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2005.07.27

アメリカのMedical Center

今日はガラッと変わって、米国の医学部や病院の事を書く。以前にも書いたように、米国式の医療は、専門を細分化してしかもそれをセンター化している事が多い。たとえば、日本で言えば「国立がんセンター」と「国立循環器病センター」といったような病院が集まっていたりする。
私がH11年に国費留学させて頂いたHouston Medical Centerは全米一、ということは世界一の規模のMedical Centerであった。Houstonでの生活の事は、1/31の記事に書いた。
「大きい、大きい」と言っても見た事のない人にその大きさは実感できにくい。いいものを見つけた。
Google mapという、世界中の衛星写真を公開しているもの。それでHouston Medical Centerを見てみた。
是非、下記URLをコピペして眺めて頂きたい。

http://maps.google.com/maps?ll=29.710028,-95.397720&spn=0.010251,0.014799&t=h&hl=ja
私が通ったのは、画面真ん中上方にある、Univ. of Texas Med. Schoolとその隣のHermann Hospitalであった。画面下の方にある、MD Anderson Cencer Centerにも見学に行った。このMD Anderson Cancer Centerの建物だけで、築地の国立がんセンターの2倍以上ある感じである。この画面に収まっている範囲の比較的大きな建物は全部病院か研究所である。規模が違う。注ぎ込まれている金が違う。

もう一つ。
http://maps.google.com/maps?ll=40.442538,-79.959419&spn=0.008983,0.014799&t=h&hl=ja
こちらはH4〜6年の2年間留学していた、Pittsburgh Medical Centerである。
Houstonに比べればその規模はずっと小さいが、有名で質の高い研究施設や病院が揃っている。当時は肝移植がとても有名で、日本人の外科医の多くは肝移植の実際と小腸移植の実験に明け暮れていた。漫画「メスよ輝け!」に出てくるPresbyterian University Hospitalが真ん中やや左寄りに見える。私は毎日のようにここに通っていた。懐かしい。。。
病院のすぐ脇にあるま〜るい屋根の変な建物は、Pitt Panthers、つまり大学のフットボールチームの本拠地である。周りにあったのは医学部だけではなく、公衆衛生の大学院などの建物もあった。
 アメリカの医療には建物の凄さだけでも圧倒されるが、やはり研究施設や病院へのお金のかけ方が日本とは全然違う。これは医療制度、保険制度の違いによる。アメリカでは医療はビジネスである。もちろん、愛や仁に基づいたものではあるが、日本よりもビジネスとしての側面が非常に濃い。しかも上手くやればいい商売になるし、病院も医師もお金が稼げるのである。
 米国の名の知れた脳外科医は、車を数台持ち別荘とヨットを持っているとか、人によっては自家用飛行機を持っているなどが当たり前の世界である。脳腫瘍の手術料金が一回1000万円を超えるのである。私が脳腫瘍の手術を行うと、日本の保険性で約8万点。だから全額自己負担したって80万円の手術である。米国の有名な、1000万以上の手術料を取る脳外科医が私の10倍以上の上手さで10倍に見合う治療成績を残しているかと言うとそんなことはまったくない。明らかにシステムの違いである。でも金のあるところ、著名な人のところには、人や物や金が集まるのはビジネスの世界では当然であろう。米国の大きなMedical Centerには、ターバンを頭に巻いた、明らかに石油産出国の超大金持ちっぽい人を良く見かける。そういう人達は、自分を入院治療してくれる著名な病院や医師に、1億円とか2億円というお金をポンと寄付するという話しを聞いた。病院のある階や建物の一部に人の名前がついたりする。その病院の設立や維持に貢献した人、つまり多額の寄付をしたお金持ちの名前がついたりするのである。LAの病院だと、Hollywoodのセレブが来て多額の寄付をし、ある病棟にスーパースターの名前がついたりするらしい。
 そういう、多額の寄付であるとか、驚くような投資が病院や医療ビジネスにされている世界と、まるで社会主義国のような国民皆保険制度で超セレブも生活保護の人も「格一同一料金」に設定されている日本の医療は成り立ちが根本的に違う。そして、現場の医師の頑張り、誠意、真心、思いやり、自己犠牲に頼っているのである。
 いつも思う。高級外車にお金を惜しまないような人が、なぜ医療には平等を求めるのか。もし医療「サービス」として、他の人との差を望むのであれば「料金」にも差がついて当然と思わないのだろうか?同じ料金を払っているのなら、同じサービスで我慢すべきであろう。米国と比較するなら、10分の一から100分の一に近い医療費で治療を受けているのなら、医療「サービス」の面でも10分の一から100分の一で我慢すべきではないのか?帝国ホテルでフレンチを食べるのに、立ち食いそばと同じ料金で済むと考える人はいないはず。なぜ立ち食いそばの料金しか払っていないのに、帝国ホテルのサービスを求めるのであろうか?それが「市民」が「医療人」に対して、当然受けるべきものだというどこかで誤った考えを広めている人がいるのではないだろうか?

