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2005.12.17

12/17続き

です。
 で、夜中に帰って本田美奈子さんの追悼特集番組を見ました。なので就寝は3時になってしまいました。ゆっくり後で見ても良かったのですが睡眠時間を削ってでも見たかったのです。
ーー 
 そして朝8時半から日直。車の硝子が凍っていて見えないので、Defつけて5分以上経たないと発進できない状態でした。最初は救急外来ものんびりしていたので昨晩の患者さんを診察。もうぱっちり目を開けていて、なぜ自分がここにいるのか、手術した事などは全くわからないが、「わからないということがわかっている」ほぼ覚醒した状態でした。昔の脳卒中の既往で右半身に軽い麻痺があるのですが、それ以外は全く無症状。術後CTも問題なし。非常にいい結果でした。
 救急外来は、昼前から俄に活況を呈してきました。活況ではない方がいいのですが、めまい、頭痛、転倒、その他の患者に加え、外傷が立て続けに救急車で搬入されました。

 40代の男性。2mの高さから転落し、左頭頂部を打撲、左耳から血を流しているが意識はあるとの救急隊からの連絡。20分で到着。意識はJCS10くらいである!
 え?これはおかしいよ。
 救急隊によると、受傷直後一瞬意識を失ったが自分で消防署に連絡をして来て、救急隊到着時は立って歩いていたとのこと。それが救急車の中で一回嘔吐して少し反応が鈍くなったとのこと。救急外来でも痛み刺激を与えて起こすと、生返事をする。目を開けさせると目の前にかざした私の指の数を答える事が出来るが、放っておくとすぐに閉眼する。
 これはおかしい。意識障害が進行している。
 すぐにCTをとる。
 あった!
 急性硬膜外血腫。頭蓋骨の骨折が、左頭頂後頭部から静脈洞部を横切るように側頭部まで伸びている。血腫は左頭頂後頭部から静脈洞を超えて後頭蓋窩まであり、しかも厚いところでは3cmを超えている。
 これは緊急手術である。もたもたしていると患者はあの世行きである。CT後、すぐに手術室看護師、麻酔科医に連絡。家族はまだ到着していないが会社の同僚(仕事中の怪我)が来ているので、その方達に説明する。
「正しくは家族が来てから承諾をもらいますが、出血のため緊急手術をしなければ生命が危険です。家族の到着を待たずに手術の準備を進めます。髪も剃ります。よろしいでしょうか?」
と(有無を言わせない様な迫力があったかも知れないが)同僚に断り、髪を丸坊主にした。
 麻酔科医になかなか連絡がつかない。こちらは1分を惜しんで準備を進めているのに、周りがついて来れない!休日当番ではない別の麻酔科医に連絡するように指示。どうも、休日当番の麻酔科医は、遊んでいるのではなく、外科で腸閉塞の緊急手術を行うために既に連絡が入ってこちらに向かっている途中らしい。しかし、大雪で時間がかかっている模様。
 そうこうするうちにようやく家族が到着。既に準備しておいた、手術承諾書、輸血承諾書、状態の説明の紙を見せながら短時間に簡潔に説明。要するに手術しなければ死ぬ、ということ。すぐに承諾を頂く。輸血の準備も終わった。血圧持続モニターのための動脈ラインもとったし、点滴ラインは2つとった。後は、麻酔科医の到着を松だけ。やきもきしながら待っていた。30分たってもまだ麻酔科医と連絡がつかない。脳外科の同僚は到着した。二人だけで始めちゃおうか?とも話したが、もうすぐ麻酔科医が来るのだろうからと待つ事にした。
 本当の大緊急の場合は、救急外来で穿頭して血腫をとる事すら考えたが、マンニトールを300ml投与したところ、JCS30〜100の状態が10〜20くらいに改善した。
 「緊急手術」を私が決定してから、1時間たって麻酔科医が到着した。「なんか緊急手術という事ですが、私は別の緊急手術で呼ばれて来たんですが」と麻酔科医。
私:「何でもいいから今から手術したいのでお願いします」
麻:「もう一人麻酔科医呼ばないと対応できないのですが、ちょっと待って下さい」
私:「・・・」

