診療報酬4%引き下げへ
本日の新聞にタイトルの件が載っていた。読売新聞はトップ記事扱いである。
中身をざっとみると、政府はとにかく社会保障費を抑制するためにまず医療費の抑制は不可欠、として、来年度診療報酬を4%下げる計画との事。しかし、この中身は、「医者の技術料」が3%引き下げで「薬価」が1%引き下げの予定なのだそうだ。やはり消費経済の中に巻き込まれた医療、そして政治的な力での駆け引きが見える。
前から書いているように、無駄は減らすべきだ。下げるべきところが下げられてもやむを得まい。しかし、これが一律(そうでないと『不公平』だと考えるのが日本人らしい発想ですから)下げられるとなると憤慨せざるを得ない。「悪平等の不公平」とはこういう事をいうのだ。
進歩している技術、診断能力の向上、安全性の向上、治癒率の向上など、医療ミス、医療過誤のセンセーショナルなニュースの陰に隠されてしまっているが、たとえば20年前の医療と現在の医療では全くレベルが違う。日本は世界一の長寿国であり、保健衛生を支えているのは、やはり世界一平均点が高いと言える現場の医療技術レベルなのだと私は考えている。それなのに、「デフレだから」、「社会保障費の抑制は不可欠だから」という理由で「医者(=医療の専門技術者)の技術料」をまず目の敵のように下げるのである。
4%下げるのならどうして、内訳薬代が3%の引き下げ、にならないのだろうか?やはり製薬会社や消費経済社会に力を持つ団体へ遠慮しているようにしか見えない。「日医」は何をしているのか?年間10万円以上の会費を納めているのに。
「日医」は政府案とは真っ向から対立して「5%の引き上げ」を要求しているとの事。そうだ!ものによっては下げてもいいが、ものによっては10%くらいあげてもいいのではないか、と現場の医療職側に立つ私は考えてしまう。
日本国は今や多額の国債による借金国。これは社会保障費のために使われたのであろうか?違うでしょう。税金の無駄遣い、天下り官僚の目玉が飛び出るような給与や退職金、誰も使わないのにものすごく豪勢な郵政関係の保養施設、、、などなど数え上げれば切りがない。
国民が一律に痛みを伴う、と唱っている。国民の医療費自己負担もあげられる計画である。だから医療側の負担として、医者の技術料をメインに診療報酬の引き下げはやむを得ない、というのが政府の見解らしい。それなら、国会議員の不当とも言える年金をあらためるように、その人が(ゴルフなんかして)そこにいなくても会社組織が成り立つような遊んでいる天下り職員のいる全国にた〜〜〜〜っくさんある政府・官僚に密接な○○関連組織を大改革していますか?彼らの既得権を守るための抵抗に負けていませんか?
毎日の診療に忙しすぎて表立って文句も言わず、「仕方ネェな〜」とか「やってられないね〜」と愚痴をこぼしながら、患者の前では笑顔で「接客」と言われている勤務医の声など届くわけないですものね。何でも先の中医協の汚職絡みで、診療報酬(点数)は政府が決める、という事に変わったらしいので、いくら「日医」が「あげろ!」と言ったところで、『4%引き下げ』は間違いなく断行されるんじゃないですかね。なんでもっと金儲けてるところから取らないんだろう?公的病院だって、職員をギリギリの数で運営し、常備する薬剤の数を減らし、ベッド稼働率を上げるためもっと患者さんを入院させましょう、とか会議しているところも少なくなく、それでも「赤字経営」でヒーヒー言っているのに、そういう公的病院などの機関を更に苦しめるような制度を押し進めるのはなぜでしょう?
「策」が乏しい、と思うのは私だけでしょうか。
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コメント
よくわかってない一般人がほとんどですから、balaineさんのようにもっと、訴える人がたくさんいればいいのに。テレビなどの討論みてても、おかしなことだらけです。「先生」とよばれる人たちが出てて、まともな中身の討論になってないのですからね。医療業界だけでなく、なんでもその世界の人にとっては、あれあれ?と思うようなおかしな報道はありますが、医療のことに関しては、許せないです。命にかかわってくるのですからね。で、このおかしな報道で、世論も勘違いして、その世論の顔色で決める人達がいて、、、あ~~ぁ、、なに考えてんでしょ
投稿: @むーむー | 2005.11.29 01:50
@むーむーさん、コメントありがとう。
TBを辿って行くと、結構、この診療報酬引き下げに怒っている人や嘆いている人や諦めている人などいろいろなブログに当たります。でも、「一般市民」の声がないんですよね。
イギリスみたいに救急医療が崩壊したり、アメリカみたいに医療ビジネスと訴訟社会にまみれてもいいのでしょうか?
医者(=技術者)を軽視する政策を取って技術者が衰退する事を政府は考えないのでしょうかね?「ゆとり教育」の方針で日本の義務教育が地に落ちてしまったように、気づいて改めてもそれが復興するまで10年単位の年月が必要だと思います。その間、日本の患者さんは衰退した医療を甘んじて受ける事になるんですよね。みんなその辺がわかってないんじゃないかな(そうならないためには、医者が高潔な自己犠牲の精神で頑張るしかない、、、)。
投稿: balaine | 2005.11.29 19:30
たとえば
間違った診断にもとづいて 高額な医療を行い、その副作用などで 余計に医療費がかかるが、
正しい診断ができれば 余計な医療はせずに 安上がりで済む
某有名大病院などでも ままある現象のように思います。そうしたことがなくなれば、4%くらいは少なくなるかもしれないとも思うのですが、現実は
診断が間違っていても 間違ったとは思わずにいるわけで、どうしようもないということが。。。
投稿: suyasuya | 2005.11.29 21:31
suyasuyaさん、はじめまして、ですよね?
現行の診療報酬制度では、確かにスパッと治してササッと退院させるよりも、ちょっと診断間違ったり治療に失敗して再手術したり長期入院した方が「稼げる」のですが、それも過去の話しになりつつあります。DPG導入でどう変わって行くでしょうか。医師の技術料に差をつけて、診療の質に応じた格差が付けられるでしょうか?それも「正しく」「公平に」。
日本が世界に誇る社会主義制度的互助会方式の現行保険診療は、いつになったら根本的見直しをはかるのでしょうね。
投稿: balaine | 2005.11.30 18:01