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2011.02.28

山形弦楽四重奏団第3回庄内定期演奏会レポート

H23年2月27日、"Giondano Hall"において、サロン・コンサート第12回「山形弦楽四重奏団第3回庄内定期演奏会」が行われました。

どうやら”雪女”はどこかに行ったようで、曇りがちですが時折晴れ間も覗くお天気。
山形Qのメンバーは、クラの郷津さんを含む5名、車2台で約束の12時丁度位に到着。さっそくホールで音だし準備、最終リハ。
途中10分位、balaineも交えてのアンコール2曲目のリハも行い、準備万端。

14:30の開場なのですが、早い方は14時前に来られたので、待合室でお待ち頂き、予定の14:30開場。今日はお客様の出足もよく、まもなく71用意した椅子はほとんど埋まり見た所、5つの空席と2つの遅れて来る友人のために確保された席が空いている位。

15:00開演の3分位前から主催者挨拶。おもにこれから予定されているサロン・コンサート第13回(4/17)と第14回(6/18)の宣伝と、4/2の鈴木秀美リサイタル、さらに3/21の酒田中央高校のコンサートと3/13の酒田フィルの春のファミリーコンサートの宣伝を行いました。

Qmc続いて、ヴィオラのらびお氏こと倉田讓さんから挨拶。
2nd Vnの駒込綾さんが、4月の定期演奏会を最後に山形Qを卒業する、よって庄内での山形Qとしての演奏会は今日が最後になると言う報告がありました。

続いて本日のプログラムの解説。
2曲目の幸松肇氏の曲は、椅子など配置転換の時間があるのでその際に行うと断り、1曲目と3曲目の解説をされました。
クラリネット五重奏曲は、1789年、アマデウス33才の時、というより死の2年前の作品。いろいろな事があり苦しい時の作品とされていますが、作品にはそんな状況は反映されておらず、美しく優しい曲想です。このモーツァルトの作品に刺激されて、その後、ウェーバー、ブラームス、ヒンデミットといった有名なクラリネット五重奏が産まれますが、クラリネット1本+弦楽四重奏という比較的容易に見える組み合わせなのにそれほどたくさんの曲は存在しないのですね。
3曲目のベートーヴェン。これは前回、昨年9/25の山形弦楽四重奏団庄内演奏会Vol.2(まだ「定期」と呼んでいませんでした)のMCを務めた駒込綾さんが、「庄内演奏会ではベートーヴェンのカルテットを全部演奏する」と(そういう相談や計画はしていたが)勇み足で公にしてしまった、というような話。でもそのつもりだそうです。

MCが終わり、時計は15:10。いよいよ演奏の開始。
大きな拍手に迎えられ、クラリネットの郷津隆幸氏と山形Qの登場です。
Q1789年という年は、「フィガロの結婚」(1786年)、「ドン・ジョヴァンニ」(1787年)、有名な「三大交響曲」(1788年)を書き上げて、人生の最高潮のような時期でありながら、多額の借金を抱えたり、浪費癖があったり、妻のコンスタツェも温泉療養で不在にするなど、プライヴェートには決して幸せではない、満たされていない時期だと思われます。
しかし、曲を聴いているとそんな事は微塵も感じさせない(といっても野放図な、能天気な明るさばかりではなく)、聴いていて幸せを感じる様な曲です。有名なクラリネット協奏曲の2楽章を彷彿とさせます。あの天国の音楽の様なクラリネット協奏曲が最晩年の1791年に書かれているのですから、アマデウスの場合は、苦しければ苦しい程幸せな音楽が産まれるという様な、使いたくなくても「天才」という言葉を冠しなければならない作曲家なのでしょう。
「異才」、「奇才」と呼ばれるに近い「天才」だと思います。

山形Qでは、郷津さんとこの曲を2006年1月の第18回(文翔館)定期で『モーツァルト生誕250年記念オールモーツァルトプログラム』で演奏しています。その他の機会がなかったとすれば、実に5年振りの演奏だった訳ですが、いつも山響で演奏している姿と全く変わらない、ある意味お地蔵さんの様に体をほとんど動かす事なく丁寧に演奏される郷津さんと、フレーズやボーイングによって音楽に合わせて体を揺らしながら演奏する山形Qの4人との対比も面白かったです。
どんなフレーズでも表情を変える事なく淡々と演奏している様に見える郷津さんが、曲が終わった直後だけ、にやりとしたのが印象的。
中爺さんの方を見て「なかなかうまく行ったんじゃない?」という感じでした。

35分程に及ぶ長い曲でしたが私はまったく飽きる事なく聴き通すことが出来ました。
この幸せなモーツァルトを聴いて、結構な数のお客様は気持ちのよい浅い睡眠に入っておられたようで、kanonに駄目出しされて「なごみの午後」に変わった、元の「まどろみの午後」そのものだったようです。

