裏日本という言葉
差別用語として、表日本、裏日本という呼称がなくなって久しいと思います。今は、日本の「太平洋側」「日本海側」と呼ばれています。
本日のお向かいさんです。タンクローリー車が入ってコンクリートが打たれているのでしょう。夜には内部に電気が点いていて内装の建築が急ピッチになって来たようです。
この写真でも見られるように、今日も天気は悪いです。鳥海山は見えません。
先週の荒れ模様から、ちょっとだけ緩んだ天候ですが、今朝からまた曇り、雪まじりの雨、明日はもっと崩れると言う予報です。
朝の全国放送のテレビ番組で天気予報をやっている時に、日本の「表」と「裏」を感じますね。テレビ局は東京に集中しているので、「今朝はいい天気です。晴れています!」なんて明るい声で喋っている頃、こちらはどんより曇っていたり、びゅうびゅう地吹雪だったりします。
山形に住んでいた頃は、笹谷トンネルを抜けて仙台側に出た瞬間に、山形側のどんより曇ったグレーの空が、パッと明るい青空に変わるのを見て「何なんだ!この差は!」と思ったことも何度かあります。
日本の人口の70%は、「太平洋ベルト地帯」と呼ばれた関東から北九州にかけてに集まっており、北日本、そして「裏」日本は国の中ではどうしてもマイノリティなのです。
何故このようなことを書き始めたかというと、先日のブログ記事「日本人の死亡原因、その他」のところで少し触れた「自殺」の事に言及するためです。
このグラフのピンクの帯は、年齢階級別に見た主要死因に占める「自殺」を表しています。圧倒的に20代、30代に多いですね。
そして、日本人の自殺統計を見ると「都道府県別にみた自殺」(これは少し古いH15年のまとめ)や「都道府県別に見た死亡の状況(年齢調整死亡率)の自殺の項」(こちらH17年のデータ)、目立つのは秋田、青森の自殺率の高さです。
ついで多いのは山形、岩手など同じ東北で、全国に目を向けると、島根、鳥取、富山、新潟といった日本海側の県の自殺率の高さが目立ちます(もちろん、宮崎、長崎、沖縄といった南の県が高い場合もありますが)。
そして、圧倒されるのは女性に比べた男性の自殺率の高さです。全国平均で男性は女性の2〜3倍ですが、中には女性の4倍近い自殺率の県もあります。こうして見ると、北日本、日本海側の男性に自殺率が高い傾向が伺われます。
どうしてなのでしょうか。
一説には日照時間、特に晴れている日の少なさが影響していると言われています。秋田県は北海道などよりも年間日照時間が少なく、日本一薄暗い県のようです。太陽の光を浴びるということはとても大切なことで、それ以外の要因はもちろんあるのですが、曇りの日の多さ、雪の日の多さ、晴れた日の少なさは自殺に大きく関与しているように思います。
ちょっと調べてみたらこんなサイトを見つけました。
「日照時間と自殺率の関係 ーお日様は生きる希望を与えてくれるー」のグラフをご覧下さい。
もちろんいつの場合にも例外はあるのですが、おおよそ日照時間が少ない県では自殺率が高いという傾向が見て取れます。
まあ(2005年の)年間日照時間が1位の高知が自殺率では悪い方から7番目だったり、2位の宮崎が同じく悪い方から6番目、3位の山梨が同14位と言うように、日照時間が長いのに自殺率の高い県もありますから、一概には言えないようです。でも全体的には、「一部例外を除き」日照時間の少ない旧名称「裏」日本では自殺率が高い傾向にあるようです。
うつや自殺企図患者に対して高照度光照射療法というものまで行われていると聞きます。
拙クリニックにもうつ状態の方が来られます。薬物療法やカウンセリングも行っていますが、太陽光を浴びたり自然に触れる機会を増やすようにアドバイスしています。朝起きて、もし日の光が見えるようだったらカーテンを開け放ち太陽を拝む時間を作る方が良いと思うのです。眩しい太陽の光を(直接目で見ないようにして下さいね)全身に浴びるようにすれば、清々しい気分になれるのではないでしょうか。明るい陽射しは目から入って脳を刺激し、大脳辺縁系や視床下部近傍も活性化されると思います。そうすると動物として大切な「欲」も賦活され生き生きとして来るのではないかと想像されます。
年間の交通事故死が1万人を切って減少を続け、昨年は5,000人を下回ったということ。これは57年振り、昭和27年以来ということになります。まだまだ悲しい事故死はなくなりませんが、それでも世の中に「自家用車」なんてほとんどなかった時代と同じくらいに減ったということは喜ばしいことです。
それに比べてここ10年以上に渡って年間自殺者は全国で3万人を超えています。急激に増えて来た高齢者の自殺は、不況、健康保険&医療費問題と無関係ではないでしょう。若者の自殺は勿論、中高年者の自殺についてもなんとかしなくてはなりません。失業、健康問題、うつとの関係も高いようです。
陽の光を浴びるだけでは解決しない複雑な問題だとはわかっていますが、それでも一人でも自殺者が減るように医療者の立場から、心の問題、精神に関わる自然現象のことを考えてしまいます。
春まだ遠い北国酒田で、朝のテレビ番組で見えた太平洋側(東京)の明るい空と、こちらのどんよりした曇り空&雪の天気に、つい自殺のことまで思いを馳せてしまいました。
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