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2006.01.25

通常営業

 旅日記を書いている間、仕事をさぼっていた訳ではない。
1月13日に帰国して、14日から数えて1月は18日間あるが、そのうち7日当番で1回の当直と1回の日直がある。「時差ボケがあるだろうから休め」と言われた14, 15日を除くと16日間で7回の当番は頻度が多い。
 ずっと休んで(遊んで)いたんだから私に少し加重となるのもやむを得まい。

 帰国してからの緊急手術はなぜか慢性硬膜下血腫ばかりで、私が手術に入らなくてもすむ状況もあった。昨日「旅日記」を書き終わって、さあ、今日から何を書こうかな〜と考えていたらクモ膜下出血の急患、で夕方から(日中は予定手術が一杯でとても麻酔科医の手が回らない)緊急手術である。やっぱり神様って見てくれているのかな〜。
「そろそろ本格的に働かせてもいいか」
という感じなのだろうか。来週はすでに大きな予定手術が2つ入っている(うち一つが私の執刀)。

 旅日記で写真を掲載したので、恥ずかしくも世間様に自分の顔をさらす事になってしまった。友人の一人が、顔出して大丈夫なの?、と心配してくれた。今後、極力きわどい医療ネタは避けて行こうと思っている。これまでも「個人情報保護法」を念頭に配慮したつもりではあるが、病院や担当医が判明すれば記事の内容から患者さんが特定出来ない事もない。今まで書いて来た事を消去するつもりは無いので何か問題が生じない限りはこのまましばらく置いておくつもりである。
 ただ、今までのこのブログの記事を注意深く読めば(いや、別に注意深く読まなくても)いくつかのキーワードから私を特定する事は容易であろう。私としては、病院、患者、仕事上の仲間などを批判するような事は避けて来たつもりではあるが、たとえば「時間外労働に対する手当が強制的にカットされている」とか「診断書の書き換えを依頼というよりは半ば強要するようなこと」などは微妙に病院批判、患者批判をしているとも取られかねない。
 私は、現在の医療事情を特に医療職の立場から、世間一般には「医者=金儲けてミスをして悪い奴」というような変なイメージを持たれかねない極論を排除し、実際には我々がどれだけ夜中や休日に働き、手術に際してどれだけ緊張して真剣に臨んでいるか、にもかかわらず「医療費高騰の抑制」という経済至上主義的な発想から、医療費を抑制するために昔より向上しているはずの医師の技術料を減額し、夜中に働いたのに「働いてない」事にし、更に「患者中心」という名の下に「患者の要求には可能な限り応える」ために必ずしも必要ないかもという検査を行い、欧米の脳外科医では決して扱うはずの無い「ストレスが原因の頭痛」の患者を診察し、その一方で搬入時に呼吸が停止しているような超重症の患者まで扱い、へとへとになっているのに航空機会社の客室乗務員やホテルのフロントなどの人を呼んで「接客術」とか「マナー」の講義まで受けさせられ、あげくに実際よりかなり誇張したり『ないことないこと』を記された「患者様の声」という投書を見せられたり、それでも外来や病棟では明るい笑顔で患者さんはもちろんナースにも接しないと、場合によってはパワーハラスメントと言われたり、という悩み苦しむ『実態』を世間の方々にすこし理解して頂ければ、という感じで書いている。
 確かに、ここ10年位で上記のようにいろいろ変わって来ているが、逆に言うと、今までがおかしかった面も確かにある。「医者が言ってるんだから黙って聞け」的な風潮があった事は事実だし、私にもそのような言動がなかったとは言い切れない。我々も変わらなければならない。変わるためには外圧は必要である。
 ただ、圧力だけでなく、変われた人に対する報酬というか、お金じゃなくていい、incentiveの上昇するような何かが無ければ、こころある医師もつぶれて行きかねない。実際、周りにも「あ〜、あの先生も開業するのね〜」という医師を何人も見て来た。
 大学で研究を続ければ素晴らしい業績をあげられる能力のある人、病院勤務で優秀な実力を発揮しこれほどの実力のある医師がこんな田舎の病院にいるのかというような人も、現在の、あえていうならば『医者いじめ』のような状況で夢をなくし、個人事業主としてもう一度「夢」を求めて頑張ろう!でも開業は厳しいな〜、と悩みながら病院を辞めて行く姿を見ていると、私もチャンス(=時と金)があるなら開業しようかな、と考えてしまうのである。
病院や大学にしがみついて、特殊な能力、手術の技術を競ったところで大した事ではないな〜、などと否定的な考えばかり浮かんで来るのである。最近音楽や旅行の事ばかり書いてはいるけれど、こころの深いところではいつでも葛藤し悩んでいると思われる(自分が、悩んでま〜す、なんて言うのは恥ずかしい事だという意識がどこかにあるので、、、)。

 ま、そういう訳で、待っているのだがまだ手術室から連絡が無い。予定手術が遅れれば我々の緊急手術の開始も遅れる。手術する部屋はある。ナースもいる。医師も待っている。でも麻酔科医が不足しているというのが今の状態なのである。これが、我々の「通常営業」である。(今日も帰りは深夜だな〜、あ、今日は管理当直だったんだ、、、明日の夜まで36時間くらい、病院から出られないのだ〜、、、)

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コメント

診療科が違いますので、すべてが同じではないのですが、よくお気持ちはわかります。
個人的には開業しようとは思いませんが、開業などで辞めてしまう人は勤務先でも非常に多いのが実情です。
医者を含めて職員が働きやすく、さらには職員の家族の入院が必要なときに入院させたい病院であるべきだと思います。そうでないと患者さんにとって良い病院とは言えない。
自分の店で売っている商品を 店員が買いたくないというようなスーパーは駄目ですよね。というような映画がありましたっけ。

