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2010.06.20

日本脳ドック学会終わりました!

日本脳ドック学会総会が無事終わりました。
会長の嘉山先生、主催の山形大学医学部脳外科の各先生方、関係者の皆様、お疲れさまでした。
身内びいきと思われるかもしれませんが、本当にいい学会でした。2日間、スケジュール通りびっしり学会場で勉強しました。演題数の関係で2会場に分かれていたため、B会場の演題でも聴きたいものがたくさんありましたが、全部を聞けなかったのが残念です。

何がいいかというと「脳ドックの質の保証」という主題のもと、プログラムの構成が素晴らしく、シンポジウム毎に配置された「基調講演」や特別講演、教育講演などの招待演者も適切で非常に勉強になりました。

Photo_2「質の保証」という意味から創設された施設認定制度。
第1回目の認定施設が今回の学会でも報告され、会場に張り出されました。学会HPにも公開されています。
こちら→「日本脳ドック学会認定施設一覧」です。当院も認定されました。山形県内では今回は拙クリニックだけでした。
(写真はスライドを撮ったものですが、このような認定証が贈られるとのこと、楽しみです)。

Photo本学会初代理事長で第1回施設認定委員会委員長の端先生から報告がありました。
申請条件が整っていないため門前払いされた施設を除いた204施設に対し、施設認定委員会の先生方が5ヶ月ほどかけて念入りに審査をされたとのこと。

Photo_3認定応募にあたり3万円の申請料を払っていますから、認定しなかった理由を公開します。
多くは「脳ドックのガイドライン2008」の条件を満たしておらず、「日本脳ドック学会施設認定における主な条件」に従っていないということです。

拙クリニックの脳ドックではMRIの撮像条件として、T2,T1,FLAIR,T2*,DWI、海馬条件の6つ(プリント時はT2 reverseを加えて7種類)に、さらに1mmスライス厚120枚のMRAで2dと3dの再構成画像作成をやっています。施設認定基準としてはT2,T1,FLAIRの3つを最低条件とし、T2*撮像を推奨しています。その中で、T1をやっていない施設があるとか、FLAIRをやっていない施設があるとか、信じられない話です。

おそらくたくさんの検査数をこなす目的で、一人あたりの検査時間を少しでも短縮するために可能な限り撮像条件を削っているのでしょう。某市の健診センターなどでは3年間で8000を超える脳ドックを報告していましたが、1年間の休日などを考えると毎日10件は脳ドックをやっている計算になります。そんな大量の検査、そして診察と説明や検査報告のための労力は想像を絶します。

私の場合、脳ドックの検査結果をプリントして報告書を書きファイルを作るだけで相当の労力なので、週に(1日ではありません)4件以上の脳ドックがあるとかなりの負担に感じます。それを日に10件こなすとなると、専属スタッフとして医師3名、ナース3名、事務員3名はいないときついのではないかと思います。
労力を減らすためには、検査数を減らすのが一番。ということで検査を割愛しているのでしょうか。それでは何のための脳ドックなのかと思います。

Photo_43d_vr_imageme左は端先生の報告の中で、認定されなかった理由の一つとして脳血管像MRAがクリアではないと判定されたある施設のもの。
右は拙クリニックの脳MRAの一例です。この違いは素人の方でもわかると思います。

なぜ私が脳ドックの施設認定に拘るか、理由は2つあります。

1)庄内地方の他の医療機関の脳ドック(私が知る限り他に4施設あります)は、脳ドック学会の認定条件を満たしていないだけではなく、自分でMRIの所見を読影もできない医師がやっていたりします。「MRI読影アルバイト医師」に依頼して所見を送ってもらい、その結果を文書で受診者に通知するので、たとえば「わずかな異常を認めますが日常生活に支障はありません」というような「結果通知」がされています。
自分にもしかして何か脳の病気があるんじゃないだろうか、いやでもまさか大丈夫だろう、、、と不安を持って受診した方にこんな結果が届いたらますます不安が増幅するのではないでしょうか。
「異常があるけど大丈夫」ってなんなんだ、、、本当に大丈夫なのか、、、 
結果、その「結果報告書」を持って拙クリニックを受診される事になります。そして当院のMRIでは何の異常も指摘出来ず、「大丈夫ですよ!」と安心して帰って頂いた事があります。
こういう事例は、私がH20年3月に開業してから、記憶しているだけで4件ありました。そのうち3つは庄内地区の脳ドック施設、残り1つは山形市内の脳ドック施設を受けた結果、「大した事ないけど異常がある」「心配はないが所見がある」「心配する程ではないが所見があるのでどこか医療機関を受診しなさい」というような、私から言わせれば「無責任」な結果報告なのです。

