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2008.12.20

山響酒田定期第8回演奏会を聴く

昨日、12/19(金)、希望ホールで山響の第8回酒田定期演奏会がありました。

拙クリニックで法人として酒田定期会員になったので5枚のチケットが配布されたのですが、1枚余ってしまいました。平日の夜で開演18:30はちょっと厳しいです。
私も、17時台に新患が二人来られて、最後の患者さんを診終わった時点で18時を回っており、「1曲目は無理かな、、、」と思ったのですが、職員に特に急いで会計チェック、診療終了を手伝ってもらい、18:13頃クリニックを出て、18:26頃希望ホール裏の駐車場に到着し、指定席に着いたのが18:28という離れ業でした。
おかげで、指揮の工藤さんのプレトークがちょうど終わる時で、内容はわかりませんが、後でチラッと聞いた話では、映画『おくりびと』の事なども話されていたようです。

Photo工藤さんは、このブログでも何度か書いていますが、H16~18年シーズンの酒田フィル定期の指導指揮をして頂きました。現在山響と群響を始め全国いろいろ指揮をされている、「酒田出身」の指揮者です。
その指揮ぶりは、非常に丁寧で基本に忠実なまじめな棒です。性格が出ていると思いますが、激するような部分でも、体の動きや手の振りはもちろん激しく大きくなりますが、あくまで控えめで冷静でオケがいつも付いて行ける棒だと思います。観ようによっては、派手さが乏しいので素人受けしないというか、ビジュアル系とは言えないのですが(すみません)、玄人受けのする指揮だと思います。

GpGp_2私は診療があるのでもちろん無理なのですが、工藤さんにお願いして家内だけゲネプロ見学をさせて頂きました。何せ、本日のソリスト、曽根麻矢子さんは家内の「師」ですから。(^^)
後で聞いた話では、ゲネプロで曽根さんのチェンバロを聴いているだけで、気分はアゲアゲ、興奮してハイになったそうです。

1曲目、シャブリエの「田園組曲」から4曲。
初めて聴きました。なかなか難しそうな曲です。シャブリエは、酒田フィルのH18年の定期(漆原啓子さんをソリストにラロのスペイン交響曲とベト7をやった年)で狂詩曲「スペイン」を工藤さんの指揮で演奏しました。ピッコロが大変だった事を思い出します(しかも、演奏会ピッコロデビューでした)。
面白い構成で、管楽器が活躍します。フランス人らしい洒落た、しかし田園を思わせるのどかな雰囲気が漂います。

2曲目、いよいよ曽根さんの登場です。
プーランクのチェンバロと管弦楽のための「田園のコンセール」。
チェンバロは非常に音量の小さな楽器で、しかも1200超の客席の大ホールなので、PAをつけて小さなスピーカーで拡声していました。先日の村治さんのギターで使ったPAとはまた別のものを自前でお持ちになったようです。
チェンバロと相対するオケは小編成なのかしら、と思ったら意に反してまったく普通の数。弦だけは4プルトだったようですが、コントラバスも4本、金管はトランペットにトロンボーンも入っています。
ところどこででチェンバロ独奏になるのですが、その繊細で美しい音色とオケが全部で奏でるffの対比が楽しい。チェンバロの部分になると、おもわず耳の感度を上げて「聞き耳」をたてる感じになります。それは希望ホールの観客皆そうだったようで、チェンバロの部分に来ると客席から時に聴こえる不快な鞄か携帯につけた鈴の音や服の衣擦れやプログラムなどの紙の音はもちろん咳払い一つ聴こえません。みんなが聞き耳をたてているようでおかしかったです。
わたしはもちろん、家内もチェンバロを大ホールで聴いたのは初めてです。元々、宮廷で食卓の横や寝室の裏で静かに奏でる楽器だったのが演奏会に出て行って、様々な楽曲(チェンバロ協奏曲など)が作られました。しかし、ピアノフォルテの出現によって、次第に大音量や強弱のつけられる楽器に負けて演奏会で使われる頻度が減り、チェンバロ用の楽曲の作曲も激減しました。20世紀の音楽家であるプーランクは、委嘱されてこの「田園のコンセール」を作ったのですが、さすがフランスの作曲家、エスプリに富んだ、愉快で面白い、そして優雅な音楽でした。
プーランクといえば、フルート吹きにはそのソナタが有名で私も1、2楽章は演奏したことがありますが、3楽章はそのスピードの速さ、高度なテクニックを要求するもので人前ではまだ吹いていません。しかし、難解なと言う難しさではなく、聴く立場に立てば、愉快で洒脱な、滑稽なところもある曲なのです。「田園のコンセール」の3楽章フィナーレもそれに通じるものがあったように思いました。

