第192回山形交響楽団定期演奏会+CD発売
山響定期は、11/22(土)の夜と11/23(日)の2回公演でした。
11/22は、酒フィル定期の翌週で、久しぶりにオケの練習のない土曜日でしたが買い物、雑事いろいろをこなしました。
11/23, 10時半少し前に出発。月山新道は路面は濡れているものの積雪はなし。路肩には除雪された雪が場所によってはすでに1m程の高さになっていました。
12時過ぎに山形に到着。まずは腹ごしらえと、久しぶりの「庄司屋」へ。
左は板そばの天ぷら添え。右は鳥そば。
板天の蕎麦に「海苔抜き」と頼むのを忘れてしまった。
久しぶりの庄司屋の蕎麦はやはり庄司屋の味。酒田でしょっぱい汁に慣れてしまったのかやや薄く感じる。美味しい蕎麦屋が多くはない庄内で、一生懸命うまい蕎麦を食わせる店を探したせいか、久しぶりでも感動が少なかった。
その足で駅西へ。今回は山形テルサの斜め向かいに立つホテル「リッチモンド」へ。午後1時に駐車場に車をいれ、早めにチェックインして荷物を置き、会場に向かう。
今回の定期演奏会は、昨年のチャイコフスキー国際コンクールバイオリン部門優勝者の神尾真由子さんが登場すると言うことで早くから評判になり、昨日はほぼ満席だった由。当日券を求める人が数十人並んでいるのを横目に入場。
まずは、先行発売になった山響のCDを購入。
「モーツァルト交響曲全曲演奏チクルス」より初のアルバムがついに発売になりました!
記念すべき第1号ディスクに収録されたのは、
1)交響曲第31番ニ長調 K.297「パリ」(平成19年10月第2回モーツァルト定期)
2)交響曲第39番編ホ長調 K.543(平成19年8月第1回モーツァルト定期)
3)交響曲ヘ長調 K.Anh.223(19a)(平成19年8月第1回モーツァルト定期)
4)モテット「アヴェ・ヴェルム・コルプス」 K.618(平成20年8月第4回モーツァルト定期)
山響のHPからも注文可能です。「こちら」をどうぞ!
今回の定期のプレトークで飯森さんが、「この演奏を音楽仲間にどこのオケの演奏か黙って聴かせたら、ヨーロッパのオケの名前を挙げた。」と嬉しそうに語っていました。SACDの超高音質のディスクに、ノン・ヴィブラート奏法の弦の美しい音が「スィ〜」と漂います。たしかに何の先入観も予備知識も無くこの演奏を聴いて、「山形交響楽団」の名前を挙げられる人はまずいないと思います。
演奏時間の短い曲が多いので、今回の初アルバムは上記のように第1、2、4回の定期から抜粋になっています。今後、続々と発売されるであろうチクルスのアルバム、すべて購入したいと思います。
さて、演奏会の方ですが、
ワーグナー: 歌劇「さまよえるオランダ人」序曲
ベートーヴェン: ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品61
シューマン: 交響曲第2番ハ長調作品61
というプログラムでした。
どれも素晴らしい曲で、ワーグナーの序曲も短いけれど演奏する方にとっては大変そう。
シューマンの交響曲も3番の「ライン」ほどの知名度はないが、シューマン好きにはたまらない曲。なかなか印象に残らないが第3楽章は印象的。今回は、モーツァルト定期と同じようにメインのシューマンでもピリオド楽器(&もどき)を使用。
フルートはパウエルも黒い木管、トランペットとホルンはピストンのないピリオド楽器、ティンパニも同じ。そして今回初登場は、トロンボーンのピリオド(風?)楽器。トップのNさんが吹くのはまるでトランペットのような可愛らしい大きさのトロンボーン。ピッコロトロンボーンとでも呼べるようなサイズ。いつもはバストロ担当のTさんが吹くのは、スライドに取っ手がついていて、人間の手の長さだけでは足らない分までなが〜〜〜く伸ばせるトロンボーン。現代のバストロは構えた時に肩の後ろに来る部分がグルグルとホルンのように巻かれていてそこで管が長くなっているのだが、ピリオド楽器では管がまっすぐなため、スライドをなが〜〜〜くする必要があり、そのために取手がついている訳です。
