基盤一枚、◯十万円、、、
昨日の朝、拙クリニックに緊張が走りました。
という程の事ではないのですが、一昨日の夕方まで正常に稼働していたMRIが急にダウン。
朝一番、9:00に検査予約をしていた患者さんの検査を始めた所、ワークステーションに画像が現れないのです。いわゆるテレビの「砂嵐」状態。
すぐにサービスに連絡を取り、いろいろ対応。3回も再起動をかけたりしてみたのですが、放射線技師がやっても、私がやっても結局同じ結果。
山形市のサービス担当技師さんと連絡を取って、結局すぐに来てもらう事に。
午前中の予約患者さん、新患、午後の脳ドック患者さんのMRIがキャンセルになってしまいました。画像が撮れないのですから、私にはどうしようもありません。
開院して2年9ヶ月で初めての事です。
保守点検の契約をしているので、定期的な点検は受けていますし、特別に室温と磁石の温度と画像の歪みに関するチェックもしてもらっています。
一昨日の夕方まで何も問題なく普通に動いていて、翌日になったら画像が撮れない、全く原因が分かりません。MRI室の中の装置や、それを動かすワークステーションの問題ではなく、写真の様な人の背丈よりも大きなボックスの中のコントロール装置の問題のようです。
サービス技師の方が昼食も摂らずに調べた結果、どうもX、Y、Zの3次元の軸位の中でZ軸方向の傾斜磁場をコントロールする基盤が不調のようだ、ということが突き止められました。
このボックスの中のたった一枚の基盤です。
当然ですが、MRI装置は大きな「電気製品」です。
装置本体は磁石とベッド、それをコントロールするワークステーション、そして全体をコントロールする装置、すべてコンピュータの塊の様な電気製品なわけです。
たとえば、3年前に買ったパソコンが動かなくなったり、掃除機が壊れたりすることは、あり得る事な訳ですが、それはMRIにしても同じだった訳です。
Z軸方向の傾斜磁場をコントロールする基盤の中には、当然非常に多くのICチップが使われている訳ですが、近づいてみて見ると "Made in Vietnam" などと書いてあります。
当院のMRIは、世界的にもよく売れている日本製のMRIなのですが、中身にはいろいろな国の製品が使われているのは、普通のパソコンと同じなのです。
急に呼び出されて、昼食も摂らずに検査をして原因を究明し、夜の羽田から便で庄内空港に届いた新しい基盤を受け取りに行って、夜中の23時過ぎまで交換、調整、起動チェックをしてくださったサービス技師さんには感謝していますが、こういうことが起こった事には残念ながら軽い失望を覚えました。
まあ、大きな事故の代わりに小さなトラブルが起こったと考えるしか無いのでしょう。
実際の病院勤務中にでも、CTが動かなくなったとか、急にMRIが使用出来ないということは、稀ではありますが経験はありました。全世界的にみればどこかで毎日の様に起こっている事なのかもしれません。
しかし、その基盤の価格を教えてもらって、軽い、いや強いメマイを覚えました。
「◯十万円なんです」
「え?!、、、、、、、、、、」
という感じで無言になってしまいました。
はっきりした金額は書きませんが、この基盤を交換するお金があれば、サロン・コンサートは全て無料招待で、演奏して下さる音楽家の方には相応の謝礼をしても、およそ7、8回、つまり2年間は開催出来る程の金額なのです。
幸い今朝は普通に稼働し、今日の新患さんも昨日予約していた脳ドック受診の方も今日普通に撮像出来ました。また頑張って仕事しなくちゃ。。。
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コメント
こんばんは。
昨日の記事で、
「MRIも興奮した……」
というのには大笑いでしたが、笑い事ではありませんね。
修理費用も相当な額のようですが、やはりという感じです。
私の友人がそういう仕事をしているんですが、ビックリする
ほどの給料を貰っていて、飲みながらその話を聞いた時には、
思わず、
「今日はお前のオゴリだっ!」
ということにしてしまいました。(^^;
とにかく、ビックリの世界ですね。お見舞い申し上げます。
ところで、11日のコンサートへ誰か誘って……と思い
ましたが、忘年会シーズンとあって厳しいですね。
投稿: ファーマー佐藤 | 2010.12.08 21:50
◯十万円、あとの文章を拝見すると三桁にちかい二桁ということですね。
でもMRIの部品は結構高価なので、三桁でも驚きません。コイルだと4桁になることもありますしね。大量生産するものではないので仕方ない面もあります。本体の値を押さえている分、部品は下げにくいかも。保有しておくコストもかかりますしね。(別にメーカーの肩をもつわけではありませんが)
MD−CT(マルチスライスCT)のX線管は電球と同じようなものですから、撮像を重ねて行くと必ず切れます。で、価格は1千数百万円。このX線の電球がCTのガントリの中を超高速で回っているわけですから、わたしはいつも、「この中をポルシェかフェラーリが走っていると思うといいんだよ」と言っています。
医療機器はポルシェ本位制にすると、CT用X線管球一つが1ポルシェ。高性能CTは10−15ポルシェ、安くなったCTは3ポルシェくらい、超音波診断装置が1−2ポルシェとか…。
お天気が下り坂のようですね。飛行機が無事に飛ぶとよいですが。
投稿: Teddy | 2010.12.09 12:57
ファーマー佐藤、たとえばデジカメが故障しても保証期間を過ぎていた場合、「修理に出すと2万円」と言われれば、新しいデジカメを買おうと思います。
MRIは、元々定価が1億円を超えている超高額医療機器ですので、年間保守契約ですら100〜200万円というような信じられない額なのです。基盤一枚○十万でも、メーカーにとっては当然の金額なのでしょう。
私は一般サラリーマン家庭で育ちましたので、基盤の材料費だけなら(開発費などを除く)1万円ぐらいのものなんじゃないか、というような目で見てしまいます。
定価はあってないようなもの、なんですね。この世界。
投稿: balaine | 2010.12.09 12:58
Teddy様、MRIは実は後日談(というか翌日談)があるのですが、それは別の機会に。。。
なるほど「一ポルシェ」という単位での発想はおもしろいですね。ただポルシェと一言で言っても、600万円くらいから2000万円超まで幅広いですね。
うちのエコーは、ほとんど頚動脈にしか使っていません(乳房、腹部にも使えますが)が、0.5ポルシェぐらいでした。
うちのMRIは実勢価格(といってもリース品ですが)で7ポルシェしなかったと思います。2ポルシェ以下の中古CT(4列位)があれば買おうかな、、、などとも考えています。
日本海総合病院に入ったのは320列なので20ポルシェくらいするのでしょうね。。。
くだんの基盤は「一ダイハツムーヴ」位でしたが、実は基盤ではなく、、、(苦笑)>
投稿: balaine | 2010.12.09 14:50
精密機器のメンテナンスは本当にお金がかかりますね。
研究所時代の私の相棒であった初代の元素分析装置は、保守点検、修理が出来る技術者が国内に一人しか居ないという装置でした。
故障することはほとんどない、好い子なのですが、わたし以外の人が扱うとご機嫌が悪くなり、まさしく相棒的な存在でした。そして、消耗する品々も高純度(高価)なものしか受け付けないという正直者?な装置でした。(^^;)ゞ
投稿: ふなゆすり | 2010.12.11 09:57