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2008.02.25

1週前

本当に新たな船出まであと7日となりました。
毎日、なんだかバタバタといろいろな事をしていて、あっという間に一日が終わっていきます。
1日が30時間くらいあればもう少しゆとりができるのでしょうか?時間があればあったでやる事が増えるのだと思います。

今日も引き続きMRIの勉強。
今日は、DWI(ディフュージョン)と、膝関節、そして腰椎の撮像を行いました。

DWIは、10年ほど前にこの撮像が世に出始めたときは、脳外科医を中心に脳卒中をやっている医師から非常に期待された検査法です。
脳梗塞の症状(手足の麻痺や言語障害など)が出現して、すぐに救急車を呼び、脳外科のある救急病院に搬送され、脳卒中が疑われてすぐにCTを撮る、というところまでは、どんなにスムーズに行っても30~60分くらいはかかるのが普通だと思います。それより早く、というのは「院内発症」と言って、何か他の病気で入院中の方が、脳外科医のいる、すぐにCTやMRIの撮れる体制の病院で症状が出て、それを看護師や主治医が速やかに見つけて判断できたときだけという、なかなか特殊な状況です。
自宅や職場で発症すれば、どんなにスムーズに受診、検査が出来ても、CTの結果が出るまで30~60分はかかるでしょう。そして、脳梗塞(血管が詰まるか血の流れが悪くなる)になって、この60分くらいの時点では、普通のX線CT撮影では明らかな異常が見つからない事が多いのが脳梗塞という病気です。
CTで異常が出るのは、血管が詰まって栄養障害に陥った脳細胞が膨化(水ぶくれになるような死にかけの状態)し始めて、ようやくX線の透過性に変化が出てからです。この時点で、早くても2,3時間から6時間くらいかかるのが普通です。ですから発症後30分のCTでは、よほど大きな血管がポンッとつまらない限りほとんど変化はとらえられません。
これがMRIでは捉えられるのかというと、通常の撮像法であるT1強調像やT2強調像、FLAIR像などではまだ異常が出ない事がほとんどです。血管が詰まったために栄養を補給されなくなった脳細胞が、他の経路に助けを求め、それも来ないか非常に不足しているため徐々に栄養障害から細胞死に至り始めるまでは、早くて1時間程度の時間が必要です(場合によってはこの限りではありません)。3,4時間経過してもまだMRIに変化が現れないこともあります。

DWIという撮像方法は、たとえば水の入ったコップに青いインクをぽとりと落とすと滲みながらフワ〜っと拡がって行く、あの現象を見るものです。物質が「拡散」する事を英語でdiffusion(ディフュージョン)といいます。この拡散の現象が変化したものを捉えるのがDWIです。
脳血管が詰まって栄養が行かなくなった脳細胞は、細胞死の前に膨化します。この膨化が始まった時点で、脳細胞と隣り合う脳細胞の間の隙間(細胞間隙といいます)にある自由水は、従来は自由にブラウン運動をしていたのですが、細胞の膨化に従って隙間が狭くなってくるためその動きに制限が起こります。「拡散」運動が自由に行かなくなってくるのです。
そのような変化が現れてくると、他の正常にブラウン運動をして物質の拡散現象が見られる場所と比べるとMRIで捉えられるプロトン(H+)の信号に変化が生じます。この現象を利用して、X線CTはもちろん、T1,T2, FLAIRなどの通常のMRI撮像ではまだ異常が捉えられない「超急性期」(発症後30~60分)の脳梗塞を見つけ出そう、見つけたらすぐ治療を開始して悪くなり始める前に治そう、またはそれ以上悪化する前に進行を止めよう、というのがDWIが世に出たときの世界中の脳卒中治療医、特に脳外科医のおおいなる希望でありました。

しかしながら、その後の研究で、発症30分の時点でDWIだけに異常信号が出ている「超急性期」の脳梗塞も、その時点で治療を開始したからと言って必ずしも治る訳ではなく、ほとんどの場合、DWIで白く高信号に現れた範囲は、結局翌日のCTで黒っぽい低吸収域(要するに完成して元に戻らない脳梗塞)になることがわかってきました。最初の期待とは全然違う結果に、多くの脳外科医が失望感を味わいました。しかし、研究、治療を続けている間に、全部ではないけれど、時々、DWIだけで異常の現れた脳梗塞患者の中で、その時点で適切な治療を開始すれば症状が悪化しない、または回復する、まれに完全に良くなる人も経験するようになりました。

要するに、DWIは「夢の検査法」ではありませんでしたが、確かに超急性期の脳梗塞を捉える事の出来る確かで非侵襲的方法で、中にはその検査の結果、すぐに治療を始めたおかげで脳梗塞の進行を止めたり症状が回復する事もあるのだということは確かだと理解されるようになりました。
ただし、MRIであればすべての器械できちんとしたDWIが撮れる訳ではありません。器械の新旧、性能、ソフトの能力などによって変わるのです。私が選択したMRIは、超伝導MRIではないけれどDWIが綺麗に撮れる、というのが選択の一つの条件でした。ですからきちんとしたDWIが撮れる事を本日再確認しました。

PhotoMRIの写真を使った脳のお勉強や撮像法のお勉強は、今日はあまりに忙しかったのでお預けです。
明日以降、写真を撮って載せたいと思っています。

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コメント

MRIの写真は すごいですね!私も検査してもらわなくては・・・・。  でも 馬鹿な心の中まで発見されたりして ^^

明日以降の写真も楽しみにしております。ご開業前のお忙しい中 よろしくお願いいたします♪

投稿: けんちゃん | 2008.02.26 01:53

けんちゃんさん、「心の中」が読める医療機器があれば、、、精神科医が喜ぶのか、精神科医が必要にならなくなるのか、、、まあ実現しないでしょうね。(^^)
カウンターはあと3300強で20万です。なんか本当に実現可能な数字になって来ていて驚きです。

投稿: balaine | 2008.02.26 08:29

Dr.balaineの頑張りとか、意気込みとか、気合?とか、
希望とか、いざ・出陣!とか、、、そんなお気持ちが、
日々の記事の行間に溢れてる気がします。

そう思うたびに・感じるたびに―
Dr.balaine、くれぐれも、くれぐれも、お身体大切に!sun

投稿: リスペクト | 2008.02.26 10:43

リスペクトさん、ありがとうございます。
確かに、気張ってます。ちょっといらいらしたり、脳に疲れを感じたりもします。いろんな事の合間に、人に挨拶に行ったり、不足物品を購入したり、やっと搬入された物品を確認したり、挨拶状を書いたり郵送したり、、、
こんな中でブログを書くのは異常かも知れませんが、乱れた頭を整理し、反省するゆとりを作るためにも大事な作業だと思って夜中にやっております。
皆様方も、春遠からじ、とはいえ、まだまだ冬です。ご自愛ください!

投稿: balaine | 2008.02.27 02:16

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