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2010.01.28

日本人の死亡原因、その他

自己満足の拙ブログに50万を超えるアクセスを頂き、恐縮至極です。
ということで、たまには医学に関連する話題も。

2080よく見かける「主要死因別の死亡率(およそ=死亡総数)」のグラフです。
ご存知のように、日本人の死因第1位は「悪性新生物(癌)」です。
医学的には悪性新生物とは、体のあらゆる場所に出来る悪性の腫瘍、肉腫、血液の癌などを合わせたもので脳腫瘍も含まれます。厳密には「=癌」ではないのですが、ここでは「癌」とします。

第2位は「心疾患」です。
心臓そのもの、または心臓の血管の病気である心筋症や心筋梗塞も多いですが、心不全も結構含まれます。寝たきりや全身合併症などで「これ」という死因を決めかねた場合、「心不全」を主たる死因とする事はあります。
新聞記事で著名人の訃報の欄を見ると、「死因は心不全」と書かれてあるのをよく見かけます。それで年齢が40代や50代ならば、「癌なんだろうな〜」と私は思います。
「死因は肺がん」とか「肝臓がん」とか、世間に公表したくないと言うご家族の心理が働いている可能性は否定出来ません。ですから、日本人の死因第2位の「心疾患」のうち、他に主たる死因、または心不全に至る原因となった重大な疾患が含まれている可能性はあり、本当に本当の心臓の病気での死因はもっと少ないと思います。

第3位は「脳血管疾患」、つまり脳卒中です。
公衆衛生活動、健康に関する啓蒙活動、医師の活動などで高血圧患者、特に未治療の高血圧症の人は減りました。血圧220/140なんて人はあまり見かけなくなりました。その結果、脳出血が激減しました。
クモ膜下出血は微増で、脳梗塞がどんどん増えています。
どんどん増えているのに、死因が第3位なのは、手前味噌ですが全国の脳外科医と脳卒中を診る神経内科医が頑張っているお陰や、津々浦々の救急隊と救急を扱う病院、それに脳梗塞の危険因子である高血圧、糖尿病、脂質異常症の治療にあたる開業医や市中病院医師、そして患者の意識によって、重症の脳梗塞の割合がそれほど増えていないか、重症脳梗塞になっても適切な緊急の治療によって死ぬ人が増えていない、ということが言えるでしょう。


Zu07このグラフは、「年齢階級別の主要死因の割合」を表しています。
10才ごとの(0才〜19才は20才分)各年代において、死因の違いがわかります。

目立つのは、20代、30代のピンク、つまり「自殺」です。ここのところ自殺数は減り続けてはいるのだそうですが、それでも1年間に30,000人を超えており、交通事故死の5~6倍もあります(実は、事故後24時間以内の死亡が、統計上は「交通事故死」なので24時間を超えてからの死亡は統計にはいらないのですが)。とにかく「自殺」の多さは問題ではあります。

脳卒中による死因が全死因に占める割合(緑)は、60歳を超えると少しずつ増えているのに対し、癌が占める割合(水色)はどんどん下がって来ています。「癌」は、ものによっては不治の病ではなくなって来ていますが、やはりまだまだ治療成績は良くないものがたくさんあります。
私の母がクモ膜下出血になった時の執刀医で、山形大学脳外科の先輩Y医師はまだ50代で癌に倒れ帰らぬ人となりました。私の大学の同級生で将来を嘱望されていた友人S医師も内臓の癌で50才になるかならないかの若さで無念の死を遂げてしまいました。癌は40代から60代という、「まだまだ現役」という世代の死因の4割から5割を占めているのですから、医学の進歩による癌の克服はもちろん大切だと思います。

ただ、ちょっと疑問もあります。
「癌を克服すれば人間の寿命はもっともっと延びる」というような文章を見かける事がありますが、私は「本当だろうか?」と疑ってしまいます。癌が減れば長生きの人は増えるかもしれませんが、高齢者が増えれば心疾患、脳卒中は今よりももっと増えます。これらのグラフや統計数値は「死亡数」とか「死亡率」を扱っていますが、「倒れたけれど死んでない人」、「脳卒中で寝たきりの人」、「認知症で介護状態の人」はここには現れていません。

