« 今日は指揮者練習、明日はピアノ・リサイタル | トップページ | 希望ホール »

2008.10.20

サロン・コンサート第3回レポート

H20年10月19日(日)、拙医院のリハビリ室にてサロン・コンサートの第3回を行いました。
過去2回はフルートがメインでしたが、3回目にして初めてピアノソロ、そして女性奏者の登場です。石井理恵さんは一昨年の日本音楽コンクール本選入賞などいろいろな賞を獲得されている新進のピアニスト。山形生まれで高校まで山形で過ごしています。そういうことでお話をしてみると、とてもたくさんの共通の知り合いや音楽関係の知人をお持ちでした。

Photo前日10/18は東京音大で仕事をされて夕方の便で庄内へ。すぐに希望ホール「小ホール」での酒フィルの練習に合流され、2時間を超す練習です。オケがまだまだなため、指揮の井崎正浩さんの指示でピアノとオケの絡みやピアノの仕事とオケの仕事を団員に理解させるため別々に演奏したりと、ただ演奏するだけではない様々な(面倒な)注文に応じての2時間超でした。井崎さんも「石井さん、すみません、いいですか?」とか「ごめんなさいね、○○からまた弾いて下さいます?」と気を遣っておられました。
(写真は、17:40頃に希望ホールに到着して、オケが17:45~18:30の休憩&弁当の間に小ホールのシュタインウェイで「指ならし」をされている石井さん)

そんな過酷(?)な練習の翌日にもかかわらず、9時過ぎから練習にのぞまれました。
ピアニストの大変さの一つに、演奏会場に自分の楽器を持っていけない、ということがあります。極く限られた特殊な人だけ(たとえば往年のホロヴィッツくらい?)が自宅から愛用のピアノを飛行機で運んで来て演奏会場に設置するとか、せめて愛用の椅子を運んで来る人(グレン・グールドなど)もいますが、普通はピアノも椅子も演奏会場に置いてあるものを使う訳です。同じグランドピアノでも、メーカーはもちろん型式、年式、普段の使用頻度、メンテナンス、調律によってかなりの差があります。そしてピアノの置いてある部屋、演奏する会場などによって、響きも変わりますし、それによって演奏法も変えなければならないようです。
うちのリハビリ室『ジョンダーノ・ホール』は、もちろん「音楽専用」のホールではありませんし、その床面積(約60帖)や天井の高さ(低いところで3mくらい、高いところで6m弱)もヤマハの7シリーズのグランドピアノには十分広いとは言えません。
グランドピアノはその蓋を「閉じたまま」「半開」「全開」と変える事によって、音量/音色も変化します。「全開」にした方が、音色の面でその楽器の持つ特色がストレートに伝わりやすいので、前2回のサロンコンサートでフルートという音量のあまり大きくない楽器の伴奏の際にも「全開」にしました。今回、石井さんのタッチの強さ、ffの音量の大きさから蓋を「半開」にする方法もあったかもしれませんが、私が自分で弾いて感じるのは「半開」にすると弦の振動が空気の振動へ伝わるだけでなく、響板からピアノの筥体、そして足から床へと伝わる音が強くなって音色が変わるようです。また、観客が入った場合の音の響きも変わります。ピアノの位置(後ろの壁からの距離、左右の壁からの距離など)でも響きが変わります。今回の位置が最適だったかどうかはわかりませんが、ちょっとピアノの音が強い、ホールに反響した音が少しうるさい、と感じました。今後、いろいろ試してみたいとは思います。(足と床の間に吸音するクッションを入れた方がいいのかな〜、、、)

