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2005.09.30

お引っ越し

くたくたです。
医局の荷物を段ボール約20個に詰めて、自宅は「らくらくパック」とはいえ出来る範囲で片付ける必要があるし、台所の流し、ガスレンジ回りなどを磨きました。父親が転勤族だったため、子供の頃から何度となく引っ越しは経験している。今、ざっと数えてみると覚えている限りで、家族と一緒に引っ越しが7回。大学に入って医者になっての引っ越しが14回である。でもやっぱり面倒くさいし大変。筋肉痛である。

医局人事で病院を移る時は教授に挨拶に伺うのがうちの医局の習わしです。今週はいろいろと忙しかったので、昨日下の先生を挨拶に行かせ、夜中まで自宅の荷物整理をして2時過ぎにベッドに入り今朝5時半に起きて大学に向かいました。教授は7時半から医局で仕事をしていらっしゃるので、7時半過ぎに医局に伺い挨拶をしました。
「新天地で頑張るように」と暖かい励ましの言葉を頂き、病院に取って返しました。往復3時間。
そして最後の回診をし、11時から予約の外来患者さんだけ10数名診察しました。
ーー
外来受付に私の移動の告知がしてあるのでだいたいの患者さんや御家族は私が言わなくても移動の事を知っています。
昨年破裂脳動脈瘤を手術した69才の女性(Grade 3でした)は、こちらの方言で
「先生がいなくなるなんて、おもしゃくね〜の〜」
おもしゃくね〜の〜、何回も繰り返し言われました。
「面白くない」という意味もあるのでしょうが、微妙なニュアンスとして「つまらない」、「寂しい」、「嫌だ」という意味があるようです。
ーー
昨年手術した聴神経腫瘍の女性患者さん、今年手術した男性患者さんとは、あのDr. Fのお話しもしました。両方とも直径35mmを超える大きなそして嚢腫状(cystic)の腫瘍でした。二人とも術後に顔面神経麻痺が出ました。一年以上経過した女性の方は、左右どちら側を手術したのかわからない位に回復しています。3ヶ月前に手術した男性患者さんは、強く閉眼したり「アップップー」とやるとまだ手術側の顔面の筋力が弱いのですが静かにしているとほとんど左右差は無くなっています。
 大事な事は、術後神経障害の回復をみることと、腫瘍の再発の有無です。
「全摘しました!」と威張ってみたところで相手は「腫瘍」です。遺伝子の異常で発生したものですから、良性腫瘍であっても発生母地を含めて周囲の正常部分まで切除しなければ「全摘出」は達成できません。ですからいくら「神の手」と呼ばれる人が「全摘出」をしたとしても再発の懸念は0ではなく、5年、10年、それ以上に及ぶ経過観察が必要です。
「自分が手術した方を責任もって経過を追えないのは申し訳ないけれど、次の先生にきちんとお願いしてあるし、カルテに今後の方針を書いておきましたから大丈夫ですよ」と伝えたが、不安そうな表情が少し和らいだだけであった。「先生には良くして頂いて本当に感謝しています。ありがとうございました。」お二人ともそのように仰って深々と頭を下げられたので私も立って頭を下げた。
「よかったら11月の(アマオケの)定期演奏会に来てくださいね。私、出ますから。」というと「聴きに行きます」と言ってくださった。
ーー
私に手術を受けた患者さんから話しを聞いたという事で、他院で治療を受ける予定になっていた脳腫瘍の患者さんが昨日セカンドオピニオンを求めて私の外来にいらっしゃった。御家族とともに十分な話しをして、当院で治療を受ける方針となった。来週入院の予定である。私はもういない。その方も、外来受診以前に私の移動の事は聞いてがっかりはしたものの、「とにかく話しだけは聞こう」と外来に来られた。だから私も「実は私は今週一杯で転勤で別の先生に引き継ぎます。次ぎにくる先生は、信頼できる実力のあるきちんとした先生ですから、これこれこういう方針で治療すれば大丈夫ですよ。」「でも私は移動になるのだから、責任ある発言は出来ないので、元の病院に戻られてもいいし、大学病院に紹介してもいいし、次ぎにくる先生と十分に話し合ってください。」と説明したのだが、当院に入院して治療を受ける気になった、ということであった。
