最近の出来事
久しぶりにブログを書きます。
さぼっていた訳ではなく、いろいろな事情があったからです。でも、立ち止まっていた訳ではなく、そこそこに前には進み続けている、と思います。
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昨日は地元の女子高(なんと甘美な響きでしょう、、、)の管弦楽部(正確には「弦楽合奏部」)の定期演奏会にエキストラで出演しました。
弦楽合奏2曲に続いてオケとしては、ビゼー作曲「アルルの女」第一組曲と、チャイコフスキー作曲「交響曲第五番」(通称、チャイゴ)をやりました。ほとんどの生徒が高校に入ってからバイオリンやチェロに触ったというレベルで、つまり一年生などは初めてまだ5ヵ月たたないくらい。「そりゃあ、あんまりにも無謀なんじゃないの?」と思いましたが、厳しい練習に耐え全体的にレベルがどんどんあがったらしく、最後は立派な演奏でした。
「らしく」というのは、夏前から我々地元アマオケメンバーの中から有志でエキストラ出演する者との合同練習が組んであったのですが、仕事などでまったく都合が付かず、初参加が本番前日の9/18(日)という状態でした。
60名を越す女子高生の後ろで笛を吹くのは、嬉し恥ずかし、な感じかと思いきや、難しい曲ばかりなので自分のパートを間違えないように、落ちないように譜面と指揮者を見るのが精一杯。一回リハ、当日一回ゲネプロ、そして本番、というあり得ないテンポで進んで行くので(私にとってだけですが)、付いて行くのが精一杯。
で、本番はなかなかの好演。チャイゴには「Bravo!」の声もかかり、普段我々のアマオケでコントラバスを弾いている指揮者が高揚した表情で我々エキストラを立たせて拍手をもらおうとするところを、我々は立たずに指揮者に大きな拍手を送り、会場からも大きな拍手が沸いてちょっと感動しました。
我々が彼女達を助けてエキストラ出演するのは、リクルートの意味があります。田舎の街では、高校を卒業すると都会に出て行って戻ってこない若者も多いのですが、その中から少しでも地元に残る子や将来地元に戻って来た子が、我々のアマオケに入団して伝統を引き継いで行ってもらいたい、という意図があるわけです。
終演後、有志で飲み会が設定されたのですが、私は9/17(前々日)が日直だったりいろいろ疲れていたので、まっすぐ家に帰り部屋を暗くして少し寝ました。
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さて、音ブログでは皆様にご心配をおかけしてすみません。またこのブログも「ちょっと、、、」と書いて放置しておりました。
急な話しですが、10/1付けで県内の別の病院へ移動になります。自分の希望ではありません。今の街を離れるという事は、今の私に取って大きな生き甲斐となっている演奏活動(アマオケ、フルートアンサンブル)がやりにくくなります。通って通えない距離ではないですが、片道2時間以上かかるとおもいます。
宮仕えなので医局の事情で転勤は仕方ないのですが、そのきっかけがおそらく先日「診断書」について書いた、クレーム、すなわち病院への投書にあります。実は、それ一つではなくこれまでにもいくつか私は投書でクレームを受けておりました。つい言葉が過ぎる、というか、患者さんや御家族を傷つけるような発言をして来たと思います。全くのいい訳ですが、それは自分の展開する医療に対する熱い想いの裏返しでもある訳です。
外来で私が診ている、手術したり入院治療をした患者さんに転勤が決まった事を説明したところ、手を握って「先生、いっちゃうんですか」と言われたり、涙を流さんばかりに「行かないで!」と言われたり、「転勤先まで付いて行く」と言ってくださった方もいます。でも「あんなヒドイ医者はいない!」「やめさせろ!」と書かれた事も事実です。
その内容には多少の粉飾があったとしても、書かれた私に責任があります。だって投書なんて全くされないドクターの方が多いのですから。
