3月31日は、「みみにいちばん」ということで、日本オーケストラ連盟が『オーケストラの日』と制定して、様々な行事が全国的に行われました。オケによっては、3/31にこだわらず、各々の組織やホールの都合などで別の日にやったところもあるようですが、(社)日本オーケストラ連盟に所属する全国24のプロオケのうち、14団体は3/31にイベントを行いました。
http://www.orchestra.or.jp/orchestra_day/
我が、「山響」こと、山形交響楽団も3/31に山形県民会館でイベントを開催したので行って参りました。
これはすべて「無料」だったのですが、入場整理券が必要でしたので、かな〜り前から応募していて、夫婦そろって当たったので喜んで参りました。
イベントは3部構成になっていました。
まず、第1部(10:30〜12:00)は「ゲネプロ見学」。
会場の山形県民会館には、普段と違って「この日がオーケストラ初体験」という親子連れもたくさん見られました。写真は、ゲネプロ開始直前、ステージ上でリラックスしながら準備している山響団員です。子供達が多いのがわかるでしょう?
この日の第3部のコンサートでやる演目の通し稽古ですが、指揮の飯森範親さんは、わざわざピンマイクを付けてゲネプロの事を説明した後、いつものように総仕上げの練習です。
飯森さんからいろいろな指示が飛ぶのがマイクを通して全部聞けます。
「ここはノンビブラート!」
「もっと落として!」
「もっと弓を使って!」
などなど。
途中、飯森さん、むせてしまって、その咳まで十分聞こえたのはご愛嬌。団員も苦笑していました。
ピアノコンチェルトのソリスト、石井理恵さんも登場し、Pコンの合わせ。
今更、あまり細かい事は打ち合わせしません。
ベートーベンの交響曲第7番の時は、飯森さんも「昨年、某番組で有名になった『べと7(しち)』です」などと解説。指揮者挑戦コーナーでやる部分の打ち合わせまでしてました。
第2部(13:00〜14:40)は、「ワークショップ」。
楽器体験コーナー、クイズラリーと団員によるホワイエでのミニコンサートです。
ヴァイオリンから打楽器まで、ハープとピアノやチェレスタを除くオケの楽器が、県民会館尾地下、2階と3階フロアにほとんど準備され、すべてのコーナーに団員がついて楽器を弾かせてくれるのです。
私は、まだ吹いた事のなかったファゴットに挑戦。ファゴットのリードは、オーボエに比べると幅広くてくわえやすく、家にある日本古来の楽器「篳篥(ひちりき)」のリードに似ていました。ので、音は簡単に出せました。力もいりません。
ただ、楽器を首からつり下げるバンドの長さ調節でバランスが取りにくかったのと、キーがフルートに比べると広い幅に配置され(楽器自体が大きいのですから当たり前)、なかなか指の位置が飲み込めませんでした。でも、ドレミの指を教えてもらい、なんとか一オクターブの音階を吹いて周りから拍手をもらって喜んでいました。
ファゴットの鷲尾さん、高橋さんありがとうございました。
鷲尾さんには、組曲『カルメン』から「アルカラの龍騎兵」の触りを吹いて頂き、ありがとうございました!
私の名前からすれば(は?)、オーボエを吹かなきゃ駄目なんですが、オーボエはファゴットより息がきつかったです。
金管ではホルンの前に行きました。小、中の子供達が結構軽々吹きこなしているのをみて、「すごい、すごい」と騒いでしました。八木さんには、金管十重奏の直前なのに、1月に感動したブルックナーの4番のホルンの出だしをおねだりしてしまい、間近で聴く美しいホルンの音色にうっとりさせて頂きました。
その他のコーナーもクイズに答えながら全部周り(例えば、クラリネットの管の材質は次のうちどれですか?1)さくらの木、2)グラナディラ、3)炭、とかそんな感じです。ちゃんと覚えていないので、ここに書いたのはあくまで「たとえば」です)、地下の弦楽器、打楽器コーナーでも遊ばせて頂きました。
驚いたのは、地下の一室に「指揮者の部屋」というのが急遽作られていて、飯森さんがず〜っとその部屋におられた事です。小学校5年生のお年玉で初めて買ったというストラビンスキー『春の祭典』のスコアがテーブルの上に置いてあって手に取ってみせて頂く事ができました。小学生の飯森さんが、鉛筆で拍やイタリア語(だったかな?)の音楽標記の対訳を書き込んでいるその文字を見て微笑ましい気分になりました。その他に、オペラ『さまよえるオランダ人』のスコアも見せて頂きましたし、何かのイベントの時にフィギュア作家が作ったという、「飯森範親フィギュア」(高さ約30cm)が飾ってありましたし、飯森さんが実際に使われている指揮棒も触らせてもらえました。
