「村川千秋の世界」
1月30日、診療終了後、急いで昼食を摂り、積雪の月山道に時々お尻を振りながら山形テルサでのコンサートを楽しみに高速安全運転。開演40分前に到着。
プログラム表紙には「村川千秋の世界」の文字。昨秋の第200回定期演奏会記念とも銘打たれています。
昨日は千秋先生出身地の村山市民会館で村山定期で同じプログラム。
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(1)シベリウス/フィンランディア 作品26
(日本・フィンランド修交90周年記念)
(2)シベリウス/ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47
ヴァイオリン村川千尋
(3)ベートーヴェン/交響曲第5番「運命」ハ短調作品67
演奏中の写真は当然撮れません。心情的には記念に千秋先生の指揮姿を写真に収めておきたかったのですが心のシャッターを何度か切りました。
この写真は、先日の記事で触れた、村川透監督作品「野獣死すべし」の1シーン。日比谷公会堂でショパンのピアノ協奏曲を主人公役松田優作が小林麻美と聴くシーン。ピアノは花房晴美氏、東京交響楽団を指揮する30年前の千秋先生です。
(録画しておいた映画をテレビで静止画像にして写真にしました)
コンサートはまさに「村川千秋の世界」でした。
フィンランディアは少しテンポ遅め?という印象でしたが、とにかく冒頭の金管のコラール、フィンランドの第2国歌を歌った後のフィナーレへ向かう部分。わくわくする音楽です。何年か前に「脳外オケ」で演奏したことがあります。個人的には映画「ダイ・ハード2」が思い出されてしまうんですが、、、(笑)。
シベリウスのヴァイオリンコンチェルトは、親娘競演が微笑ましい。見事に弾ききった千尋さん、相当緊張していたのでしょうか、カーテンコールで4回ほど出入りしましたが動きが少しカチンコチンに見えました。
今日は(も?)会場に小さなお子さんが目立ちました。おそらく「キラキラ会」関係者でしょう。最前列にはいかにもヴァイオリンを習っていそうなかわいい女の子(8,9才位?)が座っています。千尋さんの生徒さんでしょうか。このコンサートのために東京から駆けつけた「キラキラ会」OBも居たようです。
15分の休憩の後、いよいよ『運命』。
今は3/21の酒フィル春のファミリーコンサートに向けて1楽章だけですが練習しているので思い入れが強くなります。
千秋先生の棒は力強い。でもオケをぐいぐい引っ張って行くのではなく、小沢征爾氏の言葉(カラヤンだったかも?)を借りればオケをドライブするのでなくキャリーしている感じでした。ザッツは力強く、でもその後フェルマータを左手できるまでは指揮棒はあまり動きません。
オケも千秋先生との演奏会の経験者は少なくなっても『運命』は何度もやっているので心得たものという感じ。しかし山響はやはり上手くなったんだな〜(失礼な物言いお許しを)とこういう曲を聴くとより鮮明にわかりますね。弦の統一感、管の充実度。特にホルンの八木さんと岡本さん。いい音です!
最初の方のオーボエのソロ。麻咲さんの音色、素晴らしい〜!
2楽章。いかにもベートーヴェンらしい緩徐楽章の出だしはヴィオラとチェロのメロディ。美しい。
トランペットを中心とするファンファーレ的な第2主題も、気張りすぎず和音を大切に演奏されているのが伝わってきます。
3楽章。チェロとコントラバスで始まるフーガの主題はわくわくします。特に4本のコントラバスがビシッと揃ってあの速いパッセージを奏でると体の奥の方が刺激されます。下手のバルコニーに座っていたので、上手に陣取るコントラバスを正面に見る形になり、決してコントラバス奏者として体格が大きい方とは言えない柳沢さんが全身を使って弾いている姿が見えるのでその演奏がさらに印象的になります。弦のパートでの音の移動とともに千秋先生も体の向きを変えます。黙って目をつむって音楽に浸ってもいいのですが、今日は特に「視覚」にこだわりましたがバルコニーでの鑑賞は正解だったと思います。
あのちょっと不気味な移行部は抑えに抑えて、喜びの4楽章へ突入。
ここまで3楽章ずっと座って待っていたピッコロ、トロンボーン3本、コントラファゴット(3番ファゴット)の登場です。ハ短調の交響曲の最終楽章はハ長調。主題の音楽は考えてみれば、ドーミーソーの分散和音。それをこんなに劇的に展開するなんて、やはりベートーヴェンって凄いんだな〜、『運命』って名曲だな〜と今更ながら感心感激。
それまでやや抑え気味だった感じの演奏から、早めの4楽章はとてもいい感じです。
そしてフィナーレへ。
ああ、終わっちゃう、、、もう少しこの音楽が続いてほしい、、、千秋先生の指揮をもっと見ていたい、、、そんなことを思いながら見ていたら涙が出てきそうになりました。
団員も力まずにでも力を込めて演奏しています。指揮者が真剣に楽しんで演奏すれば団員もみな楽しそう(もちろん顔は真剣)。素晴らしい演奏でした。感動しました。
ブラボ〜の声があちこちからあがります。大拍手!
