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2009.08.14

お盆期間の仕事の合間に〜片頭痛の事

お盆で休診のため家でのんびりしてもいいのですが、いろいろやることもありクリニックに出かけました。
まずは8/16の「街かどコンサート」に向けての個人練習。メトロノームに合わせて、少し早めのテンポで特訓です。
次に今週の月曜、火曜に行った脳ドック患者さんのデータの整理とレポート作成。
その他にも、「日本脳ドック学会認定施設」申請の準備、録り溜めたテレビ番組録画済みHDDデータの整理(保存したいものは、DVDにダビング)、院長室の片付け他、いろいろやることはあります。


そんな中、インターネットで片頭痛について検索していたら、興味深いサイトを見つけました。
これから書く事は、一部そのサイトの批判になりますので、どういうサイトなのか特定できないように考慮する必要があります。
サイトに書かれていた文言は「>」の後に記します。

>『片頭痛“ストレス”や“生活習慣の乱れ“が引き金に…』

 これは書かれた通りだと思います。
 片頭痛はそれになりやすい体質の人と言うのが存在しますが、日頃の診療を通して感じる事ですが体質だけでなく性格も影響すると思います。どちらかというと、神経質、細かいことを気にするタイプ、気分転換が下手、くよくよしやすい、責任感が強い、、、そういう傾向があると思います。

>生活のリズムの狂いやストレスが多い現代社会。
>私たちはホルモンバランスを崩しやすい環境、つまり片頭痛を誘発しやすい
>環境に生きているのです。
>特に日本人の場合は姑との関係や育児のストレス、また仕事でのノルマや
>人間関係の悩みなどが、引き金になる場合が多いと言われています。

 これもほぼ正しいですね。
 ただ、ホルモンバランスを崩しやすい環境が片頭痛を誘発しやすい環境かどうかは証明されていないと思います。

>片頭痛の痛みが起こる仕組み、長年の研究から次第に明らかになってきています。
>もっとも有力なのは脳内の血管が広がって脳細胞を圧迫するので頭痛がするという「血管説」です。

 片頭痛の別名は「血管性頭痛」です。
 血管が拡張して頭痛が生じるという点は正しいのですが、ここに大変大きな間違いが堂々と書かれているので、このブログで取り上げて指摘したくなったのです。
それは、
>「脳内の血管が広がって脳細胞を圧迫するので頭痛がする」
という文言です。

 片頭痛の痛みの原因になる血管の拡張は「脳内の血管」ではなく、「頭皮の血管」です。
ですから「脳細胞を圧迫」はされません。しかも、脳細胞=ニューロンには「痛覚」がありません。ですから脳細胞は圧迫されても痛みを感じないのです。脳細胞が圧迫されれば、運動麻痺、言語障害、意識障害など、脳卒中や脳腫瘍の症状と同じ様なことになりますが、それで頭痛が起きる訳ではありません。
 片頭痛の痛みというのは、拡張した頭皮の血管から分泌された神経伝達物質が痛覚神経を刺激する事によって起こる、頭皮の血管の周りに存在する痛覚神経が拍動性に刺激されて起こるものです。
 決して脳細胞が圧迫されて痛くなる訳ではありません。

 このような医学的に明らかな間違いを堂々と書いて、商品を販売しようとしているサイトがありました。正しい医学的知識を持たずに、世界中の頭痛の本のどこにも書かれていない「誤った情報」を堂々と書いているだけで、この商品の効果には疑問が生じるものです。


>「片頭痛」特効薬は存在しない。

 片頭痛を「治す」という意味での特効薬は存在しません。しかし、「抑える」という意味での特効薬は存在します。片頭痛頓挫薬といって、「トリプタン製剤」と総称されています。片頭痛を起こしている頭皮の血管の拡張を抑えて正常に戻す働きを持つのがトリプタン製剤で、今から9年前までは注射薬しかありませんでしたが、今は内服薬5種類、点鼻薬1種類、皮下注射薬1種類が存在します。


>長年、片頭痛に悩まされているあなたは、市販、もしくは医師から
>処方された鎮痛剤を常に服用していることでしょう。
>しかし、年々薬を飲む頻度が増し、片頭痛が起きやすくなってはいませんか?
>これは、薬を長期にわたって常用すると体が薬に慣れてしまって効きにくくなり、
>「薬の効果が切れる⇒薬を飲む」という悪循環に陥り、「薬剤誘発性頭痛」と
>いわれる症状が起きているためです。
>市販の鎮痛剤で片頭痛の痛みを一時的に除くことはできますが、服用を繰り返す
>と、薬効がなくなるのです。なぜなら、薬は「片頭痛」を一時的に対症するもの
>であって、片頭痛の原因を取り除くものではないからです。

