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2005.11.15

一期無会

まず、本日は日本国民の慶事、紀宮様の御結婚おめでとうございます。
戸籍に入られて名字がつき、私の母と一文字違いになられました。我々は、ご夫婦の素顔など全く知らない訳ですが、伝え聞くお姿から一転自分や自分の周りを見たときに「もし、医師、看護師、そして患者さんもが皆お二人のような思慮深く思いやりのある優しい人達ばかりなら、そこはまるで天国のような病院だろうな〜」と思いました。
まあ、そんなことは、残念ながら無い訳で、患者さんはもちろん自分の事で頭が一杯だし、看護師も自分の勤務をきちんとこなす事で精一杯になりがちだし、医師も自分の責務を全うするために必死で余裕が無いし、更に最近は医療過誤やら電子カルテやら接遇やらの指導や規則や強制ばかりで結局、ゆとりを持って他人を慮る事の出来る人が世の中で一番少ない場所なのかもしれません。
ニュースで、学習院大学のオケでビオラを弾いていらっしゃる皇太子様が演奏会を聴きにいらした「サ〜ヤ』に結婚行進曲をプレゼントした、というところが流れていました。こういう時に、音楽が出来る事は素晴らしいと思います。
ーー
 さて、タイトルは、茶の湯の教えから一般に広まった「一期一会」のパロディのようなもので私の勝手な造語です。「一生のうちで、一度も会わない」ということです。
 「会う」という言葉を辞書で調べてみると、多くの意味を持ちますが、突き詰めると「人と人がコンタクトを持つ事」です。ただ見るだけ、ではなく、言葉を交わすことや結婚する事まで含むようです。「一期一会」の意味は皆さんご存知でしょうが、「一期無会」とは、つまり「人の一生など限られたもの。その短い一生の中では一度も会う事無く通り過ぎたり、知らない人や場所がたくさんある」という意味のつもりです。
 御成婚のお二人もこの世に生を受けて別々の人生があったにもかかわらず、縁があってお会いになって結ばれる事になった訳ですが、ちょっとしたことで全然会う事もなかったり、他の人と結婚する事になった可能性だって十分考えられる訳です。「会える」という縁というか運も必要ですし、それを自然に求める心や行動、それからそこへ導く見えない力、運というより神の力のようなものがなければ成り立たない事は、世の中にはたくさんあります。
 私が、『首突っ込みたがり』と昨日の本ブログで自分の事を自分で評したのは、こういう考えに基づいてのことなのです。「その時」を逃すともう会えないかもしれない、そういう事も世の中にはあると思うのです。私には今まで少なくとも二回程「あ〜、あの時に、、、」と思った人がいます。
 一人は俳優の故松田優作さん。優作さんの映画作成関係者の知人に誘われて日比谷公会堂での映画撮影を見に行った時、「ついでだからエキストラになる?」と言われてエキストラ(映画には映ってないと思う)になりました。その後、「挨拶する?」と言われて躊躇しました。一言二言言葉を交わすだけでも、人と人とのコンタクトですが、大俳優と喋る事なんかないんじゃ?と逡巡していると、「あ〜、なんか忙しそうだし、また今度ね」と言われ数十mの距離で姿を見ただけで終わりました。その後、病に倒れて帰らぬ人となられましたが、「あ〜、あの時、握手くらいしておけば、、、」とちょっと残念に思いました。まあ、ミーハーな気持ちがほとんどですが。
 もう一人は、故吉田雅夫先生。フルート界ではもちろん知らない人のいない方です。知人の親戚だったらしく、いつだったかかなり昔に「家に会いに行ってみるか?」という話しがあったのですが、その頃はよく考えもせずに断った訳でもなく、ただ積極的に「行きます!」「会います!」「会いたいです!」という気持ちが無かっただけでした。そして、一昨年亡くなられ昨年の芸大の奏楽堂での追悼コンサートに参加する事になったのです。吉田先生は(あえて先生と呼ばせて頂きます)、直接師事した先生ではありませんが、「フルートの心の師」と思っています。
 私がフルートを始めたのは確か11才になる少し前。教則本みたいなもので見よう見まねで吹いていただけです。その1年か2年後に教育テレビで「フルート教室」が始まり、吉田雅夫氏が先生でした。そこで初めてプロがフルートを吹いている姿を見たのです(それまではレコードで聴こえる音しか知らない)。だから私の初めての先生は、勝手に吉田雅夫先生だと思っているのです。数年前からフルート熱が再燃して、楽譜以外にいろいろ書物も読みました。その中に、アルソ出版でだしている「吉田雅夫『フルートの心』」という本があります。続編と二冊でています。もともとは日本フルート教会の会報に寄稿されていた文章を後に本にまとめ直したものです。かなり前に読んで放っておいたが、時に読み返してみると、「あ〜、なるほど〜」とか「そうだよね〜」とか「うむ、、、」と納得させられたり教えられたり考えさせられたり、非常に示唆に富む文章がたくさんあるのであります。例をあげると、ある文には、
「幸福というのは本能を満足させることだけにあると考えるのは間違いでしょう。ちょっとだけ努力する事です。」
とあります。読み進んで行くと、まるでフルーティストにとっての「聖書」みたいな本なのです。
 フルートを愛する一人として、最初の師と思っている吉田雅夫先生にはお会いしておきたかったと思います。会ったから何があったということもないでしょう。会わなかったから何が変わったということも無いかもしれません。しかし、「会わなければ」何も生まれるはずがありません。
『一期無会』。一生のうちに一度も会わずに終わる事の方が多い事を考えた場合、会えるチャンスがあるのなら会ってみよう、出来るチャンスがあるのならやってみよう、行けるチャンスがあるのなら行ってみよう、というのが私の基本的な考え方です。そのために例えば睡眠が削られるとか、忙しくなるとか、疲れるとか、遠いとか、無駄だとか、全く考えません。「自分がそうしたい」と思っているからです。「無会」を「一会」もしかしたら「多会」に変える事が出来るのかも知れないのですから迷わず一歩足を踏み出すべきだと思っています。
 このブログしかり、音ブログしかり。アマオケしかり。そうやって、いろいろな人に出会って人生を豊かにして行きたいと思っています。
ーー
 先日触れた本田美奈子.さんの件。
 週刊誌では死後の遺産か権利か何かを巡る争いが起こっているのか、起こりそうなのか。そういうくだらない、悲しい話しからは目を遠ざけたいと思い、彼女のサイトを見てみました。サイトのトップには逝去の報告が書かれていますが、中身は変わっていません。彼女のサイトを無くさないでというファンの多数の声があると聞きます。彼女を育て一緒に仕事をしてきた人達も同じ気持ちなのでしょう。
本田美奈子.オフィシャルサイト
本田美奈子.
(〜はチルダで、〜ではないのですがうまく表記されないのでURLを書き直してください)

