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2010.04.12

鈴木秀美氏、山響を振る

いろいろ忙しくブログ記事が2日空いてしまいました。この土日も充実した週末でした。

まずは4/11(日)。
204cd山形テルサで山響第204回定期「シンフォニストの誕生」を聴いてきました。
今回の演奏会に関しては、バロック音楽をメインとしている家内の方が「燃えて」いるようです。(笑)
私の記事より、「こちら」の方が面白いですよ。

さて、今回のコンサートの目玉はとにかく鈴木秀美さんです。
プログラムは、
C.Ph.E.バッハ:チェロ協奏曲 イ短調 Wq.170
ハイドン:交響曲 第60番 ハ長調 Hob.Ⅰ:60 「うかつ者」
ハイドン:交響曲 第92番 ト長調 Hob.Ⅰ:92 「オックスフォード」

実兄の鈴木雅明氏が主宰するバッハ・コレギウム・ジャパン、秀美氏が主宰するオーケストラ・リベラ・クラシカをはじめとする古楽器を使ったオリジナルを追求した演奏で日本をリードする存在。

Photo_2それらのオケでコンマスをつとめるバロック・ヴァイオリンの第一人者と言われる若松夏美氏と中学校の同級生(といっても、私の世代の中学生で、別のクラスの女子生徒と口をきく事などまずなかった)であったということで、前日から山響FCの有志と共に食事やお酒をご一緒するという栄誉に浴しました。

チェンバロ弾きでバロック音楽「ラブ」の家内にとっては憧れの存在とすら言えます。私自身も、バロック音楽に造詣が深い訳ではないものの、ヴィヴァルディ、テレマン、バッハ、ヘンデルといった作曲家はフルート(当時はフラウト・トラベルソ)の音楽史上に重要な素晴らしい音楽をたくさん残している関係上、演奏レパートリーとして勉強しなければならない神聖な領域。

モーツァルトも依頼作品としてたくさんのフルート曲を残していますが、ベートーヴェン以降は「最初からフルートのために書いた」作品は激減します。ベーム式のキーがたくさんついたフルートが世の中に認知され、機動性の高い音程の安定した楽器として作曲家に愛されるようになるまではすこし時間が必要でした。「フランス6人組」とかプロコフィエフの出て来る、19世紀後半から20世紀になってまたどんどんフルートのために書いた曲が出て来ますが、それまでは少し「沈滞」という感じです。

ベーム式以前のトラベルソは、いわゆる筒に穴のあいた横笛で、音程も指使いも今の楽器とはかなり違います。私はちゃんとは吹けません。
そのトラベルソを操る日本人の第一人者はやはり有田正広氏でしょう。氏のバッハ・フルートソナタ集などは初めて聴いた時にノックアウトされ、氏がトラベルソではなく敢えて現代フルート(ヘルムート・ハンミッヒ)で宮城県北部にある「中新田バッハホール」で奥さんのチェンバロと録音した最近のバッハ・フルートソナタ集には鼻血が出そうになるほど興奮しました。(^^;;;

その有田正広氏と一緒に演奏している人たちというのが、オーケストラ・リベラ・クラシカや鈴木秀美氏や若松直美氏に対する私の最初の認識でした。ですから、正直言って鈴木秀美氏がどのくらいスゴいのかはよくわかっていなかったと言えます。

Photo_3そして、今回の山響第204回定期では、期待していたとは言え、その期待を4、5倍上回る様な大きな感激と興奮と喜びを頂きました。俄然、OLC (Orchestra Libera Classica) を庄内に呼びたくなりました。
「お座敷がかかればどこでも喜んで行きますよ!」
と言って頂きましたし。
(写真は、タメなのに全然貫禄の違う鈴木秀美氏と終演後の交流会にて)