最初のグラフでは脳卒中は日本人の死因の第3位で、減少しているように見えますが、「脳卒中で死ぬ人」が増えていないだけで、脳卒中に罹る人はどんどん増えているのです。
その大きな要因はやはり超高齢化社会です。
年をとった人が増えれば、それだけ動脈硬化疾患、特に心・脳血管疾患が増えるのは仕方ない面があります。なぜなら「動脈硬化」=「老化現象」だからです。
脳梗塞の発症因子として、「年をとる事」はとても大きな要素なのですが、これは防げません。それが2番目のグラフにも現れています。ですから、その次に危険因子となる高血圧や糖尿病や脂質異常症や喫煙や肥満を指導し、治療し、コントロールすることが大切なのです。

脳卒中に倒れたため仕事を諦めざるを得なくなったり、一線から退いたり、更に介護状態で家族にも負担をかけたり、寝たきりになってしまったり、、、。
患者本人や家族にとっては、どんな障害が残ろうが生きていれば、、、という心は確かにあると思いますが、医学統計を考える場合、この「寝たきり」とか「介護状態」という事を今後も真剣に考えて取り組む必要があります。

人間は動物の一種ですから「加齢現象」には逆らえません。
本当に若々しくあるためには、健康的な生活は勿論、健康的な精神が大切です。
生き生きとした心、前向きの考え方、柔軟な思考、明るい笑顔、こういった「精神」(=脳の活動)が大事だと思います。そして、脳卒中など脳の病気にならないように予防する事、脳卒中や心臓病は要するに頭と心臓の血管の病気ですから、結局、動脈硬化を悪化進行させないような生活習慣病の治療などの脳卒中の一次予防治療が大切なのです。


〜〜〜〜〜
さて、お向かいさん。
01270128左の写真は昨日の朝撮ったもの。
昨日はお天気も良く、雪も溶けてほとんどなくなりました。朝日を浴びて工事もどんどん進み、なんと正面玄関と思われる部分の上に鉄骨が組まれて来ました。これで院長室からずっと南方向に見通せた日本海病院も見えなくなってしまうでしょう。

そして右は本日のお昼頃。
画面左端についによく見かける大きな看板が上がりました。
噂では2月中にオープンすると聞いたのですが、ここへ来てペースが上がって来たようです。
そのお向かいさん(うちのこと)に何かメリットはあるのでしょうか。
この界隈が人通りが増えて明るく元気になってくれればいいと思います。

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コメント

お久しぶりです。数年前山響&ファンクラブ忘年会でお話を伺ったことがある、村山市のまっくろです。
今回の話題は私の家族の内容に関することなので、コメントさせていただきます。
一昨年の夏、心因性脳梗塞後遺症で左半身に麻痺が残る父の介護をしていた母が、高血圧と糖尿病から来る脳梗塞を発症し重度の右半身麻痺で車椅子生活となりました。私は職場の介護休職を利用し、自宅での父の介護と母のリハビリ入院生活の介助をしていました。丁度一年前、今度は父が冬の運動不足から転んでしまい、硬膜下血腫になり入院→手術となりました。その後、父は手術は成功しましたが今度は尿路感染→昼夜逆転→退院(ほとんど夫婦同時)→自宅での両親介護となりました。
私の介護休職も終わろうとした昨夏、今度は勤め先の人員整理がありました。私も復職しても介護を続けながらは無理と感じていたので、復職せずにそのまま退職してしました。
現在は、左麻痺でワガママな父と右半身不随の車椅子で喋れない母をシングル介護(無職)しております。
と、いうわけで、脳卒中は家族の状況を全く変えてしまいます。田舎なので近くに気軽に行ける脳神経クリニックはないので自分で自分を節制して行かねばなりません。酒田市の方々がうらやましいです。
是非、balaine先生も酒田市とその周辺の方々の脳と家族を守ってください。それから脳梗塞後の転倒に気をつけるようにお年寄り達に言ってください。

さて、私、明日は村山市あさっては山形テルサでの村川千秋さん指揮の山響を聞きに行く予定です。母の尿取りパッドは長時間用にして、ワガママな父にはお菓子を用意して、聞きに行きます。今回、遅れて行っても会場に入れますように。(笑)