 先日の「題名の、、、」の追悼番組はご覧になりましたか?
『♪わたし、つばさがあるの♪、、、、』
と歌っている彼女は、まるで天使か天女のようで死後の世界からブラウン管の中に再生して来たのかと思う位でしたし、あの超超超なが〜〜〜〜〜いロングトーンは度肝を抜きますよね。彼女のサイトでは、なんとアルバムの中から何曲も一部が試聴できるようになっています。10月にリリースされた最後のアルバムが、何十年ぶりかにオリコン上位に入ったというニュースもありましたが、初アルバムから計14枚も出していたんですね。
 私の音ブログで「復活Amazing Grace」と書いたのが10/31。それからまもなく、最後のアルバムAmazing Graceの大ヒットを見る事無く、彼女は逝ってしまいました。私の所属するアマオケと、ちょうど10年前のトヨタコミュニティコンサートで共演したのだそうです。まだ、ファルセットの超ソプラノの声を最近のようにはコントロールできていなかった時代の様で、苦労していたそうです。ステージで歌う彼女のすぐ脇でバイオリンを弾いていたある団員は、先日、松尾俊介さんを囲んでいた時にその話しが出た際、「足なんかこ〜んなに細かった!」と親指と人差し指でOKサインのように丸を作ってみせてくれました。誇張があるとしても(笑)、会った人にしか出来ない話しです。本当に御冥福をお祈りします。
 彼女とは『一期無会』でしたが、CDや先日のテレビなどのように音楽を通してお会いする事が出来ます。演奏会に来てくださった方には、言葉を交わさないけれども「会っている」んだと思います。私はレベルの低いアマチュア音楽家ではありますが、音楽を通して人に会いたいと思います。
(松尾さんとの会食時に撮った写真を本家サイトの「自慢の写真」に追加しました。)
☆ I love flutes & piccolos☆

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コメント

「題名・・・21」見ました。よかったです♪Amazing Graceをちゃんと聞きたかったのに、あれはほんの少しで残念でした。彼女がアイドルの時はあまり好みではなかったのに、素晴らしくなってきたら、、、本当に惜しいです。
やっぱり、芸術をやる人は美形でないと、、、
balaineさんの「自慢の写真」見てきました。美形でよかった\(^^)/

「一期一会」でも「一期無会」でもそれは俗界のことで、霊界ではきっと会っているのですよ。だから人間界で実際に会っていなくても、魂がいただいてるものがあったりして。Ψ(*`∇´*)Ψオーホホホ素晴らしいです。(霊界の魔女でした)

投稿: @むーむー | 2005.11.16 09:52

@むーむーさん、魂ね、、、霊界については無知ですが、意志の力、神の力というかspiritというものはあると感じますね。
ところで本田さんの"Ave Maria"というアルバムの14曲中7曲は私の音ブログでも演奏していたものでした。歌声を聴く事で彼女の魂に触れられるのかもしれません。

投稿: balaine | 2005.11.16 14:35

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