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2006.07.18

ミンククジラ

調べりゃわかることだから、ブログにつらつら書くのもちょっと辛くなって来たので、この辺で一旦打ち止めにしましょうか。

「ミンク」は、クジラ目ヒゲクジラ亜目ナガスクジラ科に属します。定説ではノルウェーの新米捕鯨船砲手のマインケ君が、いつも小さな鯨ばかり撃っていたことから、「マインケの鯨」とあだ名されるようになったため「ミンククジラ」と呼ばれるようになったことになっています。
ナガスやセミなどの大型鯨をとっていた頃は、ミンククジラは小さくて(体長7, 8m)動きも敏捷なため、商業捕鯨の対象外でしたが、大型の捕鯨が禁止されて以降、久しくいわゆる「鯨刺し」として生で食用に供される鯨肉の代表となりました。セミクジラ、ナガスクジラの商業捕鯨、そして調査捕鯨が禁止されて以降、日本の食卓に上ることが出来るのは、大型の冷凍庫に保存保管されていた「捕鯨禁止」前の鯨肉か、南氷洋で許可されていたミンククジラの調査捕鯨によって得られた鯨肉、さらに近海で捕獲される「イルカ」に属する小型クジラでした。
立場や調査年によってそのデータにも差があるため、どのデータを信頼して良いのか判断が難しいのですが、南太平洋ではミンククジラは何十万頭(76万頭という試算もあり)と生息していて、もはや保護の対象ではないという立場もあります。ミンククジラが増えすぎると、イワシなどの小魚が大量に食べられるため漁業や海洋の生態系に大きな影響を与えると危惧されています。日本海近郊にも生息していますが、過去の乱獲の影響からまだ回復しきっていないというデータもあるようです。
よって、たくさんいそうなのだけど、商業捕鯨再開への道は閉ざされたままです。日本政府は、ミンククジラが定置網などに間違ってかかってしまった場合、商業流通を許可することにしているため、こうした鯨肉も食卓に上る可能性があります。

 ナガスクジラ科なので、セミクジラやナガスクジラには及びませんが、生肉を刺身にして食する対象になります。しかし、近年ではこの調査捕鯨による捕獲や近海での捕獲も減少したため、代わりに捕鯨禁止対象になっていない、ツチクジラやゴンドウクジラなどの体長2,3mの小型ハクジラが食用の対象になって来ています。
残念ながらこれらの鯨肉は、ハクジラ亜目特有の空気に触れると黒っぽくなって悪くなりやすい特徴を持っています。鯨肉は、一般的にスーパーや魚屋さんでいつも見かける訳ではありませんが、昔からの流通で「鯨肉あります」などと小さな看板を掲げている所もたまに見かけます。
IWCで調査捕鯨から商業捕鯨再開の決定を得られずにいる日本政府としては、過去に捕鯨基地として賑わい、捕鯨の出来ない今や寂れて来た太地や鮎川(宮城県)といった土地に、調査捕鯨で捕獲したミンククジラの肉を優先的に回している(いた?)ようです。ですから、太地や鮎川などにいくと、まだ街中に「クジラ刺身定食」とか「鯨肉あります」などの看板を見かけますし、民宿で夕食にクジラの刺身が出て来たりします。

鯨を愛する立場の私として、鯨肉を食べる話ばかりで少々気がひけるのですが、実はこれには訳があります。
捕鯨、鯨肉食などはある意味で民族の歴史であり文化です。これは、一民族として、一独立国家として守り受け継ぐべきものだと考えます。しかし、世界の中の日本という立場を考えた場合、自己の主張を認めさせるためにはそれなりの手続きや手段が必要です。それがまだ成功していないのです。
反捕鯨の立場の人達は、ファナティックに「捕鯨反対!」と叫んでばかりいる訳ではなく、それなりの理由や根拠をちゃんと持っている人達もいます(そうでない人達も多いようですが)。

問題は、たとえば、ミンククジラも保護すべき鯨としてこのまま増え続けていくと、同じ海域に生息するナガスクジラなど他の「もっと」保護しなければならない鯨のエサが相対的に減少して、保護すべき鯨の絶滅への道が加速される可能性があるということです。
地球上に生息する動物の単なる一種としての「ヒト」は、地球上の他の動物の生息や絶滅をコントロールする権利をもつのでしょうか?人間が会議を開いてコントロールすると、地球上の生態系はうまく保たれるのでしょうか?
過去にいろいろな事例があります。保護しようとした動物が、過剰な(?)保護が原因でかえって減少してしまったこともあります。全ての鯨の肉食を禁止し、ミンククジラを保護し続けて、それによって他の絶滅に瀕している鯨の減少を加速させ、海の生態系を壊し、魚類の分布にも変化をもたらす恐れが指摘されています。

