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2005.08.19

医療費のこと

 昨年度(H16年度)の医療費の事がニュースに載っていた。
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(Asahi.comより)04年度の概算医療費が、前年度比6200億円増(2.0%増)の31兆4000億円になり、過去最高を更新したことがわかった。そのうち、70歳以上の高齢者の医療費は同4700億円増(3.8%増)の12兆8000億円で全体の40.6%に達し、初めて4割を突破した。
 医療費は、高齢化や医療技術の進展などで年3〜4%は自然増となる。04年度は2%増だったが、厚労省は「薬価引き下げ分などを勘案すれば、実質3%台の伸びで、基調は従来と変わらない」としている。
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 この後半の二行は、前から私が言っている事。厚生労働省と中央薬事審議委員会と中央社会保険医療協議会らが薬の値段や医者の仕事の値段を決めている。そこには「良い意味での」差別化がない。一律、平等。悪平等の不公平、という奴である。
 後半二行を読み替えると、
「医療費を抑制しようと思って、医者が処方する薬の値段や医者が検査したり手術する技術料を下げたのだけど、高齢者が増えて病気の人は減らないので結局医療費は高騰を続けちゃっています(笑)」
ということである。
 技術の進歩や安全性の向上や新しい治療法の開発などはなかなか認めず、既にある検査法や治療法の値段を下げようと画策し、でも結局医療費の高騰を抑えられない。いえいえ、医療費は高騰して当たり前。下がるはずがない。だって日本は世界一の長寿国。世界一の高齢者王国。加えて、世界一の水準の医療技術。これを貧富の差に関係なく一律の料金で受けられる、「ありがた〜〜〜い」国なんですよ。
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(Asahi.comより)医療機関別にかかった医療費では、大学病院などの「病院」が前年度比0.7%増の17兆1000億円、「診療所」は同2.5%増の7兆6000億円。「保険薬局」は同7.8%増の4兆2000億円。保険薬局は、ここ数年9〜16%台の大幅な伸びが続いており、厚労省は「医薬分業が進んでいる」としている。
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 街中に「院外処方箋薬局」って見かけますよね。薬剤師さんが、病院で医師が作った処方箋を持って来た患者さんにその指示通りの薬を出してお金を受け取る「商売」です。これが「大幅な伸び」を示しています。「医薬分業」はいいのですが、薬局は大儲けですよ。院外処方箋受付薬局を開設する資金力があれば、薬剤師を雇って大きな病院の近くに薬局を出して、あとは左うちわですわ(ま、これは揶揄的な誇張表現も含まれます)。
 医療費の高騰を抑えるのには、まず薬の値段を大幅に下げたらいいのです。飲み薬も注射薬もまだまだ高いです。高い薬を使っても別に医者が儲けてはいないんですよ。だって「医」「薬」分業がすすむ、ということは医者が従来のように薬で儲けられない、ということですから。じゃ、誰が儲かってんだって?昔から製薬会社に決まっています。
 製薬会社は高額納税者様ですし、新聞やテレビの大大スポンサーです。大きな番組には必ずどこかの製薬会社のCFがあります。私は個人的に製薬会社に恨みはありませんが、医療費抑制のために、毎日努力して修行を続けて来た脳神経外科医の技術料、手術料が値下げされているのに、医薬品の値下げは少ないのではないか!政府は「本腰で」医療費を抑制したかったら、「薬代をさげろ!」ということになります。しかし、高額納税者様の力は強く、マスコミへの影響力も大きいので、製薬会社を悪者だ!という人はほとんどいません。「医者が悪い!」という人は一杯いるのに、です。
 製薬会社様は反論するでしょう。いや〜、薬価は下げられる一方で大変です。会社の存続がかかっています。
「は?」ですよ。今までが儲けすぎたんです。開業医担当の製薬会社社員は、朝出勤時にゴルフバッグを抱えて「では行って参ります!」と元気に外勤へ。開業医の先生と1ラウンド。その後は飲食に遊興の接待。それでその社員は売り上げNo.1でボーナスガッポガッポ。開業医様は、薬を買うとおまけとしてその倍以上の同じ薬をもらったりして、要するに薬で丸儲け。こんな時代があったんですよ。さすがに今は「ほとんど」ないでしょうけどね。薬価引き下げ、製薬業界への締め付けが始まって、彼らがやった事は、まずはリストラ。社員の口減らし。その次に、宣伝費の減少。特に医師への接待、その他の縮小。でも宣伝マン(これを従来プロパーと呼び、今はMRと呼ぶ)が本来使えるはずの宣伝費は削られたと言っても元が巨額なので結構まだあるらしい。いろんなパンフレットや宣伝グッズ(ボールペンやその他)を大量に作ってばらまきます。確かにこのボールペンなどをもらって仕事で使ったりはしていますが、ボールペンぐらい自分で買おうと思えば買えますよ。宣伝費を大幅に削って、薬価をもっと下げたらどうなんですか?医療費は何兆円の単位で削減できますよ。その分を、技術料のアップ、手術料のアップに回してください。
 努力したもの、修行しているもの、正しい事を一生懸命やっている者にもライトを当ててください。
 医学部卒業後も毎日勉強しこれまで修行した21年間の経験から今自分でなし得る最良の治療法を考えて患者さんに手術を行っているつもりです。昔に比べ侵襲の少ない(安全で痛みなどが少ないこと)検査を選択し、最新式のMRIで診断し、最先端の手術用顕微鏡と手術道具を用いて、2度の海外留学や大学病院で学んだ知識を総動員してベストの治療を行っているのに、「すべては中医協が決めた保険点数」で計られています。経験の多い少ないも、成績の良否も、関係なく、「医療費抑制のため手術料の値下げ」が数年前からず〜っと続けられています。
 一般市民の皆さんだけでなく、知識人の皆さん、国の要人の方々に問います。「プロ」をこんな扱いにしていていいんですか?イギリスみたいに医者が医療を放棄しますよ。救急医療が崩壊しますよ。
 銀座の銘店のお寿司にはたか〜〜いお金を払っても惜しくないんでしょ?なんで「いい技術」を持った医者には「たか〜〜いお金」を払わないんですか?
(医療は本来サービス。ボランティアたるべきもの。仕事の質や量をお金の額に換算するものではありません。)
↑は、私の心の中の「表」の声。その一行前までは「裏」の声でした。。。v(^^

