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2005.07.20

髄膜腫と下垂体腫瘍

 以前にもこの2つの腫瘍の事は書いた。
 脳腫瘍とは、脳からできる腫瘍の事ではなく、頭蓋骨の中に納まっている構造物から出来た出来物はすべて「頭蓋内腫瘍=脳腫瘍」と言うならわしになっている。全年齢を通して、最も多いのは神経膠腫といって、手術摘出すれば放射線治療もいらない比較的良性なグレード1から極めて悪性で診断後の余命が半年から一年というグレード4まである。これがおよそ全体の3〜4割。次に多いのが、髄膜腫。これが2〜3割。3番目に多いのが、下垂体腺腫で1〜2割。4番目が聴神経腫瘍で1割弱、となっている。頭蓋内に発生する腫瘍を、その元となる細胞から分類した病理学的診断名でわけると50種類を超えるのであるが、この4つで約9割を占める。
 明日は、また大きな髄膜腫。今度のは、直径4.5cmを越え、周囲の浮腫(むくんで水が溜まる事)も強く既に運動麻痺が出ている。予定手術時間は7〜8時間を予定している。MRIで見る限り、腫瘍と圧迫された脳の間にまったく隙間がない。髄膜腫は脳の外から出来て脳を押し込むように発育するので、小さいうちは腫瘍と脳の間にくも膜の隙間があって、簡単にはがれる事もある。明日の腫瘍は、無理に剥がそうとすると脳の表面が傷ついて出血したり崩れてくる事が予測されるため、慎重に慎重に内減圧(内部をくりぬく事)してから攻めて行くしか無い。8時間で終わればいいが、と思っている。
 今日新しく入院し来週手術を予定している方は、下垂体腺腫。下垂体の正常の重量が0.7grぐらいで脳は1000〜1200grぐらいあるのだから、下垂体は脳の1000分の一以下の大きさなのにもかかわらず、そこに発生する腫瘍は3番目に多いのである。ホルモンの過剰分泌症状を呈する、巨人症、末端肥大症、クッシング病、無月経乳汁分泌症候群などのホルモン産生性腫瘍と、主に視力低下、視野障害に疲れやすい、多尿多飲などのホルモン低下症状で発症するホルモン非産生性腫瘍に分けられる。鼻の穴からどこも切らずに内視鏡を挿入して2時間くらいで腫瘍をとってしまう内視鏡下経鼻腫瘍摘出術を予定している。
 明日はまた気力体力勝負。手術終了は早くて夜の10時過ぎである。

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コメント

8時間ですか・・・・・・。
僕が今まで入った手術の最高時間が8時間くらい
だったのですが、誰もトイレには行っていませんでした。
清潔になった後にトイレに行きたくなったら
やはり一度不潔になって・・・ということになるんですか?
(ヘンな質問してすいません)

投稿: ユウ@来年研修医 | 2005.07.20 17:06

ユウさん、まあ、慣れですね。
4/7「連日の大手術」のところに、どんな感じなのか書いてあるのでお読みください。

投稿: balaine | 2005.07.20 17:32

見ました!
自律神経をなめていました。(笑)

投稿: ユウ@来年研修医 | 2005.07.20 19:57

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