知能の高い(と推測される)クジラを食べるなんて野蛮だ、と切り捨てる人もいます。
私も過去に米国人と、日本の鯨肉食の歴史や文化の事をdiscussionしたことがあります。
私「日本の捕鯨には歴史がある。狭い国土で限られた資源の中で生きる日本人にとって、海の恵みは有り難いもので、大きな鯨の捕獲は神からの贈り物であった。骨や歯まで工芸品にしたり、ヒゲクジラのヒゲは人形浄瑠璃の人形の関節のバネに使ったりなど伝統がある。」
米国人「鯨を食べるなんて野蛮だ。日本のように科学技術が進んでいるなら、鯨のヒゲに相当する物も科学的に作り出せるはずだろう。」
私「では、欧米人が牛を食べるのは野蛮ではないのか。牛にだって相当の知能がある。だいたい、知能があるから食べてはいけない、知能が低いから良い、などという考え方が人間の傲慢である。」
米国人「牛は飼育出来るが鯨はできない。」
というような、噛み合わない議論でした。

地球上には65億人の「ヒト」が存在します。今も増え続けています。このまま増え続けられるのでしょうか。
医師は、病める人を助けようと働き、命を落としそうな人を救うために懸命に努力します。
日本人の平均寿命は女性は世界一です。長生きすることは悪いことではありませんが、医学がどこまで人類の幸福に貢献出来るのでしょうか(一人一人の幸福には多少かかわれたとしても)。世界中の人が等しく富み等しく健康で長生き出来る世の中など実現可能なのでしょうか。何かを無視していないでしょうか。人類も地球上に生きる生物のひとつに過ぎないのではないでしょうか。
鯨をコントロールするように、「ヒト」が「ヒト」の生息をコントロールするような時代が来ないことを祈ります。

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コメント

( ̄Λ ̄) んむっ
学びすぎれば体が疲れる。すべてに耳を傾けて得た結論。
「神を畏れ、その戒めを守れ。」
by ソロモン ( ̄w ̄)

投稿: @むーむー | 2006.07.18 17:36

@むーむーさん、ありがとうございます。
畏れ敬う心、単なる宗教心とも違う何か、そういうものが現代人には希薄になっています。
科学が万能だから医学も万能だと思っているみたいですが、頭の中をCT(これも断層というあくまで「カゲ」ですが)で見れるようになったのはほんの30年前のことなんです。なんでもわかって何でも治せる訳ではない。
鯨はほんの一つの例ですが、人間が地球、あえていえば宇宙をコントロールできるとは私には思えないのです。

投稿: balaine | 2006.07.18 18:00

自分に与えられた使命というか人生をまっとうすることが
一番大切ですよね。
その中で時々周りの人に手を貸してもらわなければならず、
それがたまたま身体にまつわることなら医者であって。。。
目に見える身体だけが健康でも心が病んでいては
生きていることにはならず。。。
生きるという意味。。。
世の中の人に一度きりの人生もっと大切に生きてほしいと思います。

投稿: 則香 | 2006.07.19 10:09

コメントを書き込まれた方から削除を希望されましたので、削除しました。

投稿: balaine | 2006.07.20 19:12

少し前にデパートで鯨肉を見つけ嬉しくなって購入、調理。美味しく頂きました、がでも…黒いのです。
こんなに黒かった?と思いました。
きっと文中に出てきた鯨だったんですね。
それと、
絵本を見る機会があて、ピノキオを開きました。
「えっ?」でした。
おじいさん、続いてピノキオが飲み込まれたのはサメになっていました。
ほんわかした夢が無くなって、妙に生々しくなり興ざめしてしまいました。

投稿: リスペクト | 2006.07.27 22:34

ピノキオが鯨に飲み込まれてしまう瞬間を捉えました!!!
良かったら 見て下さ~い (^0^)/

投稿: リスペクト | 2006.07.29 23:50

リスペクトさん、Yahooブログってですね、前からそうなんですが、Mac上のSafariでは書き込めないんです。IEで書き直すの面倒なのでこちらでごめんなさい。
ステロイドパルス、お疲れさま。
ピノキオも見ましたよ。
気が向いたら、IEで見てみます(ごめんなさい)。

投稿: balaine | 2006.07.31 10:22

見て頂いて 
ありがとうござにましたm(_ _)m
暑い毎日ですね、お身体大切にお仕事頑張って下さい。

投稿: リスペクト | 2006.07.31 15:37

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