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2008.03.24

MRI勉強会その4

「その1〜3」がいつだったのか、不明確ではありますが。。。(笑)

Sah0324aまずは、この6つの同一患者さんの連続スライスをご覧ください。
プロは見ればすぐに異常がわかりますが、いかがでしょう。誰にでもわかりやすいようにコントラストなどを調整した画像です。これはFLAIR(=Fluid Attenuated Inversion Recovery)という撮像方法で見た「くも膜下出血」のMRIです。

こうなった原因は、これです。
Sahan0324これは、MRIで撮像した脳血管、すなわちMRA(=MR Angiography)です。
顔のほぼ正面から見ていますが、右中大脳動脈に直径8mmほどの脳動脈瘤を認めます。写真では、むかってやや左側にある少しぼんやりした膨らみです。Rt. M1M2(右中大脳動脈水平部末端分岐部)動脈瘤です。
写真のほぼ中央にも大きさ5mmほどの膨らみがあります。これはBA-rt.SCA(脳底動脈ー右上小脳動脈分岐部)動脈瘤です。
さらに、写真の右側になる左中大脳動脈水平部末端にも小さな径3mmほどの膨らみを認めます。
同じ人に3つの脳動脈瘤があることになります。

「くも膜下出血」が明らかであっても、CTで出血の偏りが少ない場合、2個以上動脈瘤が見つかると破裂したものと未破裂のものの鑑別に困ります。この事例では、FLAIRで画面左側の「右大脳」にくも膜下出血の偏りがあり、6枚のスライスの一番左上のものに、脳動脈瘤と考えられる少し黒っぽい信号が写っています。おそらく破裂した後、瘡蓋ができて出血は止まり、瘤の中の血流速度は正常血管ほどは速くないものの流れているので黒っぽく見えるのでしょう。流れが遅いか、渦を巻いているため、MRAでは「ぼんやしとした」膨らみに見えるのでしょう。
脳底動脈と左中大脳動脈の動脈瘤は「未破裂」で偶然見つかったものと考えられます。

開業4週目にして、ついにくも膜下出血の患者さんが受診しました。
10日ほど前に突然の頭痛と嘔吐で発症し、ある診療所を受診したら、熱も37.6℃あり「風邪」という診断で風邪薬を処方されていました。「頭が痛い」と自分で車を運転し、歩いて来た患者さんが、微熱があれば「風邪」と診断しても仕方ないかもしれません。その診療所の医師は責められません。ただ、頭痛以外に「風邪症状」があったのでしょうか。咽頭痛、咳、鼻水、咽頭の発赤という症状です。
薬を飲んでもあまり頭痛が改善せず、当院を歩いて受診されました。
意識は清明ですが、なんとなく表情が冴えず顔色が悪い。24年間の脳外科医の勘?からくも膜下出血もあり得ると思いましたが、「髄膜刺激症状」はまったくなし。それでも可能性を疑ってMRIを撮ったらあったのです。

くも膜下出血は、出血する場所と量によっては救急隊が到着したときには呼吸が停まっているような超重症もあれば、この症例のように頭痛のみ、または頭痛と吐き気だけで我慢して仕事をしたり、車を運転している場合もあるのです。怖いですね。
このかたの場合、手遅れにならないうちに的確な診断がついて良かったです。
すぐにN病院のA先生とE先生に電話して、手術治療のための緊急入院をお願いしました。

今日は、それ以外にもまた慢性硬膜下血腫(これもN病院に紹介)に、Wallenberg syndrome(右PICA領域脳梗塞、こちらはくも膜下出血患者紹介の後だったので神経内科のS先生に紹介)も見つかり、大忙しの上に、大変な病気がたくさん見つかった、ちょっと変な日でした。

確かに、私も病院勤務時代、必ずしも寒く冷え込んだ日ではなく、だんだん気候が緩んできて、でもまだ朝晩冷えるという季節の変わり目にも脳卒中がいっぱいあったように記憶しています。

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コメント

本日はお疲れ様でした。
13時にチケットを持参しましたら、待合室に患者さんがまだ沢山おられましたので、先生はじめスタッフの皆さん昼食は取れたのでせうか? 

投稿: kenken | 2008.03.24 19:54

あれれ?「ミニ・オスカー」というHNではなかったですかの?
昨日は失礼しました。12時すぎて2名の新患が来られ、うち余目の方は12:30少し前の受付でMRIも希望されたため、午前中分の診療は午後の診療開始時間2時になってから終わりました。kenkenさんの事をご存知のようでした。
私は患者さんの診察の合間を縫って3分間で昼食をとり、スタッフは交代で30分くらいは休みました。暇な時もあれば、忙しい時もあるのです。
チケット、確かに受け取りました。

投稿: balaine | 2008.03.25 09:39

年に一回(夏に)MRIを撮るのですが、ある年、先生が、「暖かくなってきたことだし、MRIでも撮ろうか。」と、春に撮影・・・。なぜ、暖かくなるのとMRIを撮るのがつながるのかと疑問だったのですが、卒中がおきやすいのですね。疑問がとけてスッキリ(^_^)

暖かくなり、外出もしやすくなったし、道路の雪も溶けたし、口コミの威力も出て患者さんは益々増えそう。忙しくなるとは思いますが、奥様や職員の皆さんも協力してくれるので心強いのですね。

投稿: ふなゆすり | 2008.03.26 18:19

ふなゆすりさん、そのドクターがそういう風に考えられていたかどうかは、、、?ですが。。。(笑)
脳卒中はやはり季節的には冬場に多いです。暖かくなって来て、急患も減ったからゆっくり健康診断的MRIでも撮りましょうか?という意味かも知れませんし。。。

地元の病院の脳外科医、神経内科医、近隣の開業医の方々、ほとんどが「顔の見える」関係であり、特に脳外科医の先生は皆私の後輩なので「いや〜、忙しいところ悪いんだけどさ、急患一人お願い!すぐ送るから。」って「ため口」でお願いできる所も心強いです。

投稿: balaine | 2008.03.27 02:27

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