さてさて、肝心のコンサートの内容ですが、はっきり言って「言葉」にすると浅はかな感じがしてしまうのです(でも書きますけど、、、)。

C.Ph.E.バッハ:チェロ協奏曲 イ短調 Wq.170
鈴木秀美氏のチェロ。現代楽器(ガット弦)ですが、エンドピンを出さずに、いわゆるヴィオラ・ダ・ガンバと同じように足(ガンバ)、特に脛の部分で楽器を支え押さえて演奏されていました。
「足、痛くないのかな?」とバカなことを考えながら聴いていました。そういえば、前日一緒に飲んだ時にちらっと見た秀美氏の左手指(弦を押さえる方)は指先の半分が肉で爪は普通の人の半分ぐらいになっていました。指先がチェロを弾くために専用の指に変わっているのです。ですからきっと脛にも固いタコができているかもしれません。

「エンドピンを付けてもいいのですが、エンドピンをつけて上手に弾けたことがないのでずっとこれでやっています」とは、終演後の交流会での弁。

その音楽は、もう至福の時、でした。
なんというのでしょう。譜面にある音符をサラって弾いているのではなく、今そこで音楽が生み出されている感じ。秀美氏が作曲し、ジャズで言うところインプロヴィゼ−ションで音楽が新しく創られていくような感じでした。
CPEバッハは、フルートにも数々の名曲を残していますが、パパ・バッハのような宗教臭さ(失礼!)がなく、ちょっと感覚的、感情的すぎる感じすらありますが、それを理性のうちに納めながらも溢れ出す感性がそのままチェロの音になってホールに香りました。
素晴らしかった!

弾き振りなので、通常の指揮者の位置にチェロ独奏者がよく使う低めの山台を一枚置いて、そこで観客の正面を向いて演奏します。山響は対向配置(下手から第1ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、第2ヴァイオリン)で、そのまま下手から6−4−2−6、そしてコントラバスは柳澤さんだけの1でした。
秀美さんの真後ろに上尾さんのチェンバロが上蓋を外した状態で陣取り、チェンバロのすぐ上手側に秀美さんが連れて来られた客演チェロの山本さん。
秀美さん、上尾さん、山本さんのトライアングルが演奏の「核」になっています。そこに犬伏さん率いる山響の精鋭弦楽器部隊合計19名が、(木曜から開始した)通算4日間のリハの成果を見事に出していました。

山響の弦楽器のノン・ヴィブラートの澄んだ美しい音。
弾き振りしながら絶妙の間と休符を奏でる秀美さんのタクト。思わず息をのみ、次の瞬間溜め息が出そうになります。
カデンツァはもちろん素晴らしい。何であんなに速くしかも正確な音程でそして美しく弾けるんだろう。。。

演奏が終わって、一瞬の間があって拍手。
日曜の夕方、鈴木秀美氏の登場と言っても、あまり古楽、バロックに興味のない人には足が向かなかったのか、850の山形テルサでも100席以上は空いていたと思います。酒田の「希望ホール」のキャパだと「半分入ったか?!」という感じ。
でもいいんです。我々夫婦の周りに居る観客も、結構秀美ファン、OLCファンなのかすごく熱い拍手を送っていました。何度も何度もカーテンコール。まるでこの曲で最後のようです。
チェンバロの上尾さん、チェロ客演トップの山本さん始め、団員も指定されて拍手を受けます。

さて、前半はこれで終わりではないのです。
実はプログラムでは、ここで15分の休憩と印刷されていますが、これがとんだ間違いとのこと!
2曲目の60番が「うかつ者」ということで、やらせではないかと思う位。
そういえばプレトークで秀美さんが解説していましたが(大体の内容はプログラムの4ページに書かれているようにCPEバッハとハイドンの関係やハイドンの音楽のこと)、「うかつ者」は元来は舞台音楽として作曲された「6楽章」からなるものなのですが、プログラムには第1〜第5楽章と表記されていて、ここでも「うかつ」な印刷でした。

ハイドン:交響曲 第60番 ハ長調 Hob.Ⅰ:60 「うかつ者」
第1楽章 アダージョ ー アレグロ ディ モルト
第2楽章 アンダンテ
第3楽章 メヌエット/トリオ
第4楽章 プレスト
第5楽章 アダージョ(ディ ラメンタツィオーネ)ーアレグロ
第6楽章 フィナーレ プレスティシモ

