充実感と、、、その3
昨日は『勤労感謝の日』。
最近とにかく出かけてばかりいたので、昨日は自宅でのんびり過ごす事にした。ネットにも触りたい誘惑を吹っ切り、読みかけてたまっている本数冊に目を通し、「音ログ」用の録音をして(本日、早速一曲アップしました)、今朝までまったく外に出ずに家の中に籠って過ごした。三食、家で食べたのは久しぶりだ(食と言っても朝はパンだけだが)。
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「充実感と、、、」のその後に続く言葉は、多少揺れている。「虚脱感」もある。「感激」もあった。「感謝」もある。様々な想いがあるので一つの言葉に絞れないので「、、、」にしてある。
さて、いよいよ11/20(日)午後2時、開演のときがやって来た。12時半過ぎからホール入り口に人が並び始めた。森山某のチケットを求めた列ではない。「え〜?こんな早くから我々のコンサートに並んでくれてるんだ?!」と不思議な気持ちになった。中には福田さんの熱烈なファンもいらっしゃるのかも知れない。できるだけ前の方で、福田さんの演奏を、ということかもしれない。何でも県外から来てくださった方も居た由。
「希望ホール」は昨年出来たばかりの新しい音響のいいホールで、満席1300を越す(写真はゲネプロの様子)。来月のハロプロ+あややの公演や、上記森山直太郎のコンサートなら満席になるのであろう。一地方都市のアマチュアオケのチケットなどは、なかなか売れない。強いコネを持っている団員で一人50枚以上さばく人もいるが、去年20枚以上売った私も今年は直前に地元にいないので10枚を越すのがやっとだった。「席が半分埋まるか?」という悲観的な予想をしている団員もいた。
いよいよ開演。一曲目のベルリオーズ作曲「ローマの謝肉祭」、私は降り板なので、タキシードのまま遠慮気味に3階席へ行ってみた。ぐるりと見渡すと7割近く埋まっているように見える(公式入場者数は800に満たなかったそうであるが)。ここのホールは天井が高く、2階3階席の方がオケの音が均一に聴こえる(逆に、固まって聴こえて来る感じでライブの臨場感に乏しいのでやはり1階がいい、という人もいる)。出だし、ちょっと皆怖がっているような、探っているような感じも受けたが、中間部のテンポが早くなった辺りから次第にノリノリ。いい演奏だった。10分足らずの曲であり、観客もまだ乗ってない感じは否めない。
2曲目。いよいよマエストロ登場。
「今日はフォーマルに決めてみました」と福田さん。かっこいい!(写真隣りカットされているのは私)
ギターリサイタルのときは、よく青いシャツで演奏されるが本日はタキシード。スピーカーなどのステージのセッティングもスムーズに終わった。スムーズ過ぎて、わたしはステージに遅れて出てしまった。ゲネプロの時は8分もかかったので、1st Vn.の椅子の移動やその他を素早く!と言われていたのだ。「5分くらいはかかるだろうから」と3階席から余裕でバックステージに来てみると、既にみんなステージにあがっている。3分位ではいったようだ。まだ、打楽器奏者が入っているタイミングだったので凄く遅れた訳ではないが、ちょっと失敗!
