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2008.07.14

山響定期を聴く(2)

MacBookが昨晩、突然空回りを始め、再起動をかけても昏睡状態で起きてくれません。
というわけで、書きかけの文章は消えてしまいましたが、あらためて冷静に感想を書こうと思います。

1曲目のレズニチェクの歌劇「ドンナ・ディアナ」序曲。
スリリングな演奏でした。面白い曲だな〜と思っていましたが、賑やかにずんちゃかずんちゃかやっているうちにあっという間に終わってしまいました。私にはよくわからない曲でした。

2曲目のチャイコフスキーのバイオリン協奏曲。ソリストは一昨年も山響と演奏された川久保賜紀さん。あの時は、ブルッフの協奏曲。今回はバルトークの予定だったのだが、直前まで体調を崩して入院治療を受けられていた(ドイツで)そうで、十分な準備ができなかったので、演奏をキャンセルしない代わりに曲目をこれまでに何度も引き込んでいるチャイコに変更された。
病み上がりという先入観からか、細身の体が更に細くなった様な印象があったが、演奏は天から聞こえてくる様なハーモニクスの超高音から鬼気迫る様な低音まで、幅広いダイナミクスと音域の曲を弓の自在な操作で自由に演奏されていた。素晴らしい演奏だった。

そして、昨日(アップしたのは今日の深夜になってしまったが)の記事にも書いた様に3曲目の「悲愴」。
これは昨年11月に酒田フィル定期でも演奏し、私はフルートトップを吹かせていただいた。そのため、演奏を聴きながらも目の前にはフルートの楽譜が現れ、心の中では足達先生と一緒に吹いてしまっていた。ブレスを足達先生と一緒に取る様な状態で飯森さんの指揮に観客席にいる私も操られた。
1楽章の憂鬱や爆発、静けさと荒々しさ、2楽章のワルツ、しかし3拍子ではなく5拍子。一見明るい舞踏の様に見せながら、さっと振り向くと沈鬱な、抑制された不満がわき上がるのを必死でおさえる様な揺れる感情をみせる。3楽章のマーチ。しかし、軍隊の行進曲ではなくチャイコフスキーの頭の中でいろいろな感情があふれている様な、抑制の利かない、理性的ではないもつれ暴れる心。
そして、ついに悲しみをこらえ、乗り越えようとして乗り越えられずに死をむかえる4楽章。
バイオリンに多少の乱れがあったか?と感じたけれど、キチッと揃った安全運転の演奏ではなく、暴れる感情を押さつける際に生じるがごとき乱れというのはこの曲が持つ特徴そのものとも言える。
いつもの様に管楽器は素晴らしい。特にファゴットの高橋あけみさんとクラの牧さん、そしてトロンボーン隊、中でもバストロの咆哮にはノックアウト。トランペット、ホルン、オーボエ、フルート&ピッコロ、そして打楽器隊も素晴らしかったが、やはりトロンボーンとチューバの大活躍するこの曲ではBravoはバストロ&チューバに送りたい。

昨年の酒フィルの演奏はおいておいて、今年1月のカラヤン生誕100周年の小澤征爾指揮ベルフィルの「悲愴」。そして先日の酒田での小澤征爾指揮新日フィルでの「悲愴」。曲が素晴らしいので、どの演奏も素晴らしいのは間違いなく、いずれの演奏も魅力的であったが、10型の小編成で挑んだ今回の山響の「悲愴」が最も迫力があったのはなぜなのだろう。管の編成からすれば「14型」ぐらいが普通なのだが、コントラバスはたったの4本の「悲愴」。ビオラは3プルトの6人4プルト8人だった。
飯森さんの解釈なのであろうが、楽章の中で、ドラマチックに変化する部分では、キチっと切って、場面を変える。
精神を病んだチャイコフスキーが楽譜に書いた「ppppp」=ピアニッシッシッシッシモ。
物理的には演奏不可能とすら考えられるのだが、それは解釈の問題。1楽章でクラのppppからファゴットが受け継ぐところなどは、いくらでも小さな音が出せる一枚リードのクラに比べて極小音の出しにくい二枚リードのファゴットを使わず、セカンドクラが「バスクラ」に持ち替えて演奏する事も多い。今回、飯森さんは譜面の指示通りファゴットに吹かせた。しかも「p」位の「大きな」音で。驚きだったが新鮮な感じだった。pppかppppの指示のはずの下降音を高橋さんは飯森さんの指揮に従ってゆっくり、はっきり発音していた。そして一旦静止。沈黙。そして爆発!
こういう場面の切り替えや味付けはさすが飯森さんといったところ。
全楽章について細かく語りたいが、語るだけの知識や能力がないのでこれくらいにしておく。
でもやはり4楽章。
全楽器の演奏からドラの音を合図に天上の音楽、神のお迎えか。そして次第に楽器が減って行き、管は誰も演奏せず、バイオリンが演奏を終え、ビオラが演奏を終え、チェロが演奏を終え、そして1楽章の最初と同じくコントラバスだけになって終わる。。。

