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2008.02.11

山響「鳥海春待ちコンサート」

昨日、平成20年2月10日(日)、遊佐町の中央公民館で山響のコンサートがありました。ちょうど、前日にモーツァルト定期第3回が山形テルサで行われたので、それと全く同じ出演者、同じプログラムです。
このコンサートが決まった時、どうせ庄内でピリオド奏法も美しい「モーツァルト定期」をやるのなら、なぜ庄内町響ホールでやらないんだろう、と思いました。
響ホールはその名の通り響きが美しく、ギターの福田進一さん始め多くのアーティストがCD録音のためにだけ使ったりする程のホールです。場所も、酒田と鶴岡の中間のやや東で、庄内一円の中心部に近い所にあります。酒フィルのファミリーコンサートなどでも使っていますが、フルオケにはちょっと響きが強すぎる感じですが、小アンサンブル、たとえばアフラートゥス五重奏団もここで2回公演していますが、四重奏、八重奏、小規模のオケにピッタリのサイズです。モーツァルト定期の山響は大きくても第1Vn4プルトの2管編成で、小さい時は6-6-5-4-3の打楽器なしという30人足らずの編成になりますので、ちょうどいい感じなのです。客席は満席でも500と中規模のホールで、山響がモーツァルトシリーズを引っさげて来るなら満席に出来るのではないかと思う次第。
しかし、行政の問題なのか、現場の問題なのか、人の問題なのか、その全てなのか、どうもチケット販売とかコンサート誘致に熱心ではない印象を受けます。

一方、昨日の会場となった遊佐町中央公民館は、開館35周年を記念しての事業ですが、お世辞にも立派とは言えない設備です。バックステージはちゃんとした部屋は一つしかありません。オンジェのリサイタルの時は、ピアニストの藤井さんは女性なのでドアの付いたその部屋を控え室にして頂き、メインのオンジェにはなんとカーテンで仕切るだけの簡素な部屋とも呼べないステージ裏の一角をあてがった程だったのです。しかも暖房が効かず寒い。ステージの狭さは、「ファルカシュ・ガーボルのリサイタル」「オンジェのリサイタル」の記事で載せた写真でよくわかると思います。客席は500と「響ホール」と同じ位の数ですが明らかに狭いです。
バックステージがこんな感じだから、山響音楽監督の飯森さんには当然の様に藤井亜紀さんが使ったドア付きのバックステージの部屋があてがわれると、団員の控え室はありません。なんと公民館の階段を上がった2階の部屋が団員の控え室。ですので、演奏直前になると、ホール前の受付の横を燕尾服を着た団員が横切り、「あら、こんにちは〜」という何ともアットホームと言えば聞こえがいいのですが、雑然とした感じです。タバコを吸う団員の方は、館内禁煙のため公民館正面玄関階段脇の喫煙所に集まります。ですから、そこで楽団員、聴衆、実行委員会の人などが雑然と仲良く(笑)タバコを吸っています。

15:30開演の5分程前に飯森さんが登場し、いつものコンサートと同じく「プレトーク」をされます。
山響は遊佐で演奏会をした事がありますが、飯森さんとしては生まれて初めて来られたそうで、そんな話から始まってモーツァルトの事(お父さんもいますから、アマデウスのことです、とわざわざ断っておられました)、本日のプログラム曲のこと、その背景(年齢や旅行、JCBachとの触れ合いなど)を説明、そして前日のテルサと同じ様にピリオド奏法の説明です。
Photo足達先生は、金のフルートと黒い木管のフルートをみんなに見せます。そこで大変面白い裏話を披露されました。
「実は、今日は自分の金のフルートを持って来なかったので、これは遊佐町のYSさんのフルートをお借りしました。」会場がどよどよとします。酒フィルの私の仲間で、遊佐、いや庄内では有名な笛吹きのYSさん。以前、NHKの企画だったか、山響とモーツァルトのフルート協奏曲(ニ短調?)を共演したこともある程の人なのです。飯森さんが、「それは金ですか?」と質問すると、足達先生が事も無げに「はい、18金ですね。」と言ったため、会場は「おお〜」とか「金か〜」という感じで更にどよめきます。
打ち上げの席で聞いた話では、家人にも(両親など)金のフルートとはちゃんと言っていないそうで(別に隠している訳ではないでしょうが)、「これでみんなに知られてしまったのぉ、困ったのぉ」と嬉しそうに話していました。ご自身が農家なので余り金とか何とか派手な事が苦手なんだと思います。
まあ、YSさんのフルートは(私のも同じですが)キーなどのメカニズムは銀製で、足達先生のは全て18金のため、同じ18金と言っても3倍近いお値段がする代物なのですが。
テルサで聴くよりも、金の笛と木の笛の音色の違いがよりわかったのは面白い発見でした。明らかに音色が違いました。
つづいてトランペットの井上さん。ナチュラル管の青い房の付いたトランペットはトロンボーンと同じ長さがあり、トロンボーンの高音を吹いている様な感じと仰っていました。ホルンは、前日は八木さんだけでしたが、遊佐では関谷さんも出て八木さんがナチュラル管、関谷さんが現代のホルンでモーツァルトのホルン協奏曲の第1楽章の「さわり」を吹いてその形、音色、奏法の違いをわかりやすく説明して下さいました。

