« プロムジカ体験 | トップページ | アダージョ »

2005.07.16

脳ドック研究会

今日は大学のある街で表記研究会が行われた。特別講演は、会を作ったうちの教授であった。
そもそもこの研究会が出来たのは、「脳ドック」を推進しよう、ということではなく、有象無象の病院や医院でMRIをもっているだけで脳ドックができてしまうことへの警告と啓蒙であった。器械があるからできる、では困るのである。「誰が」やっているのか、「どのように」やっているのか、が重要である。
 脳ドックの現状を検証することもなく、誰がどのようにやっているのかをチェックする機関もなく無制限に行われると弊害ばかり目立ってしまう。それがK医師が3年前に文○春○に寄稿した、『脳ドックに「ノー」と言おう』などのように脳ドックの問題点を指摘される事態に繋がっていることは否定できない事実である。
 未破裂脳動脈瘤のように、何も症状のない人が病気が見つかってその治療を考えるときに、大切なことは「無症状の人は無症状のまま日常生活に戻れる」ことである。それが「脳の手術なのだから、多少の後遺症がでても仕方がない」という発想のままで治療されてはいけないのである。
 医者が明日から医者を、弁護士が明日から弁護士を、職業に貴賤はないが、たとえば八百屋の親父さんなら退院したらその日から八百屋を出きるのが理想であり、そう目指した治療が行われなければならない。脳ドックがこれほど隆盛をみるかなり前から、教授は常にそのような脳神経外科治療をおこなうよう、我々弟子を厳しく指導されてきた。私もその指導に耐え多くを学んできたつもりである。だから、以前にも書いたように、私は脳ドックを推進する立場でも反対する立場でもない。脳ドックの結果、治療が必要と考えられる人に対してどのようにアプローチすれば「そのひと」の今後の人生が豊かで明るいものになるかを考え、それを実践するだけである。神ではないのだから100%絶対成功を保証は出来ない。しかし私が手術しても予測上は100%に近い成功が得られるという感触を得られる症例にだけ手術をすすめている。手技的に難しいなと思ったり、手術による障害発生がかなりの確率で起こりそうな症例は、大学に紹介する、大学を通して血管内治療をすすめる、などのように自分よりも優れていると思う医師に迷わず紹介する。または、患者と家族に十分な説明をして手術治療を行わずに外来で経過を追っている。今、思い出せるだけで4,5人の患者さんは手術をせずに外来で経過を追っている。大学に紹介して手術を受けたものの、やはり困難な症例で動脈瘤にクリップをかけずに閉頭され頭の中に動脈瘤が残ったままの人もいる。大都市の有名な血管内治療の専門医に治療を依頼したものの、そこでもやはり治療は困難と言うことでそのまま送り返されて来た患者さんもいる。以前にもこのブログでかいたように、我々医師は"First, Do No Harm"なのである。治療できなくても、少なくとも診断される以前より悪い状態にしないこと。これを「勇気ある撤退」とみるか「敵前逃亡」とみるかは医師によって違う。しかし、「その」患者が自分の親であるとか、同胞であると仮定したときに、難しいから治療しないことを非難できるであろうか?
 脳ドックで診断がついた患者さんの治療成績は理想は100%成功でなければならない。しかし人間の営みに100%の絶対などというものはない。我々は神になろうと努力しているのではない。いずれ限りのある患者の人生が我々の介入によってさらに豊かなものになることを目指しているのだ、ということを、今日の教授の講演を聞いて再確認した。

|

« プロムジカ体験 | トップページ | アダージョ »

コメント

K医師とは「癌と戦うな」で有名な方だと思います。
昨日の日経新聞夕刊にK医師が「枯れて眠るような死を」とインタビューに答えていました。
苦痛などの症状がない限り、医療機関には近づかないほうがいい、検診などで早期発見というが手術で寿命が延びたという証拠はないとも。
この場合、癌に対してこう話しておられましたが、脳にも同じことなのかもしれないなどど、ぽつんと思いました。問題提起してくれるインタビューでした。
「戦う」ことは、生産的ではないのは、一般論としては分かるのですが。

投稿: 侘び助 | 2005.07.17 07:52

私は病とガンガン闘うタイプなので(爆)
それが 同じ思いをして必死に直そうとしてくれた医師に対する 礼儀だと 思ったからです。
でも人それぞれの選択ですからやはり自分と同じ思いを理解してもらえる医師に出会うことも大切なことですよね。。。

投稿: 則香 | 2005.07.17 11:30

TBさせていただきました。
自分の意見を書くことあったのに、昨日のテレビで最新機器の特集をやってたので、そのことで話がいっぱいになって、balaineさんのはこちらからもっていくだけになってしまって、すみません。あ~~つかれた(笑)
私もできるだけ闘ってやるぞー!タイプです^^

投稿: @むーむー | 2005.07.17 14:20

侘び助さん、則香さん、@むーむーさん、コメントありがとうございます。手術を受けた方はもちろん、受けない方も闘っているんですよ。
のんびり闘い続けましょう!

投稿: balaine | 2005.07.17 19:29

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/74618/4997509

この記事へのトラックバック一覧です: 脳ドック研究会:

» ガンマナイフに関する放映・脳ドックなど [たかが頭痛が脳腫瘍!!]
昨夜のTBSテレビ、「ブロードキャスター」で、切らずに治せる最新手術といって、脳にガンマナイフと乳がんのためのFUS(集速超音波手術)を特集で紹介していました。いつも思うのですが、見ている人に誤解をされないように、もっと時間をかけて、詳しくやって欲しい...... [続きを読む]

受信: 2005.07.17 14:22

« プロムジカ体験 | トップページ | アダージョ »