そんなことで、この病院で仕事をすることや、脳外科医として熱く仕事をする事に対するモチベーションが少し落ちました。転職やいろいろな事を考えました。自分が招いた事なのでここで書くのはとても恥ずかしいのですが、自分の責任から逃避してしまおうと考えたりもしました。首都圏に住む両親の近くに転職、転勤しようかとか、悩みもしました。昨日でしたか、テレビにあのDr. 福○が出ていましたね。実は、滞米中に私はあの方の手術にたちあっています。一つの手術でしたが最初から最後までずっと見学させてもらい、その時は日本人医師がわたし一人だった事もあって、手術後に一緒にご飯を食べに行きました。その番組で、コメンテーターが「一つの頭脳流出だ」「こんな人がアメリカに出て行くのを停められなかった日本の脳外科界にも問題がある」と言っていました。一部事実、でも一言では片付かない。私は多少事情を知っています。日本にいられなかった、いたくなかった、いろいろあると思います。そしてアメリカでも紆余曲折、苦労しながらもマスコミの寵児たる扱いを受けているのが現状です。Dr. 福○はマスコミが騒ぐような「神の手」を持っていらっしゃる訳ではないと思います。真面目に勉強し努力し研鑽して経験を積んだ脳外科医はかなりの数でDr.福○レベルだと私は思います。少なくとも私が自分の目で見た彼の手術は、綺麗でスムーズで上手でしたが、決して「神の手」のレベルではない。「神」なら人間にはなし得ない業をなせるはず。彼も人間。私も人間。レベルは多少違うけれど、わたしだって彼と比べてそんなに下手な脳外科医ではない。何よりも治療に当たっての適応とか判断力はまっとうだと思っています。私とDr.福○に大きな違いがあるとすれば、彼は自分がどうしたいか、何をしたいか、を明確に実現するよう努力されて来た方だと思います。その過程で、日本人的な感覚としてはバランス感覚に欠ける部分もあったらしいです(事実かどうかはご本人に確認していないのでわかりませんよ)。
私は今後どうしようか?いや、どうしようか、ではなく「どうしたいか」なのだと考えています。まずは、与えられた仕事をこなす。新しい職場に早く適合し、あまり無駄な労力を使わないように(燃えすぎないよう)しようと思っています。「見ざる聞かざる言わざる」で行こうと思っています。趣味であるフルートは続けたいし可能ならアマオケの活動も続けたい。しかし、脳外科医として手術の腕もふるいたい。これをどこかでバランスをとっていかなくてはなりません。なかなかバランスがうまくとれない。バランスを取るためには、我慢したり削ったり耐えたりすることも必要になってきます。音楽以上にプライベートな事もありました。人生、いろいろ。
でも僕には音楽があります。演奏する事で自分が一番癒されているんです。(笑)
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恥ずかしい事を書きましたが、「ちょっと、、、」という事の内容と最近の私の動向をお伝えしました(誰に?)。(^^;;;
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コメント
たぶん更新されてないだろうなと思いながらきてみたら、されていて、偶然にも同じ先生の名前があったので、TBさせていただきます。
自分の納得できる業でないと、いやじゃないですか~だから、これでいいですよぉ~と思いました。生意気ですが。
投稿: @むーむー | 2005.09.20 19:08
こちらのブログを訪れるようになってから興味の対象が広がり、心から感謝しています。
医療や音楽に対する先生の熱意は、ド素人にもびしびしと伝わってきますし。
でも、大きなお世話ですが、一人のファンとしてちょっと心配していました。誤解を受けることもあるかな...と。
熱意の裏返し...ということでは、私にも昔ちょっと痛い経験があって...