さて、何故この曲が「うかつ者」という名称がついているか。それは原作のドタバタ劇の主人公の性格を表しているのだそうです。そして演奏中にも趣向を凝らして観客を楽しませてくれました。
Photo_4写真は終演後の交流会の様子ですが、写真を撮りながら大笑いしてしまったのでぶれています。
兵隊さんの様な格好をしているのは、秀美さんと桐朋音大で同級生だった山響パーカッションの南さん。第3楽章で民族音楽的な、ハイドンらしくない音楽が挿入されるのですが、その時に軍楽隊の太鼓たたきが酔っぱらった赤い顔をして太鼓を叩きながら乱入してきました。
演奏中に急に下手ドアが勢い良く開いたので「なにごと?!」と思いましたが、写真の格好をした南さんが太鼓を叩きながら走り込んで来て、最後列に3人並んだコントラバス奏者の後ろを通って、上手奥に陣取るティンパニの平下さんの横で演技をしながら上手のドアから引っ張られるように(つまみ出されるように?)下がって行かれました。
酔っぱらいの演技のためわざわさホッペタを赤く染めていたようです。交流会では南さんは「全然自分のキャラじゃないんですが、、、」と仰っていましたが後方で聞いていた山響団員は(そんなことない、キャラにピッタリ!)と言いたげな表情をされていました。

さらに第6楽章では、ヴァイオリンのG線の調弦が最初から一音低いFに調律されていて、それを指揮者に指摘されて演奏の最中に皆がガチャガチャとGに調律をし直して演奏が再開されると言う演出もありました。これはスコアにそのように指示されているそうです。
ただ、練習の成果でしょうか、あまりに統率の取れたガチャガチャで、あっという間に全員が調弦を終えて曲を再開してしまうところが、プロの演奏家の悲しい性でしょうか(笑)。
もうちょっとモタモタした方が面白かったかも。知らない人は、一瞬変な音がたくさん出てすぐに治ってしまうので何が起きたか理解出来ないうちに、曲が進んでしまっていたように思いました。(^^)

ここまで来て、もう1時間。ようやく休憩です。

そして後半、と言っても25分程度の一曲だけ。これはアンコールの期待が高まりますね。
ハイドン:交響曲 第92番 ト長調 Hob.Ⅰ:92 「オックスフォード」
今回のプログラムで、唯一飯森音楽監督が秀美さんに「これをお願いします」と指定した曲。
さすが、「モーツァルトの最後の4つの交響曲に肩を並べる」とか「ハイドンの『エロイカ』」と賞賛される素晴らしい音楽。そして秀美さんの両手の指先から出て来る魔法の糸に操られた山響の素晴らしい演奏。
92番は、弦は下手から第1ヴァイオリン8人ーヴィオラ6人ーチェロ5人ー第2ヴァイオリン8人の対向配置。そして最後列にコントラバス3人。
その一列前に、下手からナチュラルホルン2、フルート1、オーボエ2、ファゴット2ートランペット2と管楽器群が並び、ティンパニが上手奥に位置します。ちなみに60番では弦は同じ配置ですが、管は下手からナチュラルホルン2、オーボエ2、ファゴット1だったと思います。

ト長調の音楽はどこまで明るく楽しいのですが、CPEバッハの影響を強く受けたとされる強弱の大きな差、その明確な対比によって音楽がより生き生きとして溢れます。まだ第2楽章には、管楽器が一つ一つソロを取りながらゆったりとした歌を歌うと思えば、急転短調も顔を出すというハイドンらしさが出て来ます。


この4日間の間に、秀美さんと山響の間に築かれた信頼関係、30数年前に「ガタ響」と揶揄された時代にトラで参加し、10年前位にも何かの演奏会で一緒になった、当時の山響からは想像もつかない今の山響の進歩と質の高さにある意味驚愕しそして喜びを感じた秀美さんの、笑顔に溢れた表情の指揮。
演奏を終えた山響団員も嬉しそう。
特にトランペットの井上さんがニコニコ顔。交流会でお聞きしたら「本当に楽しかった!」とのこと。演奏する側が純粋に心から楽しいと思える様なコンサートが年間いくつあるでしょう。それを導き出した鈴木秀美氏はやはり凄い人なのだと思います。