すぐに、すでに別の麻酔科医も連絡が行っていて病院に到着し、手術室準備OKとなった。
私が手術を決定してから1時間15分、患者の家族に承諾書をとってから50分が経っていた。しかし、まだ患者の意識はJCS20くらい。
まだ大丈夫!
それからすぐに手術開始。大きな皮膚切開の後、頭を開く前に、まず後頭蓋窩と頭頂部に1個ずつ穴をあけ、そこから可及的に血腫を取り出す。これで、あとは慌てる必要は無い。
ゆっくり大きな開頭。やはり横静脈脈洞から強い静脈性の出血あり。止血に少々手間取る。硬膜を開くと、薄い外傷性クモ膜下出血はあるが硬膜下血腫はなかった。左の後頭蓋窩と頭頂部の大きな開頭と静脈洞の止血で約2時間の手術だった。術後の経過は?今さっき終わったばかりなのでまだわからないが、感触としては大丈夫だと思う。自発呼吸しているし手足も自発的に動かしていた。
 私は、手術直後の患者さんをゆっくり観察する暇もなくまた救急外来に呼ばれた。私が緊急手術に入っている間、外科系日直医がいなくなっていたので、管理日直医が代行してくれていたのだが、内科系日直医とあわせて急患に対応しても仕切れないくらいのパンク状態だという。救急車が立て続けにきた。
 救命救急外来に行くと、丁度一台の救急車が入ってきた。頭皮から激しく出血している。
 なんと70代のおばあさんが3mもの高さの屋根で雪下ろしをしていて転落したとの事。しかし、下は地面ではなく大雪なのでどこも骨折など無いのだが、転落する際にトタン屋根の角に頭をぶつけたらぱっくり切れてしまったらしい。しかも悪い事に浅側頭動脈という皮膚にしては比較的太い血管が切れている。強い圧迫止血をされていたが、それを解除して傷を見ようとしたら動脈性の出血がピューと私の白衣にかかった。そこをモスキート鉗子で2カ所挟んで止めた。そして、消毒、麻酔をし絹糸で動脈を結紮して止血した。CT上は異常がなかったが、多量の出血をしていたので入院させる事にした。
 私が診てない(手術中)間にも、つららが落ちて来て頭皮に当たり出血したとか、歩いていた屋根の雪の塊が頭に落ちて来たとか、雪道で転んだとか、今回の大雪による怪我が多数来ていた。
 私は、昼食はもちろん水も飲まずに緊急手術をしてその足で救急外来に来て出血患者の処置をして入院させ、ようやく医局に戻ってコップ一杯の水を飲んだ。検食の昼ご飯を食べようと思ったら既に片付けられていた。
悲しすぎる。。。
ーー 
 今日は何時頃帰れるかな?
 昨日の患者さんの手術創の消毒もしてないし、さっき入院させた患者の指示も完成してないし。
ああ、でもこの3日間。フルートの練習をまったくしていない。というかできなかった。どうしよう、来週は発表会だよ。。。

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コメント

本当にお疲れ様です。
大雪でさぞかし 雪下ろしでの外傷が どこでも 多いことと思います。
外傷の患者さんが増えないで済むような 家屋の構造とか、雪下ろしでの対策、雪下ろしのシステム化ができないことかと、思います。

投稿: suyasuya | 2005.12.18 10:11

suyasuyaさん、ありがとうございます。
雪の被害、屋根からの転落、交通事故、全国で多発していますね。
外に出るな!とも言えないのでしょうが、アメリカにいた時、大寒波が来ると政府かどこかの広報で「外出を控えるように」と市民に通達が出ていた様な記憶があります。

投稿: balaine | 2005.12.19 10:03

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