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2009.08.12

「救命病棟24時 第4シリーズ」始まる

昨日8/11から「第4シリーズ」が始まった。
前シリーズは2005年に放送されていた。このブログで前シリーズの感想を書いていた。
「救命病棟24時」を批判するを参照ください。

救命救急の大変さ、過酷な状況から救命医全員辞表提出して辞職、患者さんのたらい回し(実情は受け入れる余裕がないための受け入れ拒否)、医療訴訟、などなど現代の医療問題を的確に取り上げた内容で第1回が始まった。期待してこの第4シリーズを見守りたい。

まあ、テレビドラマなんだから、、、と細かいことに目くじらを立てるつもりはないが、少々突っ込みを入れておこう。

1)江口洋介演じる主役の進藤医師が、松嶋菜々子演じるかつての同僚後輩医師小島楓に会いに、「平日の日中」に出かけて行き、どこかの公園で腰を下ろして仲良くお話をしていた。
 あまりの過酷な労働状況に全員が辞職する様な救命救急の医師が、平日の昼間に一人のんびり小島医師を捜しに出かけて行くなんてあり得ない。非番の日、代役の医師がいたので休みを取ったというならわかるが、一人も救命救急医がいない病院に赴任したばかりの状況である。。。

2)救命救急の医師不足を補うために、他科の医師から応援派遣があるのはよく聞く話である。人がいないのだから、人のいるところから無理してでも人を捻出するという手は全国的にも使われているだろう。しかし、「3次救急」である救命救急にいきなり眼科医や耳鼻科医が駆り出されるという事は、「あるかもしれない」がそうよくある事ではないだろう。
 緊急患者や意識障害の患者などに対応出来る医師の代表は、脳神経外科医である。日常、そういう患者さんを見ているからである。呼吸循環の変動の激しい緊急患者に対応出来るのは、循環器内科医や麻酔科医、ICU医師、心臓血管外科医などであろう。まずはそういう「実力のある」医師の多い診療科から優先的に人を「駆り出す」ように努力するのが常套手段だろう。まして「医科大学付属病院」なのだからすべての診療科があり、ある程度の人は揃っているはずである。

3)「こんなとこでこれ以上働けない」と辞めて帰ろうとする眼科医師。
 医師にもいろいろな人がいるので、忙しさのあまりキレてそういう言動に出る人もいるかも知れない。しかし、病院全体で会議をして対策を考え、人を出せる科から応援をよこしているのだから、普通なら眼科の医局で医局長や教授に相談して、救命救急の手伝いから手を引くとか、代わりの医師を送るとかそういう「大人」の対応をするはずである。病院勤務医師というのは、開業医と違って一人で仕事をしているのではなく集団で医療行為を行っているのである。

4)頭部外傷の少年を救急車の中で「穿頭手術」。
 金属バットで側頭部を打撲して意識障害を起こし、クッシング現象を起こしている10才の少年。頭蓋内圧が高まる事により、血圧が上昇し脈拍が遅くなる「クッシング現象」。外傷のサイドがはっきりしていて、瞳孔の大きさに左右差があれば確かに外傷による頭蓋内出血の可能性が非常に高い。
 しかし、急性硬膜外血腫なのか、急性硬膜下血腫なのか、脳内血腫なのかはCTを撮らなければわからない。CTを撮らずに上記3つの状態をはっきり鑑別出来る医師は世界中探しまわってもいないだろう。
もしも、「Lucid interval」といって、外傷直後に意識を失いながら一端意識を回復してその後、30分〜1時間の間にまた意識がもうろうとして急速に意識障害が進む「意識清明期」が教科書的にみられたのなら、「急性硬膜外血腫」の可能性が高いだろうが、昨日のドラマでは外傷直後からずっと意識障害で短時間に進行していたので、一番蓋然性があるのは脳内血腫を伴う急性硬膜下血腫だと思う。
 そういう状態の患者さんに「穿頭手術」を自信を持って行える医師というのは、脳外科医の中にさえもいないだろう。それが救命救急医の小島楓が「救急車の中で」手術に及ぶのである。
 たとえ、診断が正しいとしても、救急車の中に「開頭セット」や「穿頭セット」などおいてあることはまずないだろう。頭蓋骨はメスだけでは開けられない。ハンドドリルという手で回す頭蓋骨用の大きな錐のような手術器械が必要である。万一、陥没骨折を伴っていてピンセットなどで陥没した骨を取り外せるなら硬膜外の血腫を取り除くことも出来るかもしれないがそういう状況は描かれていなかった。
 一般的には、救急車の中で脳外科手術など考えられないというか、あり得ない設定だった。

