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2012.04.09

「チェンバロの日」に参加する1(本編)

いや〜お江戸は春でした!
桜はほぼ満開。風はまだ冷たいものの、東北から上った人間には心地よい暖かさ。江戸の人がコートを着たり、マフラーを巻いたり、中には太陽が出てるのにダウンを着ている姿を信じられない思いで見ながら、コートは鞄の中にしまっておきました。

552183_332868663440142_1000015103384/7(土)に都内で研究会があり、これ幸いと都内に一泊して4/8(日)のこのイベントに参加してきました。チェンバロ弾きのkanonの保護者ではなく、自分自身がチェンバロについて勉強するための参加です。
フルート吹きにとってチェンバロは、バロック時代を中心に数多くの素晴らしい音楽を楽しむためにとても大切なパートナーとも言うべき重要な楽器です。

Photo_20Photo_13世田谷区は二子玉川駅からタクシーで10分程、岡本二丁目にある「松本記念音楽迎賓館」。パイオニアの創業者にして篤志家であった故松本望氏の居宅として昭和48年に建築された建物を、「一般の方々に喜んで使って頂ける施設にしたい」というご夫妻の遺志により平成13年に広く一般人が利用できる記念館として開館。入口からとても雰囲気のある建物。

1Photo_1411時の開始まで少し時間があったので少し施設内をぐるぐると見学。1階の一番奥の部屋には、kanonのチェンバロの製作者久保田彰氏の1段鍵盤ルッカースモデル(装飾のない普及モデルで98万円)や2階にあがる階段の下にはこれも久保田彰氏作のスピネットが展示してありました(こちらも普及モデルで85万円)。

Photo_7kanonは、チェンバロ奏者、チェンバロ教育に携わる人を中心にした「ラモーの音律 〜解釈と実践の試み」という講座を受講。
こちらには、写真の様な二段鍵盤フレンチスタイルのシノワズリ。
受講したkanonによると、講師の藤原一弘氏の話は目から鱗の素晴らしいお話だったようです。

Photo_8Photo_9balaineは一般サポーター向きの「フレンチとイタリアンタイプの楽器の違い、音色の違い 〜2台の楽器を使って」という講演。
右の写真は、講演中の足達正浩氏。名古屋で「クラヴサン工房アダチ」を主宰するチェンバロ製作家です。
楽器の違いは、文化の違いと言える程の差がありますが、大きく言えばアルプスの北か南かということ。よって使用する木も違い、そのため工法も違い、音色も違う。

Photo_10イタリアンを演奏する小川絢子さん。
安達氏の解説と演奏、と言っても話の方が圧倒的に長いのですが(笑)、ファーナビー/オールド・スパニエッタ、ピッキ/パッサ エ メッツォ&サルタレッロ、フレスコバルディ/トッカータ第9番、D. スカルラッティ/ソナタK.193の順に演奏されました。

Photo_11フレンチを演奏する大村千秋さん。
L. クープラン/プレリュード ハ長調、ダングルベール/アルミードのパッサカーユ、J. デュフリ/アルマンド ニ短調、J.S. バッハ/パルティータ第4番ニ長調 BWV828より序曲、を演奏されました。
安達氏のお話は、宮廷の文化、踊り、歩き方の話から騎士の嗜みまで幅広く、持っておられる豊富な知識を分かりやすく説明するには2時間という時間は短すぎた感がありました。
実際、演奏は小品を4曲ずつ聞けて、音色の違いも響きの違いも実感できましたが、正直なところ、もっと演奏を聴きたかったという感じです。

ジョンダーノ・ホールには、久保田彰さんのフレーミシュスタイル二段と、久保田さんのお弟子さんだった仙台の林裕希さんのフレーミッシュスタイル一段鍵盤がありますが、大きさ(長さと厚み)が違いますし、弦の長さ、組み合わせも違いますし、プレクトラムも前者はデルリン、後者は白鳥や烏などの羽の軸の一部を使っていて、音色も鍵盤のタッチも全然別の楽器です。
同じフレーミシュのルッカースモデルを元にした楽器でも大きく違うことを知っていたので、実際フレンチとイタリアンにかなりの音色の違いがあっても「当然かな」と驚くことはなく、その微妙な(というよりは歴然とした)響きの違いを楽しむことが出来ました。

Photo_12講演と演奏が終わって人がいなくなってから部屋を見ると、後方にオルガンがありました。ベルギーのシューマッハー工房のパイプオルガンで、800本を超えるパイプ数の本格的なものです。

