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2005.12.01

医療制度改革大綱決まる?

 医療制度改革の骨子が各紙に報じられていました、
1)高齢者の患者負担は2008年度から原則、70歳未満3割、70〜74歳2割、75歳以上1割。70〜74歳の低所得者に特例措置
2)2割負担となる乳幼児は08年度から対象を3歳未満から未就学児に拡大
3)診療報酬は引き下げの方向で検討
4)医療給付費の伸びを検証する数値目標を策定
5)出産育児一時金を30万円から35万円に引き上げ
6)75歳以上を対象とする新高齢者医療制度を創設
 やむを得ない方向である事は認めます。「少子高齢化社会」の歯止めと「社会保障費の増大」抑制を何としてでもやる、ということでしょう。
 先日も書いた「診療報酬引き下げ」について一言。骨子は政府の発表のはずですが、新聞によって微妙に文言が違うのです。地元紙には、「経済動向に応じ診療報酬を引き下げる」と書いてありました。
 つまり、診療報酬は不況、デフレ傾向の経済情勢に呼応するように、「下げる」のだ、ということでしょう。
 あれ〜?日本の健康保険制度は戦後の混乱期、一部を除いて誰もが貧しく苦しんでいた時に、「国民皆保険制度」として造り出した、日本国民一人一人の互助的医療保険制度です。戦前ならば、家族が大病すると「田畑を売ったり」「娘を身売りしたり」「借金して夜逃げしたり」ということが少なくなかったのですが、国民に等しく健康を享受する機会を提供する世界に誇れるシステムを作り維持して来た訳です。経済情勢にかかわらず、その財源は公的負担(国、地方の税金)、保険料(事業主と加入者負担)そして患者負担(受診時一部負担金)で成り立ってきました。政府の考えは、「医療費が嵩むから、まず患者負担を増やそう」、「医療費の増大を抑制するために診療報酬を減らそう」です。
 財源を増やそう、とすると「税金をあげる(消費税率の上昇)」事に繋がりますが、患者負担を増やす(制度を変えたり、高齢者の負担を増したり)事よりも、どうして『事業主』負担の増を考えないのでしょうか?事業主負担を増大する事は景気活性化を妨げ不景気を長引かせるからということなのでしょう。公的負担である税金を、国民から消費税で徴収するのではなく、何故法人税を引き上げないのでしょうか?景気活性化を妨げ失業者を増やすからでしょう。このように、医療費の財源は時の経済情勢に大きく左右されるという事はわかります。
 だから、診療報酬を引き下げる、という考えには疑問が生じるのです。それじゃ、バブル時代とか好景気の時に「経済情勢に応じて」診療報酬がばんばんあがったか?というとそんな事はなかったはずです。だいたい、診療報酬に関する要求などは、末端の我々勤務医がいくら声を上げてもなかなか政府には届かず、学会が医師会に進言し、医師会が中医協に要求し、という形で進められて来たので、ある治療法が保険収載されるまで何年もかかったり、診療報酬がなかなかプラス改定されずにいたのです。このように時の経済情勢とはほとんど無関係に決定されて来ていた診療報酬が、急に「経済動向に応じて下げる」とされているのです。
 日本の国民医療費がGNPで世界17位と「低い」位置にある事は周知の事実です。その位置だけではなく、過去何年、何十年の総医療費の伸び率でみても先進諸国中最も低いと言えます。にもかかわらず、平均寿命世界一(男性は4位に後退)、乳幼児死亡率世界一低い、WHO発表による健康寿命や健康達成度総合評価はいずれも世界一です。これらの事が成り立って来たのは、世界トップレベルの水準の医療技術を誇りながら、一部の医師を除けば「医者や病院が儲けていない」から成り立って来た、と考えるのはあまりに我田引水なのでしょうか?先日来言っているように、これまで消費社会、自由競争経済と一線を画す形で運営されて来た日本の保健医療が、急に「経済」の側面から変更を余儀なくされているように思うのです。国際的に見れば如何にこれまで「決して高くない医療費でやってきたか」という点などは無視して、「医療費が嵩んで来ているのに経済情勢は不景気なのだから、医療もデフレになるのは当然だ」のような考え方が、政府、与党、担当者会議の中にあるのではないでしょうか?そうやって社会保障問題を資本主義、自由競争消費経済とすりあわせる様な考え方を続けて行って大丈夫なのでしょうか?
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 さて、12月になりました。こちらでは、雪も降りました。山は白くなっているところもありますが、里には積もっていません。今年もあと30日。「師走」というのに(違う師ですが)、緊急手術になる様な大出血やクモ膜下出血が来ません。なので走る必要があまりありません。来ないのはいいことです。あと31日でハンガリーです。ソルノクでの合同演奏、ブタペストでのオペラ、プラハでのコンサート、ウィーン、、、これらを夢に見ながら本年の残りも頑張ろう!

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コメント

日本は医療・福祉と教育という国策の根幹をないがしろにして、土木建築に励み、社会が歪んだ責任を誰に押し付けようかと考え、とてつもないODAを払いながら「こころの問題」として靖国参拝を続けて隣国と敵対する首相をマスコミの力で持ち上げる、という国です。マスコミは、医療費の対GNP費が主要先進国の中でとても低いことや、日本の医療活動が医師のボランティア労働で成り立っていることなど触れようともしません。自治体とて金がないとなると「教師の給料を減らせ」です。そこには何の理念もなく、利権に基づいて行動する魑魅魍魎の姿しかみえてきません。悲しくてしかたがありません。

投稿: Lafin | 2006.01.19 21:49

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