Qmc_22曲目は弦4本なので椅子を一つ片付け、譜面台を移動しという配置転換の間を利用して倉田さんから解説がありました。
幸松肇さんは、弦楽四重奏マニアで世界中で発売された弦楽四重奏のSP・LPレコードで持ってないものはないだろうと自負されておられる位、弦楽四重奏を愛している人で、それが講じてバルトークやドヴォルジャークやチャイコフスキーなどのように、自国の民謡の旋律を積極的に取り入れた弦楽四重奏曲が作れないかと考えて、結局自分で作曲してしまったのだそうです。しかも幸松さんはとても謙虚な方なので、「弦楽四重奏のための4つの日本民謡」も「作曲」と言わず、「編曲」とご自分では言っていらっしゃるそうです。しかし、倉田氏は、曲の内容から考えてこれは作曲と言っていい、と解説されていました。

Q_2balaineはこの曲を聴くのは2回目。確か2009年1月の第30回(文翔館)定期演奏会でした。
初めて聴いたときは衝撃的。耳馴染みのある4つの民謡はもちろん心地よいのですが、激しいピチカートで始まる強烈な印象の「さんさ時雨」、ロック調を思わせる「ソーラン節」、うねうねうねという1、2Vnのさざ波の中から哀愁を帯びたヴィオラが謳い始める「五木の子守唄」、チェロのリズムのリードで始まる軽快な「茶切節」。どれも観客には鮮烈な印象を与えた事でしょう。
酒田フィルの仲間の中には後方の席で立ち上がって演奏を見たり、前の方の席で体を前のめりにして本当に食い入る様に見つめている人もいましたし、一般のお客様も耳馴染みのある民謡がうまく調理されて絶妙な和音進行で展開される様子を興味津々という感じで聴いておられた様に感じました。

15分の途中休憩を挟み、後半。
ベートーヴェンの3番です。番号の付いているものだけで16曲、番号のない「大フーガ」やメヌエットなどを加えると27曲あるとされている、音楽史上に燦然と輝くベートーヴェンの弦楽四重奏曲群。
告白すると山形Qの演奏を聴く様になるまでは、私もまったく興味がなく素通りしていた音楽です。山形Qの演奏会で、弦楽四重奏の楽しさ、そしてベートーヴェンの素晴らしい業績に気付かされ、次第に虜になり始めている訳です。私が庄内で山形Qの演奏会を開いて欲しいと思ったのは、音楽に詳しい人でも自分で弦楽四重奏などやらない限り、またはファンのカルテットでも居ない限り、ベートーヴェンの弦楽四重奏を良く聴いているという人などほとんどいないだろう、これは勿体ない、一度聴けばその良さにたちまち虜になるはず、クラシックに余り詳しくない人たちにも一部の曲を除けばその良さ、楽しさが正しく理解してもらえるはず、とにかく食わず嫌いや無知による無視はよくない、と思ったのがきっかけなのでした。

Q_3Q_4第3番は1798年の作品で、20台の青年ルートヴィヒの若々しさと瑞々しさを感じさせる反面、すでに聴力障害が出始めていた苦悩を表現する様な明るさの中に埋もれた気難しさを感じると言ったら、後世の様々な憶測の影響を受け過ぎかもしれませんね。でも聴きやすい素敵な音楽でした。
これで庄内演奏会では、4番、2番、3番と演奏されました。これからも「庄内でのベートーヴェン・シリーズ」が大変楽しみです。

写真は、演奏終了後、酒田中央高校のCb以外のパートリーダーにそれぞれのパート対象の演奏者に花束を渡してもらった所。お客さんは大満足。演奏した山形Qメンバーも充実した笑顔が見られます。
拙クリニックの患者さん割引も含めて有料入場者68名+我々で、合計70名の観客数はサロン・コンサート12回の中で最高記録です!

Q_5盛んな拍手に応えて、アンコールは"だちゅ"こと駒込綾嬢の大好きなドヴォルジャーク。
たしか(私は控え室に入ってちゃんと聞いていなかったのですが)、先日文翔館の第38回定期で演奏した10番の第2楽章だと思います。チェロのボロロン、ボロロンというリュート的な伴奏に物悲しい、民族的な悲しみを抑制的にたたえた旋律が日本人の心をくすぐります。

Q_6さらに盛んなアンコールに応えて、balaineが参加してモーツァルトのフルート四重奏曲イ長調の第2楽章メヌエット。
ほんの短い曲ですが、山Qさんと合わせたのは本番当日のGPの中のほんの10分程度。
ヘタレな演奏は余り追究しないで下さい(苦笑)。主催者特権ということと、これでもお客さんの中に10名程いらしてくださった私の患者さんの中には、私の演奏を大変喜んで下さる方もいらっしゃるのです。

最後にまた4人で拍手に応えて頂き、駒込嬢から特にご挨拶。ちょっと湿っぽい感じ?はなく、「これからも山形弦楽四重奏団をよろしくお願いします!」ということで、充実し過ぎた演奏会は終了です。