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コメント

うんうん。。本当に同感です。これが正義だとまことしやかに言えば、同意を得られる人がいるのですよ、きっと。それが本当に正しくて、あってることなのか、考えもしないで。そのしわよせは、どこへゆくのでしょうね。あ~~~

投稿: @むーむー | 2005.07.28 01:07

@むーむーさん、ありがとうございます。
ただ私の本意は、医療サービスは本来は見返りを求めない無償の愛で行われるべきもので、医師は「ボランティア」でなくてはいけないとおもいます。どんな身分の、どんな所得の人にも差別なくその時に行える最良で最高の医療を提供すべき仕事であると考えます。でも現実はそんな綺麗ごとでは病院がつぶれますし、現状日本の保険医療は破綻しかかっています。その辺りが問題なのです。

投稿: balaine | 2005.07.28 08:59

私が家族とニューへブンに暮らしていた時、エール大学病院のヘルスプランという保険に入っていた。金額は覚えていないが高かった記憶がある。でも、子供たちのあらゆる病気がたしか無料だった気がする。次男は頭を大きく切って、10針縫ったことがあった。素人目にも、目の粗い縫い方で、現地の日本人医学研究者によると「まったくアメリカ人は不器用だな。我々ならこの傷は20針はぬうよ」とのこと。
だからアメリカ人の医師が卓越した技量を持っているとは思いません。
ただ、ヨーロッパの先進国はやはり日本のような医療制度で或る意味平等だと聞きます。
アメリカの医療は功罪両面あって、単純には論じられないと思います。寄付制度は、もう日本とはまったく違うし。
ヒューストンは兄がいたので行ったことがあるが、もうだだっ広い都市だ。国土の大きいアメリカは、魅力あるが、私は日本はいい国だと思います。
生意気を言うようですが、消費者である私たちが、さまざまなことに対して、もっと識別眼をもたないといけないと思います。

投稿: 侘び助 | 2005.07.28 09:53

結局、そのしわよせは、良い医療を安く受けたいと思っている、消費者(患者)へと、くるのですよね。どこかで誤魔化されてますねぇ~誰にでしょうねぇ~???

投稿: @むーむー | 2005.07.28 12:49

侘び助さん、@むーむーさん、ありがとうございます。
他の国々から学ぶ必要があります。むしろ「もって他山の石となす」という感じで。
保険診療を押し進めた英国では、医師側がincentiveを失って救急医療は破綻しかかっています。緊急入院が半日待ちとか、入院予約しても1年後とか、そんなばなか!という状態が英国の医療です。ドイツでもだんだん医師が、特に脳外科のようなやりがいはあるけどきつい科では若手が減少し中堅が辞めて行っているそうです。
「今の医者は、、、」といくら文句を言っても、その医者がいなくなってしまったら、本当に一番困るのは患者さん本人です。いなくなるはずなんかない、と思っていたら大間違い。田舎では、医者が減って来ていると思います。使命感とやる気に満ちて赴任しても、きつい上に給料は減り尊敬もあまりされないとなると、「商売」になる土地を探して開業するか、都会の方の病院にリクルートするか、そんな感じで変化が始まっています。

投稿: balaine | 2005.07.28 13:25

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