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コメント

本当に。。。よくよくわかって訴えてくれるオンブズマンがいればいいのに、と思います。医師が自分で訴えようとしても、そんな暇があったら患者のために時間を使って欲しいし、こんなの続けてたら、本当に時間の問題で、先は長くないですよ。この状態では!!(○`ε´○)ぷん!  balaineさんの表の声、究極のサービスをしたくたって、実際にできなくなってしまうではないですか。できるように、それを続けられるようにもっていかなければ、どうしようもないです、、、

投稿: @むーむー | 2005.08.20 00:04

@むーむーさん、一ヶ月前だったと記憶していますが、虎ノ門病院の部長さんが日本の医療、特に医師の過剰労働とその破綻についての警鐘の文を、朝日新聞に載せていたと思います。
ただ、声高にこういう事を叫ぶチャンスがないだけでなく、医師の中でも「そんなこと言ってるくらいなら仕事しろよ」という風潮もあるやもしれません。だから保健行政に関与する代議士や役人が大事なのですが、現場の問題点を理解している人は多くない(脳外科医を辞めて代議士になった方もいらっしゃいますが)。
日本の医療は。現場の医師やナースの「頑張り」と「自己犠牲」の上に成立している危ういシステムなのだという事を理解して頂きたいです。

投稿: balaine | 2005.08.20 11:32

現場の頑張りと自己犠牲のうえの危ういシステムでしょう、、、あ~~困ったものですね。よく見て御覧なさいって言いたいですね。脳外科医さんだって、なり手が減っていってますよね。私の子供が脳外科のお世話になるころはどうなってるのかしら。みんなちょっと先のこと考えないのでしょうか。

投稿: @むーむー | 2005.08.20 13:43

 うーん、「技術」にお金をはらうという発想があんまりないんでしょうかね、現状では。

 すっごく時間かかる手術の点数を見せてもらって、いつもびっくりします。
 
 「リニアカッターをここで一回、そこで一回。自動吻合機をそこでがちゃん。これを点数からひくとだな、うちらの時給は100円くらいなわけだ。」と先生が冗談交じりによく言っていました。

>(Asahi.comより)医療機関別にかかった医療費では、大学病院などの「病院」が前年度比0.7%増の17兆1000億円、「診療所」は同2.5%増の7兆6000億円。「保険薬局」は同7.8%増の4兆2000億円。保険薬局は、ここ数年9〜16%台の大幅な伸びが続いており、厚労省は「医薬分業が進んでいる」としている。

金の行く先がすりかわっているだけで、患者さんの負担とか、医療職に払われる給料とかには反映されないのですよね・・・・。

>(医療は本来サービス。ボランティアたるべきもの。仕事の質や量をお金の額に換算するものではありません。)

 医師という職業は、それをさせていただけるということがまずすばらしいことだと思っています。しかし、自己犠牲の精神のみが前面に押し出されていると、「兵站線が延びきっていても、気合で勝てる!」といってどんどん進軍していった旧日本軍のように、破滅の道をたどる気がします。

投稿: foobirds | 2005.08.22 00:27

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