〜〜〜〜〜
クリニックから徒歩3分程の「善べぇ」さんに移動して、有志で打ち上げ。
Q_8山形Q4名+郷津さんに、我々夫婦と山響FC顧問(元会長)のK氏、熱心な山響FCメンバーのS氏、Kanonの後輩(大学時代4年生と1年生の関係)であり駒込嬢の先輩(同じく1年生と4年生)の関係であるTさん、酒フィルのチェロ奏者夫妻Y氏とそのお嬢さんの合計13名で短い時間ながら楽しく打ち上がりました(写真は極小さくしました)。

駒込さん、9年間の山形Qメンバーとしての活躍、お疲れさまでした。ジャズやタンゴやフリー奏者としてのオケへのトラ出演などなど多彩な活動をこれからも期待しております。
4月以降は新しい2nd Vnメンバーを入れて(誰かは内緒らしい)、新たな山形弦楽四重奏団の歴史が始まることになります。山形Qの「庄内定期演奏会」はまだ3回。番号の付いたベートーヴェンの弦楽四重奏曲だけでまだ13曲ありますので、年2回やってもあと6年半かかります。
毎回毎回楽しみですね!


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コメント

充実した演奏会になりましたようで、おめでとうございます。室内楽の楽しさ、同感です。幸松さんの日本民謡四重奏曲、山形QのCD録音がほしいところですね(^o^)/

投稿: narkejp | 2011.03.01 06:39

おはようございます。

当日、この場にいなかったことが残念でなりません。おまけに深夜業務して体調が悪くなり、いっそ仕事を休んで聴いていた方が幸せでした~(-_-;)

もう一度、この記事を読み返して演奏の場にいたことをイメージしたいと思います・・。


さて、本日時間が取れそうなのでチケットの件でお伺いしてよろしいでしょうか?(業務連絡ですみません・・。)


投稿: けん | 2011.03.01 08:13

詳しい報告ありがとうございました。まるで参加したような錯覚を覚えました。

それにしても、連続した会の開催や魅力的なプログラムなど、文句の付けようのないサロンコンサートですね。隅々まで配慮が行き届き、親密な雰囲気の中で行われるこういうコンサートこそ、ほんとうの「音楽会」ではないでしょうか。ゼひ長く続けられてください。

4月は八百板教室発表会があるので、参加できませんが、5月以降のスケジュールが空いているとき、必ず参加させていただきます。楽しみにしています。

取り急ぎ、成功のお祝いまで。

追伸:いま成田エキスプレスの中で書いています。これからアメリカに学会出張です。目的地はテキサス州サンアントニオ。嚥下障害の国際会議で、嚥下リハビリテーションについて学生と発表してきます。

投稿: MrBach1954 | 2011.03.01 11:34

コンサート大成功おめでとうございます。

モーツァルトのクラ5はいい曲ですよねぇ。

フルート四重奏はいい曲ですが、音楽の完成度や深さではクラ5には及ばないように思います。悔しいけれど…というか、うらやましい…。

弦楽四重奏、モーツァルトやハイドン、とんでシューベルトやドボルザークなどは聴くのですが、なぜかベートーベンはまったくといっていいほど聞きません。我ながらなぜなんだろう?

投稿: Teddy | 2011.03.01 12:31

narkejpさん、ありがとうございます。
確かに幸松作品は是非山形Qで録音して欲しいですね。しかしメンバー交代時期ですから、難しいかもしれません。
4/23はだちゅ嬢の山形Q最後の姿です。万難を排して観に行って下さいね(私は土曜は酒フィルの練習が、、、)。

投稿: balaine | 2011.03.01 19:48

けんさん、本当に残念でした。ライブの演奏会に「また」の機会はないのです。それが時間の芸術である音楽の良い所でもあり悲しい所でもありますね。
秀美さんのリサイタルも必ず素晴らしい感動を呼ぶと思います。チケット、よろしくお願いします。m(_)m

投稿: balaine | 2011.03.01 19:49

MrBach1954さん、今頃は空の上でしょうか。
いつか是非"Giondano Hall"にお越し下さい。大歓迎です!
サン・アントニオ、懐かしいです。
H11年にヒューストン留学中、車で遊びに行きましたし、H12年には、米国脳外科コングレスが彼の地で開催され、日本のコングレスの会長だった直属のボスと鞄持ちで招待されて行って来ました。
南部はアメリカの中ではまだ食事がおいしい方なので楽しんで来て下さいね。「嚥下リハビリ」ということは、私の専門とも関係がある領域ですね。

投稿: balaine | 2011.03.01 19:53

Teddyさん、フルートにも様々な可能性があると思いますが、管ではクラリネットやオーボエ、弦ではヴィオラやチェロのような、哀愁を帯びた音色、陰鬱な雰囲気を奏でるのは難しい楽器ですね。
そこへいくとバロック・フルートは、やや哀愁を帯び陰を表現出来る楽器なのかも知れません。
ベートーヴェンの弦楽四重奏、まずは有名なラズモフスキーあたりからいかがですか?

投稿: balaine | 2011.03.01 19:58

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