本日の外来に、その患者さんに私の事を話した、という張本人の患者さんもいらっしゃった。「昨日、先生に話しを聞いて、それまで電話口でめそめそばかりしていた人が『生きる希望が出た』と喜んでいましたよ」と教えてくれた。転任する身で無責任ではあるが、でも私の話しを信じて治療を受けようと前向きになってくださったようである。良かった、のだと思いたい。
ーー
入院時に生意気な(私よりも年上の方であるが)発言を繰り返すので、叱り飛ばした、というかちょっとぶつかった患者さんがいる。激昂した際に私の事を「この青二才が!」とまで言った人である。でもその方は、入院中に他の医師よりも私の言う事は信用してくれるようになった。多分、私が歯に衣を着せない代わりウソも言わない人間だと理解してくださったのだと思う。退院後は私の外来日に通院され、私が出張の日にあたると「○×先生の外来じゃないとダメだから来週来ます。」と言っていたそうである。
その方がどこからか私の転勤の話しを聞いて、外来が終わる頃に電話をして来られた。
「先生、転勤なんですよね。私、不安なんです。先生の移られる病院に行きますから教えてください。」
「△さん、僕も気になってたんですよ。電話しようかな、と。来週の月曜が外来予約日でしたよね。でも私の代わりに次ぎにくる先生は、実はその専門の一つがあなたの病気なんですよ。だから私に診てもらうよりずっといいですよ。教授にも信頼されている実力のある奴(註:私より後輩なので)だから大丈夫ですよ。」
こう説明すると、札幌出身で当地に単身赴任中のその方は、「札幌に転勤願いを出して、先生のお知り合いのいる中○記○病院に移ろうかとも考えたんですよ。でも先生がそう仰るのなら次ぎにくる先生に診てもらいます。ありがとうございました。」と安心したように電話を切った。
ーー
こうして何とか12時半過ぎに外来を終え、昼食を摂って、いくつかの部門と院長に退職の挨拶に伺い、午後1時半から引っ越し作業に取りかかった訳である。
先ほど、自宅および医局の荷物が全部トラックに積み込まれた。余裕がなかったため、今日明日の着替えまで詰め込まれてしまった。(><)
今時、下着くらいコンビニでも買えるし、今日はマンションに泊まるので大丈夫である。さて、お風呂に行ってマッサージでも受けよう。
気がかりな患者さんは、まだ入院中の方、そして上記のような外来の方、たくさんいるが仕方ない。さよなら・コンサートの宣伝効果があったのか何人かの患者さんは「定期演奏会、必ず聴きに行きますから」と言ってくださった。さあ、これでこの病院ともお別れ。医局でこのブログを書くのも最後。
次は来週末あたりに、新しい病院からブログを書く事になると思う。

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コメント

balaine August 1, 2005, 2:07 pm

おもしゃくね~の~  そうでしょうね・・・本当に、、、
balaineさんが治療をしてたのは、そこでだけではないですよ。音ブログの方で8/1に頂いたレスのとおりで、私は本当に快方に向かってましたから(^^) 昨日9/30の画像検査ではっきりと確認してきました。バンザーイ!\(^O^)/ コピペしてきました(笑)
『@むーむーさん、そんなに喜んで頂いて。。。(^^
喜びは脳内の快感ホルモンを増加させ免疫力を高めます。腫瘍の再増大はこれで抑えられるはずだ~!間違いない!』

balaineさんありがとうございます。あちらへ移られてからもご活躍ください。

投稿: @むーむー | 2005.10.01 09:55

@むーむーさん、balaine@新天地(?)%お引っ越し中です。
良かったですね。これまでの経過をお聞きすると、最良の治療を受けていらっしゃると思いますよ。ガンマナイフと自己免疫力のお陰ですね。
さて、、、何はなくとも江戸ムラサキではなく、インターネット、ということで。(^^
接続完了です!
ではアパートの荷下ろしに行きますので。

投稿: balaine | 2005.10.01 12:44

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