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2006.01.30

偶然?必然?

 昨日は全国的にお天気だったらしく、こちらも暖かでかなり雪も融けました。
 一昨日はオケの練習にはるばる行ったのですがお天気悪く、月山新道は吹雪いていてブワ〜ッと風が吹くと雪が舞い上がって一瞬視界がほぼ0になりました。到着までに時間がかかる事と食事を摂る事を考えて、午後3時半に出ました。路面が乾いて交通量の少ない時なら5時には着きます。
「道路はここにあるはずだ」
通り慣れた道ではあるし、ナビも搭載しているので時速40km/hより少し落とすくらいで走り続けますが、この吹雪の中では初めて通る人や気の弱い人では車を路肩に停めたくなると思います。しかし、その路肩自体が雪で存在しない状態でどこに停めたらいいのか、という道路です。
除雪車によって強制的に路肩から山側の壁と谷側に寄せられた雪は3mはゆうに越しているでしょうか?真っ白な中に真っ白な壁と真っ白な路肩と真っ白な道路なのです。中央線の黄色もほとんどの区間で見えません。
 路肩の雪の壁にはおよそ1.5mくらいの高さに青い塗料の帯状の線がつけられていました。除雪作業と同時にこの線を書いていると聞きました。これがないとどこが路肩なのか見えないのです。
 こういう冬山の吹雪の道路を運転する場合、頼りになるのは自分の前を走っている車。前の車そのもの、またはそのテールランプを頼りに走ると楽です。土曜日も最初そうしていたのですが私の前の車が根性なしで(笑)、だんだん遅くなってきて30km/hくらいで走っていたので業を煮やして抜き去りました。
 爽快〜!って、私の前には車がなく、先頭車両になりました。頼る車がいなくなった事に気付きました。でも、所々微かに見える中央線の黄色と先ほど述べた路肩の雪の塊につけてある青い線、そして通り慣れた道路の記憶とナビを参考に私は普通に飛ばしました。
 着いた頃には首が痛くて肩が張っていました。緊張して走行したからです。
 
 前任地の病院にちょっとお忍びで(?)顔を出してみました。ICU, HCU, 4階、6階と脳外科関連の病棟を回り、「あれ〜!どうしたんですか?先生!」という看護師さんには「あ、新年の挨拶です!」といって、ちょっとした焼き菓子をお土産に渡してきました。
 4ヶ月経つとは思えない感じで、まだ昨日まで働いていたような気がしました。私の後任の先生とは瀕回に連絡を取っているので大体の様子は知っていましたが、去年の9月の時点で入院していた人でまだ入院中の方。ずっと前からいたのにこの4ヶ月の間に退院(転院)した方、外来通院中だったのに新たな発症で入院している方、などいろいろ気になりました。
 特に、去年の2月上旬発症で(もうすぐ一年経つんだ)大手術を行った、椎骨動脈解離性脳動脈瘤破裂による重症クモ膜下出血(来院時呼吸が止まりそうだった)の方は、クモ膜下出血による虚血とその後に生じた水頭症が原因と考えられる後遺症を呈しながらもリハビリを頑張っていてもうすぐリハビリ専門病院に転院の予定になっていました。末梢性(核下性)顔面神経麻痺と外転神経麻痺という第四脳室底の障害があって、最初の出血とその後虚血で生じていた小脳症状もあいまって、発語や嚥下、歩行などにまだ不自由な点がたくさんあるけれど、意識はハッキリしているし会話がちゃんと出来ました。
「あ、、、せんせい、、、」と私を認識してくれたのも嬉しかった。頑張って下さい!

 アマオケの練習時間は19時から。まだ時間に余裕があったので、食事をすることにした。久しぶりにまあまあいきつけだった寿司屋の暖簾をくぐってみた。カウンターは空いていたのだが、「予約」となっている。若大将が私に気付き、
(若)「あれ?先生、今日は?」
(私)「うん、ちょっと新年の挨拶によったんだけども、一人なんだけどな〜」
(若)「あれ〜、先生、すみません!今日は、カウンターも小上がりも予約で埋まってまして、しかもみんな18時からなんですよ〜。なんともならないっす。申し訳ありませんです〜〜!」(その時、17:50だった)
(私)「う〜ん、残念だな。また来るよ、、、」
 土曜の夜とはいえ、この天気の悪い、足元の悪い日に予約で一杯なんてさすが『鈴○』である。