福田さん、続いて工藤さんが登場。一瞬の静けさの後、福田さんのギターとコントラバスの通奏低音のような出だしで始まった。第一楽章、フルートからピッコロに持ち替えてすぐにオクターブの跳躍ばかりのスタカートでpの音の連続。フルートのアムブシュアとピッコロのそれではやはり違いがある。最初の第3レジスター(フルートの第4)のG(ソの音)が出ると少しホッとする。福田さんのぐいぐいとオケを引っ張るような情熱的な演奏に、我々も必死でついて行く。昨日のリハ、今朝のゲネプロ、そして本番と全て少しずつ違う弾き方をされている。Ad libという奴か!前半部のピッコロとオーボエが同じ旋律を刻むところで私の音一人になった。「あれ?」間違ったか?オーボエがなぜか2、3小節遅れて入る。おいおい、間違ってるよ。そのまま気づかずに2、3小節吹いている。1st flute奏者が「違うぞ!」と小声で伝える。オーボエ奏者も間違ったことに気づいてはいたのだろうがフレーズを途中で停めては、いかにも「間違った!」という感じなのでちょっと吹いて正しい小節に戻って来た。ホッとする。第一楽章中間の激しい部分にさしかかる。ここは、フルートとピッコロの持ち替えが忙しい上に、フルートもピッコロも第3レジスターのAやHという高音がある。1小節だけの休符の間にササッとピッコロに持ち替えて音も落とさずに出せた。少しホッとする。第一楽章終盤。ピッコロで早いアルペジオとまた跳躍。なんとかプスッとならずに音を出せた。再びフルートに持ち替えて、第3レジスターのHとAが連続する最後の部分。何とかできた。第一楽章終了。少しホッとした。
さあ、第2楽章。今日はコールアングレ(イングリッシュホルン)の音程も素晴らしい!福田さんのギターソロとコールアングレの叙情的な旋律がゆっくり進んで行く。美しい。しかし、次第にドキドキ。2nd fluteが口火を切る、スピードの全くがらっと変わる中間部が近づく。指揮者の指揮棒の動きと楽譜に集中して休符を数え、構え、さあ、ここだ!急いで滑らないよう、音をクリアに、3連符の緊張感とスピード感を出せるように、そして続く人達に音楽を渡せるように。出来はよくわからないが上手く行ったような気がする。第2楽章、最後の弦の不協和音的な、宇宙空間を思わせるようなpppの音で終わる。
第3楽章。Attacaではなく、ゆっくり待って入る。福田さん、昨日のリハの時のスピード。早いよ〜。中間部のピッコロは、素早いオクターブの跳躍によるフレーズが2回、短調と長調である。「調性を感じられるように吹いて」と練習の時に工藤さんに言われていたが、こんなに早いと音を落とさずに吹くので必死。出来は、今一。ちょっとプスってしまった。中間部、ピッコロはトリルでの3連符の連続。結構目立つ部分。なんとか上手く行ったようだ。そしてクライマックスを迎え美しく終わる。
拍手、拍手。福田さんは、多分、3、4回カーテンコールあり花束贈呈ありで、ソリストによるソロのアンコールになった。8月の国際ギターフェスティバルで4本のギター(福田進一、村治佳織、鈴木大介、大萩康治、なんて贅沢なカルテット!)によって世界初演された『最上川舟歌による幻想曲』のソロ版を直前に考えてくださったようで、アコースティック・ギター一本での美しい響きを大ホール一杯に満たしてくださった。やんやの拍手。終わってしまうのが勿体ない。しかし、予定通り15分のintermission。
さあ、後半、メインはブラームス作曲「交響曲第4番」。40分に及ぶ大曲である。1、2、3楽章と大きな穴もなく、進んで行く。オケ全員が魂を込めて演奏しているのがわかる。こういう感じというのは、上手い下手の問題ではなく観客にも伝わるはずである。個人的には3楽章のピッコロのところで、緊張で指が硬くなって回らなかった感じであるが、実際はどう聴こえたのだろう?少し不安。そして、ついに第4楽章。中間に有名なフルートのソロ、通称『大ソロ』と呼ばれるところがある。ここは1stの独壇場。私は1st奏者の緊張と気迫を隣で感じながら、「よし!頑張れ!」と心の中で念じるしかなかった。緊張した音ではあったが綺麗に演奏していた。自分の事のようにホッとした。
そして、終楽章のクライマックス。全員渾身の演奏。ブラボーこそ聴かれなかったが、一段と拍手が大きかったように思ったのは気のせいだろうか。