投稿: まっくろ | 2010.01.28 20:38

まっくろさん、(ちょっとHNに引きましたが、、、笑)
コメント有り難うございます。
ご両親とも脳卒中で介護状態ですか。それを一人で。。。
どんなにご苦労な事かと思います。他人事だから「大変ですね、、、」などと言っていられますが、我が身に降り掛るとそんな言葉では片付けられない大変さがあると思います。
介護保険、デイサービスなどは当然利用されていると思いますが、ご両親にはお気の毒ながら脳卒中はなってしまったら、そこから改善、回復する事はほとんどありませんので、現状維持、進行防止は医師と介護サービスに任せ、まっくろさんはご自分の精神の健康状態を守られますように。その上では山響の存在は、とても大きいでしょうね。
私も明日テルサに参りますよ。
お世話になった村川さん親子の晴れの舞台ですからね。
明後日は文翔館に山Qと、2日続けての月山越えになると思います。
どうぞご自愛を。

投稿: balaine | 2010.01.29 08:47

balaine先生、ありがとうございます。すみません。HN、伝芸のにしてました。山響関係はM'Crowです。(この発音が"まっくろ"です。)
はい、もちろん両親にはデイサービスもショートステイも利用させて、その間私も一息ついています。そりゃ端から見たら苦労でしょうが、もともと私の仕事(SE)が午前様だったので、それを待っていた母が高血圧になったのです。母は私の代わりに倒れてくれたのだと思って、介護してます。ひょっとして私が倒れていたのかもしれませんから。(高校の時隣のクラスだった脳外科医は40代前半で脳梗塞に倒れました。私たち中年も危ないですね。)
母が倒れてから私もちょっと怪しいときはすぐお医者さんへ行くようになりましたし。
なので、山響を聞きながら、船をこいでいる私を怒らないでください。生音(なまおと)を聞きながらうつらうつらするのは特上の贅沢だと思っています。(爆)
また、気圧配置は冬型になっていますので、balaine先生もお気をつけて月山越えなさってください。

投稿: まっくろ(M'Corw) | 2010.01.29 14:05

M'Crowさん、ああ、そうでしたね。わかりました。
「伝芸」ってなんでしょうか?
え?!脳卒中になった脳外科医?山形の方ですか。今は山形在住ではない方ですね。。。

ああ、、、もう外は雪です。今朝はあんなに天気がよかったのに、あっという間に積もってきました。
はい、気をつけて参ります。
では!(なんかチャットモードですね、、、笑)

投稿: balaine | 2010.01.29 17:26

すみません。説明が足りなくて。
「伝芸」=伝統芸能
元々生音が好きで義太夫聞いてます。(文楽の追っかけしてました。)
また、私の卒業した高校は北海道の室蘭にありまして、その同級生はそこのO川原脳外科に勤めてます。

今日の村山市民会館での山響は久々の村川さんで、聞いていてウルウルきました。小さいお子ちゃま達も来ていましたので思わず、「大きくなったら『村川千秋さんの指揮で山響を聞いたことがある。』と自慢できるよ。」と説教してしまいました。(笑)
また明日も聴ける幸せ!

投稿: まっくろ(M'Crow) | 2010.01.29 22:18

まっくろさん、今山形から帰ってきました(テルサの後、「とだて」で久しぶりに牛タンに舌鼓を打ってきましたので)。
素晴らしいコンサートでしたね。「運命」って本当に名曲だと思いました。山響の皆さん、本当に楽しそうにそして真剣に演奏していましたね。千秋先生も楽しそうでした。
本当にいい演奏会でした。。。

投稿: balaine | 2010.01.30 21:12

はじめましてm(_ _)mペコリ
「脳室腹腔短絡(シャント)術」を検索していてこちらのサイトを見つけました。

>最初のグラフでは脳卒中は日本人の死因の第3位で、減少しているように見えますが、「脳卒中で死ぬ人」が増えていないだけで、脳卒中に罹る人はどんどん増えているのです。
 そう、先生のおっしゃるとおり。
実は、私の実家の父が昨年末クモ膜下出血で倒れ私もその事実を初めて知りました。
父は若い頃からヘビースモーカーだったので母も私も「肺がんになる危険性の方が高いのでは?」と思っていたのですが、父の手術を担当した先生から父の病気についての説明を受けた際クモ膜下についての説明を受け愕然としました。
父は、レベルⅣ。元々頭痛持ちだったそうですが私の前では「頭が痛い」と一言も言わず、ある日突然倒れて今では目を開けなければ何もしゃべらない。家族みんながショックを受け、上の息子は寝込んだほどです。
父が倒れる4ヶ月前に脳外科医で検査を受け「異常なし」といわれた人がこんな事になるなら、父の頭痛を知っていたら、父が嫌がっても脳ドッグを受けさせていたらこんな事にはならなかったかもしれないと悔やまれてなりません。
人間何があるか分からないものですね(u_u。

