何から書きましょう、、、
転勤しました。で、転居しました。
なので、ネット環境も変わりました。何となく繋がっていたのですが、本日まともに職場でのIP addressをもらい、正式に繋がりました(それまでは自動で何となく勝手に繋がったり繋がらなかったりしてたらしい、、、)。
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10/1に引っ越しして10/2初めて回診をし、10/3から正規に働き始めたばかりです。
右と左くらいはわかるようになったかも。しかし、10/5〜7が横浜で「社団法人日本脳神経外科学会総会」が開催されたため、10/4から病院を不在にしました。さすがに転勤したばかりでこれは気が引けるため、フルには参加せず昨日10/6の午後で学会場を後にして夜帰ってきました。
学会は、目新しい事はほとんどないのですがそれなりに勉強になり刺激にもなります。一番面白かったのは、初日の夜にあった、Big Debateセッションの一つ「外科医の『技術料』はどうあるべきか」でした。
中医協がどのように手術料の点数を作っているのか正確には不明ですが、外科系学会側で作っている基準のようなものがどこかで参考にされているらしいこと、しかし間接的費用である「手術顕微鏡の値段」、「手術中に神経機能をモニタリングするための器械」、「手術をより安全で正確性を増すために使用しているナビゲーション」などといった、数百万から数千万円する医療機器の値段などはまったく算出に引用されていない事もわかりました。
米国の事例の説明もありました。米国に倣うことの危険性や問題点を指摘する声も上がっていました。
最も面白かったのは、出席者(その会場には200名弱だったでしょうか?)全員に端末が手渡されていて、座長の質問に答え即座にアンケート結果が写し出される手法をとったことです。
「日本の脳神経外科の手術料についてどう思いますか?」
1)安い、2)高い、3)まあまあ、4)どちらとも言えない。
予測通り8割以上の人が「安い」という答えでした。「高い」と答えた人が数%とはいえどいたのには逆に驚きましたけれど。
一つの手術に関わる人数(執刀医、助手、第2助手、モニタリングの助手、麻酔医、交代の麻酔医、器械出しのナース、外回りのナース、その交代要員)、種々の器械(手術器械はもちろん顕微鏡、そのモニターやビデオ装置など)、薬品類、そしてそれに関わるスタッフのストレス、特に術者のストレス、その手術が出来るようになるまでの訓練期間や努力、手術時間、そういったものを考えて行くと、現行の保険制度の中でも脳神経外科の手術料が高い方であるのは支払い側である患者さんや保険機構にも納得して頂けると思います。
しかし、それでも日本の脳外科医の多くは「まだ足らないよ。自分たちの苦労や努力や自己犠牲に見合っていない値段で安すぎる!」と感じているという事になります。
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前にも書きましたが、医療において「理想的」には、
『高度先進の超一流の治療法を誰もが公平にしかも無料で受けられる事』
だと思います。もちろん、そこには心の通った、当たり前に暖かい、普通の優しさの(異様に患者におもねったりへりくだったりする事なく、しかし真に思いやりを持った)接遇や清潔で快適な設備というものがあって、更に一般的に普通な正常の診断治療などの医療行為が遂行されていて、さらにその上に、という事であります。それがすべて「タダ」であること、これが理想的です。
進んだ技術には、それを開発したり実現するための「人」の努力や献身というものが必要です。それをしかし「タダ」で享受するのを当たり前とするのは調子が良すぎる気がします。やはりそれに見合った対価が必要でしょう。
最新型のMRIで診断して、最新式のナビゲーション付き手術顕微鏡を使って術中MRIなども用いながら高度な術中電気生理学的検査を行いながら多人数で手術を行えば、一つの難しい脳腫瘍の手術摘出に1000万円かかっても不思議ではありません(MRIなどが6〜8年で減価償却される値段も入れなければならない)。しかし、現実は、脳表に近い優しいところの小さな脳腫瘍で2時間ぐらいで終わるようなものでも、脳深部で境界も不明瞭で種々の先進機器を併用しても困難な10時間以上かかる大手術でも、「頭蓋内腫瘍摘出術」の名の下に「同じ料金」というのはやはりおかしいと思います。
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「何から書き出そうか、、、」
と考えていたのに、すぐに医療ネタ、脳外ネタになってしまうところは全く変わっていません。(^^;;;
ペースは落ちると思いますが(なんせまだ新しい病院に全く慣れていません)、少しずつ書いて参ります。
前の病院と大きく違うのは、ここには「救命救急センター」があります。救急患者はずっと多いです。しかし、「小物」(たとえばちょっと転んで頭を切った)で脳外科医が呼ばれる事はありません。救命救急外来で「救急医」または「救急当直医」が、診察し処置をし場合によっては傷の処置から抜糸までしますので、ちょっと切っただけで脳外科医が呼ばれ外来でフォローアップする必要があった前の病院とは大きな違いです。私のストレスはずっと軽減されます。あとは通常の外来での「(脳外科でなくてもよい)頭痛の患者」をいかに診ずにすませるか、または診るとしてもいかに手を抜くか(というとかなり語弊がありますが、脳卒中や脳腫瘍の疑いが強い人とは区別して診察に手心を加えるという意味です、これでも語弊がありますけどね、、、)
アマオケの地元からは車で2時間くらいと離れてしまったので不便ですが、オケの仲間は私が練習に来る事に敬意を表し歓迎してくれる(10/1も引っ越し荷物を搬入したその足で2時間かけて練習に行ったので皆驚いていました)ので、行ける間は続けるつもりです。
新しい病院の科長に、オケの練習に行きたい事、来年の1月にハンガリー演奏旅行がある事、ハンガリーに引き続いてプラハに寄る事の内諾ももらいました。9月までいた病院では、私が10〜14日も留守にする事は非常に困難を伴うため諦めなければ行けなかったかも知れず、もしかするとこういうところに神様の御差配がおよんでいるのか?と自分に都合良く解釈しているのでした。(^^;;;;;
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コメント
引越、学会と続いて、あわただしい毎日をお過ごしのようですね。
お疲れ様でした。
学会でディベートが行われ、アンケート形式で会場のDr.の意見がわかるという試みは大変興味深いですね。
同業者でもなかなか他人の意見を聞くチャンスがなかったりしますから...
