初宿直
(病院。なんだかマンションみたいな外観です。救命救急センター正面から)
先週は日直。今日は宿直です。つまり夕方の5時過ぎから明日の朝までのいわゆる「泊まり」です。
何度か書いたように、この病院には救命救急センターがあるので、真の宿直医は内科系と外科系で各一名います。更に、私のような「ICU(管理)宿直」を含めて医師3名が泊まっています。救急患者さんというのは、いつどれだけ発生するかわかりません。(まずあり得ない事ですが)一晩に一人も救急患者が来ない事だってあり得ます。そんな時は、3名の医師は宿直室(この病院には医師が泊まれる個室が医局内も含めると10部屋もある)で寝ていれば言い訳です。しかし、現実は夜中の何時だろうと患者さんは来院します。発熱、腹痛、下痢に始まり、頭痛、腰痛、さらに急性腹症、心筋梗塞、脳卒中、交通事故、etc.etc.。「大物」の急患、すなわち本当に緊急性があっていろんな検査や素早い診断、治療が必要であったり、処置や手術が必要そうな患者さんには、医師、看護師、技師などスタッフ総出で対応する事になり、同時に来院していたより軽症の人は待たされる事になります。CTなどの検査も、緊急性の高い人が優先です。そんな時に更に緊急性の高い患者さんが救急搬入されてくると、「てんやわんや」になります。ICU/HCUもバタバタします。相応の専門家の当番医が呼び出され、ICUの部屋が満床にでもなれば、一番軽症の人が夜中でも一般病棟に押し出されます。手術になれば手術室のスタッフが緊急招集されます。内科と外科の二人の宿直医では手が回らずどんどん患者さんが溜まる事も起こりえます。「管理宿直」である私は、そんな時には交通整理(患者を診る順番を決めたりICUの部屋の優先順位をつけたり、さらに軽症の患者を診察したりして宿直医をサポートします。また、脳外科当番医でもあるので、宿直医は脳疾患の疑われる患者が来院した時は、気兼ねなく私に相談できます(同じ当番でも自宅待機の場合は、やはり夜中の2時とかいうと、呼び出しをかけるのは気がひけるわけです)。
今晩、これからどうなるかは全く予想つきません。日中暖かかったかわり、夜になってぐっと冷え込んで来たので、脳卒中も発生しそうです。今日は、朝9時まえから当番医としてICU/HCUと病棟の48名(週末にたくさん退院した)の回診をし、必要な処置と指示を出し、更に脳梗塞の患者を一人緊急入院させ、午後1時半頃一旦第二自宅(病院近くのアパート)に戻りました。近所でラーメンを食べた後、少し家でまったりしてフルートを2時間程練習して17時に病院に出て来た訳です。
そして、ご存知のように、二人の宿直医も私も明日の朝までの役目を終えたら、また朝8時半から通常業務に入る訳です。休みではありません。いつもの勤務です。外来もあれば手術がある時もあります。そうなったら「運が悪い」と諦めるしかないのですが、たとえば夜12時過ぎに宿直室で寝ようとしたら急患で起こされて対応して、2時頃に寝ようとしたら、病棟に呼ばれ、3時頃に寝ようとしたらまた急患が来て、4時過ぎにふとんに入ったら5時にまた急患が来てそのまま起きている、というような事もあります。日曜の朝から、午後の数時間の休みを除いて働いて、夜も宿直して、月曜も夜まで普通に仕事です。明日の夜だって7時頃の帰れるという保証はありません。これが医師の、当直、宿直の姿だで、全国津々浦々の病院でこのように頑張っている医師がたくさんいるから日本の医療は支えられているのです。これが我々の仕事なのですから、別に自慢するつもりもないのですが、「そんなの当たり前だろ!」という態度の患者さんや家族がもしいたら、何か一言いってやりたくなるってもんです。
むむ、急患だとれんらくです。脳出血らしいです。救急部に行ってきます。
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急患は、50代の男性の脳出血。右の被殻出血でした。幸い、意識も良く麻痺はしっかりありますが保存的治療でリハビリに持っていけそうです。さて、さて、夕食をとりましょう(病院の検食だけどね)。
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現在、23時ですが、夕食をとりながら「義経」を見てその後N響アワーものんびり観れました。自宅で「義経」をあまり観た事がなかったので新鮮な感動すら覚えました。あ〜、来週以降、義経主従は「都落ち」。日本海沿岸から庄内地方、最上川をのぼり平泉までのいばらの道。山形県内にも義経主従の足跡にちなんだ場所(温泉など)がたくさんあります。芭蕉は、平泉からその逆のコースに近い経路を辿ったのでした。
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コメント
お食事は検食ですか、ちょっとお気の毒。
あまり忙しくならない宿直だと良いですね。
投稿: ムンテラ | 2005.10.30 21:39
ひげ鯨先生、はじめまして!
フルート吹いて14年、脳外ナース6年めのぴーと申します。
gooのRSSリーダーからやってきました!
演奏、何曲か聴きましたが、お上手ですね。演奏旅行にも行かれるみたいで、羨ましい!
だいぶ寒くなってきました。脳外の冬がやってきますね。
うちは、ぴーが帰宅するちょっと前にSAH来ましたが、CRFなどあり、かなりシビアです。BA-topらしく、今、クリッピング中。
最近はグレードのよいSAHが来ないです・・・。
よかったらぴーのブログにも遊びに来てくださいね。たいしたこと書いてないけど・・・。
投稿: ぴーちゃん | 2005.10.31 00:35
ムンテラさん、病院の食事もけっこう美味しいですよ。ボリュームないけど、これ毎日食べてたらダイエットにいいかも。。。
ぴーちゃんさん、変だ、ぴーちゃん、でいいかな?はじめまして。コメントカキコありがとうございます。今、行って参りました。いろんな意味で驚きました。
いつか一緒に笛が吹けるといいですね〜。
しかし、CRFのあるsevereな状態のBA-topを緊急手術するとは結構aggressiveな施設ですね。。。S教授の考え?
投稿: balaine | 2005.10.31 01:23
ぴーさん、ん?ということはC大学ではなくN大関連病院ですか?東関東道と北総線のところ?
まあ、勘ぐりはこの位にしましょう(気になるけど)。
手術しなくても亡くなる確率が高いから、という考えは私も外科医ですからわからないではないし、そこには家族や主治医の医学的以外に社会的な考えがあるのだと思います。ただガイドラインからは外れているでしょう?
一度alertに戻ったのだとすれば、来院時の3桁というのはグレードを決定する意識レベルではありませんね。だからグレードは3よりいい方だと思います。そういう意味では緊急オペの適応がありそうですが、合併症が多いのとその後ダウンしたというのが気にかかります。
何とか乗り越えてくれるといいですね。現実は厳しいでしょうが。
投稿: balaine | 2005.10.31 12:49