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2005.08.20

老齢化社会と介護保険

昨日は医療費の事を書いた。その後、関連する記事をweb上で発見したので紹介する。断っておくが、私は日本医師会側とか何らかの政治的思想でこの事を述べているのではない。純粋に一医療職としてこの国の医療の将来を憂えているのである。紹介する記事には、私の言った事が具体的数字で書いてあるので興味のある方は見て頂きたい。
http://www.joetsu.niigata.med.or.jp/topics/details.php?rid=1121053465

 さて、今日は介護保険の事について触れる。
 8/14付けのニュースなので少々遅れているが、昨年度の介護保険のサービス利用者数は413万6300人で、01年度の調査時の利用者287万3400人から毎年40万人前後の増加が続いている、ということである。国民の30人に一人が介護保険を利用していることになる。
 まだ私も勉強中なのですべてを解明するように説明し得ないが、おおきな問題点が見えてくる。「介護保険」の財源は何か?ということである。そして「介護保険」は「介護」に使われているのか?ということである。
 参照サイト
http://www.city.nerima.tokyo.jp/kaigo/hokenryou.html
http://www.insweb.co.jp/0lifeins/03topics/01medicosts.htm

 結局、介護保険の財源は我々国民から、医療保険とは別に、または立場によっては医療保険の一部として納めているもので、サラリーマンにとってはあたかも「税金」のようなお金である。上のニュースのように介護保険の利用者が激増しているのだが、そのサービス内容は様々である。中には、「社会的入院」と言って、けっして病気に対する治療が必要で病院にいるのではなく、退院可能であっても自宅に戻れる状態(家庭の問題も含まれるが)ではないため、どこか施設入所を希望するものの受け入れる施設が不足していて退院できない、だから「入院」しているという状態がある。これに対して、介護保険認定の申請が出されれば医師としては「意見書」を書かざるを得ず、介護保険認定委員会では可能な限り申請者に有利に判断しようとすれば、認められる。
つまり、けっして病気に対する積極的治療が必要で入院している訳ではなく、受け皿さえあれば退院できるのに、それがないために病院で暮らしているような人に対して、介護保険が適用され医療費は介護保険の方から賄われたりするのである。介護保険から支払われている医療費は、国民総医療費の中に入っていると思うのだが、医療(健康)保険とは少し仕組みの違う財源である。
 高齢者が増えれば介護を要する人が増えるのは自明の理。そうしなければ「姥捨て山」の世界。介護の名の下に、しかし、入院して「医療」を受けている人がたくさんいて(入院患者の2割が『社会的入院』といわれている)、これが国民総医療費にも跳ね返っているはずである。
 昨日の話しに戻るが、その増え続ける国民総医療費を抑制しようと、上記のような矛盾点をたださずに、医師の技術料や診断料や手術料を下げようとする姿勢はなんなんだろうか?まず手をつけやすい、やりやすいところから、文句を言う人が少なさそうなところから、ということなのだろう。今、私が病棟で治療している患者さんのうち、本当に急性期病院の脳神経外科で診ていなければならない人は半分もいない。リハビリ病院でリハに打ち込むべき人、療養型病床に転院すべき人、施設に移るべき人、在宅で診ていける人、がたくさんいる。何故、それらをスムーズにそのあるべき姿に移せないのかと言うと、いわゆる(急性期病院にとっての)「後方病院、後方施設」が全く不足しているからである。
「ハイ、入院が一ヶ月になりましたから退院してください」
「あとはリハのみですから退院してください」
「在宅で診るのは難しそうなので施設に移ってください」
などとは全然言えないのである。こちらで「地域医療連携室」と「家族」の間を調整し希望を聞き、転院すべき施設に紹介し空きができて入院または入所できるようになるのを「待つ」のである。
この「待つ」の間、患者さんは「脳神経外科」の患者として入院し医療を受け医療費が発生しているのである。
問題は複雑ではあるが、どこを改善すればいいのかはいくつかは見えているような気がする。決して医者の技術料を下げる事が抜本的対策ではないことは、誰の目にも明らかであろう。

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コメント

 先生のお怒りはごもっともだと思います。命を削るような激務に対する技術料が下げられるなんて...モチベーションまで下がってしまいそう...

 母の例でも後方病院の不足問題は実感しました。 救急病院は次の患者さんのために少しでも早くベッドを空けたいのに、もともと絶対数の少ないリハビリ病院に空きがない。
 医療費の問題もそうですが、患者側にとっても本当に必要な医療を受けられない気がしました。
 ますます高齢化が進むこれからに備えて、改善すべきことが山積しています。

投稿: ムンテラ | 2005.08.20 21:20

今年の3月まで、介護保険の介護度を決める委員をしていました。その時に感じたことは、本当に介護が必要な方はもちろんですが、介護の必要は感じられない人の審査も多くしました。お元気な方でも、介護を受けないのは損だと考えて誤解をしている方が結構いたように思います。ヘルパーをお手伝いさんと勘違いされているようにも感じました。

投稿: 如月 | 2005.08.20 23:58

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