シミュレーションと脳以外の放射線検査
今日は電子カルテの勉強会の第6回目でした。
まだ心もとない所もありますが、使い方はある程度わかったという事で、そろそろ実践的に行かないとあと6日で本番なので、シミュレーションの予行ということをやりました。
まず、受付では、頭痛の患者さんが初めて受診した事を想定。問診票を渡し、保険証情報を入力。記入してもらった問診票情報を入力します。隣の診察室で、医師の私は、電子カルテで受付が終わって「診察待ち」と表示された「テスト太郎」さんを見て部屋に呼び入れます。型の通り診察し、患者さんの希望もあって即日MRIを行うことになりました。「セット登録」から画像診断のMRI検査を入力して指示戔を出します。指示戔を患者さんに持たせて、診察室向いのMRI室前の中待合いのソファに誘導します。内線で技師さんにMRIの指示を伝えます。技師さんは患者さんをMRI検査前室に誘導し検査着に着替えてもらいます。
患者さんが着替えている間に、技師は指示戔情報と電子カルテ情報を元にMRIコンソールに患者情報を入力します。MRI室に患者を誘導しベッドに寝せて頭部検査用コイルを固定し、設定後検査を行います。終了したら、患者さんには再び服を着てもらい、その着替えの間に今撮ったMRIのDICOM dataをPACSに送信し、電子カルテ上の患者さんを「検査終了」の表示に変えます。
着替え終わった患者さんに指示戔を渡し受付に行くように指示します。患者さんは受付に指示戔を出して検査が終わった旨を伝え、受付では待合室で今しばらく待ってもらうよう伝えます。
指示戔は診察室の医師に届けられ、電子カルテの表示と併せてMRIが終了して説明を待っている事が医師に伝わります。医師は、他の患者さんの診察の合間にMRI検査終了した患者さんを再度診察室に招き入れ、今撮ったばかりのMRIを迫力の30"シネマディスプレイで表示しながら説明します。必要に応じて処方し、診察終了。患者さんは会計を済ませ処方箋を受け取ってお帰りになります。
もたもたしながら、「あれ?ここで誰が誘導すればいいのかな?あ、私が自分でやればいいんだね、、、」などとやりながら予行の予行です。この他に、糖尿病があってふらつきと発汗のため「低血糖」を心配して来た患者さんを診察し、院内検査(血糖値、HbA1c、尿一般)と問診、理学検査の結果、糖は正常かむしろやや高めで、症状と発熱から風邪と診断して、検査結果を説明し処方をして経過を見てもらう患者さん、昨日交通事故で追突されて今日になって頭が痛くなったので、他の医院より紹介状を持って受診した頭部打撲の患者さん(診察の結果、軽度の頚椎捻挫であろうという事で単純X線検査のみ行い、正常なので処方をして帰宅)の診察など、受付から帰宅するまでの流れをスタッフ全員でやってみました。
私自身がいろいろな準備と忙しさにかまけて、まだ電子カルテに十分習熟していないので少しおろおろしてしまいました(反省、、、)。今まで、きちんとした電子カルテシステムは2カ所の病院で経験しています。電子カルテ一歩手前の医事入力システム的なものも2カ所で経験しています。うちのクリニックで採用する「スー○ー○リ○ックII」という電子カルテはなかなかの優れものです。しかし、完全な電子カルテというのは世の中に存在せず、どれも一長一短あり、使う医師や看護師や事務員によって好みが分かれたり、使い勝手が違ったりするものです。でも診察券発行機も含めて全部で500万円以上するシステムなのですからそれなりの働きをしてもらわなければなりません。
ペーパーレス、フィルムレスを実践するべく、導入した電子カルテとPACS。
PACSの方は、DICOM dataで書き出せるmodalityを接続すればいろいろなシステムが構築できます。今のところはMRIと単純X線検査だけで、超音波エコーと心電図はPACSには繋いでいません。(お金がかかる、煩雑になる、などなどの理由で)
ということで、MRI以外の放射線検査とMRI検査から「脳以外」のものをいくつか提示しましょう。
胸部X線です。
30"シネマディスプレイ一杯に拡大すると、「半切」のフィルムをシャーカステンにかけて見ているのと同じ位の大きさです。モニター脇に置いたコーヒーの紙コップの大きさと比べて頂ければ、実際の大きさが想像できると思います。
頭部単純X線です。
単純X線検査は、撮影したフィルム代わりのイメージストレージをフィルム現像機代わりのイメージスキャナーで読み込んで表示するCR(Computed Radiology)というものです。ですから銀塩フィルムは一切使いません。ただ、他院に紹介する場合、まだフィルムレスで診療していない施設もたくさんある訳で、また検査依頼で紹介されフィルムを渡して返す必要も出て来る事から、CR装置にはフィルム現像機の代わりにフィルムプリンターが接続されています。これも銀塩フィルムを暗室で使う様な過去の方法ではなく、通常のX線検査フィルムに似た媒体にプリンターでプリントするという感覚です。(これによって、銀塩フィルムを排出せず、現像液を使わず、地球環境に優しいエコな診療所を実現しています)