演奏そのものは、場所が変われど、ホールが変われど、聴衆が変われど、プロの音楽家として懸命な熱い演奏を聴かせて頂きました。確かに残響が少なく、響きが悪い、といいますが、県民会館や鶴岡の文化会館は響きが良くない上に広いので、なんとなく「物足りなさ」を感じるのですが、遊佐の公民館は適度に狭いので演奏が手に取る様にわかるといったらいいのでしょうか、同じ第1ヴァイオリンでもコンマスの高木さんや横の犬伏さんが弾いている音と、3プルトや4プルトの奏者が弾いている音が分離されてきちんと聴こえるのです。揃っていないというのではなくて、8人なら8人の奏者分の音がきちんと聴こえます。さらに前日のテルサでははっきりしなかった(個人的な感想としてです)、第2ヴァイオリンの演奏がより鮮明にわかります。対向配置なのですから残響の多いホールでも第1と第2の仕事の違いはわかるはずですが、柔らかい塊の音がホール全体に響き渡る感じのテルサに比べ、第2ヴァイオリンでも1プルと4プルの音が分かれて聴こえて来ます。「ああ第1、おお第2」という風に客席からよく分かる感じでした。同じ様にヴィオラも内声を支えたり、チャチャチャチャチャチャチャチャとリズムを刻む所なんかも、奏者の位置からまっすぐ聴こえて来るので聴いていて楽しかった。響きが少ないから音の定位が良いとは限らないはずで、遊佐の公民館も捨てたもんじゃないと真面目に思いました。
高橋あけみさんのファゴットソロの協奏曲は、また楽しかった。前日のテルサのコンサートとはお衣装も違い、シックなグレーのロングドレスに丈の短い肩を隠す様なベストの様な服(名前を忘れたので、思い出したら書きます)を着て登場。髪型も前の日の見ようによっては「名古屋嬢」のようなボリューム感のある形から変えておられました。打ち上げの席でご本人からお聞きしたのですが、テルサでの演奏会は、まず嬉しくて楽しくてやや舞い上がって演奏した事自体あまり記憶に無いのだそうです。らびおさんのブログで協奏曲終了後舞台袖に下がって来る高橋あけみさんのとても素敵な笑顔の写真が拝見できます。「あまり見た事がないでしょ?」らびおがゆくVol.3をご覧下さい。
遊佐の演奏会では、ただ嬉しいだけではなくて少し心にゆとりができて遊び心も芽生える余裕があったとか。おそらくカデンツァは高橋さん自身の作による同じものだと思うのですが、演奏は別物の様に感じました。
後半の交響曲第29番は、同時代に作られた第25番ト短調などに比べればあまり有名ではありませんが、第2楽章の難しさ(モーツァルトの緩徐楽章はすべて難しい!)、第4楽章の鮮烈な爽やかさなどとても素敵な演奏でした。


2(終演後のサイン会で地元で弦楽演奏をしている女子高生達と)
アンコールはやらない飯森さんですが、今日もやりません。鳴り止まない拍手を制して、マイクでお話です。「アンコ−ルは用意していないんです。」(観客笑う)「というのは、モーツァルトはとても難しいんです。第5番とか7分くらいで終わる曲でも練習は一生懸命やるので、団員の皆さん、もうヘトヘトなんです。ではこれで終わりです。」(観客、笑い、大きな拍手)
という感じで大成功のコンサートでした。

