『ハンガリー演奏旅行&プラハ、ウィーンの旅』(4)(プラハへ)
・八日目(2006年1月8日):プラハ初日
ハンガリー国ソルノーク市での演奏旅行とブタペスト観光を無事終えて、楽団員本隊は1/8ウィーン経由で帰国である。帰る事になればあっという間である。
私を含む4名の団員とその家族一名はこれからプラハへ向かう。
通常は飛行機を使う距離であるが、ブタペスト東駅からわざわざ列車で行く旅にした。列車は、早朝6:50発。ヨーロッパの列車の旅は日本とはかなり事情が違うだろうからと、5:50ホテルロビー集合とした。そのため起床は5:15にMorning Callで目覚めた。タクシー2台に分乗し「東駅」へ。ターミナル駅なのでここを通過して行く列車はない。すべてここが始発かここが終着である。6:05には駅に着きなれない表示を確認しながら「プラハ行き、6:50」という列車を探した。4番線と書いてある。目の前にはホームが2つ。表示を見ると左の奥となっている。ゴロゴロ荷物を引っ張りながら左奥へ行くとそこにまたホームが2つ。まるで上野駅の常磐線始発ホームを探す様な感じである。
列車はお世辞にも綺麗とは言えない。東欧の遺産の様なディーゼルエンジン機関車が引っ張る8両編成。我々はケチったので2等車。一コンパートメントに6人座り。総勢5名(含む女性一名)なので余裕はある。他の席はガラガラ。なので、喫煙出来る空のコンパートメントに移ってそこでのんびりする。
そうだ、列車には食堂車がついていた。と興味津々覗いてみる。我々は一号車で、食堂は5号車にあるので4つも車両を渡って行かなければならない。9時ごろ行ってみると、シェフらしきまだ若い人とベテラン給仕らしき人が暇そうにしていた。
「予約はいるのか?」と聞くと、特別要らない、との答え。「12時頃に5名で予約したいが」というと、即オーケー。
「メニューを見せてくれ」中身はよくわからない。値段はハンガリーフォリンとユーロで表示されているがやや割高な印象。ベテラン給仕が「これがお勧め昼食コースメニュー」と言う。値段も手頃だしいろいろ聞くのも面倒なので、「よし。それを5人分。席はこことここを予約、いいか?」と英語で通じる。よかった。マジャール語は、エゲシェグングレ(乾杯!直訳は、我々の健康のために)位しかわからない。昼食については後記。
列車の旅は6時間半だが、なかなか眺めが良くて楽しかった。ブダペストを出てハンガリーとスロヴァキアの国境近くまでは列車の左側にず〜っとドナウ河が見えていた。淋しい東欧、中欧の田舎町という景色が流れるように飛んで行く。スロヴァキアに入った頃からだったろうか。周囲は雪景色に変わった。
日本のように高い山がなくなだらかな丘陵と平原が続く雪景色は美しかった。北海道は富良野の冬のような感じであろうか。幾つかの駅に停車してすこしずつ乗客も増えて来たので自分のコンパートメントに戻った。時々写真を撮ったりヴィデオを撮ったりうとうとしたりしていたら、少し大きそうな駅に着いた。ブラチスラヴァだった。スロヴァキアの首都である。首都、といっても、東京駅だとか、ブダペストなどを想像しては行けない。駅に直ぐ北側に山があり、南側にビルが見えるものの「どこに町が?」という印象だった。欧米の線路、特にターミナルではなく「通過駅」は町の真ん中から外れたところにあるからかもしれないが、なんだかうら寂しい、豊かではない印象だった。人口は43万人となっている。
しばらく走るとチェコとの国境に近づく。ハンガリー国内で、ハンガリー側とスロヴァキア側のビザのチェックと検印があったが、スロヴァキア内で、今度はスロヴァキア側とチェコ側のビザの検閲。そう、列車に乗って3つの国をまたいでいるのである。
ビザの検閲が終わったので食堂車に向かう。食堂はガラガラに近い。
まずはビールで乾杯(もう、ここはハンガリーではないからOK。それにチェコビールである!)。食事の事はいつものようにまとめて後記。
胃袋を満たしほろ酔い加減で1号車に向かってしばらく休んでいたら、ドイツ語と英語でもうすぐプラハだという案内あり。みんな荷物をまとめだす。私は「そんなに急がなくていいんじゃないの?」と思っていたが皆に合わせて荷物を通路に運び出す。外を見ると南側に大きな河が見える。ブルタヴァ(モルダウ)なのか?!
