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2008.12.10

脳外オケ

ブログにする話題がないので、このブログにも時折コメントを下さる「KEN」さんがわざわざ届けって下さった新聞記事を取り上げます。

Photo_4日本経済新聞の12/3(水)号の第40面(一番後ろ)の文化欄に乗った記事です。
この記事を書かれたのは、元東大助教授から埼玉医大の脳外科教授になられ、現在は埼玉医大の国際医療センター病院長である松谷雅生先生です。
「日本脳神経外科学会オーケストラ団」Musica Neurochirurgianaの事務局長をされていて大変お世話になっておりますが、脳外科学会の中でも脳腫瘍、殊に小児脳腫瘍の権威で多くの教科書なども執筆されている大変偉い先生なのです。松谷先生本人からお聞きした事によると、松谷先生は淡路島のご出身で中学高校と野球部に所属されていたそうです。それとは別に小さい頃からバイオリンもされていたのですが、どちらかというと野球に一生懸命だったとの事。東大に合格したところ、高校の野球仲間から、「東京6大学リーグ戦はテレビ放送されるから松谷が見られるかも」と言われ、東大でも野球部に入るつもりだったのだそうです。ところが野球部は全員坊主頭で寮生活の上、1年生は上級生のユニフォームを洗うなどの上下関係の厳しいところだったとのことで、誘われて東大オーケストラに入部し野球部の方はあきらめてしまったとの事。それ以来、ずっとヴァイオリンを弾いて来られたとの事です。

そもそも「脳外オケ」が生まれたきっかけは、1987(昭和62)年に当時東大教授であった高倉公朋先生(後に女子医大教授、学長をされた)が会長で日本脳神経外科学会総会を東京で開かれた時に、助教授だった松谷先生が中心になって東大オケOBなどに声をかけて全国の脳外科医で楽器の出来る人を集めたことから始まります。
Photo_2その後紆余曲折あり、1999(平成11)年からは元東大学生オケの指導をされていた早川正昭先生に常任指揮者になって頂いて、年に2回、脳外科総会と脳外科コングレスの開会式典や会員懇親会などに際して、10分程度の曲を演奏するようになりました。(写真はリハ中の指揮者早川正昭先生)

1996年から参加させてもらっている私は、これまで合計で20回近く脳外科オケとしての演奏を経験しました。たしかに、寄せ集め、レベルもデコボコ、練習時間が少なく、合わせ練習は前日1回と当日直前のみというものです。それでも昨年のような素晴らしい経験もしました。
ちょうど「脳外オケ創立20年」という節目でもあり、一般の方にも演奏を聴いて頂くという大それた事をしたのです。
N響ハーピストの早川りさ子さんとの共演の事を書いたブログ、l「学会での演奏ほか」をご参照下さい。
これまでに、恒例の「夏の三島合宿」、コングレス直前の4月の東京での「集中練習会」などにも参加していましたが、開業1年目の今年は、どのイベントも欠席させて頂きました。平日に休みなどそう容易く取れる訳でもなく来年以降頑張ろうかな、と思います。

このオケの凄いところをいくつかあげます。
1)一つの医学関係の学会で自前のオーケストラを持っているのは脳外オケだけ
2)バイオリンからコントラバスまで全員自前の楽器を持っている
3)合宿まで行っている
4)継続して20年近く活動している
などでしょうか。
実際は、ティンパニやシンバルなどのパーカッションは学会をやる土地の大学オケなどにエキストラを頼みますし、楽団員全員が脳外科医ではなくその家族(妻、娘など)や友人の医師(内科医など)も含まれます。脳外科の若手はなかなか病院を抜けて演奏活動に参加しずらい事もあり、大学の教授、学長クラスの先生が4名、病院長クラスが3名と偉い先生が多いのも特徴的です。

「本番強い脳外科医オケ」という新聞の副題。
確かに神経をすり減らすような緊張の顕微鏡下手術(破裂脳動脈瘤にクリップをかけたり、危険な領域の傍紙一重の境界で脳腫瘍を摘出したり)を経験している脳外科医にとって、いざと言う時に集中力は普通の人よりも高いものがあると思います。ただ、普段練習量が少なく、合わせる時間も少ない以上は、本番に集中力を高めて「やってやる!」という風に演奏するしかないのです。細かいミスはたくさん、大きな事故がほとんどないだけでいっっっぱ〜い問題はあります。音楽以前の問題も多く、オケとしてどうなんだろう、「まあ脳外科医がこんだけ集まって演奏してるんだから拍手でもしてやろう、、、」みたいな同情もありそうです。
しかし、余暇の少ない者同士が集まって一緒に音楽を造り上げる過程とその結果は当然美味しいお酒を飲みながらの打ち上げという形で帰結します。普段は簡単に言葉を交わせないような偉い先生や遠くはなれた地域の同業者と仲良く音楽や脳外科の話で盛り上がります。
それが楽しみでやっているのかもしれません。。。


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コメント

ブログに名前が登場してビックリです^^
ありがとうございます。

いつか希望ホールで演奏会が開催されたらいいですね♪  聴いてみたい脳外科オケ。繊細な音楽空間となると思います!

オペの時は、BGMでクラシックを流したりするのでしょうか?書き込みしながら、質問したくなりました。すいません。

投稿: KEN | 2008.12.10 21:29

KENさん、新聞ありがとうございました!
う〜ん、どうだろう、脳外科オケ、、、繊細というよりは「大胆」な音がすると思います。(笑)

オペの際に音楽を流すのが好きな人と嫌いな人がいます(気が散るというらしい)。私はN病院で執刀するときは、自分で音楽を選んで流していました。
「絶対音感」のある人には、環境音楽もきついものがあるようですよ(うちのカミサンとか)。

投稿: balaine | 2008.12.11 11:30

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