盛んな拍手で、曽根さんは5回程カーテンコールでステージに登場されました。チェンバロソロのアンコールは、期待したのですがありませんでした。

プログラム3曲目の「ブラ3」。ブラームス作曲の交響曲第3番へ長調。
この曲は、実は、医学部受験に失敗して浪人中、仙台の自宅の自室でかなり聴きました。週に3回は聴いていた様な気がします。確かあのレコードは、カラヤン指揮ウィーンフィルで悲劇的序曲と一緒になっている奴だったと思います。本当に溝がすり減る程聴きました。なので、演奏が始まるとほとんど全ての部分が体の中に入っている感じで(正確には、慢性の記憶を保持する記憶の二次中枢?にある音楽が、呼び戻されて出てくる感じ)ついつい体が動いてしまいます。
映画音楽にも使われて超有名な3楽章のチェロ、フルート、ホルン、そして弦全体で奏でるあの美しいメロディ。それも好きですが、私は1楽章の出だしと4楽章が好きでした。いや2楽章の牧歌的雰囲気もいい。結局全部好きなのです。ブラームスの交響曲は4つとも好きですが、どれか一つと言われれば私は「3番」と答えます。
浪人中の、悲しかった、辛かった当時の気持ちが蘇りつつありましたが、目の前で素晴らしい演奏をされる山響の音楽が現実に引き戻してくれて没頭出来ました。ただ、第1バイオリンが5プルトだったようで、この音楽は7プルトぐらいあった方がいいんじゃないか(管とのバランスから)とか、モーツァルト定期ではあの繊細な音を響かせてくれる、バイオリンが今ひとつ音程が不揃いというか不安定な印象がありました。どうしたのでしょう?
エキストラが多かったからなのか、希望ホールといういつもと違うホールのせいなのか。おそらく後者でしょうね。私はVnの位置に座って演奏した事がないのでよくわかりませんが、もしかすると自分の音が良く聴こえないのか、他の人の音が聴こえにくいのかも知れません。管はいつものように素晴らしかったので、弦の今ひとつの不揃いがちょっとだけ残念に思いました。

飯森さんの時と違って、アンコールがありました。ブラームスのハンガリー舞曲から第1番です。オケも生き生きとして演奏していました。

Photo_2終演後、ロビー交流会があったのですが、金曜の夜なのですが先を急いで帰る人が多く、あまり大勢の方が参加されなかったのは残念です。合唱指導で著名なS先生がインタビュアになって曽根さんのインタビュー。
「最初にチェンバロに触れたのは?」という質問に対して、曽根さんは「(桐朋)高校1年の時に、ピアノをやっていて、バッハが好きだったけれどどうもしっくり来ない、バッハの時代はチェンバロだったのだからチェンバロで弾いてみたら何かわかるんじゃないかと思って、学校にあったチェンバロを弾かせてもらった。初めて音を鳴らした瞬間に『なんだ!私ってこの楽器を弾くために音楽をやって来たんじゃないの!』と思った。」と仰っていました。
その直後、酒田のチェンバロ弾きさんと「何か質問はないか」と振られた家内ですが何も質問できずに黙っていました。曽根さんは家内と同じ事を言っているな〜と思って聞いていた私ですが、家内の心の動揺というか感動までは後ろに立っていて気付きませんでした。
実は、上記曽根さんの言葉を聞いたとき、家内は涙が出そうになっていたのだそうです。うちの家内も小さい頃からピアノをやっていて、大学(教育学部の音楽科)に入った時にその道では有名な小野崎先生に、「君は何をやりたいのかね?」と聞かれて「バッハがやりたいです!」と答えたところ、「こちらへ来なさい」と手を引くように別室(教授室?)に連れて行かれたのだそうです。18才の小娘の動揺はどんなものだったのでしょう。(笑)
そこにはチェンバロが置いてありました。ジャララ〜ン、と初めて弾いてみた瞬間に、家内は「私のやる楽器はこれだ!」と思って感動したということでした。曽根さんと同じような感動を、初めてチェンバロに触れた瞬間に感じ、その事を改めて曽根さんの口からお聞きして、当時を思い出し胸が震えたのだと思います。S先生の質問の振りに応えて口を開いたら涙がこぼれてしまいそうだった、とのことでした。(S先生、あしからず〜)

