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2006.02.25

病院の建て替え

今日は当番と宿直です。
朝っぱらから重症頭部外傷の方が搬入されました。
宿直は夕方の5時から明日の朝まで。なので本日もオケの練習には参加出来ません。ソルノク交響楽団との合同演奏会まであと2週間になってしまいました。
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さて、最近金に絡む話ばかりでちょっと自分でも嫌なんですが、また続きます。
先日新聞で、大手ゲームソフト会社任○堂の相談役の方が、京都大学に何十億(80億だったかな?)円を寄付されて、それで京大附属病院が地下一階地上8階建ての新病院が建てられる、という記事をみました。

「おー、日本にもこういう人いるんだ。」という感想とともに
「いいな=、京都だけ。他にも回して欲しいよね。」という気持ちになります。

京都大学医学部といえば、良きにつけ悪しきにつけ、東大と並ぶ日本の医学研究の最高峰の一つ。が故か、知人の京都の人から話を聞くと、「京大の医者は威張ってはる」という噂もありましたし、近畿一円の医療界では「京大にあらずんば人にあらず」のような発言を聞いた事もあります。すべて噂話ですけど。

しかし、国立大学。いくら地方の小規模な医学部に比べれば優先的に予算が回って来るとは言え、国家予算で運営している病院。なかなか新しい建物にも建て替えられなかったのでしょう。独立行政法人化によって、国からの縛りがゆるくなり、収支関係において各大学にかなりの自由と責任が持たされるようになりました。
それまでの単なる「国立大学附属病院」であれば、個人の篤志家の寄付を受けて建物を建てるなど認められなかったと思うのですが、独法化によってそれが許可されるようになったんだと思います。
任○堂といえば、昔は「トランプ売ってるとこ?」位のイメージでしたが、いつだったか15〜20年位前に、ゲームソフトの莫大な利益によって、特別ボーナスの一部として社員全員とその家族でハワイ旅行を行ったというニュースがありました。相当な利益をあげたはずです。そこの相談役の方ですから、相当の収入と資産があることは理解できます。ただ、日本は税法上、多額の寄付をしてもそんなに税金に優遇が得られないのと、それほど莫大なビリオネアがいないことから米国に比べて、病院への寄付などあまり聞いた事はありませんでした。
一方、米国では凄いです。
頭にターバンを巻いたアラブの石油王見たいな人が空港からリムジンで有名病院にやってきて、「1億ドル寄付するから、ここで治療を受けたい」という感じなんです。次の日から、その人の入院した病棟に、たとえば『アブドラ・アリ・モハメッド3世病棟』などと名前がついたりします。
病院の前の通りの名前に寄付した篤志家の名前がついたり、病院の建物がいくつもあって、その内一つのビルの名前に寄付した人の名前がついたりします。
日本円で100億円とかポーンと寄付するんです。病院は、その金で新しい器械を買い、病棟を全部個室にして綺麗な調度品をしつらえ、スタッフの服を変え、勤務体制を変え、豊かに余裕のある治療をして行きます。

上記、京大の病院建築のための寄付は、私の想像では、おそらくその相談役の方は京大病院で治療かなにか受けられて、日本の最高学府の附属病院があまりにボロボロで建て替える予算もなかなか貰えないという事を聞いて、「京大病院がこんなんじゃあきまへんな。何?国が金をくれない!ほんじゃ、私がちょっと寄付しまひょか?」と寄付してくださったんではないか、と思います。素晴らしい事です。何か、京都市内の他の芸術的な組織にも寄付をされているそうです。
でも、こっちにも少し(10億円くらいで良いですから)回してもらえませんかね?新しいMRIに脳の機能を検査するMEGや手術中にMRIを撮れる術中MRI装置を装備して、より高度の脳外科治療を行いたいのですけどね?(^^
結局、金がないと病院はボロボロ、器械は買いたくても買えない、でも医療費は抑制されようとしているから、ますます利益などあがらない。利益が上がらないので新しい器械を買ったり、病院を新しくしたり出来るはずがない。
数年前、私自身、ちょっとした病気で大学病院に入院していた事があります。大学病院と同じくらいの規模の県立病院が新しく建て替えられて1年後くらいの事だったと思います。エレベーターに乗っていた時の事です。病衣を着ていたので私の事を医師だと思う人は誰もいません。ある人が喋っていました。
「しかし、大学病院も古いよね。今時、6人部屋なんてないよね。県立病院は個室も多いし、二人部屋かせいぜい4人部屋だぜ。だめだね!」
と言っていたのを聞きました。
国立大学附属病院として建築されて約30年。新築されたばかりの病院と比較する方が無理があるとは思いますが、一般人なんてそういうアメニティしか分からないのです。中で働いているスタッフがいかに優秀であるかとか、いかに世界的な仕事をしているかとか、関係ない。ただ、建物が古く、部屋が6人部屋だからダメだ。という感じです。でも理解は出来ます。やはり、どうせ入院するなら、綺麗な個室がいいです。各部屋にトイレとシャワー、できれば風呂がついている事を望みます。ちょっとくらい入院費用が高くたって構いません。日本の医療制度の中では、高くたって数千円、特別室だって数万円の差額です。個人で加入している保険からも賄えますし。・・・・

