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2005.12.28

私の好きな話

 多分、高松に住んでいた中学生の頃だったと記憶している。紫雲中学という地元では有名な中学に行っていた。
 国語で『徒然草』の授業があった。その時、生まれて初めて「高名の木登り」という有名なお話を聞いた。
どうしてかわからないが、当時のbalaine少年はその話にいたく感動し、内容が脳の中に深く刻み込まれた。その後、徒然草など目にした事はないのだが、このお話はず〜〜っと覚えていて、たまに、本当にたまにであるが、後輩に執刀医をさせているときなどにその医師に聞かせるように、あえて器械出しをしているナースに向かって話すことがある。

「ねえ、看護婦さん、知ってる?「高名の木登りといいしおのこ」っていうお話。」
今まで、「はい、知ってます。」とか「あ〜、聞いた事があります。」という人にまず出会った事がないのが不思議であった。
 今日、何かのことで見つけてTBをした「TOEICハイスコアラーの英語」というサイトに遭遇した(私はまだ5年位前に一回しか受けた事がないが、2度の米国留学経験や通訳経験があったためか900点を超えるまずますの出来だった、、、自慢?!)。そこに、英語学習に因んで本居宣長の『うひ山ぶみ』という随筆の中に書かれた「長く倦まずおこたらずして」のことが解説してあった。多分、以前、私もブログのどこかで、「一つの事を続けられる事も一つの才能だ」というような事を書いた覚えがある。凡人は、少し頑張っても結局諦めてしまうのに対し、天才はある意味愚直なまでに継続する力、続ける心を持っている、というようなことである。
 この「長く倦まずおこたらずして」を読んでいたら、つい上に書いた「高名の木登り」の話が思い出された。
 万が一、御存知のない方のために簡単に解説すると
『弟子が高い木に登っているのを見守っていた「木登りの名人」が、危険な高いところに弟子がいるときには何にも言わなかったのに、地上まであと少しの軒先くらいまできた時に「気をつけろ」と言ったのを聞いて、そばで見ていた人が 「危険な高いときに注意しないで安全になってから注意するのはどうしてですか?」 と尋ねたところ、「高くて危険なところでは誰でも注意する。低く安全な所にきた時に油断して怪我をすることが多いから、その時こそ注意してやることが大切なのです。」 といった。』
というお話です。

 そうしたらWBOXという、(既に有名なのに私が知らなかっただけかもしれないが)外科医が作ったと思われる素晴らしいサイトを見つけた。そこにも、この「高名の木登り」の話が書かれていた(それ以外にものすごく為になる事がたくさん書かれています)。URLは、
http://www.netwave.or.jp/〜wbox/index.htm
です。残念ながらブログではないのでTBできません。(〜は小文字です、ご注意!)
 これを読まれた方でお時間のある方、特に医師や医学関係の方はこのWBOXに行ってみて下さい。日本中の医師、特に外科医がこれを読んで教えに従えば、「医療ミス」や「医療訴訟」というものは格段に減少するのではないか、と思いました。
 しかし、現実は、医師も人間であり、人間には様々な性格や特性を持った人がいて、ばっちりの適性のある人ばかりが医師をしているわけではないし(適性に関しては我ながらかなり疑わしい方です)、医学部や医学・医療教育機関で「人を育てる」ことの難しさは世界共通のものだと思う。何も医師に限った事ではなく、適切な人材を育てる事は優しい事ではない。一番いいのはモデルになる、素晴らしい先輩、熱意と実力の兼ね備わった指導者がいることだろう。「高名の木登り」の弟子は多分皆優れた「木登り」に育ったはずである。
 だから、学校に限らず、「先生」というのはとても大事なものなのだと思う。
 私は自分に与えられた仕事をそれなりに真面目にこなして来たとは考えているが、こういった面から、後輩にとってのいいモデルになって来たか、人が付き従い学ぼうと思う様な指導的役割を果たして来たか、と考えると非常に心細い思いになる。もういい年なのだし、自分の腕が、とか能力が、とか考える以上に「人を学ばせる、育てる」こともある程度の経験を積んだ医師には要求される事だという事を(今更で多少恥ずべき事ではあるが)思いめぐらせている。

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コメント

いやあ、WBOX先生のサイトは 実に内容が豊富で 勉強になりますね。
まだほんの少ししか読めていないのですが、
とりあえず 教えて頂いたお礼を と思いました。ありがとうございます。

投稿: suyasuya | 2005.12.28 20:17

WBOX 覗いてきました。
分野は違えど、考えさせられました。
昔を思い出してみたり、今やこれからを考えたり。

ヨーロッパ
大雪で大変なことになっているようですね。
無事、旅立てそうですか?

投稿: むかご | 2005.12.30 20:42

お久しぶりです。こちらでははじめましてです。わたしは、医療関係ではない会社のOLですが、WBOX、以前、拝見したことがありました。その中に
「ずいぶん下手だな、と感じたら、自分よりたぶん下。
少し下手だな、と感じたら、自分と同じ。
自分と同じ、と感じたら、自分より少し上。
上手いと感じたら、自分よりはるかに上」
というような言葉があり、印象に残っています。

旅行、お気をつけて行ってらしてくださいね!

投稿: サワ | 2005.12.30 22:02

suyasuyaさん、むかごさん、サワさん、ありがとうございます。
確かにヨーロッパも大変な事になっているようです。
帰って来れなくなったら、プラハ辺りに永住したいな〜〜〜。(逃避行動)(^^;;;

投稿: balaine | 2005.12.31 00:57

こんにちは。はじめまして。
まったくの偶然で WBOX を見つけて読んでいました。

生産でもサービスでも、どんな仕事をしている人にもとても伝えることのあるサイトですね。

あと、職場で最近平家物語の一節を引用したことがきっかけで同僚と徒然草を読むことになりました。もちろん「高名の木登り」も読みました。今から670年前に現在もてはやされている経営書や自己啓発書と同じことを書いているのですね。第155段など、特に心に残ります。

投稿: Shira | 2006.09.09 08:35

Shiraさん、コメントをありがとうございます。
タイトルを見ただけでは、「何を書いたんだったっけ?」と言う感じで、本人も内容を忘れておりました。
しかし、上のコメントに対する私の返事の中に、既に「逃避行動」「立ち去り型サボタージュ」の発言がありますね。

投稿: balaine | 2006.09.11 13:31

Shiraさん、コメントをありがとうございます。
タイトルを見ただけでは、「何を書いたんだったっけ?」と言う感じで、本人も内容を忘れておりました。
しかし、上のコメントに対する私の返事の中に、既に「逃避行動」「立ち去り型サボタージュ」の発言がありますね。

投稿: balaine | 2006.09.11 13:31

ひげ鯨さん、お元気ですか?
ご多忙な日々をお過ごしなんでしょうね。
御地の秋は如何ですか?
こちらの秋は例年よりずっと早い気がします。
梨は幸水⇒豊水⇒二十世紀となりました。
ピオーネの値段も下がりました。
ハウスみかんの粒も大きくなりました。
広島は松茸生産量日本一だとか?ホントかな?私の口には入らないので俄かには信じられない。
松茸の今年の出来高、希望を込めて例年並みだそう…

投稿: リスペクト | 2006.09.14 12:02

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