間から、何とも言ったらいいのか、とにかく柔らかで温かい音。
「あ〜、村川ワールドだ。千秋先生の音なんだなぁ。。。」
と既に感激。
北欧の厳しく静かな夜を思わせる様な、しかし温かい音で紡ぎだされる村川千秋のシベリウス。静かに終わります。観客もすぐに拍手はせず、僅かな無音の、ホールの空間に吸い込まれて消えて行く最後のpの音の余韻を愉しむ余裕がありました。

2曲目。「ドボコン」と略されることの多い、チェロのコンツェルトといえばこれ!という名曲。
balaineは2年前の所属市民オケの定期演奏会で、これまた日本のチェロ界の名手岩崎洸さんをソリストに迎えて演奏しました。あの時はフルートトップを吹く機会に恵まれ(そういえば直前に2回程山響首席フルートの足達先生に見てもらったのでした)、一生懸命練習したのでスコアとフルートパートは頭に入っていました。演奏を聴きながら、ついつい足達先生と一緒に吹いている自分がそこに居ました。

堤剛氏のチェロは、書道に例えると大家が大きな筆で大きな紙に、たっぷりと墨を含ませて一画一画渾身の力と魂を込めて書き上げる感じ。テンポはかなりゆっくり目。アゴーギクは豊かで、前打音も太くくっきりと奏でるため、指揮者もオケもぴったり合わせるのは容易ではなさそうでした。
直ぐ目の前で演奏する堤氏。時々アイコンタクトしつつ、お互い見合ってニヤリ、ニコリと笑みをかわしながら指揮をする村川氏の表情。「最前列」下手ならではの二人の巨匠の表情を見ながら演奏を楽しむという貴重な機会でした。

はっきり言って、まさに「巨匠」という感じの堤氏のチェロに指揮者もオケもやや翻弄されそうになるところがあったようです。少し離れている木管、金管群はいかにアンテナをたくさん立てていても、チェロにぴったり合わせることが難しく、棒に合わせようとするとズレるところがどうしても出てしまいます。
ソリストの直ぐ近くで演奏する弦楽器奏者は、棒を見るよりソリストの身体の動き、弓の動き、表情を見て感じながら合わせて行くところもあるので、棒、管楽器と微妙にズレるところも出てきます。

でも!それが協奏曲の醍醐味なのです。
2年前に岩崎洸さんとドボコンをやった時も、2005年に福田進一さんと「アランフェス協奏曲」を演奏した時も、前日リハ、当日GP、そして本番とすべて違う演奏をするのが巨匠の常。アゴーギクも装飾音も部分的なテンポの緩急、アッチェラレンドもいつも同じではないのです。

堤さんのチェロの音は、温かく、しかし真面目に一音一音を紡ぎだし、決して一音だに無駄に音を出していない真の芸術家というべき演奏でした。1楽章の冒頭の長いオケのみの序章からチェロ独奏に入るまでの間、目を閉じ、弓を時に指揮棒の様に動かしながら音楽に入って行く様子。演奏を始めた瞬間から顔は紅潮し、額や顔に汗をにじませながら、文字通り渾身の力、魂を込めて演奏しているのが伝わりました。
こういう姿はいつもの2階席ではわからなかっただろうと思いますし、受け取る感動も「最前列」ならではのものがありました。

千秋先生も曲の冒頭、タクトを振り下ろす瞬間から「んぅ〜」と唸り声を上げながら魂を込めて指揮をされていました。その声と表情をじろりと横目で見た堤氏は、「よし!」という表情をされて無言の会話が二人の間に交わされている姿も感動的でした。

短期スイス留学から戻った井上さんのTpの美しいファンファーレ的な音が響くフィナーレ。客の入りを心配したもの、最終的には結構入った客席からこれまた温かい大きな拍手。二人の巨匠はガッチリ両手で握手しお互いの健闘を讃えているようです。
そして山響の弦が、フルートの足達さんが、オーボエの麻咲さんが、クラの川上さんが、ファゴットのあけみさんが、ホルンの八木さんが、、、充実の管楽器群がこの名曲をさらに輝かしいものにしていました。
拍手はなかなか鳴り止まず、数回のカーテンコールの後、アンコール。

