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2005.07.28

しゃべること

は、私の仕事の半分近くを占める。おしゃべりは嫌いじゃないが好きでもない。
だから外来は辛い。疲れる。今日は約4時間外来。最初のうちは、あまり変わりのない安定した患者さんが多いのですっすっと進む。1030頃から、新患、MRIなど予約していた患者さん、他科からの紹介患者などが多くなり一人にかかる時間が増える。中には一人に30分近くかかる事もある。
1)81才で洞不全症候群(心臓が凄く遅くなって気を失う)のため倒れたのだがCTで脳腫瘍が見つかったため、無症状ではあるがMRIと脳波を検査して診断について家族とともに説明し今後どうしていくかinformed consentをとる必要のある患者さん。高齢で心臓の病気もあり、脳の病気は無症状の良性の腫瘍と思われるので脳の手術は当面しないでCTだけで経過をおいましょう、というお話しをした。患者さん本人は現在痛くも痒くもないので、頭の手術どころか検査もいらない(内心はおそらく検査して大きくなったから手術しましょうと言われるのが恐い)という。これを家族に話しかけながら「検査は必要」という事の説得が必要であった。疲れる。
2)またまた81才。胃の進行癌。手術なし。抗がん剤も今はやってない。右足の麻痺が出現。少し戻った。内科では何も検査しないので脳外科でCT, MRIを急ぎ依頼して本日診察。最大で15mm位の脳腫瘍が左後頭葉に一個、その他に小さなのが3個。おそらく胃がんからの転移。余命3ヶ月くらいと内科医の意見。家族と相談して何もしないかガンマナイフかを考え、ガンマナイフのある施設の医師に適応について相談。8月にガンマナイフを施行する事になった。患者さんよりも、家族といろいろの可能性について話しをし、主治医、他院の医師とは電話で話す。疲れる。
3)3月に摘出した直径5cmくらいの前頭部の大脳鎌髄膜腫。術前から右足の麻痺があったが、術後少し悪化し現在自宅からリハビリ通院中。独歩はできるがまだ杖がいる。本日4ヶ月半後のMRI。腫瘍は肉眼的に全摘出。脳は圧迫されて変形していたのがだいぶ元に戻りつつある(なにせ最大で4cm近く移動していた訳だ)。まだ麻痺の改善がなく、摘出時の脳のダメージ、血管損傷による運動野の障害が疑われるが、MRIを説明しながら本人と家族に「大丈夫!半年は回復を期待してリハビリしましょう」と話す。疲れる。
 それ以外に昨日ふらふらとして倒れたという新患。不整脈強く心電図とると強い心房細動。循環器内科に相談し紹介状を書く。その後、脳出血の急患来院。ふ〜!
 昨日も3家族に説明を行った。今週末に退院予定。まだ40才そこそこの脳出血の方。聴神経腫瘍の方もようやく食事も水分もむせないようなって、歩きもふらつきがほとんどなくなったため、自宅退院し外来通院と通院リハビリになる。頭頂部の傍矢状洞髄膜腫の患者は、全く後遺症なくMRI上全摘出で退院となる。一昨日手術した下垂体腫瘍の方は、一般病棟。食事も飲水もOK。尿崩症もない。上手くいっている。これらの事を家族にも説明する。「順調に行っていますよ」と。
『好事魔多し』
という。気をつけなければならない。ただ偶然上手くいっている訳ではない。なんとか運良くラッキー!で治療しているつもりではない。考え、予測し、配慮しそして動いている結果だと思っている。自惚れと言われるかも知れない。謙虚さが足りないと思われるかも知れない。しかしある程度は予測の範囲、自信を持って得ている結果なのである。
 でもしゃべるのは疲れる。4時間喋るよりは4時間手術している方がずっと楽である。(^^;;;

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コメント

本当にお疲れ様です。
では、ビールでもどうぞ。。(*^^)_□D

投稿: @むーむー | 2005.07.28 23:47

突発性難聴で先週初め都内の大病院に入院した中国人留学生が、きょう退院します。担当の医師が、始めから「聴力は戻らない、あなたは片耳が聞こえなくなる」と言っていたそうで、見舞いのたびに泣いていました。
日本の大企業にも就職が決まっているしっかりした女の子です。
どんな医師だろうと思っていました。先日見舞いのとき、カーテンを開けて上半身だけ出して、「どう?元気ね。耳は完全には戻らないからね。戻らないからね」と言ってすぐいなくなった女性がいました。程度の低い看護婦さんねと思ったら、その人が主治医とのことでした。
留学生は「始めから治らないといわれて、気持ちがなえてしまう。がんばろうと思っても挫けてしまう」といいます。
医長のすぐ下の30代後半の女医でした。お医者さんにも、本当にさまざまな人がいると痛感しました。あるいは、あの悪意は、5月の反日運動が横たわっているのかと思いました。中国での反日のデモの後、中国人留学生が日本でいやがらせを受けていたのです。
留学生のゼミの教授が見舞いに来て、主治医に尋ねようとしたら、会えなかったそうですが。
幸い、レーザー治療をしてくれる先生が「絶対に治るよ」と毎日励ましてくれたそうで、晴れてきょう退院します。

投稿: 侘び助 | 2005.07.29 07:34

ほんと、お疲れさまです。
超神経腫瘍の方退院なんですね、よかったです!あとのリハビリが結構きつかったりするけどここが辛抱しどき!自分のためだから。
頑張った分だけ正直に体に帰ってきますね。

しゃべることは すごく エネルギーがいります。私はいつも相手からエネルギー吸い取りながらしゃべくりまくってます((笑)

先生のエネルギーは どこから?かなぁ ♪

投稿: 則香 | 2005.07.29 10:22

@むーむーさん、則香さん、ありがとうございます。
我々医師のエネルギーは、やはり患者さんだと思います。患者さんの頑張っている姿、笑顔、感謝の言葉は「もうちょっとこの仕事やって行こう!」という気にさせます。

侘び助さん、もって他山の石(医師)とします。
でも私なんかもそうやって患者さんを傷つけている事が多々あるかもしれません。反日運動に対する嫌がらせとか悪意とか、可能性もありますが、そんなことではなく単に思いやりが少ない医師だということでしょう。たとえば、「「突難」は治らない、ってちゃんと言えよ」などと上司から言われていたりした、しつこく言うかもしれません。患者が、何よりも先に「先生、治りますか?」と聞いたために「治りません」と、いろいろ説明する前に言ってしまった可能性があります。
私が疲れるのは、とにかくいろいろ配慮して自分の言葉に責任を持って、相手に伝わるように喋らなければならないからです。「ムンテラ」という卑下した言葉がありますが、復活してもいいのではないかと思うくらいです。

投稿: balaine | 2005.07.29 11:06

他山の石(医師)

うわっ! 柔軟!
ダジャレは、心の栄養にえーよー・・・・

投稿: 侘び助 | 2005.07.29 21:49

ぷっ!(^^

投稿: balaine | 2005.07.30 02:54

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