それから5分以上して列車が速度を緩めだす。プラハの駅も「通過駅」であり、ターミナルではないため市街地からは離れている様子。ゆっくりホームに入る。荷物をおろす。(ホームとステップの段差が大きい)。全員降りた事を確認。日本のように30秒で走り出す事はなく、しばらく(10分位?)列車は停まっていたようである。つまり、駅に着いてから荷物を運び出して十分間に合った訳であるが、まあ、日本人だからなあ、我々は。
比較的大きな駅の構内をゴロゴロ荷物を押して行くが、改札がない。そういえばブダペスト東駅にも改札はなかった。ブダペストを出て割と早くに車掌のチェックが一回あった。。プラハ駅にも改札がない。これではただ乗りだって可能だ。そういえば、いくらケチったといはいえ、列車の料金は「往復」で一人日本円にして8000円。片道だけの切符の方が高いのだとの事。往復買って片道捨てる方が安いなんて。
駅の構内を進んで行くと少し見覚えのあるチェコ人の顔があった。おお!デュシャンだ!
彼とは1992年、私がピッツバーグ大学の脳神経外科に留学し研究をしていた時、私の直属の上司とデュシャンの上司が既知の仲ということで、彼が同じ研究室に2ヶ月間の短期留学をした時に出会った。1968年のソビエト連邦軍のチェコ侵攻、その後の弾圧を経て、1989年の暮れに起こった「80万人集会」。そして、非暴力的に、整然と、静かに行われた「柔かな」ものだったことから『ビロード革命』と呼ばれた自由世界への復帰。デュシャンと米国で初めて会ったのは、それからわずか2年半後のことであった。そしてそれから13年が過ぎた。
お互い年は取ったが彼のちょっとアラン・ドロンに似た彫りの深い陰のある表情はすぐにわかった。再会を喜びあい抱き合って挨拶をする。彼の案内で(彼がいなかったら戸惑った事だろう)タクシー乗り場に行き、二人は彼の車で3人はタクシーで大荷物も分乗させて、Hotel Palace Prahaへ向かった。
VaのH氏は娘さんを伴っているのでツイン一部屋。ファゴットのT氏とフルートのYS氏が一部屋。そして私はデュシャンのアパートにホームステイさせてもらう事になっている。幸い、彼のアパートからホテルも歩いて5分の距離。プラハは古い街並のため車での通行はかなり不便。一方通行が多くて、歩いて5分の距離を車で行こうと思うと一旦市街地の外に出るように走り10分位かけて別の方向から戻って来る様なことになる。
まず、時間を決めてホテルのロビーに集合し、今日の観光は時間的に「ドボジャーク記念館」と「カレル橋」をちょっと見ようという事になった。わかる範囲でできるだけ歩いてみよう、トラムに乗ってみようという事になったが、最初だけはわからないので、ホテルのドアボーイが進めるままに、ホテルの前に横付けされていた「無印」のタクシーを使う事になった。
(写真はドボジャークの弾いていた(?)ピアノ)
これが失敗だった。メルセデスのE-classの新車。とてもピカピカの車である。おバカな日本人だから「お!ベンツだ!」などと喜んで乗ってしまった(一応、私もちっちゃなメルセデスオウナーではあるのですが、、、)。ホテルから5,6分くらいだったろうか?初めてだからどういう風に走ったのかよくわからないのだが、400コルナと言われたのでチップを弾んで(まだ十分な小銭がなかったので)450コルナ=1800円くらい払ってしまった。
日本のタクシーならあのくらいの距離、あのくらいの時間乗ればそのくらい払っても全然おかしくないのだが、ここは大卒初任給が日本円にして10万円以下、物価半分以下のプラハなのだ。後で聞くと、普通のタクシー(ボディにAAAと書いてある)なら、通常200コルナで行くはずだという。
(写真は「新世界から」 の自筆スコア。どこの部分かわかりますか?)