アンコールは、ブラームス作曲「ハンガリア舞曲」。私もノリノリで吹いた。そして終わった。
今年の2月にファミリーコンサートをやって、その後から秋の定期へ向けて、おおよそ8ヶ月半の準備練習の上のコンサートが終わった。そこそこの演奏はできたかなという『充足感』はあるのであるが、「あ〜、終わっちゃった!」という虚無感というか虚脱感というか、心残りというか、そんな感じがまだ続いている。我々地方のアマオケは、皆いろんな仕事や家庭を持ち、練習時間の制約や人数の不足や運営資金の貧しさを何とか乗り越えてやっている。特に、うちのようなアマオケは、作曲家の三枝成章さんがいみじくも行ったように「存続している事が不思議なオケ」である。農業従事者の率も高く、台風など農作物に影響が出るときは当然集まりも悪い。私も急患で呼ばれたり、緊急手術をする合間を縫ってという感じでやってきた。10月からは片道2時間かかる遠方に転勤になって、でもそれまで7ヶ月やって来た事を無駄にしたくなくて、自分なりに頑張ったと思う。そういった諸々の思いが演奏につまるのである(実際、弾いている最中はそんな事を考えている余裕は全くないが)。
終演後、市内のレストランで「懇親会兼打ち上げ」が行われた。マエストロ福田&工藤両氏もご出席。みんな演奏が終わってホッとして楽しい酒を飲んだ。席上、元N響ビオラ奏者で鶴岡市出身で現在東京に住んでいらっしゃるW先生からいろいろ為になる話しを聞いた。特に、強く印象に残っているのは、ブラ4のフルートの大ソロのところ。あれは、生涯で4つしか交響曲を書かなかったブラームスが、想いを寄せていたクララ・シューマンに自分の思いを伝えようか、伝えようか、伝えようか、いややめようとした部分なのだ、と。「言おうかな、言おうかな、、、やっぱりやめておこう」という感じでは確かにある。中年(50才前後だから壮年?)男の煮え切らない哀愁なのだ、と。すご〜くよくわかる解説だった。もし私がこの『大ソロ』を吹くチャンスがあったら、この日のW先生の言葉を噛み締めながら吹いてみたいものだ、と思った。
プロのオケというのは、コンサートが毎週いくつもある。それが仕事なのだから当たり前といえばそれまでだが、週に2,3件あるときもある。明日帰国するチェコフィルなんかは、短期間に詰め込まれているため、移動日もいれて18日間に12公演もするのである。我々のように年に一回のコンサートで燃え尽きる(?)ようなわけには行かない。すぐに次の日の公演があるのである。そして疲れていても体調を崩していても、均質なクオリティの高い音楽を観客に届ける責務のようなものがある。もちろん体調など壊さないように「自己管理」するのも仕事のうち。なんだか地方巡業に駆け回る、プロ野球選手のような感じである。それがプロなのだ。
昨夕、家でのんびりしていたら携帯が鳴った。チェコフィルの公演を聴きに行ったはずのオケ仲間からだった。出ると「ハ〜イ!○○」とロマン・ノボトニーの声。昨日は新宿のム○マ○ショップで何か仕事があったようだ。更に、夜にはファゴットのオンジェイにオーボエのヤナとも話しをする事が出来た。去年の今頃は彼らと西麻布で盛り上がったのだった。来年1月のハンガリー、チェコ旅行があるため今回私は見合わせたのだった。
「プラハで会えるのを楽しみにしてるよ!」と彼らに言われ、私も同じ言葉を返した。
それよりハンガリー演奏旅行の練習しなくっちゃ!(^^;;;
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コメント
balaineさんの実況報告素晴らしいです。俺はこんなに沢山は書けません。
ところで、アンコール曲はドヴォルジャークの《スラブ舞曲op.72-2》でした。balaineさんはすっかりハンガリーモードになっていらしてお間違えのようです。うらやましいな。
ハンガリーには行けない@タビの親父
投稿: タビの親父 | 2005.11.24 19:37
タビの親父さん、アハハ!私も、「あれ?スラブだったような、、、」と思いながら勢いで書いてしまいました。こういう文章は推敲に推敲を重ねたりすると何も書けなくなるのです。(^^;;
折角勢いで間違えて、指摘もいただいたので、あえて直さずにこのまま残します。Viva Hungary!
投稿: balaine | 2005.11.24 20:01