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2008.03.04

交通事故と自由診療

医院開業2日目でした。今日も必死で(私は本来「必死」なんていう言葉を安々とは使いたくないのですが)なんとか終わりました。「無我夢中で」と言い換えた方が正しいかもしれません。

今日も、脳卒中が心配な頭痛患者さんを始め大勢(?)いらっしゃってくださいました。11名の新患と1名の再来(昨日の採血結果を聞くため)でした。本人の希望と医師の判断により、9名の方にMRI、2名の方にX線撮影を行いました。採血は今日は「0件」でした。腰痛、頸部痛、肩関節周囲炎などに対する消炎鎮痛処置としての医療用マッサージ(ウォーターベッド)で6名の方が治療を受けました。最後に、交通事故で軽症ながらも受傷された方を診察しました。警察に提出する診断書と診療費用のところでとまどいました。
診断書作成は「自由診療」です。
交通事故は基本的に「自費」扱い(もちろん患者の希望で保険診療をしても良いはず)です。交通事故の診療においては保険診療でない場合、自由に診療単価を設定して良いことになっています。保険診療と同じように1点=10円でもいいし、場合によっては1点=100円(普通の10倍!)でも法的には良いはずです。

そもそも日本の医療は、保険診療という体制で守られ(別の言葉で言えば縛られ)ています。欧米では自由診療が普通ですので、どの病院でどのくらい医療費がかかるかは「公開」されていても、行ってみなければわからないところもあります。日本と違って、アメリカやドイツで盲腸の手術を受けたら100万円請求されたなどというのは当たり前の世界です。心臓移植などの高度で金のかかる医療の場合、入院費用、ICU費用、手術費用、等々で通常5000〜6000万円くらいかかるのは当たり前の世界です。

日本で保険診療制度に守られて(縛られて)、医師である私自身も医療費のことなどまじめに考えてきたことはありませんでした。病院勤務の場合、自分が診察した、手術した患者さんがいくらかかっているかなんてほとんど考えたことはありませんでした。実母がくも膜下出血で手術治療を受けた時に、くも膜下出血の患者さんはどのくらいの治療費を払うのかと初めて知りました(実感としては、「あれだけの治療をしていてたったこれだけで済むんだ!日本の医療費は安いんだな〜」でした)。

今回、開業して、初めて、一つ一つの手技や検査などにいくらかかるのかを考えることになりました。そして開業2日目にして、「診断書料」を設定していなかった事、「自由診療の交通事故の単価」を決めていなかった事を思い知らされました。地区医師会の先生に電話をかけ、税理士さんに相談し、インターネットで調べて、きわめて常識的な線かそれより低い額に設定しました。高く設定すればその分、一時的な収入は増える訳ですが、個人事業として後ほど収入にかかってくる税金の事を考えると、たとえ診断書料を一枚10000円にしたところで、交通事故の診療単価を100倍にしたところで、結局税金で持っていかれることになるので自分の懐に入るお金が増える訳ではないのだということを、地区医師会の先輩医師に教えてもらいました。なるほど〜、、、でした。
インターネットで調べると、通常書式の基本的な診断書料は東京辺りでは消費税込みで3150円というところが多かったように思います。先日まで私がお世話になっていたUクリニックでは一枚2100円という設定にしているそうです。交通事故の診療単価は1点=12〜20円の幅の中で各病院が自由に設定している場合が多いそうで、特に決まりはないようです。
これらのちょうど中間あたりの設定にしようと考えています。

交通事故の際に支払う医療費の設定ってこうなってるんだ、診断書作成費用ってこうなっているんだ、とあらためて深く理解した一日でした。
日本の医療費って、やはり世界中の先進国の中で水準の高い医療を展開している割には、「割安だな〜」というのが実感でした。ただ、これは払う患者さん側にたって考えてみれば、1円でも安い方がうれしい訳で、出来れば「無料」というのが理想です。
医療行為は本来はヴォランティア活動であるはず、あるべき、とは私も思います。日本国内の全医療行為や介護が無料で提供できればこれは理想でしょう。しかし、実際は物を使い、人を使い、機材を購入し、薬を購入し、訓練を積んだ専門家が実践するのですからこれを全部「無料」にするためには、当然「公的資金」(=国民の税金)を注ぎ込まなければなりません。すると、健康で医療行為をあまり受けない人は、税金だけ払って医療行為による恩恵を受けない訳ですから、赤の他人の病気の人のために汗水たらして働いた税金をごそっと持っていかれる(公的資金だけで国民の医療費を賄おうとすれば、おそらく消費税は20%位にして、所得税ももっと上げなければならなくなるでしょう)という「不公平感」を感じるでしょう。
結局、「タダ」にはできないものなのですね。
誰が何の目的でどれだけ払うか、そこで弱者(高齢者、低所得者)に不利にならないような制度が守られなければならないのですが、日本の保険医療制度は医師の収入や病院の収入をきわめて低く抑える事によって存続している制度なのだと思います。それが先日も書いた、「ヒラリー・クリントンのため息」という話(「勤務医生活にお別れです」)になる訳です。

さて、3/3の開院に合わせるように、本ブログのアクセスカウンターが20万をヒットしました。
20万をゲットされた方お目出度うございます!
これからもこのブログは続けていきますので、よろしくお願いいたします。>皆々様 m(_)m

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