カザルスの「鳥の歌」。
ピアノ伴奏で始まる部分も高音のトレモロで表現するチェロ独奏。
静まり返ったホールに、一本のチェロの音だけが鳴るという至福のとき。高音のフラジオレットで最後の音が消えて行き、またちょっとの無音の間の後、割れる様な拍手。。。
素晴らしい演奏をありがとうございました。


15分の休憩の後、メインの「シベ2」です。
この曲も2008年の酒田フィル定期で演奏しました(balaineは2番フルート)。なのでスコアがかなり頭に入っています。
フィンランドとシベリウスを愛している千秋先生の曲への愛、敬意が感じられる丁寧な演奏。山響の充実の弦楽器群、そして卓越した技量を持つ奏者を揃えた管楽器群が曲を明確に描き、千秋先生の思いを表現して行きます。もう感動です。

最後は、北欧の暗い夜、冷たい冬から、明るい朝、短いけれど暖かな春を迎える歓びを讃歌のように朗々と唄いあげ力強く終わります。フィナーレが近づくに連れて、「ああ、まだ終わらないで欲しい、、、」と思いながら聴いていましたが、音楽は時間の芸術。感動は残るもの、演奏はもう残っていません。音はすべて消え、観客の大きな拍手しか聞こえないのです。

すぐには観客の方を振り向かず、山響の団員一人一人に感謝を表現する千秋先生。コンマスの犬伏さんに向いてオケ総員の起立を促すものの、犬伏さんは立ち上がらず。「なんだよ〜」というようなハニカミの表情を浮かべながら千秋先生が客席の方を向くと、拍手はその音量が倍になったくらいに聞こえました。団員もステージ上で拍手です。

70才で一線を退いて後進に道を譲ったと言っていた千秋先生。
3年前の第200回記念定期で「お祝いだから、、、」と言われて渋々また指揮することを承諾し、「もうこれで最後!」と言っていたのを、今度は「40周年記念だから」とまた指揮することになったことを恥ずかしいと思っていらしたようです。
でも本心は、自分が自らの子供の様に生み育てて来た山響が、まるでまだまだ若いけれど立派な大人に成長した姿を眩しく嬉しく思いながらタクトを振っていらしたに違いありません。

大きな拍手は続き、2回目のカーテンコールでまずフルートの足達先生のところに向かい握手、続いて木管、金管、ティンパニの順に立たせて奏者を讃えます。Cb, Va, Vc, 2nd Vn, 1st Vnそして全員と立たせて拍手拍手。。。

終演後の交流会。
Photoインディアナ大学留学時代にルームメイトになった千秋先生と堤さん。千秋先生は元日の生まれであと2週間でちょうど80才を迎える目出たいお年。堤さんは70才と10年の違い。
司会の、今季で奏者を辞めてジェネラルマネージャー役に専念する、Tpの佐藤裕司さんから、創設以来の山響のことを振られて、千秋先生は「昔はガタ響なんて言われてね」「2回目と4回目の演奏会に堤さんに来て頂いて、もうすでに立派で有名なチェロ奏者だった堤さんを呼べばお客さんも少しは集まるかと思ったのにね、ガラガラでね、大変失礼しました(笑)。」「ギャラも払えなくてね、ちょっとしか。それでも来て下さったんですよ。」「それだけじゃなくてね、Vnの妹さんもゲストコンマスとして出演して下さってね」

記録によると、1973年5月の第2回定期で堤さんが初共演。曲は「ドボコン」。そして翌1974年5月の第4回定期でもまた「ドボコン」で共演。当時は年2回しか定期演奏会も行えなかったのです。
その後しばらくして1992年12月の第86回定期でもまたまた「ドボコン」で共演。
妹の堤久美子さん(のちに恵藤さん)は客演コンマスを2年間務めておられます。