この3本のトロンボーンについては、プレトークの際に、トランペット2本、ホルン2本と合わせて7本で『運命』の第4楽章のパ〜ンパ〜ンパ〜〜!パ、パ、パ、パ、パ、パ〜ン!の部分を、現代楽器とピリオド楽器で吹き比べると言う面白いデモンストレーションがあり、その音色、音量の違いが百「読」は一「聴」にしかず、という感じでよく理解できました。
これらの楽器を使ってのシューマンの交響曲演奏というのは、おそらくヨーロッパ以外では初めてではないかという飯森さんの発言もありましたが、山形テルサに居ながらにして19世紀初頭のヨーロッパの中都市のコンサートホールにトリップしてしまったような素晴らしい音色に包まれました。
そしてなんといっても、今回は神尾真由子さんのバイオリン。
今、この20代の若さだからこそ出来る演奏という感じをうけるが、とにかく力強く、ダイナミックで、良く謳うバイオリン。超高音から低音まで幅広い音域を余裕あるダイナミクスでまさに「弾き切る」という表現が相応しい。
テクニークがどうとか、細かいパッセージがどうとか言う前に、その音色で人の心を強く惹き付け酔わせるそういう「もの」を持っていると思う。やはり何年に一人の逸材だと思う。チャイコのコンクールVn部門で優勝したのは、日本人では諏訪内晶子さん以来だが、優勝翌年の諏訪内さんはいろいろ迷いがあったようにお聞きしている。ジュリアードに学び、しばらくコンサートなどを封印して(?)いたが、再登場したときは明らかにコンクール優勝当時とは違った諏訪内晶子を聴く事が出来た。それに比べると神尾さんの方がしっかりしているように見えるというか、この若さで「自分」というものを持っていてそれが演奏に現れているように感じられる。
私は幸い米国留学中の平成5年だったか、当時ジュリアードに学んでいた諏訪内さんのメンコンを、ロリン・マゼール指揮ピッツバーグ交響楽団で、ピッツバーグのハインツホールで聴く機会があった。その時は、諏訪内さんの素敵なお母様にもお会いして、諏訪内晶子さんからサインも頂くことが出来た。
まだまだ可愛らしい少女の面影の残る美しい人だったが、意志の強そうな表情の裏に、不安げな雰囲気が見え隠れしていた様に思う。まだいろいろ迷いがあった頃なのだと思う(最近の演奏や表情にはそういったものを克服しきった、自信と落ち着きが感じられます)。
神尾さんが自信満々という風には見えないけれど、「自分」というものを持ってこれから音楽家として、バイオリン奏者として生きて行くんだ!という決意の様なものを感じられる。
先日、NHK-BSで神尾真由子さんの特集の再放送をやっていた。一度観たのだが録画してまた観てしまった。私よりもずっとずっと年下なのに、何か凄い事を成し遂げる人はやはりそれだけの器量というか器(同じ事か)を持っていると思わされました。「ものが違う!」ということですね。
今回の様な若く、力強く、艶やかな演奏は今後いつまで出来るかわかりませんが、すでに「神尾真由子の音」と言うものを持っているようなので、これからの更なる活躍と進歩を凄く期待します。
コンサート後、いつものようにロビー交流会が行われ、飯森さんと神尾さんがインタビューを受けていた。私は、彼女のデビューディスクにサインを頂いて、直ぐに次の会、JOFCの総会への手伝いに駆けつけるため会場を後にした。
JOFCの事についてはまた明日以降に書くつもりです。
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