日本人はドボジャークが好きだ。小学校の下校の音楽は「新世界から」の一節が使われている事が多い。あのオーボエの旋律に郷愁を覚えない日本人は少ない。「ドボジャーク記念館」は日本人慣れしているように感じた。受付の気さく感じの太ったおばちゃんが料金をたどたどしい英語でいう。チェコ語でなければ通じやすいのはドイツ語だ。ガイドブックの値段と違うので聞くと、2006年1月から新料金なのだ、という。これは信じるしかない。しかも写真取るなら+30コルナだという。それなら、5人のうち一人だけ写真を撮る事にして+30払い、後は基本料金(?)の一人40コルナで入る事にした。
ドボジャーク記念館を見た事で少し落ち着きを取り戻した我々は地図を頼りにカレル橋まで行ってみようという事になった。何年か前にプラハに来たという経験者が一名混ざっているのだが、当時知り合いにつれ回してもらったらしく彼の記憶があまり当てにならない。記念館から徒歩で大通りまで出て、地下鉄の切符(トラム、地下鉄、バス共通券)をタバコ屋で買う。一日券80コルナ(=330円)、3日券220コルナ(=900円)だったので、2泊予定の3名は一日券を、3泊予定の私とYS氏は3日券を求めた。
3日間、どの乗り物に何回乗り降りしても共通券で大丈夫なのだ(空港方面とか、ダメな路線もあるらしい)。この時点で時刻は午後4時を回っていたので次第に薄暗くなって来た。カレル橋近くでトラム降り、歩いてカレル橋を目指す。橋の袂近くにある「スメタナ記念館」は4時半までなので明日見る事にして、橋を途中まで渡ってみる。日が落ちて気温がグッと下がる。手袋、マフラーは必需品。帽子のない私はまたスエットパーカーの帽子部分を頭からすっぽりかぶって、目と鼻だけ外に出ている格好になったが、ビ=ン!という感じで冷える。
「うう〜!しばれるねぃ!」と北海道の人なら言うのだろう。
プラハでは書く事が多い。
今日はこの辺で終わりにする。
(明日につづく、、、)
(8日目の食事)
朝食:抜き(実は、1/6にソルノークを去る際にいろいろもらったバナナ、リンゴ、甘いパンなどが残っていたのでそれを少し食す)。
昼食:ブタペストープラハ間の大陸横断鉄道内食堂車にて。
左からハンガリー料理の定番スープ、グヤーシュ。結構美味しかった。赤い色はパプリカですがまったく辛くない奴です。メインは、多分子牛肉の煮込みとパスタ、それにサラダ!おお!!久しぶりに生野菜のサラダのプレートを見ました。でもドレッシングとかかかっていなくて、自分で塩コショウで味を整えるか、シチューのソースをつけるか、でした。
デザートは、箱に入ったチョコレート菓子。まあ、食堂車でケーキは焼けないから外から持ち込むのに簡便な形なんだろうけど。。。あとカプチーノ。飲み物は、チェコが誇るピルスナー・ウルクエル、白、赤ワイン。調子に乗って飲み物を頼む奴がいたので(笑)、当初の予定よりかかりました(5人で、チップ込みで145ユーロ=2万円くらい)。ハンガリーやチェコの物価、生活水準から日本での食事代にするとおよそ4、5万円の昼食になります。ボラレちゃったかな。。。
(夕食は明日の記事へ)
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コメント
これではただ乗りだって可能だ。
→ でも 検札でつかまると 罰金はものすごく取られそうです。
他所の国ですが、駅のスタンプのようなものを押さなかったばっかりに、切符は買って持っていても、罰金を払わされたことがあります。実は、何を言われているんだか そのときはよく分からなかったのだけれど。。。
片道だけの切符の方が高いのだとの事。往復買って片道捨てる方が安いなんて。
→ これは イギリスなんかでもそうではないですか。駅員さんに往復を買え、と勧められたことがあります。システムが不思議ですよね。
乗客数が見かけ上 倍になって、乗客数の統計は あてにはならないことにあるんでしょうか。
投稿: suyasuya 鉄道ファン | 2006.01.19 20:05
わかっていることだけどほんと、先生は次の仕事は
物書きでもよいですね^^;
すっかり自分も一緒に旅行に
行ってきた気分です(笑)
そのチェコビールがとっても
気になるんですけど・・(爆)
投稿: 則香 | 2006.01.19 20:07
演奏旅行記楽しませてもらってます。
今日は、楽譜クイズの答えを書きにきました。
と言っても普通に答えても面白くないので、先日私のブログで公開した新世界の演奏で私が使ったパート譜で答えます。
答えは、1楽章の一部でしょう?