 ここに書かれてある事はほぼ正しいと思います。
 「痛み止め」=鎮痛剤と、上記の片頭痛頓挫薬であるトリプタン製剤は理論的にはまったく別のものです。
痛み止めは脳と末梢神経に働いて、痛覚をブロックし痛みを和らげます。片頭痛頓挫薬は、頭皮の血管を収縮させて、血管拡張による片頭痛発作を和らげます。
 このどちらの薬も、使いすぎると「薬剤誘発性頭痛」または「薬剤乱用性頭痛」を生じさせます。どちらの薬も一時的な効果しか期待できず、1日を超える様な長時間の効果もなければ、片頭痛発作を予防する効果もありません。

 片頭痛発作に対して、安易に購入出来る市販薬を毎日のように連用する事はもちろんよくありません。どんどん効かなくなってきます。
 さらに、多くの一般開業医が「頭が痛い」と訴える患者さんに「安易に」鎮痛剤を処方しすぎると感じています。患者さんが「頭が痛いから薬をくれ」と訴えると、すぐにたくさん処方してくれます。患者の言う事を聞いてくれる、優しい、「いいお医者さん」です。
 そういう「いいお医者さん」の中には、痛み止めを1日3回毎日服用するように何年もず〜〜〜〜〜っと同じ処方で変更も見直しもしない医師もいます(開業して1年半近くの間に、そういう処方をされていた患者さんを少なくとも3人は診察しました)。

 医師が「薬剤乱用性頭痛」を作っているのです。医師が患者の状態を悪くしているのです。
 問題は「薬物乱用性頭痛」という言葉すら知らない医師がまだたくさんいるという事です。頭痛持ちの患者さんが知らないのは仕方ないとしても、それを治療している医師が頭痛に対してあまりに無知な場合が少なからず見られるのです。

>では、片頭痛は一生治らないのでしょうか?いいえ、方法はあります。
>それは片頭痛の原因を取り除けばいいのです。

 片頭痛の原因?ってなんでしょうか。
 このサイトでは、顎の歪みと書いてありました。歯の噛み合わせ、顎のずれが片頭痛の原因なのだそうです。
 
確かに歯の噛み合わせの悪さや顎のずれは頭痛を誘発する因子になると思います。でもそれは、たくさんある片頭痛の「誘発因子」の一つに過ぎないと思います。たとえば、女性の生理とか寝不足とか赤ワイン飲酒による血管拡張とか騒音とか低気圧とか、そういう因子と同列のものであり、「片頭痛の原因」とは言えないと思います。

 もし、「片頭痛の原因」であるならば、歯の噛み合わせを治せば、顎のずれを治せば片頭痛は治る訳ですから、世の中から片頭痛という病気が消え去る可能性があります。原因を取り去れば病気が治る、これを原因療法といいますが、治療の王道です。しかし、片頭痛の治療において、顎のずれを治したから片頭痛が治って二度と起きなくなったという報告はないと思います。一時的には効果のある人も、中にはいるでしょうが、「原因療法」ならば全員が治らなければおかしい訳です。
 片頭痛の予防薬としては、抗てんかん薬であるデパケン、抗うつ薬のトリプタノール、血管の平滑筋を弛緩させるCa拮抗薬などがあります。私の経験でも週に1〜3回は頭痛に襲われ、鎮痛剤をほぼ毎日飲んでいた様な人が、吐き気を伴ったり寝込んだりする頭痛はほぼ無くなったか、あっても半年に1回程度となります。内服による副作用がなければ、デパケンを第一選択で投与しています。

 ということで、チラッと見たサイトにちょっと医学的におかしな事が書かれていたので、それを指摘しようと考えて、片頭痛の事を熱く語ってしまいました。

 片頭痛=血管性頭痛の成因、誘因、その診断、治療について、詳しく分かりやすく説明できる医師は、残念ながらそれほど多くないと思います。頭痛で悩んでいる方は、まず頭痛の事を詳しく知っていて、きちんと詳しく説明してくれる医師を捜すべきです。

さて、明日(もう今日ですが)、休み期間の"what to do"を片付ける仕事の続きです。

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