飯森さんは、前日新潟でコンサートをやり、時間の都合で自分の運転で山形までやって来て、朝の第1部から元気に参加し、おそらく昼食時間もそこそこに「指揮者の部屋」にずっといて、入れ替わり入ってくる人たちに声をかけ、質問に答え、記念写真に納まっていました。その間、ずっと立っておられ、いくら毎日走って体を鍛えているとは言え、いくらまだ40台前半だとはいえ、なんと強靭な肉体と精神をお持ちなのか!と感動すら覚えました。
この日に合わせて、ウサギ君達がオケの楽器を演奏している絵の描かれた帯を締めて和装で望んだ家内は、飯森さんに「お!和服ですね〜」と褒められ、一緒に写真に納まりました(写真はお出しできませ〜ん!)。
この第2部は本当に盛りだくさんで、弦楽四重奏、木管五重奏、金管十重奏、打楽器パートのボディパーカッションを含むミニ・コンサートが1階のロビー行われました。
写真のカルテットなんて、マニア垂涎ものです。
第1バイオリンに特別首席客演コンサートマスターの高木和弘氏(4月から東京交響楽団のコンサートマスターでもある)、第2バイオリンにコンサートマスター(ミストレス)の犬伏亜里さん、ビオラに首席の成田寛氏(新日本フィルなどの客演首席も務め、私の中学の同級生(以前のブログに書いた)若松夏美さんと同じバッハ・コレギウム・ジャパンなどでも活躍)、チェロに山形弦楽四重奏団でも活躍中の茂木明人氏という組み合わせです。おそらく、ここ山形でしかあり得ないメンバーです。
さて、第3部(15:00〜16:30)は、「コンサート」。
この日の演目は、
1)ドヴォルジャーク スラブ舞曲第1番
2)ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番第1楽章のみ
3)ベートーベン 交響曲第7番
飯森さんが「昨年、人気を呼んだ某番組」と言ったのは、いわずと知れた『のだめカンタービレ』ですね。
通称、「のだめ」です。
聞くところによると、「のだめ」の主人公の一人である指揮者を目指す千秋真一のモデルは飯森さんらしいですね。昔は、怖くて飛行機に乗れなかったそうですし。。。
演奏はすべて素晴らしい!飯森さんも団員も朝からのイベント続きでお疲れのはずなのに、元気はつらつな演奏でした。Pコンでは、昨年の日本音楽コンクール本選入賞で「聴衆賞」を獲られた、山形市出身の石井理恵さん。若々しい、でも重みのある好演でした。
「べと7」これは秀逸。まあ、元々名曲ですし、ほんとにクラシックの曲とは思えないほど、ノリノリになるリズミカルな曲です。私の所属するアマオケで、3年前の秋にやりました。
ピアノ協奏曲が大拍手で終わったあと、ピアノを「かたす」(片付ける、の山形弁らしい)間に、MCの女性と飯森さんの二人で、「指揮者体験コーナー」が始まりました。会場で、指揮をしたい方手を挙げて、と言ったところ、なんともの凄い数の手が挙がりました。子供達が、「はい!ハイッ、ハイ!!!」という感じで多かったので、その直前までは「俺も指揮、やってみたいな〜」と思っていた私は、手を挙げるのを諦めました。
そして、小学生くらいの男の子一人、女の子一人、そして地元の音楽家のある女子高生一人が選ばれました。
「ベト7」第1楽章の、初っ端からでは長いし難しいので、Tuttiで盛り上がる部分、約10数小節だけでしたが、楽団員の方は、3人の指揮に合わせて「真剣に」演奏されていました。
指揮を体験した人たちにとっても、それを見ていた子供達も一生の記憶に残るような貴重な経験だったでしょう。
「ベト7」の第4楽章では、一番前に座っていた、おそらく小学生の男の子が乗りに乗っちゃって、プログラムを指揮に合わせて振り始めてしまい、係のお兄さん(おじさん?)が飛んで来てやめさせるくらいでした。クラシックの演奏会では普通あり得ない事で、楽団にとっても観客にとっても目障りであった事は事実です。しかし、本当は、止めさせずにプログラムを振り続けて欲しかったなぁ〜、と思います。だって、その子は邪魔したくてやった訳ではなく、山響の音楽を聴いていたら自然にそうなったんですね。楽しかったんだと思います。心がうきうきしたんだと思います。
止めさせられた事で音楽が、クラシックが嫌いにならなきゃいいね、と帰り際、家内と話しながら帰ってきましたよ。
コンサートの写真はさすがにありません。
本当に充実した楽しい一日でした。
山響の団員は、朝からず〜っと休みなく、イベントを企画運営実行し、音楽監督の飯森さんも一日中ファンのために動き、最後はロビー正面でサイン会までやっておられました。
ありがとう、山響!
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