ブラボーの掛け声に熱烈な拍手。鳴り止みません。
3回目か4回目の登場にはチェロを持って出て来られました。やった!という感じです。
指揮台の後方(客席側)の転落防止の棒が外されその上で演奏。曲名は忘れたのですが、ハイドンの交響曲の第何番かの2楽章でほとんどチェロのソロ。エステルハージ家のお抱え音楽家は第1、第2Vnが3名ずつにヴィオラ、チェロ、コントラバスが1名ずつだったそうで、チェロ奏者が素晴らしいヴィルトゥオーソだったらしく彼のためにハイドンが書いたのだそうです。
美しいチェロを堪能しました。

そしてまた万来の拍手。なかなかオケも秀美さんも下がれません。プログラムの3つの曲目の演奏時間を足し算すると、休憩を入れても1時間半以内なのですが、終演時は午後6時を回っており丸々2時間になっていました。

進化し続ける山響の更に違う引き出しを開けて我々に示してくれた秀美氏の音楽性と力量には感嘆するしかありません。桐朋で同級生の鈴木秀美氏、前述の南氏、フルートの足達さん、そしてバロック・ヴァイオリンの若松夏美さん。畏れ多くもこれらの素晴らしい音楽家と「タメ」な私。
今回のコンサートで、ちょっと触発される部分がありました。

まずはハイドンを見直したこと。
CPEバッハの演奏における表現手法。フルートの演奏にも活かせそうです。
そして音楽をする際の喜び。それを如何に表現するか。
何が正しい、何が間違いなどということではない。また、「古楽奏法」などというものはないという秀美氏の考え方(対極にあるのは「現代奏法というのですか?」と)。その音楽をするのにもっとも相応しい演奏法、もっとも美しい表現は何かというのを追求するだけ(もちろん感覚的なものも大切だが裏付けになる学問、勉強が必要)というスタンス。
そしてそれを実践し、聴く者を納得させ感心させ心酔させてしまう音楽家としての実力。

ただ一緒に酒を飲んだだけではなくたくさんのことを学ばせて頂いた様な気がします。
もちろんお酒大好きの秀美氏には、酒田から楯野川の大吟醸と初孫の大吟醸を持参し、1軒目の食事の際に、店に置いてあった上喜元の「攻め」も楽しんでもらい、将来的に酒田に来て下さる下地を付けさせて頂きました。さらに折角山形市での会食なので、天童縁の仲間の勧めで出羽桜の「春雷」や「雪漫々」も楽しんで頂きました。

「食と温泉の国のオーケストラ」の「温泉」以外の部分は今回ある程度堪能されたという酒と蕎麦のお好きな鈴木秀美氏。次回は是非「温泉」も楽しむ時間があればいいですね。
そして近いうちに、是非是非庄内に来て頂きたいと思います。

庄内町の響ホールでのOLCのコンサートなど夢想しています。。。(苦笑)

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コメント

balaineさん、本当に楽しい・・・夢のような二日間でしたね~ヽ(´▽`)/
秀美様と酒を酌み交わして二次会までいられて談義できたなんて(私の低れべるにも合わせてくださり・・・)今思っても夢のようです。
そしてテルサでの演奏会は新年度一発目から最高の演奏でしたね!
バッハのチェロコン、あんな激しいバッハも・・・素敵すぎました。

秀美さま、牛は牽いてお帰りになれませんでしたが、某先生が東京まで牛引っ張って行くと思います♪


OLC、是非是非呼びましょう!黒木財閥で・・・

投稿: まーちゃん♪ | 2010.04.13 21:16

まーちゃん♪さん、
秀美さんと一緒に美味しいお酒が呑めたのも、まーちゃんさん始め山響FC山形スタッフのお陰です。
この記事を読んで「いいなぁ〜」と思われた鈴木秀美ファンもいらっしゃるでしょう。
でも山形の酒、まだまだあんなもんじゃありませんから、もっともっと味わって頂かなくては、ね!

OLC招聘の話、本日、すでに元会長K氏と立ち話しました。希望ホールも響ホールも自治体のものなので、予算組から考えるとどんなに早くても再来年のことになるかもしれませんが、是非積極的に動きたいと考えています。
うちの財閥は、貯金がないので駄目ですよ、、、(苦笑)

投稿: balaine | 2010.04.14 03:00

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