酒フィルの関係で、庄内地区の山形交響楽協会理事や酒田市在住の山響ファンクラブ会長などと一緒に公民館3階で行われた打ち上げの席に出させて頂きました。酒フィル仲間の実行委員が会場片付けに奔走している中、飯森さん、高木さん、そしてソリストの高橋あけみさんに山響の事務局の方々と遊佐の関係者の楽しい触れ合いの一時がもたれました。高木さんは、咋夏の「日本アマチュアオーケストラ連盟全国大会in酒田」でも親しくお話をさせて頂く機会があり、とてもフランクにお話しさせて頂きました。
Photo_2高橋あけみさんとは実は私が忘れていたのにご本人からの指摘で親しくお話しするのは2回目だと判明。4年程前に、山響酒田定期の出来る前だったでしょうか、希望ホールが出来て初めての山響の演奏会がありました。指揮は高校の後輩である佐藤寿一氏で、小曽根真さんをソリストに迎えて小曽根さん作曲のピアノ協奏曲「もがみ」とラプソディ・イン・ブルーをやった演奏会。その打ち上げの席に参加させてもらい小曽根さんや寿一さんとお話をして舞い上がっていたのですが、高橋あけみさんからその時に確かお話ししましたね、と言われこちらは恐縮しきり。高橋さんの記憶力が凄いのと、自分がそんな事を覚えていなかったという情けないというか「危険?」な事実にちょっとショックでした。(苦笑)
(肖像権の侵害に付いては、ご本人の了解を得ずに勝手にブログに載せておりますので、ご本人または関係者から削除の依頼があれば削除致しますので、お許しください)

Photo_4順番としては、当然最初に飯森さんからご挨拶を頂いたのですが、「今回、35周年ということで呼んで頂きましたが、次が40周年ということではあまりに寂しい。36周年でも37周年でも、呼んで頂ければ毎年来ますから。」と嬉しいお話がありました。
Photo_3写真は高木さんが挨拶した後、椅子に座って聞いていた飯森さんが黙っていられなくなって出て来られた所です。「いやね、高木君がこんなに話が上手だとは思わなかったんですよ。高木君という人はね、こんな感じですが(笑)、本当に凄い人なんですよ。」と高木さんの経歴、コンクール歴、高木さんとの接点、どうして山形に呼んだのか、モーツァルト定期は必ず高木さんにコンマスをやってもらう約束とかいろいろお話しされました。
高木さんのお話というのは、高校を卒業後、日本の音大には入らずまっすぐパリへ勉強に行き、その後にアメリカでも勉強して、そろそろ日本に帰ろうと思ってチケットを取ったら、飯森さんが当時音楽監督を務めていらしたドイツはロイトリンゲンのヴュルテンベルグでコンマスを募集しているという話があり、急遽ドイツ周りで帰国するチケットに変えて、まあ受からんやろ、とオーディションを受けてみたらオケ団員満場の一致でコンマスになることになった、その後、日本に帰ることになった際に、「是非山形で一緒にやろう!」と飯森さんに声をかけられて戻って来た、というお話でした。
飯森さんもおっしゃっていましたが、山響が山形にあることを誇りに思って欲しい、またそう思ってもらえる様な演奏を目指して行く、ということでした。

高木さんからは、「山形の人は、お付合いする様になって、よく「山形にはこんな素晴らしいところがありますよ」「こんな美味しいものがありますよ」「こんな素敵な自然がありますよ」と喜んで紹介して下さるんです」という話があり、「飯森さんはいっつもようあれだけ自慢話をブログに書けるな〜、と思ってますが、やはり「自画自賛」を美徳とする気持ちが大事なんですよ」と、けっして批判的ではなく肯定的な意見として、音楽家として生きて行く上での自己肯定のものの考え方というかスタイルを持つ事は大事だという考えを披露して下さいました。確かにそうだと思います。だから私も「自惚れコンサート」などというフルートの録音を2年8ヶ月も続けているのです。(^^;;;;

Photo_5打ち上げの席で、山響の裏方をなさっている社団法人山形交響楽協会の堀田理事から今回来られた5名の事務局の方々の紹介がありました。こういった方々の地道なお仕事があるから、私達はいつも快適にコンサートを楽しむ事が出来る訳です。感謝でございます。
飯森さん達は山形に帰らなければならないので、遊佐楽友協会のTSさん(合唱の先生で、かつ酒フィルのコンミスの実姉の方)から中締めのご挨拶がありました。お土産に遊佐の特産の農産物、特にお米と先日も記事に書いたとっても美味しい酒フィルファゴット奏者T氏(実質上、今回の遊佐のコンサートの仕掛人?)の有機野菜詰め合わせ(銀座三越でも販売されるらしい貴重なお野菜、地元で買うよりはずっとお高くなるそうです)が渡されました。
その後、打ち上げの続きを内輪で行い楽しい話に花が咲きました。更に、誘われて近くのお店に2次会ということで移動し、そこでは「17人の遊佐ごはん」キャンペーン真っ最中の「ハヤシライス」と「汁ビーフン」などに舌鼓を打ち、楽しい楽しい夜は更けて行きました。
遊佐町が山形の最北部にあるとは言え、酒田の家までは車で15〜20分の距離です。
山響さんにはまた遊佐町に来て頂きたいものです。

本日のおまけ写真。
Photo_7いよいよ完成した医院の2階、院長室から私がこだわった眺め。ちょっと手前の住宅が気にはなりますが、お天気がよいとこのように美しい鳥海山が「一枚の絵」のように我が物にできるのです。
もっけだのぉ。

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コメント

すごく自分と似てる人が写ってます笑

フルートは全く違いまして驚きました!!!
あんなに違うんですね..