Photo_3続いて、酒田出身の工藤さんのインタビュー。なんと中学の同級生達が今回の演奏会に来て下さったそうですが、ほとんどの人がクラシックの演奏会、まして山響の演奏会は初めてだったそうです。皆さん、旧交を温めついでにクラシックファン、山響ファンになって頂ければいいですね。
酒フィルの面子は、最後の最後に工藤さんのサイン会のところでそれぞれに挨拶。そこで冒頭のプログラム写真への工藤さんからのサインとなりました。

本日、12/20(土)は同じプログラムで山形テルサで山響定期があるため、団員はみなとんぼ返りでした。バックステージに行ってみたところ、特別客演首席コンマスの高木さんやホルンの八木さん、岡本さん、フルート&ピッコロの竹谷さん、チェロのシンさんなどにはお会いしてご挨拶も出来ましたが、山Qの中島さん、倉田さん、茂木さん達にはお会いできず残念でした(本番前の休憩中に、喫茶店「山茶花」で家内が中島さん、倉田さん、田中知子さんにはお会いしたそうですが)。

インタビューの段取りの問題で、曽根さんのサイン会が行われなかったので、楽屋まで押し掛けてCDにサインを頂きました。10月に蔵王町のチェンバロ工房木村雅雄さんのところでお会いした事は覚えていて下さり、昨日は山響コンミスの犬伏さんと山形のプロのチェンバロ奏者梅津さんと飲んだのよ〜、と仰っていました。
今度は、酒田にもゆっくりいらして頂きたいものです。
庄内の食や酒も楽しんで頂きたいですし、おそらくジョンダーノ・ホールは曽根さんにチェンバロリサイタルをして頂くには、ベストの音響、広さだと思っていますので。。。

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コメント

え~若干の訂正がございます。
私が初めてチェンバロを弾いたのは、大学に入学して始めてのレッスンの日の研究室です。そこにはピアノとチェンバロが両方おいてあり、残念ながら別室に移動するというスリリングな体験(?)はしていないのでした~(笑)

では後ほどお稽古帳で~(^0^)/

投稿: kanon | 2008.12.20 20:24

balaine さんは2分前でしたか。私は山形テルサホールに駆け込み、席に着いたのが開演1分前でした(^o^;)>poripori
本物のチェンバロを見たのも初めてでした。とても美しい楽器で、いいものですね。当方の山響第193回定期の記事を、トラックバックいたします。

投稿: narkejp | 2008.12.21 08:20

kanonさん、いや〜、妄想が、、、
(大学教授が新入女子大生の手を取って教授室に、、、)
そんな訳、ありませんよね!はははは。。。
でも、その時の感激は一生心に残っているのでしょう。思い出の宝物ですね。

投稿: balaine | 2008.12.21 10:35

narkejpさん、TBありがとうございました。
曽根さんの弾かれた楽器はご自身所有のものではなく、梅岡楽器サービスのものです。梅岡さんのブログもあります。こちらです。↓
http://umeokagakki.cocolog-nifty.com/blog/

投稿: balaine | 2008.12.21 11:52

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