脳ドックは、異常の有無を診断することが目的ではなく、画像上異常がなくても血液検査などから生活習慣病があったり、もしくは予備軍であるので将来的に動脈硬化が進行し脳梗塞や認知症を招く心配があるかもしれないから真面目に健診を受けましょうとか、真面目に治療をしましょうというような指導、アドヴァイスをすることが真の目的だと思います。
ですから、何か異常を疑ったら自分の施設で再検査やより高度な検査を行うとか、必要に応じて信頼出来る施設(大学病院や総合病院)に紹介相談すると言うことが大切だと思います。そういう意味で、大学病院や地元の大きな総合病院に同僚後輩がいて電話一本で話が通じる「連携」を持っているということは拙クリニックの強みだと思っています。

ただ「異常なし」「異常あり」を診断するだけのためにMRIをやっている訳ではないということを、そういう脳ドック施設の担当者にも知らしめたいし、まともな脳ドックとそうではない脳ドックの違いを知らずに利用している一般の受診者の方にも知って頂きたいのです。

2)もう一つ。
このブログでも何度か書きましたが、横浜に住む私の母のこと。84才になり、無病とはいかず、三病息災でおかげさまで元気にしています。この母が平成12年にクモ膜下出血に倒れた時、最初にかかった横浜市内の総合病院の脳外科でクモ膜下出血、脳動脈瘤破裂の診断が付かずに、入院までしたのですが結局「頚椎から来る頭痛」ということになりました。
頭痛があまり強くなかったのです。意識障害もありませんでした。いわゆる「歩いて外来に来たクモ膜下出血」というタイプだったのです。1ヶ月くらいの間に徐々に精神症状が出ておかしくなったので近くの精神科にまで紹介されました。結局、自宅から車で30分程離れた港北区にある、私と同じ山形大学で仕事をしたことのある脳外科の先輩医師にお願いして入院検査をしたら「脳動脈瘤」と「水頭症」が見つかりました。
手術が決まって、最初にかかった戸塚区にあるH病院からその時のCT, MRIなどを取り寄せて見て私は愕然としたのです。いまからたった10年前のことですが、その画質があまりにも酷い。頭痛と吐き気のため患者である母親が撮影時に動いたことは少し影響したでしょうが、CTもMRIも今の器械から見て比べ物にならない程画質が酷かったのです。軽症のクモ膜下出血ではCTでも出血がわかりにくいことはあります。それでも「突然発症の頭痛、嘔吐、70才代で高血圧のある女性」とくればクモ膜下出血を疑うでしょう。実際、H病院の当時の脳外科医(3名もいました)もクモ膜下出血を疑い、腰椎穿刺をするか迷い、まずはMRI,MRAを施行してくれたのです。その結果「脳動脈瘤はなさそうです」という電話報告を聞いて、当時1ヶ月後に控えた山形市内での脳外科コングレスを主催する事務局を担当して超多忙だった私は安心して、母を見舞いにも行かなかったのです。自分の目で確かめれば良かった、と後から後悔しましたが。

その時に見たMRAは、上の左側の写真の様な、画質がクリアでないために認定されなかったMRAよりも更に不鮮明だったのです。10年前にそのさらに10年前の器械を使っていたとしたら、今からみると20年前の器械です。20年前にはデジカメというものが世に出始めたかどうか、携帯電話にカメラが付いている物はなかったと思います。あっても非常に画質が悪く不鮮明でしかも今のように枚数が取れませんでした。デジタル画像の技術というのはこの20年の間に驚異的に進歩しています。今や携帯電話のカメラでも性能の良いものはプリントして楽しめる様な綺麗な写真が撮れます。

今から20〜15年前位の1.5T(テスラ)のMRIとその画像用ワークステーションでは、出始めの頃のデジカメか携帯電話のカメラぐらいに例える様な画質の程度で、現在のMRIの画質とは比べ物になりません。2007年の製品である拙クリニックの0.4TのMRIは、最新型のコンパクトデジカメ程度の良好な画質です。最新型の1.5Tや3.0Tの超伝導MRIになると、新型のデジタル一眼レフカメラや、プロ使用のデジイチに例える事ができると思います。超伝導MRIは、脳機能画像検査などのより高度な仕事には必要ですが、脳ドックの検査には新型コンデジ程度で十分だと思います。