今日のブログを拝見すると、ひげ鯨先生のいつもの調子が戻ってきたかしらと、ちょっと安心しました。
投稿: ムンテラ | 2005.10.07 17:07
神様の御差配
~~~~~~
そうですね。見えざる「神の手」が働いたと思えると、とっても気持ちが和みますね
投稿: 侘び助 | 2005.10.07 18:00
端末からアンケートとるんですか、面白いですね。
何かテレビのクイズみたい。
とりあえず内諾がいただけてよかったですね!
それにしても2時間って往復4時間ですよね?
その情熱はどこから沸いてくるのでしょう。
尊敬します。
投稿: ユウ@来年研修医 | 2005.10.08 10:22
ムンテラさん、侘び助さん、ユウさん、コメントありがとうございます。
忘れずにいてくださって嬉しいです。(号泣)(^^;;;
端末でアンケートをとる方法は結構前から脳外科学会ではやってます。
治療が一筋縄でいかなそうな症例を提示して「あなたならどの方法で手術するか?」とか聞くのですが面白いです。自分がエキセントリックな脳外科医でない事も確認できますし。
未破裂脳動脈瘤の治療の際に、開頭手術と血管内治療のどっち?、という質問に対して「開頭手術」を選択する人が多かったのに、「その患者が『あなた』だったらどうしますか?」と質問を変えたら「血管内」が多くなったのには驚くとともに認識を新たにしました。私は「手術」を選択しましたから。手術をしてもらうなら「この人に!」という信頼できる人を知っているかどうかも影響すると思いますけど。
脳外科医は自信家が多いので(自信家でなければあんな恐い手術なかなかできないですけどね、、、)、「自分以外の人には信頼して任せられない」と考える人も少なくないようです。(笑)
練習には通いだけで往復4時間以上かかります。
情熱というより、ただ「好き」だからですね。あとドライブが嫌いじゃない。脳外科の手術で集中しているのに比べたら3,4時間集中して運転するくらいなんでもないですよ。(ただ先日は行きに死亡事故で道路が閉鎖されていて再開通まで一時間待たされてしまいましたが)
投稿: balaine | 2005.10.08 10:46
ひげ鯨先生、はじめまして。浅野と申します。現在、日本を離れておりますが、日本の手術料がいかに安いか深く実感しております。今後、診療報酬が値下げされるとのことですが、それでいいのか?それともこちらの外国がおかしいのか、考える毎日です。
投稿: eishi_asano | 2005.10.12 10:31
手術料のセッション、私も出席しておりました。最後に質問になってない質問をして失笑をかってしまいました
わたしはアンケートで「高い」と回答しました。質問の前提として「他の科と比較して」とあったからです。他の国やコストと比較したら安すぎるに決まってますが、一般外科や他の外科頚よりは高いと思います。額面で脳外かより高いのは心外だけですし、心外はコストがべらぼうに大きい。
balaine先生はじめ質問文の上にあった前提を無視した方が多かったのではないでしょうか。そもそもセッションの内容からして他の科と比較する意味も良く分からないのですが、質問文に率直に回答するとそうなります。
投稿: いのげ | 2005.10.16 01:15
asanoさん、おそらくお互い知っている者同士ですね。今は米国ですか?頑張ってくださいね。
いのげさん、すると私は多分、貴殿の5列くらい左斜め後方に座っておりました。
私は「他科と比較して」も「安い」と感じています。それは、脳外科は手術および周術期に伴うリスクが高く、高度で専門的なマンパワーが要求され、比較的に長い時間かかり、高額な診療・治療機器を揃えている割には、という意味です。
眼科の先生に怒られるかもしれませんが、白内障の超音波摘出術7,430点は、球後麻酔で一件30分足らずで終わります。眼内レンズ挿入術8,350点と会わせると、今は足し算にはならず12,065点になってしまうようですが、これを一日に6件行えば、脳動脈瘤一件と同じ手術料になります。しかも、卒後3〜5年くらいの医師で十分に行える手術です。
日本では、high risk, high returnになっておらず、長年にわたる専門教育と訓練を受けて高度な技術を持った医師とそうでない者の「差別化」が行われていません。だから病院の当直というのも、全ての科の医師が一律均一に(年齢によって特例はあるでしょうが)行っている訳です。3、4年目の医師と10年目の医師、卒後皮膚科しかやって来ていない医師と脳外科や循環器内科のように「attack」の急患を助ける修羅場をくぐり抜けて来た医師が当直手当も同じなのですから、おかしいと思うのが普通だと考えます。
私が主張するのは、「正当な差別化」です。
投稿: balaine | 2005.10.16 11:15