先生のブログ、色々参考になりました。ありがとうございますm(_ _)m
明日、父に会いに病院へ行ってきます

投稿: おちゃるのママ | 2010.03.16 20:39

おちゃるのママさん、お父様はクモ膜下出血のグレード4ですか。なかなか厳しいですね。もうシャント手術は終わったのでしょうか?
正常圧水頭症があってシャントがまだならこれからまだ改善する可能性は残っていますね。
それからもう一つ、2親等以内の血縁者にクモ膜下出血(=脳動脈瘤)を持つ人は、そうでない人に比べて何倍も(統計によれば2~30倍との話も?)脳動脈瘤を持っている可能性が高いという話もあります。おちゃるのママさんも何かのタイミングで脳ドックなど、脳の血管の検査を受けておいた方がいいかもしれません。ただし、その際、異常が見つかったらどうするか(手術を受けるか、経過をみるか、治療を受けるならどこで受けるか)などをある程度考えておかれることをお勧めします。
異常がなければそれまでですが、万が一あった場合に覚悟が出来ていないと精神のバランスを崩す場合もありますから。。。

投稿: balaine | 2010.03.17 10:57

コメント、どうもありがとうござます
m(_ _)mペコリ

父の病状は、先生がおっしゃるとおり厳しい状態です(u_u。)

>2親等以内の血縁者にクモ膜下出血(=脳動脈瘤)を持つ人
 2親等ですか!?私は酒も飲まないしタバコも吸わないので大丈夫だろうと思っていたのですが、そんな呑気な事を言ってはいられませんね(大汗

それより、県内に脳ドッグで異常が見つかった場合に手術を受ける、経過をみるか、治療を受けるならどこでなどが出来る病院があるかどうか?が問題です。

父の事、お気遣いありがとうございます。
シャント手術については、どうなっているか全く未定です。
先月末に頭蓋骨形成手術(間違えていたらすみません)を受けた後先生から「後はシャント手術をします」との話があったにも関わらず、ある日突然頭の水抜きパイプが外され
た状態です。
先週、父は熱を出したそうで見舞いに行ったら両脇にアイスノンが挟まれてました。
後頭部が異様に盛り上がっているような気がして一緒に見舞いに言った叔母と「変だね」と話をしたのですが、その後担当医の先生から何の説明も無いので困惑しています。
そんな事もあり、昨日父の所へ行こうと思っていたのですが精神的に参ってしまい寝込んでました(苦笑

看病する側も精神的な負担が大きいですが、がんばらねば。

投稿: おちゃるのママ | 2010.03.18 11:56

おちゃるのママさん、
お父様の状態については、脳外科医としていろいろ推測できますがあくまで「推測」なので書き留めるのは止めておきます。
担当医から説明がない、、、ではなく「状態を説明するよう」お願いすべきだと思いますよ。待っていては駄目でしょう。

投稿: balaine | 2010.03.20 23:45

 東日本大震災及び東電の原発問題により、亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、ニュージーランド地震 日本人不明者28人全員の死亡確認された。東日本大震災の前日に81歳の母は脳梗塞右半身麻痺だが週に3度とデイサービスやリハビリ通院しており元気だったが、転んであばら骨3本にヒビが入ってしまっていた。しかし医師も驚きの回復力であばら骨のヒビもくっ付き、また母と嫁と3人で食事会を開きたいが少々、自粛ムード。4/8は自分の誕生日です有難うです。 お釈迦様も4/8が誕生日なんですよね?知ってました?自分はお釈迦様の生まれ変わりで地球の救世主かもですよ?。(笑)

投稿: 智太郎 | 2011.04.09 09:01

GWも終盤になった日に母:81歳障害者:脳梗塞・右半身麻痺と嫁と自分と3人で口コミで美味しい靜岡県沼津市の口コミでかなり好評のうなぎ屋へ行った事を写真記事にしました。

投稿: 智太郎 | 2011.05.08 19:52

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