 さて、夕飯どうしよう。練習前だからあまりお腹一杯になってもな〜。
三元豚で有名なトンカツ屋にしようかなとも思ったが、頭が「お寿司モード」になっていたので、もう一軒お気に入りの寿司屋『だ○ま』に行ってみるとそこはカウンターも空いていた。
(私)「車なのでお茶で、あと30分位しか無いので最初から握ってもらって、そんなにたくさん食べなくていいんだけど、お任せで、、、」
目の前に今が旬の寒ダラの白子、すなわち「きくわた」が新鮮な輝きを放って私を誘っている。
(私)「これも、、、」

Dadamiアサツキと紅葉おろしをのせたポン酢仕立ての寒ダラの白子(キクワタの他にはダダミとも呼ばれる)、冬の海の最高の美味を味わっていると、目の前の笹の葉の上に、小振りの握りが少しずつ並べられて行く。
キンメダイ、ヒラメの縁側、、、かまトロの炙り、、、地物のサバ、、、

 ああ、旨い!やはり、冬の魚は日本海側だ。
 庄内沖の地物を中心にいいネタがはいっている。よく富山湾が最高とか福井沖がどうとか蘊蓄を聞く。しかし、私が知っている「新潟生まれ」の寿司屋の主人は、修業時代の東京はもちろん全国いろいろ回ってみて、一年を通してもっとも寿司ネタとしての種類が豊富で旨くてカニも貝類もたくさん採れるのは庄内沖だ!と縁故もない鶴岡に店を持った位である。
DongaraJiruでました!冬の庄内の味覚の王様!
「どんがら汁」です。荒れる冷たい庄内沖の日本海で丸々と太った鱈を余すところ無く丸ごとの鍋に使って味噌仕立てにしたものですが、車でなければ日本酒を飲みたかったな〜。
(主人)「ちょっと珍しいものがはいってましたんで、、、」
と、なんと「天然もの」のホタテの握り。ホタテ貝、特に嫌いではないが、わざわざ寿司ネタに握ってもらう事はほとんどない。市場に出回るホタテはほとんどが養殖なのだそうだ。天然物はキモも食べられる、ということで写真奥左側のホタテにはベロのようにキモが付いていましたがこれが味のキツくないレバ刺しみたいな滑らかな食感で甘味が感じられた。その隣りはキクワタの握りである。新鮮なものしかこんな風に握っては食せない。

 ついつい食べ過ぎた。8貫くらいにしておこう、と思って行ったのに、気がついたら14,5貫食べた上にキクワタとドンガラ汁である。(^^;;;
お店を出ようとしたところである人に出会った。まあ、世間一般的に言えばあまり聞こえの良くない表現かも知れないがいわゆる飲み屋の女の子である。なんだろ、英語でいえばフロアレディーなんて呼ぶ事もあるらしいが、仕事が仕事だから誤解される向きも多いと思うが実際はきちんとした子である。そこのママさんとその子(と言っても30は超えている)と3人で一度だけ食事に行った事があった。いつもお客さん相手で気を使って飲めないのでその日は飲みたい、というママの願いを叶えるため、私が運転手になってそのママさんと女の子は昼間っからワインを飲んでいた。(^^
 そのお礼に別の美味しいお店(そこもクイシンボの私は良く知っている)に連れて行ってくれるという約束をして、1年半以上経ち、その間私は転勤してしまった。知らない間にいろいろ世間は動く。なんと当日を最後にお店を閉めるという。流行っていない訳ではなかった。むしろ逆でいつもお客さんが一杯で、電話してもはいれないと断られた事もあった(名乗っていれば別だったかも知れないが)。
「え?!お店閉めるの!今日で終わり?え、え!じゃあ、後で顔出す、かも、、、酒飲めないけど、、、」