当院ではフィルムレス診療なので、この頭部単純X線検査もCRからPACSにDICOM dataで送信され、診察室のPACSモニターで写真の様に表示されます。自由自在に拡大縮小、回転、コントラスト、明度の変換など「ちょちょいのちょい」(古!)と出来てしまいます。
つづいてMRI。
これは頚部のMRI。右側がT2強調像、左側がT2強調像の反転画像です。
頚椎に軽度の変形と椎間板の圧迫による後方脱出があり、軽度の脊椎管狭窄が認められます。まだ症状はありませんが、頚椎症ですね。実は私の首、、、ちょっとショック、、、(苦笑)
こちらは腰椎のMRIです。脊髄末端から馬尾(ばび)神経と呼ばれる、腰髄、仙髄の神経が脊椎管の白い脊髄液の中を下方(足やお尻の方向)に伸びて行っているのが見えます。まず正常ですね。
こちらは付録。腰椎MRI検査の位置決めの為に撮像した腰部の軸位断層。おなかです。
被検者がやや肥満気味だったので(私ではありません!)、腰部、腹回りの脂肪(白い)そして内蔵脂肪がたっぷり乗っているのが見えます。腰部の筋肉(いわゆるヒレ肉の続き部分)にも脂肪のサシが入っている様に見えます。
よくテレビでは魚市場でしっぽの所を切断して、脂の乗りが見える様にして競りにかかっているマグロの映像を見かけます。切った断面を見て肉質、脂の乗りをチェックしている訳です。こんな風にMRIを撮れば、マグロも牛も肉に適度に脂が乗っているかどうかも生きたままチェックできる訳ですね。でも、生きたマグロや牛をどうやってMRI検査台に載せるか、ですが。。。結局、人間は美味しく頂く為にこれらの動物を殺している訳ですから、MRIで調べる必要はない訳ですが。
ちょっと話が逸れてしまいましたので、今日はこの辺で。
毎日、新しい事がたくさんあり、アポイントがたくさんあっていろんな人に会っていて、時間に追われイライラして来ます。「脳が疲れた」と日中の段階で感じます。ブログもそんなことでまとまりなく終わってしまいます。(苦笑)
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コメント
平成5年頃だったでしょうか、イメージング・プレートというものを初めて見ました。放射線画像が、フィルムレスで得られることに驚き、それをフィルム屋さんが開発していることにも驚きました。屋台骨がなくなるわけですから、企業としては当然ですね。画像診断の技術が、コンピュータの進歩とともに進んで来たことを感じます。でも、最後は人間が判断しなければいけないわけで、ここは無人化・自動化できないところでしょうね。
投稿: narkejp | 2008.02.27 05:43
頚椎、無理な姿勢で長時間の手術をこなしていたのも影響しているのでしょうか?・・・。
MRI、わたしがお世話になっている病院でも、予約なしで撮影できて、結果もすぐ聞けるので本当に助かっています。通いなれた病院、いつもお世話になっている先生、技師さん(精神的にも、経済的にもありがたいかぎりです)。
一度、拡散強調画像はソフトがないため撮影できず、大学病院に撮りに行ったのですが、予約、撮影、結果と3回も通い結構な負担でした。
投稿: ふなゆすり | 2008.02.27 19:03
narkejpさん、日本最大手のフ○フィルムは、フィルムを使わないデジタルカメラも結構早く手がけています。CR装置は複数社が開発していますが、やはりF社が一歩リードしているようです。ストレージの事、「イメージングプレート」というのでしたね。本当に銀塩フィルムが入っている様な板状(プレート)なんです。
画像を判断する能力、人間の目と得られた視覚情報を記憶と比較する能力は、そう簡単にコンピュータで大用は出来ませんね。もの凄く高度なものです。
投稿: balaine | 2008.02.28 00:12
ふなやすりさん、そうですね。関係あるかな?別に追突事故に会った経験はありませんし、、、あ、衝突事故はありましたね。(^^;;;;
DWIの画像も、凄く高価な超伝導MRIでさえも「ん?なに?これでわかるの?」というようなボヤ〜ンとした映像から、私のところの数千万円台のMRIでも新しいソフトの開発によってかなり綺麗な画像が獲れる様になりました。確実に医療技術、医用工学は進歩しています。
投稿: balaine | 2008.02.28 00:16