Photo_15昼食休憩、日本庭園の散策後、1階の「サロン」に置いてあるランドフスカ型のチェンバロ。
いわゆるモダンチェンバロと言われて、現在のオリジナル楽器のコピーが主流となる前に使われていたもの。ピアノのような大きさと金属製のフレームなどガッチリした作りですが、弦はコードバンという堅い馬の皮で出来たプレクトラムで弾く、まぎれもないチェンバロ。
Photo_16パリのプレイエル社にランドフスカがオーダーして1912年に作らせたもので、下鍵盤に16'+8'+4'の3種類の弦、上鍵盤に8'の弦があり、これを組み合わせることでいろいろな音色、音量を出すために、レジスターの組み合わせは、写真の7つのペダルを踏むことで調整するものです。

Photo_17この「サロン」室には、蓄音機の銘器と言われるクレデンザが置いてあり、上の写真のランドフスカモデルでランドフスカが弾いたクープランなどの演奏が録音されたSPレコードの再生を聴くことが出来ました。

午後のシンポジウムが始まるまでにまだ時間があったので、試奏というかいろいろ遊ぶ時間がありました。

Photo_23120408_140801午前の講演でも見たイタリアンチェンバロとフレンチチェンバロ。
実際に演奏して音色、鍵盤のタッチの違いなどを実感することも出来ました。左はフレンチの響板の写真。右は、kanonに激写されていたイタリアンを弾く?balaineです。

Photo_18Pic_cembalo_day_top_00314:30からは「シンポジウム」。
日本のチェンバロシーンにおける「第1世代」と言われる奏者から、風間千寿子、小林道夫、西川清子、山田貢の4氏がシンポジストとして、さらに続く世代の中から荒川恒子、渡辺順生氏がパネラーとして、岡田龍之介の司会のもと、自らの経験、音楽に対する思い、若い世代に対する意見などをお話しになりました。
古楽に限らず音楽全般に通じる話でもあり、音楽家ではないbalaineが聞いても勉強になるお話でした。


Photo_24最後に1720頃から希望者のみ懇親会。
我々は2015の飛行機の時間があるので、18時前にお暇し羽田空港に向かわなければならず、途中退席までの束の間、小林道夫先生や渡邉順生先生、西川清子先生などの御高名な先生方と臆面もなくお話をさせて頂き、しまいには「遠くから参加してくださった方」ということで挨拶までさせられてしまいました。
Photo_25一番驚いたのは、西川清子先生のご主人様がkanonと同じ秋田の出身。というより、秋田でもご近所の土崎の出身で、秋田では超有名な「大いなる秋田」の管弦楽版編曲者佐藤菊夫先生だったということ。懇親会の席で、kanonと西川先生は歓びのあまり抱き合っておりました。

一日チェンバロ三昧というなかなか得難い体験。周りに居るのはチェンバロ奏者かチェンバロに強い興味を持つ人達ばかり。おそらくbalaineが最もチェンバロの知識が乏しい参加者ではなかったかと思います。それでも身近に常に2台のチェンバロがあるという環境は、そうそうないものだと思います。

昨年設立された「日本チェンバロ協会」が今後益々発展して、チェンバロ音楽への理解が深まり、愛好者が増えることを期待しています。

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コメント

あのペダルは、ランドフスカの楽器のペダルだったんですね。彼女はたいへんな名手ですから、このプレイエルのモダンチェンバロでバッハをバリバリ弾いていたんですね。ものすごくカリスマ性があったようです。

私がまだ高校生の頃、ランドフスカの演奏がまだ推薦盤だったのを思い出しました。あれから時代は大きく変わりました。

投稿: MrBach1954 | 2012.04.10 06:36

MrBach1954さん、楽器の傍にずっと風間千寿子先生がついておられ、簡単に説明はして下さるのですが、好き勝手に触るわけにはいかず。
でもkanonは鍵盤を触らせてもらっていました。何もペダルを下げない状態ではまったく音が出ないんです。何かを下げるとどれかの弦が弾かれるという組み合わせで、kanonの感想はまるでグランドピアノのようながっちりした見てくれなのに、タッチはとても柔らかくむしろフニャっとしていたくらいだそうです。コードバンのプレクトラムというのも関係ありそうです。いくら堅い皮でも皮ですからねぇ。
がっちりした体型が災いし、鎧が響板の響きを殺してしまうため、大きなホールではオリジナルタイプのチェンバロよりむしろ鳴らない楽器だったそうで、小さな部屋の演奏にしか向かなかったようですね。

投稿: balaine | 2012.04.10 09:01

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