という訳で、アマオケの練習後、仲間と溜まり場の喫茶店『山○花』に行ってお茶を飲んでひとしきりだべってから、お店に顔を出してみた。予想通り、閉店を華やかに演出する花がたくさん届けられていてお客さんは溢れんばかり。田舎の地方都市の、残念ながら淋しく衰退気味の夜の街、どこのお店も閑古鳥が鳴いていそうなのにそこだけは「ここは六本木?」というような賑わいだった。ま、お店のスタッフと客が「の〜」「の〜」言っているので庄内である事は間違いない。
なんでこんなに人気のある店を畳むのか。いろいろあるんだと思う。ママさんは真相を打ち明けてはくれなかったが若い女の子を使ったりするのに少し疲れたのだと言っていた。ばったり出会ったがためについ顔を出してしまい、ために帰るのが遅くなり、深夜に雪の月山新道を通って戻る事になってしまった。
でもほとんど対向車もなく、雪も降っておらず、来た時のような吹雪も納まっていてスムーズに運転出来た。

 人間は多くの場合自分の行動に意義を見いだしたがるものだと思う。単なる偶然に振り回され続ける人生なんて大変だし、自己のアイデンテティを失いがちになろう。しかし、単なる偶然に対してこじつけで意味や意義を持たせすぎるのも良くはないかも知れない。私の場合は、『自己愛型人格障害』傾向なので、この場合も、吹雪で運転が大変で少し遅れた上、前任地の病院に顔を出したため、なじみの寿司屋に入れず別のお店に行ったら生まれて初めて「天然もの」のホタテを握りにして食べる事が出来た上、その店にその時間帯に行かなければその夜でお店を閉めるというスナック(って分類するのかな〜?)の女性スタッフに会う事もなく、閉店当日にお店に行く事も無く、もしかするとそのママさんとも二度と会う事も無かったかも知れない。
 しかし、その夜、ママとお話をしたことで、もし私が将来病院を辞めて独立するんだったら、とか、いろんな話が出来て有意義だったのである。まあ、すべて仮定の話なんだが、福岡生まれの私がなぜ今置賜にいるのか、単なる偶然の積み重ねではあろうが、それに意義を、大袈裟に言えば「神の御意志」を感じているのである。

(人生に偶然ってないんじゃないかな?すべて必然なのでは。。。)

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コメント

それはそうですよ~~全てがそうです。偶然ではなく必然です。断言!(笑) それにしても、美味しそうなものばかり。。(゚-、゚)ジュル

投稿: @むーむー | 2006.01.30 18:49

無事帰宅されたようでヨカッタヨカッタ。  ダダミって 脳味噌に似てないですか? それにしても回転しない寿司が食いたいこの頃です。

投稿: オスカー | 2006.01.30 22:43

@むーむーさん、いいでしょう?冬の庄内。。。
あれだけ食べて、多分銀座辺りで食べるのの1/3から1/2の値段ですよ。
一生で最低でも一度は冬の庄内に来て、本場でドンガラ汁とお寿司を食べなければ日本人に生まれたカイがありませんぜ!「一期無会」になっちまいますよ。

オスカーさん、ご心配頂きすみません。ここでは「イガッタイガッタ」って書かないと通じないですよ(笑)。
ダダミ、うん、脳に似ています。昔バングラデッシュからの脳外科留学生が招待してくれて数種類のカレーを御馳走になり、その中に「羊の脳」のカレーがありました。知らない後輩の女の子に黙って食べさせて「それ何だ?」と聞いたら「鱈の白子ですか〜?」と言ったので「おお!近い近い」とからかった事がありました。
今度、回らない寿司屋、行きましょうよ!

投稿: balaine | 2006.01.31 09:49

確かに、雪で真っ白になった高速道路を運転するのは二度としたくない・・・道も真っ白、路肩も真っ白(黄色い線すら無い)、吹雪で視界真っ白。何でこう言うときだけパトカーて来ないんだろう・・・

美味しいもの
山形で、「ガッサンエル」という系統豚ができたそうです。肉はやわらかく脂はさっぱりしているそうなので、是非ご賞味ください。

こんな歌詞があったな~
縁ある人、万里の道をこえて引き合うもの
縁なき人、顔を合わせ術もなくすれ違う

投稿: むかご | 2006.01.31 12:23

むかごさん、コメントありがとう。
「ガッサンエル」聞いた事ありません。どこでお目にかかれるのかな〜。
平○牧○グループの「三元豚」と「桃園豚」はやはり美味しいです。
「一期無会」という私の造語は『縁なき人、、、、』の方。自らチャンスを逃さないように消極的な気持ちを戒めるような言葉として作ったのです。

投稿: balaine | 2006.01.31 19:37

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