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2011.01.17

「舘野泉ピアノリサイタル」を聴く

舘野泉さんが脳卒中で倒れ、再起不能とまで言われながら「左手のピアニスト」として復活し、現在盛んな演奏活動を行っている事は、テレビなどでも特集され、「奇跡の脳スペシャル」を観てというブログ記事も書きました。

今年度、演奏活動50周年を記念して全国ツアーを行っている、その一つのコンサートが昨日山形テルサで行われたので、雪の月山道を越えるという危険を冒して(冗談ではなく)聴きに行って来ました。

Photo_2開演14時に間に合う様に、昼食の時間も考えて酒田を10:30過ぎに出発。見込み通り2時間以上かかって山形のとある蕎麦屋に付いたのは午後1時少し前でした。(蕎麦の話は後で)
山形テルサとともにこのコンサートを企画実行しているのは「Mプロジェクト」というNPO法人で、山響FCなどの活動で以前から存じ上げている方々です。

今回のプログラムは、左手のためのピアノ曲が中心である事は言うまでもないのですが、舘野泉さんのために書かれた作品(すなわちbalaineにとっては初めて聴く曲が多い)が6曲中4曲もあり、それだけでも大変に興味深いコンサート。

1)バッハ/ブラームス編曲:シャコンヌ ニ短調 BWV1004より
2)スクリャービン:左手のための2つの小品 前奏曲と夜想曲 Op.9
3)吉松隆:タピオラ幻景 Op.92(館野泉に捧ぐ)
 (1)光のヴィネット、(2)森のジーグ、(3)水のパヴァーヌ、(4)鳥たちのコンマ、(5)風のトッカータ

  休憩

4)木島由美子:いのちの詩(Mプロジェクト委嘱作品)
 (1)翠雨、(2)紅蓮の池、(3)月読、(4)樹氷原にて、(5)桃花水
5)パブロ・エスカンデ:「ソナティーナ」より”夜想曲”と”ロンディーノ”
6)coba:記憶樹(「館野泉左手の文庫」助成作品 館野泉に捧ぐ)

 シャコンヌは、ヴァイオリン以外ではピアノの作品として扱われる事が多いけれど、今まで聴いたピアノによるシャコンヌの中で、最上の演奏だったと思います。「左手」しか使わない館野さんでも左の指は全部使えるので、基本的には単音の楽器であるVnと違って最大5つの音が出せる訳です。アルペジオで和音を演奏し、伴奏的部分と旋律的部分を左手一本で弾いていても、「右手を使っていない」という違和感もなく、そういうことを超越して素晴らしい「音楽」がそこにはありました。
 2曲目のスクリャービンは、その特徴的な旋律が美しく、3曲目の吉松隆は館野泉さんの音楽のバックボーンであるフィンランドの神話の森の神(タピオ)が住む神秘的な世界を、表題通りの想像力溢れる音楽で表現していました。

 4曲目はbalaineも交流のある山形市在住の作曲家「うにさん」の曲。一緒に演奏したこともある(彼女はファゴットを吹きます)のですが、今は作曲・編曲で多忙な日を送っておられるようです。Mプロジェクトの委嘱で舘野泉さんに捧げる曲を1年以上前に作られたとのことで、今まで山形以外では何度か演奏されているのだそうです。
「母国凱旋」ではないけれど、山形に暮らし山形の自然から触発されて作曲した「うにさん」の曲がようやく山形で演奏された訳です。描写的な音楽ですが、空間の広がりを感じさせる、素敵な音楽でした。「うにさん」、ありがとう、そしておめでとうございます!
 5曲目のエスカンデは、まだ若い作曲家だそうで、舘野泉さんと息子であるヤンネ舘野さんの依頼で作曲した3曲からなる「ソナティーナ」から2曲を、ピアノとヴァイオリンで演奏。舘野泉さんの温かみあるピアノの音とヤンネさんの繊細で美しいヴァイオリンの響きがとても感動的でした。
 6曲目、著明なアコーディオン奏者にして作曲家、"coba"氏。「記憶樹」というわかるようでわからないようなタイトル。ああ、coba氏らしいな、という旋律や激しさ、懐かしさなどが表現されていた。舘野さんもまだ完全に自分の”もの”にはされていないのか、眼鏡をかけて楽譜を見ながら演奏されていた。

盛んな拍手に応えて、アンコール。
カッチーニのアヴェマリア。
なんと美しい音楽だろう。フルートでも吹いた事はあり、旋律や移調が美しい事は知っているが、舘野泉さんの左手からまさに「紡ぎだされる」音たちが鮮烈に心に迫って来て涙が出そうな程感動的でした。
さらに盛んな拍手に応えて、5曲目に登場したヤンネさんが再登場し、アンコール2曲目はピアソラの「オブリビオン」(忘却)。ゆったりとした、しかし陰のある音楽を、またも父である泉氏の温かい音色と息子であるヤンネ氏の繊細な音により独特の世界が描き出されていた。

アンコール2品も演奏時間が短いだけで、プログラムとして十分に堪能できるものであり、とても豊かな気持ちになりました。

Mプロジェクトの皆さん、お疲れさま。
館野泉さん、ヤンネさん、良いコンサートをありがとうございました。
音楽をする喜び、ピアノを弾く幸せに満ちた笑顔の館野泉さんの表情を見て、こちらも幸せな気持ちになりました。

〜〜〜〜〜
酒田を10:30過ぎに出発し、豪雪とも言える月山道を決死の覚悟で踏破し、13時前に到着したのは、山形市内東原にある「梅蕎麦」へ。
Photo_3酒田市に移住してから、梅蕎麦に行くのはかなり久しぶり。おそらく3年は行っていなかったような気がする。
お店は外観も内装も特に変わりなく、現在の当主で4代目という伝統のお店、そしていつもかかっているバッハの無伴奏チェロ組曲、とまったく以前の通りでなんとなくほっとします。

Photo_4Photo_5ちょっとピンぼけですが、balaineは左の「二色ソバ」。今の季節は「ゆずきり」でした。
細い更級系のお蕎麦、ツルツル、するっするっと喉を通ります。ソバを手繰る、啜るというのがピッタリの食感。
kanonは、右の温かい鶏ソバ。十割の細打ちソバは、ボロボロっと千切れたり伸びたりしやすいのですが、丁寧に仕事されたここのソバは「かけ」にしても伸びたりちぎれたりほとんどしません。

Photo_6〆は「そば湯」。
蕎麦を茹でたお湯を使うのではなく、「蕎麦湯」様に蕎麦粉をお湯で溶いて出していると思います。温まると共に蕎麦が本来持つ栄養素はこれで取れるわけです。
雪のせいか、幸い混んでいなかったので、注文後間もなく食べる事が出来、13:20過ぎには食べ終えて山形テルサに向かったのでした。

=====
テルサでの舘野泉さんのリサイタルの後、七日町にちょっとよってから、今度は文翔館の山形弦楽四重奏団定期演奏会に向かったのです。その話は、明日にでも。

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