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2005.09.02

グループホームそして、、、

 グループホーム(認知症対応型共同生活介護)とは、障害を持つ人や高齢者などが普通に生活を送るために病院や老健施設ではない場所で、その様々な状態や需要に応える体勢のひとつで、全国に3000以上あると言われている。
 2年程前からグループホームに入所中の認知症(=痴呆)の患者さんが、転倒し(時々転倒していたらしい)「慢性硬膜下血腫」となって当科に緊急入院した。血腫の圧迫による麻痺は明らかであるが、高齢で認知症の上、耳も遠いらしい。神経学的所見も評価しにくい。血腫を除去する手術をしなければ自然に回復する事はなく、そのまま進行すれば命に関わるということで家族と相談の上手術を行った。もとより認知症が改善するはずはない。8日目に傷の抜糸も終わり、CT上血腫は薄い硬膜下水腫に置き換えられ麻痺も改善した。2週間以上を経過したいまでは、介助すればなんとか自力で食事をするようになった。支えれば立つ事も出来る。もう少しで歩く事も可能でありそろそろ退院を考える事となった。

 高齢者は、可能であれば家族とともに生活すべきであるが、そうはなかなか行かない。75才以上の世帯主の家庭が増えておりまた独居老人も増えている。核家族化とともに老齢者とともに暮らすことを選択する人が大きく減少しているからである。この患者さんにも家族はいるが同居しての介護は困難と考え、グループホームでの生活を送って来た訳である。我々としては、脳神経外科の治療が終了すれば「退院」となる訳であるが、退院するためには退院する先が必要である。それが決まっていないのに追い出す訳にはいかない。グループホームに連絡を取ったところ、約1週間前のちょうど抜糸を行った時点での患者の状況を家族から伝え聞いた話しで「退所を」ということになっているとの返答。よって戻れないというのだ。家族から「寝たきりに近い状態」と聞いたためである。超高齢で痴呆のある慢性硬膜下血腫の術後1週間の患者が、ハキハキと返答してすべてを自分で介助なく行え歩いたりするはずがない。食事も自分ではとれず介助で食べさせてもらっている状態を「寝たきり」という言葉に置き換えてしまっている。家族にも問題はあるが、グループホーム側にも問題がある。家族に電話すると、「今の状態を教えて欲しいというので、そのように言ったら、退所して欲しい」と言われたという。
 グループホームの管理者に電話すると、「家族と話し合って退所する事に決まった」というのだ。医学的にはそろそろ退院できるので戻って頂きたいと思っている、というと「医学的なことはわかりませんが、施設と家族の間の契約ですから」という対応である。私は大いに憤慨した。
 家族にその件について確認のためもう一度電話をしてみると、「家族としては退所は望んでおらず退院できるならグループホームに戻ってもらいたいが、施設側から『そういう状態では受け入れられない』と言われた。」という、更に「退所するという書類にサインをした訳ではないし、家財道具のようなものもまだ施設に置いてある。」とのことである。
 家族と施設側の意見が食い違う。グループホームに入所するためには最初に書いた定義のように、共同生活が出来る程度の身体的能力がないとだめである。1週間前にはその能力はなかったが、慢性硬膜下血腫が改善して状態がよくなり、今日現在自分で食事を摂れるようになって来ている。認知症と難聴を除けば、もう少しで十分にグループホームでの生活が可能ではないかと、医師が医学的に判断し「戻る事は出来ないのか?」と聞いているのにたいして、そこの管理者は「私は医学的なことはわかりません。家族と相談してください。こちらは退所することに決まっています。」という返答なのである。
 要するに、グループホームも現場で介護したりケアしたりに奔走する人だって「仕事」だからしている訳だし、現場に出ない人にとっては一つのビジネスなのだ。脳外科で手術を受けた患者さんなんかにかかわりたくないような様子(これは私の勘ぐりに過ぎないが)である。その管理者の立場も考え方も(許せないが)理解は可能である。その人の立場に立てば私も似たような事を言うかも知れない。元々グループホームにいる事が、条件にはギリギリの人だったようなのである。
 じゃあ、どうすればいいのか?!基本的には家族が世話すべき、一緒に暮らすのが理想。でもそれが出来ないからグループホームにいたのだ。とにかくもう一度、家族と施設で話し合ってもらう事にした。
 なんで、脳神経外科医がこんな事にまでかかわらなければならないか。手術した患者がちゃんと退院し、その後しっかりした生活を送るまで関わるのが医師の仕事だと思う。でも本来の「脳外科医」の仕事からは外れているような気はする。「俺は脳外科医だから、退院後どこに行こうが知らない。家族に任せるから明日退院しなさい。」とは言いたくても言えない。米国の脳外科医はこんなことにはけっして関わらない。病院の事務職やケアマネージャー達がすべてを処理する。そういうプロがいる。日本にはプロが少ないのだ。
(本日の音ブロは「シェルブールの雨傘」です。)

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コメント

そうです、日本の脳外科医の先生はみな 
ホームドクターみたいなことまでやられています。
私もアメリカで少しだけ生活したから
制度の違いよく理解できます。
主治医のいつもバタバタした姿みてて
そんなことまで~と 心苦しくなります。^^;

投稿: 則香 | 2005.09.03 15:47

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