5)どんどん発生する緊急事態に対し、多くの救急病院が「受け入れ不能」ということで救急患者の診療を拒否し救急車のたらい回しが描かれていた。
 これはある意味、日常のことだと思う。しかし、それは救急隊と3次救急病院の連絡体制の問題であろう。場所は横浜のみなとみらい地域が描かれていたのだが、横浜市の救急体制はそんなにレベルが低いのであろうか?横浜の救急隊、消防本部、横浜市の大学病院、救急病院はこのドラマを見て怒らないだろうか。
 
 これは突っ込みではないが、酒田ではこういう「たらい回し」状況はまず起こらないと思う。なぜなら、緊急患者を受け入れられる総合病院は日本海総合病院と余目病院くらいしか無いので、救急隊からの要請を「拒否」した場合、患者さんはどこにも行くところがないのである。どこにも行くところがないのだから、どんな患者でも、どんな状況でもいつも受け入れるしかないのが、地方の救急病院の宿命である。こういう地方の緊急医療の状況こそ描いて欲しいものである。

 最後にもっとも深刻な突っ込み。
 小島楓医師が、脳外科が受け入れ不可能の状況で頭部外傷の子供を受け入れて救命救急で救えなかった。医療訴訟の「被告」となって、それに対して「自分の判断ミスで死なせてしまった」と自分の非を認め、争う気持ちがないという。
 争う気持ちがないならなぜ「訴訟」になっているのだろう?
 医師として、自分の力不足で救えなかった命に対して、責任を感じ申し訳ないと思う謙虚な気持ちはとても大切であるしその点は認めるが、すでに6件ほどの救急受け入れを拒否されて「たらい回し」になっている患者をぎりぎりの状況で受け入れて助けられなかったとしても、それで医師が責任を取らなければならないのなら、日本全国の救命救急は緊急患者の受け入れを全部拒否しなくてはならない。
 何か明らかな医療ミスで誤って患者さんを死なせてしまったのなら理解も出来るが、脳外科が受け入れ不能だとしても「たらい回し」の状況でどんどん状態の悪化している患者をなんとかして上げたいという「医師の善意の心」で受け入れて、その結果が蘇生出来ずに死亡したとしても誰も医師の責任は問えない。ドラマに描かれた状況ならば、たとえ脳外科が受け入れ可能だったとして助けられなかったはずである。救命救急に緊急搬送された患者さんに大緊急手術が必要と判断し、脳外科医、麻酔科医を招集して手術室を確保し大大緊急手術を行うとして、頭蓋内の血腫が取り除かれるまでには30分、いや1時間はかかるだろう。
私が急性硬膜外血腫の患者に大緊急手術をして様子を書いたブログ記事、「12/17続き」を参照ください。つまり、まだ意識がJCSで30~100くらいでも手術がぎりぎり間に合うかどうかの状態。ドラマで描かれた状態では、意識は200〜300(瞳孔が開いていると言っていた)であり、小島楓のいる救命救急に運び込まれてまもなく心肺停止状態になっていた。あの状態ではどんな「神の手」の脳外科医が現れたとしても助けられない。どんなに急いでも手術に持ち込むまで30分とか1時間がかかるのである。
たとえ「急性硬膜外血腫」であって救命救急のその場で開頭または穿頭を行ったとしても、助けられなかったと思う。
そういう状況の患者を救えなかったから、脳外科が受け入れ不能なのに救命医が受け入れたからそれで「訴訟」を起こされるのでは医師は100%確実な医療行為しか行えない。つまり緊急患者は絶対診ないという医療である。

考えてみて欲しい。小島楓医師が「受け入れ拒否」をしたら、あの10才の患者さんは次の(8件目?)受け入れ先を探している救急車の中で心肺停止状態になり、たとえ8件目が見つかって受け入れられてもそこで命を落としていたと考えられる。それを救おうとした「医師の善意の心」を無視して訴訟を起こすならば、またその医療訴訟で医師が有罪にでもなるならば、医療崩壊は最終章を迎える訳である。

まあ台本にいろいろ無理やおかしな点はあるけれど、あくまで「娯楽」の「ドラマ」としておおめに見てあげたいとは思っている。

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コメント

最善を尽くしても命が救えないという「医療の限界」を無視して「ミスでないなら、なぜ亡くなるんだ」と医師を訴えたり、いちかばちかに賭ける以外に命を救えない人間が現実にいるのに「いちかばちかでやってもらっては困る」と医師を断罪して、命を救うためのハードルを高くしておいて、医療従事者がそのハードルの高さによって患者を受け入れられないと

