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2008.12.06

久しぶりのCD購入〜その2〜

昨日の続き。
今回購入したCDのうち、まずはモーツァルトのピアノソナタ by バックハウス。
41cpksxsel_ss500_モーツァルトのピアノソナタのうち、4, 5番、10,11,12番の5曲とK.511のイ短調ロンドが入っています。
もう最初からバックハウスの音楽に陶酔します。
録音は50年近くまえのリサイタルの録音です。現代の高音質録音に比べれば、録音そのものはいかにも古色蒼然という音に聴こえますが、全然古くさくない。表現が難しいのですが、軽やかなだけではない、しかし重くも暗くもない、心地よい音楽がそこに広がります。

通常のピアノソナタは18番までありますが、その前半の9曲は中学1、2年の時のピアノのレッスンの課題でした。確かに、単純なテクニックの問題としては「中学生の僕」が弾いてもそれほど困難ではありませんでした。あまり真面目に練習しなかったので上手には弾けませんでしたが、それでも高松時代に女子大の講堂で東京から来られた著名なピアニストの公開レッスンを受けた事があります。
たしか、イ短調の第8番を弾きました。
冒頭の左手の和音が単純ながら難しい曲です。モーツァルトのピアノソナタに短調の曲は、この8番以外には14番のハ短調だけ。あとは全部長調の曲です。それだけに、軽やかではない、陰のある、重苦しくはないが爽やかに明るい音楽ではありません。「中学生の僕」には、短調のモーツァルトを演奏するような精神的成熟はまったくありませんでした。


3つ目は、これまたバックハウスによる「ベートーベン・ピアノソナタ全集」です。
31s7ryqp75l_ss500_こちらはCD8枚組の大作。生涯に2度全集の録音を行っているバックハウスですが、ステレオ録音も入った新盤の方です。モノーラル録音の旧盤の方が良いという人が多いようです。
それほどたくさんの演奏家のベートーベンを聴き比べた事がある訳ではありませんが、まったく個人的にベートーベンの「ピアノソナタ」ならバックハウス、「ピアノ協奏曲」ならルドルフ・ゼルキンと思い込んでいます。
まだ私が医学部の進学過程(昔は2年間の教養部と4年間の医学専門課程に完全に分かれていました)にいた頃のことです。山形大学には当時「とくおん」と称される特設音楽課程がありました。今は教育学部ではなく「地域教育文化学部」の中の「文化創造学科」の中の「音楽芸術教育コース」と名前を変えて、規模も内容も少々変わっているようです。当時は、芸大の他には国立大学で器楽や声楽の演奏を教える、いわゆる音楽学部は2、3しかなかった頃で、山大の「とくおん」には芸大や在京私立有名音大の教授陣が教えに来ておられました。

テニス部や聖書研究会などのサークル活動を通して「とくおん」にも友人がたくさんおり、ある人がベートーベンのピアノソナタ全集のレコードを貸してくれることになりました。山形大学の本部と教育学部それに医学進学過程がある小白川キャンパスには、「とくおん」にピアノ練習室として防音の整ったアップライトピアノの置いてある個室が30程、さらにグランドピアノのある練習室、小コンサートが開けるようなホールなどがありました。本当は「特音」始め教育学部の子だけが入れるのですが、こっそりピアノ練習室に入り込んでいろいろ練習、というか弾き散らしていました。
ベートーベンのピアノソナタも楽譜だけは購入していたので、借りたレコードを聴きながら楽譜を眺めたものです。そして、当時貧乏学生の私(なにせ昼食は主に70円のかけそば一杯で済ませていた)としては全集のレコードなど手が届かず、借りたレコードを全部カセットテープに録音したものです。そして、バイトして貯めたお金で無理して買ったTEACのカセットデッキにYAMAHAのA-1というアンプを通して何回も何回も聴きました。
それがバックハウスのベートーベンピアノソナタ全集でした。

自分がピアノを弾かずに、ただプロの演奏を聴いて批評批判する人の中には、新盤のバックハウスの録音は旧版に比べて「雑」だとか「深い精神性が欠けている」という酷いものまで見ました。バックハウスの場合、スタジオ録音よりもライブ録音を聴くとそのしっかりとした技巧の上にかなり自由度の高い(といってもハチャメチャナのではなく)音楽の喜びに溢れたテンポ感やリズム感を聴いて取れると思います。
そしてなによりもその音色です。
決してキラキラしているわけではなく、かといって湿度の高そうな暗い音でもなく、「深い」「枯れた」心に染み入る音だと思います。シュタインウェイではなくベーゼンドルファーの音色がバックハウスにぴったりだと思います。

聴いていて、心洗われるような、何も余計な事を考えずに音楽に没頭できるような演奏を久しぶりに聴き幸せな気持ちになれました。


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コメント

遅れまして申し訳ございません。新聞早めにお届いたします。

バックハウス・・・私も持っているぞと思いだし積み重ねられた山(笑)から見つけました!輸入盤のブラームスとベートヴェンのコンチェルト全集でした。購入日付を見ると92年と93年でしたから、今から15年前でした。当時は毎月CDを数枚は購入していましたが、今では年に1~2枚でしょか・・・。

CDを購入しない分、毎月「レコード芸術」を購読(ほとんど見ていない?)し20年分全部保管されています。(捨てられない性格・笑)

今年もあとわずか。それとCDに記入していた購入日を見て、時間の経過が早い!と再認識した12月7日01:24分でした。

投稿: KEN | 2008.12.07 01:25

KENさん、コメントありがとうございます。
「レコ芸」、買うとなかなか捨てられない音楽雑誌っていっぱいありますよね。
院長室の本棚がガラガラなので、そこにお預かりしてもいいですよ。(^^)
今日は、朝から「発表会」の準備でクリニックにおります。今、チェロ軍団がらリハ中で私も午後2時半過ぎに、出演しますよ(フルートでね)。
せば!

投稿: balaine | 2008.12.07 11:22

balaine先生

すっかりご無沙汰しております。
バボちゃんご一行来酒(遊? の折、お世話になりながらお礼も申し上げず失礼しております。

詳細は帰国後に書き込みますが、
私は今、オンジェイの地元モラウ゛ィア最大の都市にしてベルリンフィルシェフ夫人の出身地にいます。
サー・サイモン夫人の最新アルバムはお薦めですよ。是非聴いてください。
そう言えば山形には音楽科のある山形北高校(石井さんの母校?)もありますね
山形のクラシックの土台の強さを支えてる土壌は地方都市には珍しい高校音楽科の存在にも由来するかもしれませんね

酔っぱらって支離滅裂なのでこの辺で失礼します。
またカキコします。
お休みなさい

投稿: 潤 | 2008.12.08 03:43

潤さん、お元気そうで何よりです。
今はモラヴィアですか。そういえば、昨年オンジェから頂いたモラヴィア地方の白ワイン、まだ手を付けていませんでした。今度のお正月にでも頂こうと思います。
サイモン夫人の歌声はまだお聴きした事ありません。

山形北高は石井さんの母校です。たくさんの音楽家を輩出しています。元々は女子校で普通科は女子のみですが、音楽家には男子もいます。先日の曽根麻矢子さんレッスン生にも北高出身の男性がいました。

チェコは寒いでしょう。お酒であったまるのも良いですが程々に。。。(^^

投稿: balaine | 2008.12.08 09:40

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