大学病院の救急
大学病院と救急というのはかつて相性が悪いもののように言われていました。その大学、附属病院の設備、周囲の環境、病院の体制、救急診療科の体制、救急隊との関係などなど、いろいろな要素によって違います。
ですから、ほとんど救急をやっていない大学病院もあります。
「時間外外来」くらいしかやってない訳です。
救急患者は、「救急救命センター」のある他施設に搬送され、大学病院は「のんびり」しているところもあります。
しかし、うちは違います。市内に「救命救急センター」を持つ県立病院があり、更に私の前任地も「救命救急センター」を持っています。人口125万人の県に2つの「救命救急センター」があります。
大学病院には、救命救急センターは併設されていません。しかし、診療科として「救急医学講座(=救命救急診療科)」があり、「救急部」があります。「時間外外来」科ではなく、完全な第3次救急病院です。
そのため、先週は予定手術と緊急手術で毎日手術、土曜も緊急手術でした。
今日、朝からやっていた予定手術が夜の7時に終わりました。一方、午後3時半に救急部にクモ膜下出血が搬入され、緊急諸検査の後、7時過ぎから手術になりました。ただいま、教授が執刀中です。
さらにその上に、関連教育病院にもう一人クモ膜下出血がいて、少し難しい形の瘤でもあり、今日は鎮静させて寝せて明日の朝、大学病院に搬送しまた緊急手術になる予定です。
うちの病院の救急部に来る救急車のうち、約1/3弱が脳外科の患者です。
救急車で来院する脳疾患の場合、入院にならないことはまずありません。非常に高い確率で緊急手術になります。先日も書いたように、一例一例をもの凄く大切に診察し治療することを教授や上級医から求められ指導されている現場の若手医師達は、睡眠不足や疲れでボロボロになりながら歯を食いしばって、土日も夜もなく働いています。食事を摂る時間も忘れるくらい忙しいのです。
そして、このように緊急患者も来ます。主治医でなければ遊んでいていい訳ではありません。自分が主治医にならなくても、自分の患者はもちろん、他の主治医の患者も一緒に診察したり診断や治療に当たったり、手術にはいらなくても手術場に行って、その手術を見学して勉強するのです。
今、夜の九時半ですが、教授が執刀中の手術室には、主治医以外の医師や医学部学生で総勢10名以上の、手術を見学している者達がいます。こうして人の技術を学び盗み勉強し成長して行くのです。
こういった、大学病院の、脳外科の、救急や緊急手術の実態、そして何故夜中まで人が一杯いるのかという事情も一般の方はあまりご存じないだろうと思って書いてみました。
私も2つ目の手術にははいっていないのですが、いろいろな側面でのサポートに回って大学に残って仕事をしています。
また、今日も帰りは午前様でしょうか。
ーー
心安らかにするため、また、桜シリーズ!
昨日、日曜日の桜。
そろそろ風に舞い散る花びらが見えて来ました。
今日の桜。
「花に嵐のたとえもあるさ。さよならだけが人生だ。」とでも言いたくなるような、強い風も時々吹いていました。
おまけ。
昨日、医学部体育館前の道路に枝を一杯伸ばした桜がほぼ満開となり、まるで『さくら回廊』のように美しい姿を見せていました。
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コメント
先生ありがとう。。知ってるよ。そうだよね。。だって、いつも見にきてもらってたもん。1人じゃないよ。あの先生もこの先生もだよ。感謝感謝。。
投稿: @むーむー | 2006.04.24 23:09
いろんな人が、それぞれの場面で頑張っている。支えてくれている。技術や心はgift、与えてくれた人、giftを手に入れるチャンスがあったこと、そして、それを活かせる場。そのgiftが受け継がれ循環してゆく。
人間だから妬みや嫉み、誤解、上手くいかないこともあるけど、大変だけど、浮きつ沈みつしながら、けど、何かちゃんと掴んでいる、掴もうと頑張っている。頑張っている人たちがいる。
投稿: ふなゆすり | 2006.04.25 00:23
記事、読ませて頂くうちに、気持ちがシャキッとしてきました。
読み終えた時、背筋伸びてました。
そして、
桜の写真で、ふ~っ。
大学病院の救急…知らなかった事がいっぱい。とてもいい勉強になりました。感謝。
救急の形、全ての大学病院が同様ではないとのことですが、大学病院の意義・目的と高次機能は共通でしょう。
頭、下がります。
記事読んでせっかく背筋伸びたんだから、その姿勢キープしながら、私も(実にささやかな一日ですが)いい一日にしよう(^_^)
投稿: リスペクト | 2006.04.25 09:06
わたしはgihtを貰ってばかり・・・誰かに渡すことが出来るだろうか?
体育館脇の桜は、とても若々しくて力強くて、覇気のある桜ですね。
葉桜になれば、木陰を渡る風が涼しさを運んでくれそう・・・
投稿: ふなゆすり | 2006.04.26 12:05