新しく、綺麗な病院も20年も経つとあちこち傷んできて、30年も経つとボロボロになり、40〜50年経てば建て替えなければなりません。大学病院クラスなら建て替えに100億円はかかるでしょう。40年で100億円とすると、一年あたりに換算して2億5000万円です。建物だけでですよ。全国に大学附属病院だけで、私立もあわせれば100くらいありますから、毎年大規模な大学病院の一年平均あたりの建築費だけで、250億円はかかるんですよ。国民の税金で賄うしかないんですよ。
それに加えて、設備費、いろんな器械、そしてスタッフの人件費などなど、どんなにお金のかかる「産業」なのか想像できないくらいの額です。
 日本の誇る、ノーベル賞受賞者を輩出している、大学附属病院すら、古くなっても建て替えに私人の篤志家の寄付をもらわないとできないというのもちょっと悲しい話ではありませんか?

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コメント

ユウさんのblogでは、ときどきお名前を眼にしていました。私は医学翻訳者でピアノ弾きです。先生のほかのblogで愛の挨拶もきかせていただきました。素晴らしいです。いやされます。これからここにも遊びにうかがわせていただきます。京大たてかえるのですか。実は息子が去年工学部に入学して、病院の近くにおります。なかはしりませんが、その昔の京大病院からするとずいぶんきれいになたっとおもっておりましたのに
しかもある会社の篤志、少し悲しいですね。
私今は川崎におりますが、京大はなんとなくすきなのです。ですから息子にかこつけて、京都にいけるのを楽しみにしています。(実家は神戸)
よろしくおねがいします

投稿: nori | 2006.02.25 14:15

noriさん、ようこそ!はじめまして。
そうですか、ご子息が京大工学部ですか〜。私も高校生の頃は、東大より京大に憧れました。京都という街がいいですもんね〜。
京大病院は、建て増しなどでいくつかの建物がバラバラに建っているらしく、それを有機的なものにする予定だそうですよ。それを公的資金に頼ることができず、個人の寄付で賄う事になったということです。

投稿: balaine | 2006.02.25 18:41

まったくそうですね。。
なんで京都大学だけ?とは 思います。

京都大学に行ったことはありますが、たしかに病院の建物は、近くの府立医大に比べて見劣りします。
それよりも、医学図書館も 誰でも入館可能なのはよいのですが、これもすぐ近くの府立医大に比べて あんまりにも貧弱で驚きました。。。。(でも某県の国立大学よりは ずっとマシでした!!)
ただ 京都大学も 医学部ではないキャンパスはかなり立派ですね。

勤務先も赤字の病院で、立て替えままならず、あちこちに雨漏りがしています。篤志家が現れて欲しい。


投稿: suyasuya | 2006.02.26 23:43

そっかあ、そっかあ、と、毎回大変興味深く読ませてもらってます。
昨年秋、親戚の見舞いで九大病院に行きました。
建替えも進んでいるようでしたが、
お目当ての病室があった建物はスゴイ!
はっきり言って、コワイくらいの古さでした。
こりゃあ、まっこと<海と毒薬>だわさと、
妙にリアリティが増したりして。

検査で時折行く広大病院もボロボロです。
病棟は建て替えられたみたいですが、
診察を受ける棟は暗いし、安っぽい内装だし、迷路だし。

常宿?にしてる病院は、広島特有の疾患を持つ患者さんを抱えているため予算の仕組みも特有みたいです。
広大病院よりもきれいですが、各棟を順番に建替える訳だから、当然順番に古くなる。
入院も回を重ねると、「今度はトイレの広いフロアならいいなあ、お風呂入る人が少ないフロアならいいなあ」ってレベルの願いありますもんね。

うちの二男、せっかく京都の大学なのに、就職活動先は大阪方面みたいです。
京都って、種類的にも数的にも事業所が少ないんですよね。
んまあ、そういう街ではないですから。
母さん的には がっくり。
遊びに行くのは今年が勝負!
ところで、立命と同志社が ピッカピカの幼稚舎造ったみたいですね。TVでやってました。
小学校からの一貫教育って事みたいです。
国立病院の病棟がぶったまげる、教室と給食。
私学も大変なんでしょう、経営が。
事業ですからね、存続していかなければなりません。
あっちもこっちも<大変協奏曲>

投稿: ダブル | 2006.02.27 00:21

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昨日の 行き先は・・・ 関空駅から ひとつ 大阪よりに戻った りんくうタウン駅そばにある ゲートタワーIGTクリニック  を 訪ねたのだった(笑) 大阪の中心地から 行けば ここは ちょっとした 小旅行に 匹敵に あたいする! 話せば。。。長いのだが 短く 言うと 定期健診を 受けに行ったのだ!(笑) ... [続きを読む]

受信: 2006.02.26 13:35

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