遊佐は寒くてこちらも驚きました
団員の方々は指がまわらないのではないかと思いました( ´△`)

飯森さんきゅんきゅんしました(´∀`)アヘ

投稿: ハチ | 2008.02.11 16:17

はじめまして。
確か昨年のJAOの時期に、massyさんのブログから来て、ずっと読ませていただいています。

自分自身はオケの楽器は何もできないのですが、聴くのは大好きです。ピアノをほんの少しと、声楽を少々やっています。

フルートの音、金製と木製でそんなに違うんですね。以前N響アワーで、首席奏者の方が吹き比べたときは、私は違いが分かりませんでした(^^;)

地元に充実したプロオケがあるのは、たいへんにうらやましいです。
同じ東北でありながら、山形はちょっと遠いのですが、いつか機会を作って出かけたいと思います。

ケイタイで、山響さんの演奏会情報を入手する方法はあるでしょうか?
そういえば、ケイタイでらびおさんのブログに行きましたが、高橋さんのお写真は拝見できませんでした(T-T)

投稿: えがお | 2008.02.11 19:40

えがおさん、こんばんは。山響のサイトは、ご存知の様に
http://www.yamakyo.or.jp/
ですが、携帯でも見えますよ(全部ではありませんが)。
笛の音は、材質よりも吹く人の違いが大きいですね。木、洋白銀、銀、金を吹きわけても普通は分からないと思います。ただ、デッドな空間で聴くと「木の笛」と言う感じがよく分かったんです。
えがおさん、東北ってどこ?福島ですか?来年のJAOは郡山ですね。高木さんがまたコンマスで出られるそうですよ。

投稿: balaine | 2008.02.11 20:15

山響さんのサイトのアドレスありがとうございました。
早速行ってみましたが、肝心の情報にはたどり着けませんでした(T_T)

私は、北の外れの青森県民でございます。多分、JAOに加盟しているオケはないのではないでしょうか。残念です。

来年は郡山ですかー。会津若松には3回ほど行ったことがあります。郡山だとはやてが停まるから便利ですね。(八戸市民だから)

高木さんがいらっしゃるJAOの演奏会は、行ってみたいなあ・・・。

投稿: えがお | 2008.02.11 21:10

えがおさん、八戸ですか。こちらの総合病院脳外科科長(私の後輩医師)は八戸西高出身ですよ。
郡山のJAO、楽しみですね。その前に、今年8月は高松のJAO。チャイコとプロコのロメジュリに「ウェストサイド・ストーリー」ですよ。
う〜、マンボ!

投稿: balaine | 2008.02.12 02:15

ごめんなさい。時間が取れず演奏会に行けませんでした。情けないです・・・。

あまりのショックのため これ以上のコメントはできません。人生やり直し~が必要ですね。あ~聴きたかった。遊佐に行きたかったです・・・。残念・反省・トホホホ。

投稿: けんちゃん | 2008.02.12 02:15

けんちゃんさん、え?どうしたんですか?
ネガティブな言葉が7つも含まれたコメント、心配です。
音楽はネガティブな心を変えてくれるはずです。

投稿: balaine | 2008.02.12 08:11

最前列でこのコンサートを聴きました。高木さんのすぐ前です。balaineさんが書いているように音が分離して聴こえてきて面白かったのですが、弾くほうは大変だろうなとおもいました。1stVn8人の方の一人ひとりの音が聴こえました。2ndVnも対抗位置ですから大変だろうなとおもいますが、聴くほうはスリリングな楽しみもあるわけです。
酒フィルでも工藤さん指揮のときは対抗位置でしたが、緊張感があってよかったとおもいます。オペラはもっと変則的で、木管群はヴァイオリン後方だし、ホルンとその他の金管は左右に完全に分かれて吹かなければならないし大変そうです。

投稿: タビの親父 | 2008.02.12 08:18

タビの親父さん、最前列で聴いていて首の方は大丈夫ですか?(笑)
テルサでのプレトークでは、対向配置のことを「ドイツ式」というか、ベートーベン、ブラームス、そしてメンデルスゾーンの時代はこういう配置だったとの説明でした。
工藤さんの時のメインは、ベト7、ブラ4でしたから「対向配置」でしたね?ドボ8の時はどうでしたっけ?記憶力が、、、

投稿: balaine | 2008.02.13 08:45

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