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2007.06.12

新規開業に向けての気持ち

4月一杯で永らくお世話になった大学病院を退職しました。
それから早くも1ヶ月以上経ちました。
大学を辞めたのは様々な理由があり、一言で説明はできません。
アマチュアオーケストラなどでの音楽活動に時間を割きたいということは、真面目で大きな理由です。
でもアマオケの仲間からは、「こんな(レベルの低い)アマオケのために助教授職を捨てるなんて、、、」とも言われました(心配してくれた訳ですが)。

今、ちょうど6月号のAsahi Medicalという雑誌の『医師の過労死裁判』という特集を読んでいました。
真面目な医師(特に勤務医)は、過剰な勤務に耐え、「ノブリース・オブリージュ」という言葉を胸に献身的に働き、病院やそれを管理する自治体、国などからは、給与や手当を減らされても耐えて働いてきました。研修医の都会集中、一部病院集中なども影響した医師不足による仕事量の増加に逆行する労働環境の悪化と給与の引き下げ。
こういった「仕打ち」のような事に加えて、マスコミや世間の医師批判、病院批判。
市民から尊敬され慕われ頼りにされるからこそ、苦しくても忙しくても夜中でも風呂に入っている時でも連絡を受ければ仕事に向かっていた勤務医は、だんだんやる気をなくして来ています。
まだまだ頑張っている人も多いですが、本当に「立ち去り型サボタージュ」は現場で起こっています。

私の場合は「立ち去り型サボタージュ」ではないと自分では考えていますが、第3者の目から見ればそのように見えるところもあるかもしれません。忙しく、責任が重く、上から厳しく指導され、下からも突き上げられ、世間の目も厳しくなって己を律する度合いが更に強くなり、自分の時間がなかなか持てず、その上安月給で、、、
これらから「逃げる」ために開業しようと言う訳ではありませんが、「どんなに歯を食いしばって働いても、労働環境が我が味方となるように変わって来る気配はなく、どんどん逆風に曝される一方」で、学問的にも行き詰まりを感じ始め、新しい研究への意欲が減退し、一時国内をリードしていた手術や技術にも「この先、これだけでは面白くない」という閉塞感を感じていた事は事実です。

仕事が楽しければどんなに忙しくてもある程度は我慢が可能です。
週7日のうち7日間、つまり毎日病院に来て、およそ週70〜80時間働き、残業(と言う設定は国立大学附属病院にはありませんが)というか時間外労働(これもピンと来ない)だけで週に30~40時間、月にすると150時間くらいの時間外労働をしていても、その手当はほとんどなく、私が大学からもらっていた給与は月30〜45万円程(前年の年収に応じて所得税なども変わり、当直の有無によって追加の手当も変動するため、結構幅がある)でした。
それでも、研究や新しい検査、技術、手術の開発、そして学会発表など仕事に燃えました。楽しく頑張りました。しかし、ある程度自分に限界が見え始め、この状態を続ける事の虚しさを、世間の目の厳しさと私個人への批判、非難から強く意識するようになり、趣味であり生き甲斐でもある音楽へ時間を割く事の困難な状況を打開するためには、大学を離れるしかない、個人の責任のもとに開業して、個人の責任で趣味に時間を割くしかないと真面目に考えたのです。

「開業医は儲かる」という安直な考えはまったく持っていません。全然逆です。
今は、そういう時代ではないのです。
確かに一時代昔は、開業して患者さんがばんばん来て繁盛しお薬をたくさん処方すれば、「だから開業医はね、、、」という事もあったそうですが、今は「医薬分業」ですし「診療報酬改定(減額に継ぐ減額)」によって、開業医のメリットは減少しました。それでも、勤務医よりは開業医の平均収入はずっとずっと多いのですが、開業医は個人経営者、個人事業主ですから、自分が倒れたら「おしまい」です。開業するのに、誰もお人好しに助けてはくれませんから、ビジネスとして初期投資のための多額の借金をし、それを20年とか25年とかかけて返済して行かなくてはなりません。その間、医院を回転し維持し更に増改築したり新しい医療設備を整えるのにも、全て自己責任で借金をして導入する訳です。
ですから手にする収入のほとんどは、初期投資、維持、将来の整備のために消えて行き、手元に残るのはわずかばかりと言う人もいます。特に、専門性を活かすために、CTやMRIを導入しようとすれば、安い器械で2000万円、高いものでは2億円もする医療器機です。