千秋先生はオケを立たせようとするのにコンマス犬伏さんはじめ誰も立たずに指揮者に拍手を送ります。いい光景です。胸が熱くなります。
2回目のカーテンコールで千秋先生が観客に向かって語りかけ始めました。
「『運命』は昭和47年の第1回定期で演奏しました。きっとこの中には第1回定期を聴きに来てくださった方もいらっしゃると思うんです。この30万都市の地方都市にこんな素晴らしいオケがあることを誇りに思ってこれからも山響を育ててください。」というようなことをおっしゃっていました。
アンコール曲はシベリウスの「アンダンテ・フェスティーボ」。
演奏する前に千秋先生は「ここには館野泉さんの息子さんもいらっしゃるんです。館野さんは仙台の出身ですから同じ東北の人です。」(泉さんの母上が仙台出身)といってヤンネさんを立たせたまではいいのですが、名前をど忘れしちゃったのか、「え〜と、ピーター君だっけ?(犬伏さんと蜂谷さんに向かってあわてて聞いて)え?え?あ、ヤンネ君です」。
観客もドッと爆笑。オケ団員はステージ上で笑いをこらえる人、思わずにやにやする人、ほのぼのします。
「この曲ね、今までけっこうゆっくり演奏してたんだけど、彼に聞いたらシベリウスはあんまり遅く演奏しないらしいです。だから私も反省してね、今日は今までより速いテンポで演奏します。」
確かに聞き慣れた「アンダンテ・フェスティーボ」の1.5倍くらいのスピードだったような気がしますが、美しい弦のアンサンブルにうっとりです。今の山響の実力を如実に示す弦の充実です。
大満足のコンサートでした。
昨日の山形新聞朝刊28面に一昨日の村山定期の記事が写真入りで出ていました。(コンサートの記事の下には、一昨日ブログ記事にした目黒雅叙園の「山形ひな紀行」の記事も)
演奏会終了後、アフタートークはない代わりに、千尋さんと千秋先生が着替えずにホワイエに出て来て、「交流会」というよりも知人友人と挨拶を交わすという形になりましたがものすごい人です。団員もたくさん出て来てご挨拶ができました。
翌日に定期を控えた山形Qの中島さん、倉田さん、茂木さんも全員ホワイエに出てきました。
コンミスの犬伏さんからは「目立ってたわよ」と言われてしまいました。おかしいな、、、コンミスの背中が見える位置に座っていたのに。団員の皆さんもニコニコ笑顔です。なつかしい「キラキラ会」のメンバー、OB, OGとも少しお話ができました。
凄い人でごった返していましたが、隙を見て千尋さんとも千秋先生ともお話ができました。
「これが最後の演奏会だと思う、、、」と観客に話した千秋先生。
「お元気で、もっともっと振ってください」とお願いしたら、「いや〜、、、」と否定はしていませんでした。傍にいらした方々も「そうですよ、いつまでも指揮してください」と付け加えてくださいました。トランペットの佐藤さんとも、「存在感があるんだから、ザッツいれてあとは(ウ〜ン)って感じでね、、、まだまだ出来ますよね」と笑って話しをしました。
11月にサントリーでチェコフィルを聴いた時のブロムシュテットは82才。"Mr.S"は86才。まだ70代の千秋先生。まだまだですよ。
そうそう、個人的には『運命』1楽章の足達先生の演奏に注目していた他、フルートの竹谷さんが『運命』で4楽章のピッコロ専属になるためトラで来ていたセカンドフルートに注目しました。小林志穂さんといって、確か足達先生のお弟子さんで今は大阪シンフォニカー交響楽団の首席フルートをされている方だと思います。いつかソロをお聴きしてみたいものです。
コンサートに満足し駅前の「とだて」に寄って久しぶりの「牛タン定食」に舌鼓を打ち、安全運転で酒田に戻りました。いい演奏会でした〜。
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さてさて、今日はまた山形ー酒田往復。山形弦楽四重奏団第34回定期演奏会が文翔館であります。
「山形Q庄内演奏会 Vol.1 in ジョンダーノ・ホール」の2/20まであと20日になりました。ブログ記事は「こちら」です。
『ジョンダーノ・ホール」にたくさんのお客さんをお迎えできることを望んでいます(今のところ10枚ほど売れております)。チケットはお早めにご連絡、ご予約をお願いします。
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