こんな感動的な音楽を、生で、生きている間に何回聞けるのだろうか。日曜日に酒田から車を飛ばして来てよかった。やはり飯森さんは素晴らしい!それに応える山響は本当にBravo!である。
酒田に移り住んだため年間通しての定期会員ではなくなった(庄内定期があるので)。今回のチケットを買う際に私が考えたのは、「悲愴」と飯森さんの指揮。コントラバスとファゴットから始まり、コントラバスで終わる。最後は、コントラバスを操りながら一緒に死を迎える様な指揮をされるはず。上手(かみて)のバルコニー席ならその表情をつぶさに見られるだろう、そう思って席を予約した。
その狙い通り、1楽章でビオラに指示を出す顔、終楽章でコントラバスだけを指揮する顔。飯森さんの表情は、苦悩に満ちた、悲しみをこらえ耐えようとするチャイコフスキーの顔だった。その表情を見ただけで引きずり込まれる。山響の団員が飯森さんの指揮に揺り動かされ魂の演奏をするのも当然という感じがした。
演奏終了後、ファゴットの高橋さんやオーボエの齋藤さんは、汗を拭いていらしたのだろうか、それとも涙を拭っていたのだろうか。クラの牧さんは汗を拭いていたのだろうか、やはり涙だったのだろうか。
今回の第2バイオリンには客演首席として都響OBの平尾さんが乗っていらした。3月の酒田でのオペラ「ラ・ボエーム」でコンミスの神谷さんの後ろ、2プルを務めてくださった平尾さん。今度8月には、酒田で開催する山形県アマチュアオケ連盟の行事でアンサンブルの指導をしてくださることになっている。ご挨拶したかったけど楽屋までは行けなかった。

Photo_2終演後のロビーでは、多くの観客が興奮した面持ちで、飯森さんと川久保さんのインタビューを聞いていたが、私はバストロのTさんやコンミス犬伏さん、他多くの演奏者に賞賛と挨拶のためいろいろな人と話をしていたためほとんどインタビューは聞いていなかった。
2年前に演奏会終了後ロビーで一緒に写真に納まっていただいた時にはジーンズ姿だった川久保さんだが、今回は夏らしい涼しげなワンピースを着ておられ、近くで拝見するとご病気は感じさせない雰囲気だった。しっかり回復されたのなら良いのだが。

今回の演奏会は、YBCがこの秋(11月?)に放送予定の飯森さんのドキュメンタリー番組の取材も入っていた。ステージのチューバの脇には「飯森カメラ」とも言うべき小型HiVカメラが設置され、2階席後方からもテレビカメラがシューティングしていた。そして終演後のロビーでYBCの青山アナと金本アナにお会いした。金本美紀さんは、先週1週間(7/7〜7/11)、朝のYBCラヂオ番組に出演した私のお相手をしてくださった方。先日のお礼を言うため挨拶をしたら、取材を受けてしまった。まだ音楽に興奮していたので何をどうしゃべったか良く覚えていないが、チャイコフスキーは凄い、山響は凄い、飯森さんはやはり凄い、ということを言った様な気がする。酒田に向かって車を運転する帰路で、「変な事言わなかったかな〜。番組に使われたらどうしよう〜」などと急に心配になった。

今回の演奏会は、早速本日の山形新聞のネットニュースにも記事が掲載されていた。こちら→。
山形新聞ニュース「迫真の演奏に盛んな拍手」

本日のおまけ。
昨日は朝7時に酒田を出発。県の運転免許センターで「2時間」の講習を受けさせて頂きました。
目出たく免許を更新(普通運転免許ではなく、「中型(限定)」となっている、2年前からこうなったらしい)。コンサートまで時間があるので、七日町商店街や駅前をふらつき歩いていた家内を拾って、上町の「竹ふく」へ。
Photo_3山形の蕎麦というと、太めで固い板蕎麦が典型的なのだろうが、私は東原町の「梅そば」やこの「竹ふく」、天童の「やま竹」のような、一番粉の細麺や更級系も大好きです。
板蕎麦は「蕎麦を噛んで食べる」感じがするのだが、こういった細麺は「啜って喉で味わう」感じがする。今日は「免許更新&山響久しぶりに山形で聴きます」記念にちょっと豪勢に二色天せいろ。お蕎麦ともう一つは青じそ切り。ほのかな青じその香りと爽やかな味が美味しかった。

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コメント

良かったですね~。当方も、早朝から庄内と内陸を高速で移動した一日でした。山響の定期演奏会、開演時刻にちょっとだけ遅刻してしまい、レズニチェクは聴けませんでした。残念!終演後のファンの交流会で、グレーっぽい着物の女性を見かけました。もしかしてあれがkanonさんかな?だとすると、近くにbalaineさんが・・・と探しましたが見当たらず。
>私はバストロのTさんやコンミス犬伏さん、
>他多くの演奏者に賞賛と挨拶のためいろいろな人と話をしていた
なるほど、そのためだったのですね。
当方の素朴な感想記事をトラックバックいたします。

投稿: narkejp | 2008.07.14 19:41

カノンの方にもようこそ!
narkjpさんが撮影されたテレビクルーの位置から、撮影位置が推定されますが、上の写真では切れている位置ですね。
私の感想は、個人的思い入れの偏りのあるものですが、そんなものでも多少の意義はあると思って書いております。
これからもよろしくお願いします。

投稿: balaine | 2008.07.16 13:58

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昨日は、早朝から庄内へ。午前中は庄内で役割を果たし、昼食も抜きで、すぐに高速を飛ばして山形へ向かいます。会場の山形テルサへすべり込んだのは、開演時刻を過ぎた14時05分頃でした。飯森範親さんのプレトークも、最初の曲目、レズニチェクの歌劇「ドンナアンナ」序曲も聴くことができず、わずかに最後の部分を会場内のモニターで眺めました。ようやく入場した座席は、後列左端と条件は良くありませんが、独奏者の表情などはよく見えます。 さて、ソリストの川久保賜紀さん、少しくすんだ黄緑色というのか、若竹色のロングドレス。... [続きを読む]

受信: 2008.07.14 19:32

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