Uクリニックの院長に、「一緒にやろう」と誘われたのは、そういった初期投資のリスク、準備にかける時間、そして必死に働いて借金を返済するために失われる自由な時間(=音楽への時間)を回避する事が大きな目的だったのです。ところがそのUクリニック自体がうまく立ち行かなくなりつつあり、私の立場も微妙になりました。
それならば、もともと考えていた通り、個人で事業主となって開業しよう、多額な借金が必要であるけれど自分の夢や計画もきちんとプランを建てて考えれば大丈夫そうなので何とかやってみよう、という状況に変わった訳です。
まあ、自己弁護につぐ自己弁護みたいですが、大学病院を辞め勤務医生活に終止符を打ち、個人開業を目指すという経緯は、今回解説した意外にもたくさんに要因がありますが、このような事によるものなのです。

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コメント

大学勤務の先生方は朝も早く、そして関連病院へも出向かれ。。。国の機関としての重要な任務もこなされて、体調管理だけでも大変なのではと日頃思っていました。派遣でいらっしゃる先生にお聞きしたことがありますが、週に何箇所もの医療機関に出向かれると。素人が考える激務以上の激務で、大学からの給与って驚きです。
鳥海山、海。。。広大なそれがない内陸から診察にお伺いするのを楽しみにしております。頭痛もですが、最近片側の瞼がピクピク魚が住んでいるようで多分、庄内の海を見たくているのかもしれませんね?

投稿: ボリジ | 2007.06.12 22:38

こう言う感じの経緯かな、とは思っていました。それにしても何というか、勤務医はモチベーションをキープするためのファクター・対価が少なすぎる。
・技術と知識と能力は「極上」であれ!
・患者に対しては「対等」であれ!「上」から物を言わぬよう!
・志は「高く」あれ!
・患者はある意味「お客様」である!
・人間としての「徳」を持て!

「上れ」「下がれ」。。。医者とて同じ人間。いきなり聖人となるわけじゃあないのに。霞を食べてく仙人となるわけでもないのに。

従兄弟1は 当初総合病院の勤務医でしたが「合わない!」で退職。地方の田舎の病院へと変わりました。
従兄弟2は現在総合病院勤務医。その職位と現場(外科)で、消耗してるって感じです。医師である本人の健康を心配する親戚たちの構図。

なにはともあれ 新しいスタート!まずは御自身の健康に気をつけて頑張って下さい!ご縁があるか分かりませぬが、西の方から強力エール送らせて頂きます。
自分が進む方向が前!と柄本明住職も言っております\(^O^)/

投稿: リスペクト | 2007.06.13 10:21

ボリジさん、リスペクトさんコメントありがとうございます。
ボリジさんの瞼のピクピク、たいした事ではないと思いますが、睡眠不足や気疲れなどでも起きますからね〜。私が診て差し上げられればいいのですが。。。「顔面けいれん」も私の得意の診療分野なのです。
リスペクトさんも書かれているように、地方の大切な医療サービス提供者である病院勤務医を、「こころ」の面でもり立てるような変革がなされなければ、この先、医療は崩壊して行く事も本当にあり得ると思います。「誰かが、何らかの手を打つだろう、、、」まだ多くの人がそういう楽観的な考えに支配されている様ですが、本当にそうなのでしょうか?
最近の様々な事を見ていて、政府や自治体の施策や方針というものを信じられますか?

お二方以外にも声を上げずに私を応援してくださっている方の「お気持ち」は感じております。
頑張りますよ〜!v(^^

投稿: balaine | 2007.06.13 10:45

市立病院が県立病院に統合されると
開業される先生が増えるのでしょうか?

個人の開業は、怪我や病気になっても
代わりの人はなかなかいないので、
つらいところです。
うちも借金返済のために、年に53日しか
休めません。
更に診療報酬が減らされて、働けど働けど
わが暮らし楽にならず・・・といった
状況。
がんばっても見合った収入はないし、
従業員の質を落とさないようにしなければ
ならないし。
奥ちゃまが共に支えて下さるでしょうから、
がんばってくださいね。

投稿: イコマ | 2007.06.13 11:47

イコマさん、ありがとうございます。
開業すると大変だよ、かえって自由な時間とれないかも、と脅かされたりします(ある病院経営者から常勤にならないかと悪魔の誘いを受けているのです)。
うちは、電カル、レセコンいれて事務職員もしっかりやとって、レセプト計算を自分や家族にさせない予定ではいますがどうなりますか。。。
銀行さんも前向きに考えてくれていますので、今のところ準備は順調、と思いたいです。

投稿: balaine | 2007.06.13 18:35

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