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2006.02.17

N先生の事

(追記:2/18御遺族様からこのブログの事をご了解頂きました)
ーー
(御遺族様の許可も得ずにブログに書く事をお許し下さい)

脳神経外科医N先生が亡くなられました。
昨晩の事だそうです。

N先生、といってもご存じない方が多いと思います。既に故人とは言え、簡単にどこのどなたかを明かす訳には行きません。が、日本の脳外科医はほとんどの方はN先生のことは知っているはずです。
私より学年は確か一個上(N先生は現役で私は浪人しているので、2個違いか?)です。
手術の好きな脳外科医というイメージが強いと思います。
脳外科関係の本をいくつか書いています。中でも2003年10月にだされた『脳神経外科手術の基本手技ーー糸結びからクリッピングまで』は名著でかなりの部数が売れたと聞いています。私も愛読しています。看護師さん向けの本も書いていますから御存知の看護師さんもいるとおもいます。

わたしのような凡庸の外科医とは違い、「メスの切れる」名医でした。あの「神の手」とマスコミがもてはやすF先生もその著書の中で信頼出来る後輩医師としてN先生の名前を挙げていたと記憶しています。
でもバッタバッタと脳を切り刻むのではなく、その根底には溢れんばかりのヒューマニズム、患者さんへの愛があった方とお見受けしておりました。
時々学会などでお会いすると、ちょっと面識があったもんですから、「やあ、K先生、元気?」とお声をかけて下さいました。
あれは昨年の脳神経外科コングレスだったと思います。小倉で催された時です。たまたま宿泊のホテルが一緒でした。朝、7時半頃朝食をとるためレストランに行った時にお会いしました。
私をみつけたN先生は「ニヤッ」と笑って
「先生、ひげ鯨。僕、ひげゴジラ、ははは、、、」
と仰ったのを覚えています。実はそれまでN先生がHPを書いている事は知らず、N先生が僕のブログを知っているなどとつゆ知らずいたので、もの凄く恥ずかしい感じがして
「え〜、先生、やめて下さい。内緒ですよ、内緒!」
と会話したのが個人的な会話としては最後のような気がします。
昨年10月の日本脳神経外科学会の時には、お顔をお見かけはしたけれどお話はしなかったと思います。私は、同時通訳や脳外オケの練習などであっちこっち飛び回っていましたし、まさか先生が余命の限られた病気と闘いながら、医師として医学者として人間として精一杯生きていらしたとは知る由もありませんでした。

私なんか、いろんな事に不平不満を漏らし、仕事の多忙をいい訳に忍耐を欠き、患者さんを怒ったり看護師さんを怒鳴ったりする事もあり、N先生から見たら最低最悪の医師ではないかと思います。とても恥ずかしい思いです。私のような無能の、怠惰な者が長生きをしています。
人の命には限りがあるのはわかります。しかし、時に神様は有能な人程、頑張っている人程早く天国に連れて行ってしまわれる。N先生を頼りに生きている患者さんが大勢いるというのに。N先生に手術してもらう事を一縷の望みとして病気と闘っている人が大勢いるというのに。
N先生も大変心残りではあったと思います。でも、苦しい病気との戦いの中で、最後まで医師であろう、優れた脳神経外科医であろうとしたその姿を見て育った後輩の医師がたくさんいるはずです。その人達に、手術の技術だけではなく脳神経外科医としての「こころ」を大きな遺産として残されたものと信じます。

今はただ安らかにお眠り頂く事をお祈りするとともに、御苦労様、お疲れ様、偉かったね!と声をかけて差し上げたいと思います。N先生、ありがとうございました。
合掌。。。。。。。。。。。。。。。。。

(N先生の御霊を私なりにお送りする音楽は、これにします)

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コメント

N先生とは何の面識もつながりもありませんが、『脳神経外科手術の基本手技ーー糸結びからクリッピングまで』の本がとても印象深くて、N先生がお書きになったのですね。こういう本を書ける先生がいるんだな~と、とても印象深かったのです。 

どれだけ大事な存在だったか、人それぞれだけど、ひげ鯨先生やむーむーさんやいろんな方に思われて、いろんな財産を残していってくれたから、同じ花が咲くわけじゃないけど、季節が巡ればまた花が咲くから、あちこちで実を結んでまた花が咲いて。N先生が残されたものは、きっと、途中で途切れることなく、ずぅ~~と受け継がれてゆくと思います。

投稿: むかご | 2006.02.17 22:12

先生が おっしゃるとおり
私たち患者に 心を 残された 先生でした。
生かされた私たちは
精一杯 誠実に 生きてゆきたいと
心から・・・
合掌・・・

投稿: 則香 | 2006.02.17 22:27

私もN先生の書かれた本、持っています。
まだお若いですよね・・・
何だか複雑です。。。

投稿: U | 2006.02.17 22:53

N先生のサイトの掲示板に恐る恐る書き込むと
すぐお返事コメントを下さって
「ネットってすごい!」って感激したこと、
昨日のことのように思い出します。
患者一人一人にきちんと心を向けて対応して下さったこと
素晴らしい方でした。

投稿: mayako | 2006.02.17 23:02

そうでしたか。。。
NTTのN先生とは もしや とは思ったのですが、まさか。。。
NTTの前の勤務先などで 自分も近くで働いていた先生でした。研究会でもおみかけはしたものの、直接に話まではしなかったのですが。。。。
自分は脳外科ではないもので、シャント手術とはどのような手術か とか勉強するのに大変役に立ったのが N先生の著書であったとは、気がつきませんでした。。。
N先生のブログも少しですが拝見させて頂きました。

しかし人間、何が起きるか分からないものですね。
いつ、どうなってもよいように 仕事をしていき 生きていきたいものだと思います。

投稿: suyasuya | 2006.02.17 23:08

初めまして、友人のblogから飛んできました。私は脳外科に通院する患者でもあり
脳外科で現役を続ける義父をもつ者でもあります。
脳外科というのはちょっと特殊な分野なのでそういった素晴らしい方がお亡くなり
になられたのは大変残念に思います。心よりご冥福をお祈りいたします。きっと
義父も知ってる方だと思うので(義父も脳外科の先駆者と言われる者なので)ちょっと
お話を詳しく聞いてみたいと思います。

投稿: ぺんぺん | 2006.02.18 00:02

私は著書を手にしたことはありませんし、
功績・プロフィール等についてもよくは存じません。
ただ、N先生のHPで読むことのできる<良性腫瘍>について書かれている文を読んだだけです。
まず分かりやすく書かれているのに驚きました。
病気持ちになって、あっちこっちの解説を読みましたが、どうしても理解までの距離感は拭えません。
N先生の文章は不思議ですね、とても穏やかで優しい。
読んでてイメージできました。
何かを人に分かりやすく伝える表現を的確に自然にされているなあと。
すっと伝わった印象でした。
でも必要な情報は満載。
へえ~、お医者さんでも、こういう文章書くんだあって(すいません、多分に偏見もっているようです)。
ご本人について何も知らない私には、ただただ表現のすごさが印象的でした。


投稿: ダブル | 2006.02.19 16:54

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