このように一つの縁から、地方で何もないところからプロのオーケストラを作り上げ、苦労していた仲間を助けようと演奏に来て下さった堤剛さんの心意気を感じられるお話でした。
千秋先生自身は、藝大に進んだところ、自分は本当に力がない、真の井の中の蛙だと思い知り、勉強するしかないと頑張って(確か器楽科を卒業後、作曲科に入り直したはず)、でも周りには「直純とか」(註;故山本直純氏は藝大一年後輩?)「岩城とか」(故岩城宏之氏は確か同級生)実力のある奴がたくさん居たので、自分に出来ることは何かと考えていて、「アメリカやヨーロッパには小さな町にも立派のオーケストラがある。一方、日本では東京と地方では文化の差に隔たりがありすぎる。地方にオケがあってもいいじゃないか。ないなら作ろう。自分は力はないが何もないところに作ること位は出来る。そしていろんな人を巻き込んで大きくして行こう。」と考えたのだと仰っていました(一部、過去の発言を補足)。

「オーケストラが定着するのに50年かかると言われます。山響は後10年で50年になります。どうかみなさん、あと10年、山響を支えて下さい。お願いします。」と交流会に集まったファンに頭を下げられた。最後に、堤さんとガッチリ握手し、二人はお互いに深々と頭を下げておられました(目の前に居たのですが感動してこの写真を撮れず、、、)。

演奏会そのものは期待通り、堤さんのチェロ独奏は生で初めてお聞きしたのだがその渾身の演奏と真摯に音楽に向き合う姿に、一アマチュアながら音楽をやっている身として教えられること大であった。

多くのファンや知人に囲まれて挨拶され楽屋に戻られる直前に直に千秋先生にご挨拶。庄内のお土産をお渡しし、ご無沙汰をお詫びし演奏会の成功をお祝いしました。
80才を過ぎても現役で活躍する指揮者はたくさん居ます。Mr.Sことスクロバチェフスキーや、ブロムシュテットなどがそうです。故朝比奈隆氏は90才までタクトを振っていました。
千秋先生、ますますお元気で、また演奏会でお目にかかれます様に。創立50周年でも可能なら山響を指揮して頂きたいと念じながら、酒田の家を目指して山形を後にしました。

(ブログのカウンターは12/18深夜の時点で、あと1100ちょっとで100万アクセスです。1日平均300件程のアクセスがあるので、あと3〜4日で達成しそう。12/20中でしょうか?)


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コメント

いい演奏会でしたね~。久しぶりに村川千秋さんの元気な姿を拝見し、安心しました。佐藤さんがGeneral manager になるというのも初めて知りました。
今年もあとわずか。ここ数日のお天気は、実にありがたいですね。当方の長距離通勤にも、助かります。

投稿: narkejp | 2012.12.18 06:13

narkejpさん、クラ首席の川上一道氏が先の日本音楽コンクールクラリネット部門で1位になったのはご存知でしょうが、GM佐藤裕司さんの後任の松岡さんも同コンクールTp部門でファイナリストになり3位だったそうです。
フルートはプログラム上は「客演」になっていましたが、セカンドに小松崎さんという方が決まり、その他チェロやVnにも新人。特にVnにはなんと「平成生まれ」が入団されたそうです。
村川千秋という指揮者の事を知らない団員が増えて来たのですが、彼らにとっても良い経験のコンサートだったと思います。バトンテクニックはもちろん大切ですが、極端な事を言うと「そこに立っていてくれればいい」レベルの指揮者がいるんだ、真のマエストロとはこういうことか、というのを経験したことになると思っています。

投稿: balaine | 2012.12.18 15:37

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忘年会明けの土曜日は、ほぼ沈没しておりましたので、日曜の午後、山形交響楽団第225回定期演奏会に出かけました。会場の山形テルサホールに着いて、お客様を観察していると、なんだかいつもよりもご年配の方々が多いように感じます。頭が白いというだけでなく、山響創立...... [続きを読む]

受信: 2012.12.18 06:02

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