母の入院中に感じたことですが、Dr.やNrs.を人とも思わない勘違い患者や家族もいますしね。
神経をすり減らしてしまうことのないよう、走りすぎないよう、少しだけ肩の力を抜いて頂きたいと思います。
今日は更新されていて嬉しかったです。
投稿: ムンテラ | 2005.09.20 20:39
訴えられたわけじゃなし。何にもしない人の方がいつの間にか偉くなっていくのも医者の常っすよね。医局抜けたら大変ですよー。私ぁ結局別の医局入りましたしね。自分を貫くか、次の職場で別人のようにおとなしくなるか、岐路ですねー。
投稿: 元脳外科医 | 2005.09.20 23:06
アメリカ生まれ育ちで、現在外科のレジデントしてます。そのDr.Fのことは、最近日本の友達から聞かれるまで、全然知りませんでした。
おそらく、そのDr.F、日本で医局のゴタゴタでいられない事情があって48歳でアメリカに来られたのだろうけど、アメリカで、レジデンシーやり直したのかなあ? ホームカントリーで一人前の医師でもアメリカに来て臨床するなら、レジデンシー(6 years in neurosurgery)を一からやり直し、USMLE、medical boardをパスしなければならないのだけど、、かれのバイオには、なんでいまだに “Japanese board certified” になってるのでしょうか?彼はアメリカではteachingしてるだけ?
一見華やかに見えるかもしれませんが、実際はDr.Fもアメリカでかなり苦労していると思います。アメリカは努力と実力さえあれば成功できる国ですが、やはり外国で教育を受けた医師には言葉の壁があり、やはりアウトサイダーになってしまうようです。
どこでpracticeするにしても、最後は自分次第かなあと思います。めげずにがんばって下さいね。
投稿: ゆり | 2005.09.21 04:12
最初の女子高の甘美なチャイゴの話が
ぶっ飛んでしまうくらい、・・・考えさせられました。
投稿: ユウ@来年研修医 | 2005.09.21 09:52
医者も患者も勘違いさんがどこにでも居ります。私の主治医もそのことで(誤解を招く)悩んでしまったことがあると言ってました。
私の本業の会社は介護関係です。時々職員から悩みの相談を受けます。よかれと思って発した言葉が相手にはきつく聞こえたり・・・そんなのしょっちゅうです。(笑)人間合う合わないは絶対あります。人間相手の仕事でこちらがお世話させていただく関係・・・必ずそういう問題にぶち当たります。
そんな時は、私は職員に正直に誠実に一生懸命やったと言う自負があればそれでよいよ!って言います。
先生のその部分が会社に(病院)にわかってもらえなかったんだったら、それは残念ですが、
わかる人にはわかってると思います。(生意気いってすみません^^;)
いつも多忙な先生の日記を拝見し、さあ、私も負けずにがんばろうと勇気を頂いてます!
介護の体質もドンドン変わってきていますが医療の体質もドンドンいい意味で変わってほしいですね。
どうぞ、音ブログも差しさわりのない方法を考えて続けて下さいね。
先生自身も癒されているかもしれませんが先生の知らないたくさんの人もきっといやされています。
あのブログのファンはたんに音好きだけのファンでなく毎日多忙の正直な脳外科医としての先生の音色もあるからだと、私は思っています♪
投稿: 則香 | 2005.09.21 14:21
どこへ行っても、やれる方だと思います。転勤、転居で忙しい(結構慣れているかもしれませんが)と思いますが、御自身の健康には留意してください。また、何らかの形でお会いできることを祈っております。
投稿: 如月 | 2005.09.21 16:18
コメントをお寄せくださった皆様、ありがとうございます。
この記事を書いた時に、おそらくいろんな反響を呼ぶ事は「想定の範囲内」でした(笑)。たくさんの方々にご心配をおかけしておりますが、とにかく今度の人事が私の意志や意図を超えたところにあるので(ま、人事とはそういうものかもしれまsんが)、少々モチベーションが低下して、まだ回復しておりません。
ただ、ネットの世界というのは面白いもので、このブログも「音ブログ」も私がどこに移転しようが、仕事を変わろうが、アクセスした時から「全く同じように」続けられるものなのです。