さて、9:30〜11:40くらい、ほとんど休憩を取らずに練習をされました。慣れないピアノのタッチに少しでも慣れよう、変わった環境の響きに少しでも慣れようと一生懸命取り組んでいる姿に感動しました。「そろそろ、、、」と声をかけなければいつまでも練習していそうで、本当にピアノが好きなんだな〜と感じました。
時間はタイトでしたが、折角なのでオケのインスペクタであるSさん夫妻を誘って昼食へ。S夫人は前2回のサロンコンサートでピアニストを務めて下さった方です。東急イン内の『ル・ポットフー』でランチを頂きながら楽しく談笑。石井さんとS夫人はピアニスト同士、いろいろな話に華が咲きました。興味深かったのは、現代のピアノの3ペダルの真ん中にある「ソステヌート・ペダル」の使い方の話や石井さんが東京音大で指揮科のピアノ伴奏(オーケストラの代わり)をしていることです。うちのピアノは古いので2ペダル方式ですが、3ペダルの「ソステヌート」というのは特殊であまり使いこなす人はいないようなのですが、ある音を鳴らしてからすぐに「ソステヌート・ペダル」を踏むとその音だけが長く伸びるということでした。よって、ピアノでオケの代わりをするときも(これもスコアから弾く場合もあれば、オケの楽譜をピアノ譜に書き直したものを使う場合もある)左手であるベースの音を「ポーン」と弾いて「ソステヌート」をかけておいて、両手で高音部を演奏するというような弾き方もあったり、現代曲でも「ソステヌート・ペダル」で弦を解放しておいて、違う鍵盤で音を鳴らしてその倍音で響かせるというような特殊な奏法もあるのだそうです。


ピアノリサイタルは13:30開場。
時間通りにぞくぞくと予約されていた方を中心に来場。当日飛び込みのお客様も数名。全部で45名ほどいらして頂きました。小さいお子さんもピアノ好きの方などは真ん前の真ん中を陣取って座っています。
14:00予定通り開演。
まずは1曲目、スカルラッティの「カプリッチョ」。
Photo_3指慣らしと観客が入った後のホールの響きを確認するかのように軽快な音楽。タッチの明快さが際立ちます。私は控え室からの誘導や挨拶や録音や、、、などでゆっくり椅子に座って聴いておられず立ち見で落ち着きなく演奏を聴いたのでなかなか演奏を冷静に、客観的に評価できません。
2曲目、ベートーベンの「ピアノソナタ第30番」。後期ソナタでも最後の方なので、聴いているとまるでオーケストラ譜をピアノ譜に変えたような雰囲気。ピアノの音が鳴っているのですがベートーベンの交響曲を聴いているような印象を受けます。
Photo_23曲目、ドビュッシーの前奏曲より「亜麻色の髪の乙女」と「西風の見たもの」。「亜麻色の、、、」は美しい弱音が優しく響きます。演奏後、「この楽器は弱音の幅が広いですね」と感想を言っておられたのですが、私などが弾いては出せない、静かな弱音、柔らかい弱音、少し力を持った弱音などを柔らかいタッチと弱音ペダルを使いながら引き分けておられたのは「さすが!」と思いました。「西風の、、、」は一転、強いタッチで激しい嵐のような、突き抜けるようなフォルテを奏でます。あっという間に30分ほどの前半が終了です。

10分の休憩を挟んで後半へ。
4曲目は、シューマンの「謝肉祭」。
Photo_4全部で21曲、通して演奏すると30分強。石井さんに伺うのを忘れたのですが25分ほどで演奏を終えられたので、全曲弾いたのか何曲か選んだのかわかりません。「前口上」から「フィリシテ人と闘う『ダヴィッド同盟』の行進」まで、一気に演奏されました。おどけたピエロ、優雅なダンスのワルツ、様々な音色が小さなホール一杯に響きます。

最後は華々しく終わって大拍手!
アンコールはショパンのノクターン。
Photo_5映画『戦場のピアニスト』でメインに使われた曲です。私も大好きな曲。
優しく、物悲しい、甘いメロディが響きます。
拍手、拍手、拍手。。。