投稿: suyasuya 勤務医 | 2006.01.25 20:27

先日初めてSPで医学生と医療面接の演習しました。なにを言われてたか、非常に素直で、診察室の設定なのに、ホストクラブかと思ったほどで、笑いをこらえるのに一苦労しました。ブログに書いたら、医学生のコメントが入ってました(爆)TBいただきます。

投稿: @むーむー | 2006.01.25 22:57

suyasuyaさん、@むーむーさん、コメントありがとうございます。
今、もう1/26になってしまいました。0時40分くらいです。脳底動脈ー上小脳動脈分岐部破裂脳動脈瘤で難しい形でした。4時間40分かかりました。ICUで指示を出して今部屋でやっとコーヒーを飲んでいるところです。
日本の病院で、自分の愛する家族を「是非」入院させたい、ここで治療を受けさせたい、という病院がどのくらいの割合あるでしょう?経済的な問題が出てきますが、先が読める良性の病気で治る見込みが高いなら、アメニティの良い特室とか希望するかもしれませんよね、せめて○ノモ○タが入院したクラスの部屋で。
 OSCEというのは、学生の教育のためでありまたそれで試験をしますので、受かりたい学生としては勢い過剰に丁寧なります。
「これから診察をさせて頂きます、○○と申します。」
「ではお困りのことについてお聞きしてもよろしいでしょうか?」
こんな調子でやってます。天皇陛下でも診察してる訳?といいたい。私は片腹痛しという感じ。

投稿: balaine | 2006.01.26 00:41

balaineさん、お疲れさまです。。また笑ってしまいました。あはははは、、、医学生と話す時ですね、髭剃ってなくても、髪の毛ぐちゃぐちゃでもそんなことどうでもいいじゃん。だって、忙しかったらそれどころじゃないし、大切なのは他の事だもんね。って言ってます。

投稿: @むーむー | 2006.01.26 11:38

@むーむーさん、OSCEは基本的には通常外来や入院患者さんの診察における最低限のスキルとマナーを中心にしていると思われます。科学としての医学的知識はほとんど問うていないように感じます。それはそれで必要な事です。
救急外来だって、意識清明で歩いて来る人もいるんだから、「どうされましか?」「何かお困りのことはございませんか?」というような丁寧な物言いの方が好ましいとは思いますが、TPOといいますか、心肺停止状態の患者を救命した(治療者側の体内にアドレナリンがばんばん出た)直後に、腹痛かなにかで受診してあまり苦しがってもいない人に「お話しをお聞かせ願えますか?」って(冷静に)私は切り替えられない。ここまで求めるのなら、もっと医師のQOLを改善して下さいな、ということです。
でも身だしなみというのは、やはり大切ですね。そういう点に気を配れない人が、患者さんの些細な症状に気を配れるかどうか、怪しく感じます。

投稿: balaine | 2006.01.26 12:35

balaineさんお忙しいのにレスありがとうございます。はい、よくわかってますよ。先生が「これは基本の基です」とよく言われますから。私達患者は10人十色で、自分の思ったことを言うだけです。なので、私みたいなSPがいてもいいし、私みたいなのだけでもいけないし、私は一つのサンプルです。しかしそれにしても、balaineさん、基本的会話、そのとおりですね。(爆)

投稿: @むーむー | 2006.01.26 16:42

勤務先は古い病院で、赤字のために税金が投入されても、立て替えもままならず、雨漏りなどもあり、アメニティは最低です。
主に看護師さんですが、スタッフのおかげで、
悪化したとき、空床がないなどで、勤務先で受け入れられずに他の病院に入院した後にでも、「また入院が必要な時には 是非またお願いします」といわれることが時々あります。(いつもなら、もっと良いのでしょうが。。)

@むーむーさんに言われたという、基本の基とは何か? 簡単ではないですよね。では、基本の本は何だ? 基本の基とは 基本の元? 基本のホとか 基本のンとは何? とか余計なことを考えてしまいます。
たぶん医者も十人十色で良いのでは。形式だけ良くしたってね。
白衣が似合わず?、腰に手ぬぐいぶら下げた先輩も、医局などには複数いましたし。

残念ながら自分には出来ないのですが、方言の患者さんには、方言でお尋ねすべきと思います。

投稿: suyasuya | 2006.01.26 18:54

@むーむーさん、suyasuyaさん、コメントありがとうございます。
お二人とも大切な事を言われていますが、医者も患者も十人十色、だって人間ですからね。
「基本のキ」とかホとかは、結局、これは「型」であるという事だと思います。
芸は皆「型」からはいるように、まず「型」「形」あり、そこに「こころ」が伴ってきて達人となって来るわけです。ただ「こころ」には点数がつけられませんし「試験」で評価するのは難しいですから「型」を評価しようというのがOSCEの国家試験導入なのだと思います。お二人はすでに御存知でしょうが。
確かに、田舎の80、90になるじいちゃんばあちゃんに「今日はどうなさいましたか?」と問いかけても「あのしぇんしぇ、なんだか都会の人みたいで、わかんねっちゃ〜」とか言われてしまいます。
「ばあちゃん、どうしたのや?ここがいたいんだが?」
といった言葉の方が良いと思います。人を差別するというのではなく、田園調布の大奥様と置賜のばあちゃんでは対応を変えるのが当然だと思います。

投稿: balaine | 2006.01.27 10:01

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受信: 2006.01.25 23:01

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