(拙クリニックの脳MRA画像を試しにQuickTimeビデオクリップでご確認ください)

一口にMRIと言っても何社の何年製の何テスラのMRIなのかによって全然違うのです。結果、一口に「脳ドック」と言ってもどんなMRI装置を使っているのか、画像はMRI付属のコンピュータで作るだけなのか(多くの施設がこれです)、画像専用のワークステーションや画像解析装置を使って更にきれいな画像を作ろうと努力しているのか(拙クリニックがこれです)、こういったことで全く違ってくるのです。

しかし、世間一般には「脳ドック」という言葉だけで中身はよくわかりませんから、3万円とか4万円という高い金を払って、古いMRIで専用画像解析装置もないところで受けている方も居るでしょうし、拙クリニックのように静磁場強度は0.4Tと高くないけれど最新型のMRI装置にプラスして画像解析装置を使っているところで受けている方も居て、その差は素人には理解出来ないものだと思います。

世の中から「ダメ脳ドック」を駆逐したい。いい加減な検査、いい加減な診断、いい加減な結果報告をするような施設は駆逐したい。そう思ってはいても私ごときの力では何も出来ません。
そこへ、「日本脳ドック学会施設認定制度」が出現したのですから、いち早く施設認定をして頂き、他者との差別化を図りたいと考えた訳です。

実は、診療による収入とそれにかける労力という面からみれば、脳ドックは儲かる話ではないのです。万が一誤診をして受診者に迷惑をかけたり、不幸にも訴訟になることだってあり得ないことではありません。そういったリスクは計算に入れておく必要があります。
そして上に書いたように、真剣に診断し当日受診者に詳細に説明をした上であらためて結果報告をするためにファイルを作成する労力というのは、普通の頭痛やめまいの患者さんを診て診断し治療を行うことから考えると、2、3倍の労力をかけていると感じます。しかしそれから得る収入(お金)はというと、脳ドックは全額個人負担ですから高いように思うでしょうが、頭痛などで受診し脳卒中などを疑ってMRIを施行した保険診療の患者さんから得る収入(金額)とほぼ同じか少し高い程度なのです。窓口で3割負担または1割負担でそういう患者さんが支払う金額は、検査項目にもよりますが拙クリニックの場合は、3割負担の人で7000~9000円、1割負担の人で2500~3000円程度です。診療にかかる時間、MRIの検査件数(項目は普通T1,T2,FLAIRの3種類)などから考えると、保険診療の患者さんをたくさん診た方が医院経営の面から言えば効率が良いのです。
脳ドックの受診者を診察検査説明結果報告する間に3名の新患をみることが十分可能です。労力対収益比から考えたら、脳ドック一人で7〜9万円徴収しないと見合わない事になってしまいます。

ですから決して儲けるため、稼ぐために脳ドックをやっている訳ではなく、自分なりの使命感というか、庄内地方、山形県にまともな脳ドックを普及させたい、ちゃんとした脳ドックを世間一般に理解してもらいたい、一言で「脳ドック」と言っても実は中身はいろいろなので受診する人も注意して!と言いたいのが本音です。

学会報告のつもりが、また持論を熱く語ることになってしまいましたが、最後に一つ付け加えておきます。
今回の認定では、たまたま山形県内では拙クリニックだけが脳ドック施設に認定されましたが、今回認定されなかった施設でもきちんとした脳ドックをやっておられるところはちゃんとあります。庄内地方の他の脳ドックが全て「ダメ」なわけではありませんので、悪しからず。

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コメント

脳ドッグ学会認定施設として認められたこと、おめでとうございます。(おめでとうというのも変だと思うのですが)
当然のことでありますよね。
そして全ての施設がこうあって欲しいものです。素人の私達はお医者様、病院を信頼して、お願いするのですから。
私も脳ドッグを受けたお友達に、病院をよく選ぶように伝えました。
地域の皆さまのお役に立ちたいという初志貫徹で、(お金儲けの病院だってあるでしょうから)これからも頑張ってください。
ご自身の健康にもきをつけて

投稿: yonemama | 2010.06.20 20:08

yonemamaさん、ありがとうございます。
当たり前のことを当たり前にやっていない医療機関って、むしろ都会に多いのですよ。地方では当たり前のことやっていないと目立ちますからね。
これからも当たり前のことを当たり前にやって行きます。

投稿: balaine | 2010.06.23 01:28

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