素晴らしい演奏会でした。
広いコンサートホールで、フルコンのグランドピアノを聴くのとはまた趣の違った演奏会だったと思います。それこそ、シューベルトやショパンやリストなどが、自宅や招かれた貴族、友人の家のサロンでピアノを弾いていたような「サロン・コンサート」をイメージはしているのですが、そういう雰囲気に慣れないのでどうしても「演奏会!」と構えて聴く雰囲気になってしまいます。
石井さんは昨日チャイコフスキーを、あんなに音の多いPコンを2時間以上弾いたばかりなのに、今日のこのバラエティに富むプログラム。しかも全部暗譜!ピアニストにとっては当然なのかもしれませんが、それが頭に(つまり脳の中ですが、感覚的には「体」に)全部入っているというのは本当に不思議ですし、感心します。「もうちょっと、このホールに合うような、静かな、サロン的な音楽を選べば良かったかもしれないですね、、、」と演奏後のご本人の感想。弾いているご本人もちょっと音の響きが強すぎるということを感じておられたようです。
でも、石井さんの素晴らしい演奏のお蔭もあって、11/16(日)の酒田フィルの定期演奏会の宣伝をしたら1枚チケットが売れました!

今回はじめてピアノ単独のサロン・コンサートを開催しましたが、ピアノの響き、ホールの響きについてもっと研究していろいろ対策をとらないと行けないな〜と感じました。また、床、天井に木が多く使われ床下もコンクリートなどで固めていない、「元は鉄骨作りのコンビニ」であるこのホールは、弦楽器の響きに合うような感触を持っています。今後、山Qさんなどのプロはもちろん、酒田フィルの弦のメンバーに依頼してまた「サロン・コンサート」は第4回、5回、と続けて行きたいと思っています。
2日間、みっちりとピアノ演奏をされて、観光も何もされなかった石井さんには本当に感謝でございます。こんな素晴らしい演奏家と一緒にピアノコンツェルトが出来るなんて感激です。

帰りの飛行機まで少し時間があったので、芸文協の会長である工藤先生がやっている『あいおい工藤美術館』(拙ブログ記事「あいおい工藤美術館」初訪問!を参照)にお連れしました。前にも書きましたが酒田出身で山響の正指揮者工藤俊幸さんのお父上です。
古い着物、骨董品、土人形、瀬戸人形、古い簪などの小物と言った、マニア垂涎の品々を趣味で集めて土日を主に展示している「お店」です。取り壊される寸前だった、立派な蔵付きの質屋を無理して借り上げて個人的に運営している美術館でもあります。
石井さんはご両親が米沢出身で、お祖父様が「米沢織物」の関係で着物が好きで、神社仏閣、古い物、骨董品に興味がおありのようで、ちょっと気が向いてお連れしたのですが本当はもっと時間があればゆっくり観ていたいというような感じでした。
すっかり陽も暮れた夕方18時過ぎの羽田行きの便で酒田を後にされましたが、今回の指揮者練習とサロン・コンサートで親しくして頂く事が出来て幸せでした。11月の定期演奏会の石井さんのチャイコがますます楽しみになりました。オケも頑張って少しでもいい演奏をしたいものです。

|

« 今日は指揮者練習、明日はピアノ・リサイタル | トップページ | 希望ホール »

コメント

コンサートのご成功おめでとうございます!
主催者の側に立ってみると、色々な事に気配りが必要な事が分りますね。

グランドの響き!
我が家も、厚手の絨毯やカーテンを使用しています。吸音効果?

♪お疲れ様でした!

投稿: kokutan | 2008.10.21 15:23

ありがとうございました!

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

石井さんと酒フィルを聴きに行かなくてはなりません。今から楽しみです。

簡単ですが、コンサートのお礼まで。

投稿: KEN | 2008.10.21 23:49

kokutanさん、カノンのブログともどもコメントありがとうございます!
ホールもまだ新しいので徐々に変わって行くものと思います。ピアノは(響きを最善とする方法を)いろいろ研究してみたいと思います。

投稿: balaine | 2008.10.22 02:36

KENさん、どうもです。もっけだ!
練習で聴いていても石井さんのピアノのカデンツァには感動してしまいます。
あまりの凄さに自分が演奏するのを忘れてしまいそうになります。
是非、是非、お聴き逃しなく!!!v(^^

投稿: balaine | 2008.10.22 02:38

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/74618/42845370

この記事へのトラックバック一覧です: サロン・コンサート第3回レポート:

« 今日は指揮者練習、明日はピアノ・リサイタル | トップページ | 希望ホール »