私は、ほぼバイオリンパートをフルートで吹いていましたのでbalaineさんの写真の下から5つめのバイオリン部分を見てください。
私の(きたない手書きの)楽譜の一番下の部分が、balaineさんが撮影した部分に該当すると思います。
当たったでしょうか?
投稿: ♪ふえ♪ | 2006.01.19 22:18
今夜の11時。この吹雪の中、脳梗塞の急患を診に来ました。今、入院の準備で待っているところです。
suyasuyaさん、そうですか。。。鉄道ファンって奥が深いからな〜。でも飛行機の旅の何倍も楽しかったですよ。余裕がありますし景色が楽しめるから。
則香さん、そうですか、では直○賞でも目指そうかな。目指せ、渡○淳○か。。。でも色っぽいのは書けないな〜。
チェコビールは美味しいです。明日もビールの事書きますから読んで下さいね。
♪ふえ♪さん、御明解で〜〜す。楽譜見ましたが、あれ手書きなんですか?
綺麗ですね。ああいうのって、性格が現れますよ。なるほど、、、
投稿: balaine | 2006.01.19 23:06
なんかだんだん面白くなってきた(^ー^)電車の食道車なんて興味あり。
ところで、則香さん、ピルスナーウルケルもブドワゼ(米国の発泡酒と違うちゃんとしたバドだよん)も日本で手に入るよ。お値段も手頃。ビール党党首様ぁ
(balaineさん失礼しました)
投稿: @むーむー | 2006.01.20 00:14
「でも」飛行機の旅の何倍も楽しかったですよ。余裕がありますし景色が楽しめるから。」
とありますが、
[でも] は 変ですよお。それとも。。。?
ところで、景色は 鉄道でも 空からでも どちらも 別の景色で楽しめますが、やはり もしも 歩いて行く余裕があれば 一番楽しめますよね。
投稿: suyasuya 鉄道ファン | 2006.01.20 03:59
@むーむーさん、県庁所在都市に世界のビールが100種類くらいあるビール専門のお店があり、チェコ以外にいろいろ飲んだ事あります。ブドワゼってチェコ語読みですか?チェコ人は「ブドワラ」って言っていたような記憶が。
ビールのことは「プラハ初日の夜」で書きますね。
suyasuyaさん、国境をまたいで3つの国を徒歩では、、、ね〜。
車だと運転に集中して景色が楽しめないし、列車の旅はいいですよね〜。
「でも」、、、おかしいですか?わたしなりの、suyasuyaさんの文への反応です。
投稿: balaine | 2006.01.20 11:44
うちの『プラハ写真日記』にご訪問&書き込みいただきましてありがとうございました。
列車の食堂車、高いんですね。びっくりしました。5人で2万円????チェコの物価では考えられない食事代です。
ところで、BUDVAR の事ですが、チェコ語読みは『ブドヴァル』だと思います。
投稿: うめぼし | 2006.03.10 17:51