10月に入ってすぐに脳外科の最大の学会が横浜で3日間あります。引っ越し、学会、その他で少し間があくでしょうが、また戻ってきますのでよろしくお願い致します。
投稿: balaine | 2005.09.21 17:44
ゆりさん、はじめまして。ゆりさんだけはコメントの内容が違うので別にレスします。
Dr. Fは、おそらくlimited licenseで米国内の医業を行っています。すなわち、米国の正式な医師免許や脳外科ボードは取っていませんが、所属する施設の長や脳外科の長の許可を得て、指定された病院の中でだけは米国の脳外科医と同じようにメスが振るえ、患者を治療できる、というライセンスです。
どうして米国の正式なライセンスを取らないのか?ともし問うたとすると、多分、Dr. Fならこう答えるでしょう(単なる私見ですから、あしからず)、
「僕はねぇ〜、既に6000を超える脳外科の手術を成功させて来たんですよ〜。そして、たくさんの患者さんが僕の手術を待ってるんですね!毎日毎日手術をしても予約リストは一杯なんだよね〜。米国の医師免許の試験なんて、バカらしくてやってられないですよ〜。そんな暇があったら、手術して苦しんでいる人を一人でも多く助けてあげたいんですよ〜。そして一人でも多くの優秀な後輩を育てたいんですよ〜。これも試験なんかよりもっと大事な仕事なのね。わかりますか〜?」
投稿: balaine | 2005.09.21 17:52
しばらく当地を離れていてPCを開けたら、この記述に出会いました。
この春先から先生のブログを楽しんで、先生のお人なりを想像させていただいてきました。
先生、これからも、持ち前のpassionが消えませんように。生意気なようですが、passionは人生を豊かに彩ってくれると思います。
お目にかかったことはありませんが、先生は素敵です!
投稿: 侘び助 | 2005.09.21 19:05
balaine様
先日は当方のショボいBlogにコメントありがとう
ございました(^^;。
balaine様の投稿された記事を、とても興味深く
読ませていただきました。
また続きが読みたいです。
そう思いました。
色々と大変だと思いますが、どうか頑張って下さい。
投稿: もりもり | 2005.09.25 04:31
コメントありがとうございます。なんだか、そのDr.Fって、できれば避けたいようなオヤジのようです。
日本で取った脳外のボードでアメリカで臨床して、訴状が起こった時にはどうなるんだろう、、とか考えてしまいました、、それに、日本にもオペしに帰国していらっしゃるみたいだけど、オペだけして術後のフォローア
投稿: ゆり | 2005.10.03 09:48
コメントありがとうございます。なんだか、そのDr.Fって、できれば避けたいようなオヤジのようです。
日本で取った脳外のボードでアメリカで臨床して、訴状が起こった時にはどうなるんだろう、、とか考えてしまいました、、それに、日本にもオペしに帰国していらっしゃるみたいだけど、オペだけして術後のフォローアップしないで患者をおいていくなんて、少し無責任かなあとも感じました。
お仕事の事ですが、私なら、とりあえず新しい病院でがんばってみて、同時に(内緒で)他のオプションも検討するかもしれません。つまり、ほかの医局に移るとか、学閥のない病院への就職を検討してみるとか、、患者からのクレームの件ですが、地方の病院だからドクターの行動や言葉使いとかにかなり敏感なのかもしれません。東京でなら言ってもどうってことない事が、地方だと大事件のように取りざたされてしまうの事もあると思います。大変だと思いますが、めげずに頑張ってくださいね。
投稿: ゆり | 2005.10.03 09:49
ゆり先生、フォローアップについては 同感です。内科医だからかもしれない とも思いましたが、脳外科でもそうですか。
日本国内でも その昔はやむを得なかったのでしょうが、今では とても公表できない諸事情もあるようなことを 先輩から聞いた事があります。(おそらく日本独自の事情ですけど。。 公表しようにも記録がもうないようですし)
マスコミにあまりありがたがられると、何かの時に今度は正反対の対応をされそうで、怖いような感じがしています。
投稿: 内科医 | 2005.10.05 22:57