「それでも医者か!」

「『医は仁術』は死語になったのか」

「命より金儲けのほうが大事なのか」

「患者を受け入れられない病院は看板を返上しろ」

などと医療従事者をボロクソに叩きまくる、インパール作戦の牟田口司令官みたいな人間がワンサカいる日本ですもの、これで医療が崩壊しないほうが不思議というものです。

http://s01.megalodon.jp/2008-1024-1105-57/punigo.jugem.jp/?eid=486

投稿: 都筑てんが | 2009.08.12 15:24

都筑てんがさん、以前も同じ内容のコメントを頂きました。
救急病院の受け入れ拒否というのは、「救急病棟が一杯」「すでに手一杯の急患を受け入れている」「救急に当たる医師の数に限界がある」などなど様々な理由があると思います。しかし、一般市民にはそんなことはわからない。別の言葉で言えば「そんなの関係ねぇ!」(古くてすみません)です。

救命救急に当たる医師も人間ですから、食事をして風呂に入って寝る時間も、精神を休めリラックスする時間も必要です。それが失われすぎたため、自殺されてしまった小児科医とか、救命救急医総辞職とかが起きてしまっています。

OECD加盟国の人口あたりの医師数でわかる通り、高度な医療が国全体にあまねく浸透している割には日本の医師数は少ないのです。
昔は医師はエリートで、少ないながらも根性で頑張っていました。だから尊敬もされました。
今では、医学部が増え、医師数も昔よりは増えて、それほどのエリートではなくなりました。それでも医療はどんどん進歩しているので、一人の医師が2、3人分の働きをして、特に緊急や救急医療、緊急手術の場を「凌いで」来たのです。その現場の感覚が理解出来ない国民は、
「医者なんだから、24時間、いつでも患者を診るのが当たり前だろう!」とか
「医者なんだからどんな患者でも診るのが当たり前だろう!」というとんでもない考えになってしまうのです。

医者は、医者である前に、一人の人間なのだ、家族がいて生活がある普通の人なのだという事を忘れすぎています。普通の人に一生懸命に何かをしてもらったら、結果の如何に関わらず、感謝したり感動したりするのが普通の感覚だと思うのですが、一般市民は「医者なんだからそれが仕事だろう?!」と言う訳です。

「仕事」ではなく「使命」として働いている医師にとってはとても辛辣な言葉に聞こえます。

投稿: balaine | 2009.08.12 16:25

御訪問ありがとうございました。
とても読み応えのある記事でしたので、できれば一言、アダルトで無さそうなコメントをいただければ、警戒しないでコチラを閲覧しに来れたと思います。
またツッコミの記事を書かれる際は、コメントいただければ、安心して閲覧しに来たいと思いました。

いろいろ考えさせられる記事ですね。
何も知らずに観ているものとしては、なるほど~と思うことばかりです。
脚本家さんが読んで、参考にされるといいな~等と思ってしまったくらいです!

ちなみに最後のコメントを読んでホッとしました。
あまりツッコまれると、今度は脚本家がもう医療モノ書かない~!ってなっちゃうとドラマを楽しみにしてる者としては、困るので~☆

投稿: ハッシー! | 2009.08.12 21:43

ハッシーさん、コメントありがとうございました。
何も書かずにURLだけですみません。書き始めると「熱く語って」しまいそうだったので。。。(^^;;;
よろしくお願い致します。

投稿: balaine | 2009.08.13 00:36

「はぁ〜、なるほど〜」 と納得しながら読ませていただきました。
ドラマは見ていないのですが、イメージはできました。
記事に書かれているようなことを脚本家の方がご存知で、ドラマを面白くするために敢えて見ぬふりをしているのか、ホントに知らないで書いてるのかの違いは大きいと思いますが・・・でも、知ってたらそんな大胆なことは書けないのかな。

投稿: えがお | 2009.08.13 00:54

えがおさん、コメントありがとうございます。
あのドラマに限らず、専門家が「医療監修」としてスタッフに入っていると思います。しかし、本当のプロではない医者(たとえば内科医とか)が観ても監修出来ない部分があるのだと思います。
脚本家の責任ではなく、医療監修をしている医師の責任は無視出来ないと思います。「プロ」なんですからね。

投稿: balaine | 2009.08.13 01:10

私もみました。身近なナースも現実ではなくドラマ展開をみている様です。

先生のご説明大変ためになります。素人なので気付かない点など興味深く読みました。

朝になったら身近なナースにも読んでいただこう。反応を観察します。

投稿: けん | 2009.08.13 02:15

けんさん、コメントありがとうございます!
病院勤務医時代(合計24年)には一度も取った事のない「お盆休み」を取っております。
ちなみに同じ勤務医時代にお正月を実家で迎えた事は1度もありません。

今回のドラマは、結構、最近の医療崩壊、救急医療崩壊を意識して書かれた物と予想します。ユースケ・サンタマリアの演じるクールな救命医が重要な役割を握るのではないかと予測しています。

主人公はアフリカでHIVに感染したのか、、、

投稿: balaine | 2009.08.13 15:26

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